こころの文庫(つねじいさんのエッ!日記)

家族を愛してやまぬ平凡な「おじいちゃん」が味わう日々の幸せライフを綴ってみました。

ゆるぎ岩・その5

2016年01月27日 00時14分56秒 | 文芸
「実はな、

お父さんのお父さんが、

一緒に押してくれたんだ」

「おじいちゃんが…

一緒に、

押したんだ」

「そうさ。

リューゴと同じ一年生の頃のお父さんは、

もうイタズラばっかりしてさ、

そんなお父さんが『ゆるぎ岩』を押しても、

揺れないだろうと心配したおじいちゃんが、

お父さんの手を取って、

一緒になって岩を押してくれたんだ」

「へえ」

「そしたらな」

「うん」

「揺れたんだ、

あのでっかい『ゆるぎ岩』が、

ゆらゆらと揺れたんだ!」

 お父さんは笑って、

大声を上げました。

「そうか。

おとうさんも……揺れなかったんじゃないか。

おじいちゃんの手助けがなかったら……」

 リューゴはホッとしてお父さんを見ると、

お父さんの目とぶつかりました。

次に『ゆるぎ岩』を見ました。

また、お父さんを……、

キョロキョロとリューゴの目は動き続けました。

「よーし!

今度はお父さんと力をあわせて、

一緒に『ゆるぎ岩』を押してみようじゃないか」

「うん!」

 リューゴは元気いっぱい返事をしました。

 リューゴとお父さんは手をつないで、

『ゆるぎ岩』の前に立ちました。

「リューゴはお父さんよりもいい子だぞ。

だから本当は片手でも大丈夫なのに、

初めてで緊張したんだろ。

うん、

大丈夫、

今度は揺れるさ」

 お父さんはリューゴに片目をつぶって合図すると、

大きく頷きました。

しっかりと握り合ったお父さんの手の温かさが、

リューゴに勇気を与えてくれます。

(よーし!)と、

なんでもやれる気持ちになりました。

「リューゴ、

まず『ゆるぎ岩』にお願いしようか?」

「うん。

三回手を叩くんだね」

 さっきお父さんがやっていたのを、

ちゃんと見ていたのです。

「よく覚えていたな、

リューゴ。

でもただ手を叩くだけじゃないんだぞ。

心の中で願いを込めるんだ。

ぼくはこれからもきっといい子でいるから、

揺れて下さい!って祈ってごらん」

「うん、

わかったよ」

 リューゴは神妙な顔になって、

『ゆるぎ岩』を見つめました。

そして心を込めて、

パンパンと手を叩きました。

お父さんも叩きました。

リューゴは何度も何度も、

胸のうちでお願いしました。

必ず揺れてみせてねと頼んだのです。

 「さあ、

やるぞ!」

 お父さんがリューゴの肩をポンと叩いて、

合図しました。

 リューゴとお父さんは同時に、

『ゆるぎ岩』に手を当てました。

リューゴはチラッとお父さんを見やると、

お父さんもリューゴに目を向けたところでした。

「フフフフフ」

 リューゴはとても愉快な気持ちになりました。

「ハハハハハ」

 お父さんも楽しくてたまらない風です。

 リューゴはいまお父さんと、

ひとつになったのです。

「そーれ!」

「そーら!」

かけごえがひとつになりました。

リューゴは無我夢中で、

手に持てる力を全部込めて押しました。

お父さんも力いっぱい押しています。

その迫力のすごさといったら!

「イチ、ニー、サン!」

コメント
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