「やれます?」
「やってみます。
いや……ええ、やります」
自分に言い聞かせている。
運動計画に、
腹筋体操を進められた。
そしてウォーキング教室への誘いもあった。保健師はあっさりと言ってのけるが、
他人事だからだろう。
自分のことになれば、
そう簡単に
ことを決めつけはしまい。
「今日はみなさん有意義でしたね。
次回は三か月後になります。
メタボに効く運動と低カロリーで
美味しく出来る料理の教室を
予定しております。
今日の教室にご参加頂いた皆さん、
ぜひぜひご参加くださいね」
主任格の女性が、
今日は楽しかったですねと言わんばかりに
締めくくった。
「体重チェックシートだけは記入を忘れないでください。
毎日チェックしてれば、
何キロ減ったか一目瞭然で、
やる気にさせてくれるはずですから」
担当保健師は私に念を押す。
「どないです?
うまくやれそうでっか」
隣席の男性が訊いた。
「一回挫折しとるんで。
自信ありまへんわ」
「食べることやからなあ。
美味いもん目の前にあったら、
つい手が出てまいますわ」
「そやねん。
甘いもんは、
とくに危ない」
「そうそう」
お仲間がいた。
それだけで前向きになれる。
「ほなら、
来月楽しみにしてますよって」
「こちらこそ。
次もよろしゅう相手したって下さい」
重荷が取れて、
饒舌に言葉を交わした。
夜が来た。
晩御飯に茶碗半分のご飯をよそう。
物足りなくても、
自分が練り上げた計画を
そう簡単に崩せない。
脱衣場で体重計に乗った。
骨密度が測定できる高性能である。
デジタル表示のモニター画面に『六十九・二キロ』と出た。
七十はまだ超えていない。
入浴が済めば一キロは減るかな。
チェックシートに書き込まなければ。
スーパーで食材を買った。
定年退職以来、
家の食事を担当している。
買い出しもその一環だ。
野菜を多めに買いたかったが、
まだまだ高値である。
白菜と大根、エノキ、マイタケを買った。
家に買い置いている
玉ねぎと人参が加わる。
野菜をたっぷり使った健康料理を作ろう。
野菜を主役に、
ちゃんこ鍋を作った。
娘や妻は喜んで食べる。
私の箸も進んだ。
(三十回噛むぞ……!)
しかし三十回は容易ではない。
噛むうちに何回か分からなくなった。
馬鹿らしくて数えるのを止めた。
食後にコーヒーを飲む。
冷蔵庫に缶コーヒーがある。
でも駄目だ。
三年前の保険健康指導で、
糖分の入った缶コーヒーを減らす
約束をさせられている。
他の項目はケツ割りしてしまったが、
不思議に缶コーヒー断ちだけは
いまだに続いている。
一杯抽出型のレギュラーコーヒーを淹れた。
砂糖とミルクの代わりに
大匙一杯の酢を入れた。
酢は血圧と血液サラサラに効果がある。
他に糖尿病予防に米のご飯は禁物と、
耳学問で実行中だ。
きっと効果はある。
「どうやの?メタボは克服できたん?」
妻が急かす。
面白がっているふうだ。
健康診断の結果を記す一覧票。
もう何度となく見直した。
『要医療』の文字が目に入る。
もう保健指導の範ちゅうを外れている。
体重と腹囲の測定は二か月続かなかった。甘いものも結局我慢出来ず口に。
ああ~!
プックリ出張った腹を、
愛おしくさすった。
「やってみます。
いや……ええ、やります」
自分に言い聞かせている。
運動計画に、
腹筋体操を進められた。
そしてウォーキング教室への誘いもあった。保健師はあっさりと言ってのけるが、
他人事だからだろう。
自分のことになれば、
そう簡単に
ことを決めつけはしまい。
「今日はみなさん有意義でしたね。
次回は三か月後になります。
メタボに効く運動と低カロリーで
美味しく出来る料理の教室を
予定しております。
今日の教室にご参加頂いた皆さん、
ぜひぜひご参加くださいね」
主任格の女性が、
今日は楽しかったですねと言わんばかりに
締めくくった。
「体重チェックシートだけは記入を忘れないでください。
毎日チェックしてれば、
何キロ減ったか一目瞭然で、
やる気にさせてくれるはずですから」
担当保健師は私に念を押す。
「どないです?
うまくやれそうでっか」
隣席の男性が訊いた。
「一回挫折しとるんで。
自信ありまへんわ」
「食べることやからなあ。
美味いもん目の前にあったら、
つい手が出てまいますわ」
「そやねん。
甘いもんは、
とくに危ない」
「そうそう」
お仲間がいた。
それだけで前向きになれる。
「ほなら、
来月楽しみにしてますよって」
「こちらこそ。
次もよろしゅう相手したって下さい」
重荷が取れて、
饒舌に言葉を交わした。
夜が来た。
晩御飯に茶碗半分のご飯をよそう。
物足りなくても、
自分が練り上げた計画を
そう簡単に崩せない。
脱衣場で体重計に乗った。
骨密度が測定できる高性能である。
デジタル表示のモニター画面に『六十九・二キロ』と出た。
七十はまだ超えていない。
入浴が済めば一キロは減るかな。
チェックシートに書き込まなければ。
スーパーで食材を買った。
定年退職以来、
家の食事を担当している。
買い出しもその一環だ。
野菜を多めに買いたかったが、
まだまだ高値である。
白菜と大根、エノキ、マイタケを買った。
家に買い置いている
玉ねぎと人参が加わる。
野菜をたっぷり使った健康料理を作ろう。
野菜を主役に、
ちゃんこ鍋を作った。
娘や妻は喜んで食べる。
私の箸も進んだ。
(三十回噛むぞ……!)
しかし三十回は容易ではない。
噛むうちに何回か分からなくなった。
馬鹿らしくて数えるのを止めた。
食後にコーヒーを飲む。
冷蔵庫に缶コーヒーがある。
でも駄目だ。
三年前の保険健康指導で、
糖分の入った缶コーヒーを減らす
約束をさせられている。
他の項目はケツ割りしてしまったが、
不思議に缶コーヒー断ちだけは
いまだに続いている。
一杯抽出型のレギュラーコーヒーを淹れた。
砂糖とミルクの代わりに
大匙一杯の酢を入れた。
酢は血圧と血液サラサラに効果がある。
他に糖尿病予防に米のご飯は禁物と、
耳学問で実行中だ。
きっと効果はある。
「どうやの?メタボは克服できたん?」
妻が急かす。
面白がっているふうだ。
健康診断の結果を記す一覧票。
もう何度となく見直した。
『要医療』の文字が目に入る。
もう保健指導の範ちゅうを外れている。
体重と腹囲の測定は二か月続かなかった。甘いものも結局我慢出来ず口に。
ああ~!
プックリ出張った腹を、
愛おしくさすった。