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身内からも集中砲火の経団連、相次ぐ企業犯罪…このままでは日本は世界から見放される

2012-02-25 21:48:40 | その他社会・時事
(この記事は、当ブログでいったん発表した内容を、修正・加筆後、月刊誌「地域と労働運動」2012年3月号に再掲したものです。)

 最近、テレビや新聞、雑誌で企業犯罪のニュースを見ない日がないほど、メディアは企業犯罪で覆い尽くされている。こうした企業犯罪は今に始まったことではなく、古くはロッキード事件から最近ではオリンパスや大王製紙の背任・粉飾決算に至るまで様々な企業犯罪が戦後日本史に刻まれてきた。

 最近の企業犯罪を見ていると、昔に比べてあまりに自分勝手で、経営者以前に人間としての基本的な資質が問われるような犯罪が多くなってきたような気がする。それらの犯罪は日本企業を取り巻く危機の深刻化を表している。

 ●良い制度を作っても全て骨抜き

 オリンパスでは、経営陣が10年以上も粉飾決算を続け、英国人取締役が問題を指摘すると彼のほうを解任し追い出してしまった。大王製紙では、経営者が自分の利益のため子会社に不正融資をさせたことが子会社に不当な損害を与えたとして特別背任罪で起訴されている。しかもこの経営者は、2011年12月に保釈金3億円を支払って保釈されると、妻以外の女性を伴って連日連夜、歓楽街で飲み歩く姿を目撃されている。

 日本では、政府が一念発起し、ガバナンス(企業統治)のために有効な制度を作りあげても、経済界が官僚と同様、何もかも骨抜きにする。最近も、コンプライアンス(法令遵守)や経理の適正化を目指した監査法人制度など様々な内部統制を導入したにもかかわらず、2010年に経営破たんした日本航空では監査法人も経営者の怠慢を放置。せっかくの制度も機能しないまま終わった。多くの経営者がなんとか自分たちだけは誰にも統制されることなく最大利益を追求できるようにしようと小手先だけの改革でお茶を濁し、また同じことが繰り返されるというのが日本のこれまでの歴史だった。

 一部の心ある経済人が強烈な危機感を抱いている一方、日本の経営者の大部分はこうした問題に全く気付いていないが、事実上ガバナンス不在の日本企業は今、国際社会からも「ビジネスパートナーとして不適切な相手」との烙印を押されつつある。意思決定は遅く、責任の所在は曖昧で、約束したことすらきちんと守らず、目の前で違法行為が行われていても見ないふりをして仲間と馴れ合う。こんな相手と一緒に仕事をしたいと一体誰が思うだろうか。

 最近、日本企業の国際競争力が弱まっていると感じている人も増えていると思うが、国際競争力の低下はみずからのガバナンス不在が招いた自業自得でもある。

 ●集中砲火を浴び四面楚歌の経団連

 このような日本企業の実態が明らかになるにつれ、経団連が集中砲火を浴び、次第に四面楚歌の状況に陥りつつある。経団連にとって痛いのは、経済誌や経営学者、元金融機関社員など、どちらかといえば経済界寄りと思われていた人々の中から厳しい批判が次々と上がっていることだ。

 例えば、「真のリーダーには高い視点が必要だ~経団連もJAも、業界の利害を主張するだけではリーダーになれない」(「日経ビジネス・オンライン」2011年12月5日)と題する記事は、経団連の総会で孫正義・ソフトバンク社長の脱原発の主張を「黙殺」した米倉会長を批判して次のように書く。

 『安全性の確認も十分にできていない状態で、原発の再稼働を提言してよいものか。それは、経団連が所属企業の利益を最優先しているに過ぎないのではないか。…その前にやるべきこと、守るべきものがある。申し上げるまでもない、国民の命の安全と安心だ。米倉さんが安全だと言いきるなら質問したい。「では、今すぐご家族とお子さん、お孫さんを連れて原発の隣に引っ越せますか?」と』

 金融機関に勤務した経験から、明晰な分析力を持ち、「自分のアタマで考えよう」という著書を出版、ご自身のブログは10万アクセスを誇るカリスマブロガーの「ちきりん」さんは、「今、日本で最も時代遅れな団体=経団連」という刺激的なタイトルの記事(「Chikirinの日記」2011年11月21日)で次のように書いている。

 『最近の彼らの発言は、自己の利益に誘導的です。そもそも業界利益団体とはいえ、昔はここまで露骨ではありませんでした。…最近の経団連はなにかというとすぐに「日本から出て行かざるを得ない」と(政治家や国民を)恫喝するけれど、狼少年みたいなことばっかり言ってないで、出て行きたければ出て行けよ!って感じです。「日本の雇用が維持できるよう製造業を大事にしろ!」とか言っておいて、景気がよくなれば「人手不足だから、単純労働者の移民を受け入れろ」と言い出すなんて、詐欺師以外の何者でもありません。…いまや経団連は、重厚長大産業への利益誘導団体であることを隠そうともしなくなりました。彼らが自然エネルギーなんて全くやる気になれないのは、中心メンバーである重電会社も電力会社もそんなものでは儲からないからです。特定産業の利益団体が存在すること自体はかまいませんが、(特定産業の利益しか見てないくせに)「日本の経済界の代表」のような顔をされては迷惑です』

 また、「会社法制の見直しでガバナンスは強化されるか~経団連が頑強に抵抗を続ける理由」(「ダイヤモンド・オンライン」2012年2月8日)と題した記事では、社外取締役選任の義務づけ等を柱とする政府の企業統治強化策に対し、社外取締役は不要などとして抵抗を続ける経団連を批判し、次のように断じている。

 『問題の根本は、メインバンク制度と株式持合いに代表される旧い日本企業の「もたれ合い」体質、社内論理で「仲間内」をかばい合う風土を生む社内取締役選任過程の問題、更に加えるなら、「(特に投資家との)利益相反」というものに感度が鈍い日本独特の甘えの構造にあり、どんなに制度をいじっても、「仏作って魂入れず」になってしまっては何の意味もない。…もしそういう根本的問題に手を付けず、会社法制だけをいじるというのであれば、そういう風土を一掃するくらいのインパクトのある制度、たとえば、「取締役会・監査役会の過半数を独立役員にすることの義務付け」などにまで踏み込まない限り、日本企業の活力は決して戻ってこない』

 カリスマブロガーからは「特定産業の利益しか見ていないくせに日本の経済界代表のような顔をする詐欺師」とまで酷評され、経済誌からは「所属企業の利益を優先しているだけ」「もたれ合い体質、社内論理で仲間内をかばい合う風土、利益相反というものに感度が鈍い日本独特の甘えの構造」とまで批判される。かつて経団連が「身内」からこれほど手厳しい批判を立て続けに受けたことはなかった。一部の心ある経済人にとって、最近の経団連や経済界はあまりに偏狭でもはや我慢も限界ということだろう。

 ●自分の利益しか考えない経団連も経営者も去れ

 オリンパスや大王製紙で起きた企業犯罪はあまりにお粗末すぎるし、福島原発事故をめぐる東京電力の醜態、事故やトラブルを巡るJR各社の対応には呆れかえるほどだが、経済界「総本山」の経団連がこの有様なのだから、その水準が反映しているに過ぎないとも言える。

 昔の経済事件は、ライバル社を出し抜いて自社が受注するための贈賄であったり、株主に配当を継続するための粉飾決算であったりした。それらはもちろん許されない犯罪ではあったが、経営者個人が私腹を肥やすためにやったものではなかったし、実際に「実行犯」である経営者個人がそれで得をするという性質のものでもなかった。経営者が責任を取って企業を去れば、社員や顧客は迷惑を被ることなく幕引となることも多かった。しかし最近の企業犯罪は経営者が企業を私物化して私腹を肥やし、あげくには事故を起こして社会全体に迷惑が及ぶというケースが多く、それだけに昔の企業犯罪と比べて救いがない。

 自社や自分の属する業界の利益のことしか頭にない偏狭な経営者は一度表舞台から去ってはどうか。その総本山としてお山の大将に成り下がった経団連も不要だ。寝ぼけているなら冷たい水で顔でも洗って解散し、一から出直した方がいい。

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