人生チャレンジ20000km~鉄道を中心とした公共交通を通じて社会を考える~

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核のない未来を願って 松井英介遺稿・追悼集(緑風出版)

●安全問題研究会が、JRグループ再国有化をめざし日本鉄道公団法案を決定!

●安全問題研究会政策ビラ・パンフレット
こんなにおかしい!ニッポンの鉄道政策
私たちは根室線をなくしてはならないと考えます
国は今こそ貨物列車迂回対策を!

【書評】リニア中央新幹線に未来はあるか(西川榮一・著、自治体研究社)

2016-09-05 23:35:31 | 書評・本の紹介
2014年10月、全国新幹線鉄道整備法に基づき事業認可が下りたリニア中央新幹線について論じた本。リニア計画の概要からリニアの原理や走り方、旅客需要予測、環境問題・安全問題、コスト比較など、わずか120ページの中にリニアをめぐるあらゆる論点が盛り込まれている。それでいて、既刊のリニア批判本とは内容がほとんど重複しておらず、新たな論点を通してリニア問題に関する知見が得られる好著といえる。

この本の、既刊のリニア批判本と異なる大きな特色は、「無駄な公共事業」全般に対する批判にも使えるような普遍的な論点を提供している点にある。リニアの費用対効果を算出する際にJR東海や国土交通省が用いた「犠牲量モデル」(西川は「機会損失モデル」と呼んでいる)と呼ばれる手法に、批判を加えているのだ。

犠牲量モデルとは、本書の説明によれば、〔輸送量〕×〔利用者の時間価値〕×〔短縮時間〕によって計られ、鉄道に限らず公共交通機関の費用対効果を算出する場合に多く用いられる。〔移動コスト〕は〔運賃〕+〔移動時間〕×〔時間価値〕で計られる。移動時間短縮のためにいくらまでなら余計に費用を負担してもよいかを計る指標が時間価値であるとされ、時間短縮効果が高いことにより大きな価値を見出す旅客ほど公共交通機関に多くの費用を負担してもよいと考える(平たく言えば、急いでいる人ほど「時間をお金で買うこと」に肯定的となる)。

この算式では、移動コストに時間価値の概念を導入しているため、公共交通機関は速ければ速いほど、時間短縮効果が大きければ大きいほど、また、急いでいる旅客が多ければ多いほど、移動コストが低く算定されることになる。予想される乗客数を操作して多く見積もれば見積もるほど、移動コストが下がり、結果として高速輸送機関の建設推進派を利する。原発の安全性と同じで、推進派が算定する移動コストなど、いかようにも操作可能でまったくアテにならないのである。

同時に、この「犠牲量モデル」が公共交通機関の費用対効果の算定手法として使われる限り、リニアのような事業を止めることは永遠にできないことを意味している。政府・企業などの推進派によって行われるこの手の「まやかし、目くらまし」の手口を明らかにしたという点だけでも、本書は一読に値する。

リニアに3兆円もの国費が投入されることをおかしいと感じる人、「こんなことに使うカネがあるならもっと別のことに使うべきだ」と考えている人は、この犠牲量モデルに対する分析だけでもご一読をお勧めする。

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