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JR北海道でまた「ヒヤリ」今度は電源車燃料漏れ

2012-02-01 23:26:36 | 鉄道・公共交通/安全問題
「北斗星」燃料漏れ、乗客は新幹線に乗り換え(読売)

記事中にある「電源車」とは何か、鉄道ファンには改めて説明するまでもないだろう。ファン以外の方に念のため説明しておくと、これは寝台特急列車の客車内の電源をまかなうため連結される電源専用車両である。

日本の鉄道の場合、客室内の電源はほとんどが交流440Vだが、この交流440V電源を得るのに、電車の場合は架線から集電した電気(直流1500Vまたは交流20000V、25000V)で電動発電機を回して発電する(古い電車に多い)、あるいは架線から集電した電気を変圧装置により交流440Vに変圧して得る(新しい電車に多い)。また気動車(ディーゼル車)の場合は、発電用エンジンを使用するケースが多い。しかし、機関車にけん引されて走行することが前提で設計されている客車は自前の走行用動力も電源も持たないため、車内電源をまかなう目的で電源車が連結されるのである。

今回、トラブルを起こした車両はこの電源車であり、マニア的にはカニ24形と呼ばれるものだ。国鉄時代に製造され、改造や延命工事は行われているものの、JRになってから新造はされていない。最も新しいものでも30年経過しており、さすがに老朽化は隠しがたいが、単にディーゼルエンジンを回して発電するだけという単純な仕組みのせいか、これまで特に問題なく使われてきた。私の見る限りでも、このような形での燃料漏れは記憶にない。

今回は車掌が燃料系統の異常に気付いて列車運転を青森で打ち切ったからよかったが、このまま走行を続ければ燃料切れで車内電源が失われ、車内が全停電となる可能性が高かった。

寝台特急は長距離を走るため、走行距離が短い通勤形・近郊形車両と比べて老朽化の進行が早い。加えて、高速走行する新幹線ではおおむね20年が新形式車両への置き換えの目安となっている。寝台特急用車両は新幹線ほど高速走行はしないものの、走行距離が長いことからそろそろ取り替えが必要な時期だろう。

とはいえ、今回のトラブルを受けてもJR北海道・東日本両社が「北斗星」車両の取り替えを行う可能性はきわめて低いと思われる。理由は、新青森~新函館間の2015年開業が見込まれている北海道新幹線の存在である。新幹線開業後、数年間は「北斗星」を存続させるとしても、運転区間(上野~札幌)の大部分(上野~函館)が新幹線と並行することになる「北斗星」は早晩、存廃問題が浮上してくるだろう(特に、この列車は東北新幹線延伸に伴って第三セクター化されたIGRいわて銀河鉄道・青い森鉄道を通過するため、これら三セク会社に対する線路使用料の支払いという面倒な問題も抱えている)。このような微妙な時期に、新たな費用を負担してまで新型車両に置き換えるより、両社は「北斗星」廃止という「現実路線」を選択することになるだろう、と私は見ている。

であるならば、当面はこうしたトラブルが起きないよう、せめて車両の整備をきちんとすべきだが、昨年5月に起きた石勝線での列車炎上事故を見ていると、JR北海道にきちんとした車両整備ができるのか疑問である。JR北海道には改めて整備体制の再構築を求めたい。また、当面、寝台特急用の車両整備はJR東日本が行うなどの方法も併せて検討すべきであるように思う。

しかし、それにしても許し難いのは、JR北海道函館支社が「駆動機関車に接触する位置ではなく、引火の危険性は低かった」と発表したことである。確かに、上り「北斗星」は北海道内では電源車の連結位置は最後部であり、列車をけん引するディーゼル機関車とは大きく位置が離れている。しかし、北海道~本州を結ぶ列車はすべて函館で進行方向が変わるため、函館からは電気機関車の次の最前部に電源車が位置することになる。青函トンネル内で、最前部の電源車から漏れた軽油に、車輪から出た火花が引火しないと誰が断言できるのだろうか?

JR北海道の発表は、自社線内さえ事故なく通過できればよいとでも言わんばかりである。いかにも官僚的で見え透いており、東電の記者会見を見ているようだ。

長年、鉄道の安全問題を見てきた当ブログの立場からは、「こんな姿勢だからこそ、トラブルがいつまでもなくならないのだ」と言いたくもなる。くどいようだが、JR北海道経営陣には「奇跡はもう終わりだ。次には死亡事故が起きるであろう」と、もう一度強く警告しておく。

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