(この記事は、当ブログ管理人が「レイバーネット日本」に発表した記事をそのまま掲載しています。)
新型コロナウィルスは首都圏や関西などの大都市圏で爆発的な流行に発展しつつある。
東京都のホームページを見ると、都の人口は3月1日現在で13,951,791人となっている。これは住民基本台帳に基づいた人口で、都内に住民票がある人の総数だ。実際には住民票を移さないまま住んでいる人もいるから実勢はすでに1400万人を超えている可能性も考えられる(本来なら今年は5年に1度の国勢調査の年だが、国政調査は住民票をどこに置いているかにかかわらず、現住所を書くルールになっているので、国勢調査が予定通り行われれば、来年の今頃には「速報値」の公表によって東京都の実勢人口が1400万人を超えたかどうかが明らかになる。ただ、国勢調査もこの情勢では延期となる可能性がある)。
筆者が子どもの頃は、東京・埼玉・千葉3県の合計でこれくらいの人口だった記憶があるから、人口の東京1極集中はこの間、さらに進んだことになる。「東京1極集中の是正」「多極分散型国土形成」なんて筆者が子どもの頃から言われていたが、お題目とはいえ唱えられていただけマシで、現在ではそんな声もまったく聞かれなくなった。極端な新自由主義政策の下で、日本は東京と心中する政策的方向性を強めつつあったが、新型コロナはそんな1極集中の危険性と脆さを露呈させた。このまま大都市の過密を改めなければ、日本はいずれ滅びることになる。新型コロナは日本に対する天からの警告としか思えない。
さて、東京都を含む7都府県に緊急事態宣言が出され、外出自粛が呼びかけられた。人の多く集まる場所への不要不急の外出を控えることは、このウィルスの持つ性質上やむを得ないが、解せないのは自粛要請の対象範囲だ。病院は言うに及ばず、食料品販売店、ガソリンスタンド、福祉施設などは必要不可欠だから営業を続けるべきであろうし、ホームセンターなども、引越シーズンであることなどを考えると営業せざるを得ない部類に入るだろう。
だが、東京都が営業自粛を求めるべきとした理髪店や美容院に対し、国が営業自粛とすることに激しく抵抗しているのはまったく理解できない。西村康稔経済財政担当相は、理髪店・美容院が「必要不可欠な生活サービスだ」として営業自粛をあくまで求めない構えだが、市民感情からはあまりにかけ離れている。今のこのご時世、死の危険を冒してまで散髪に行きたい人間がいったいどれだけいるのか。補償と引き替えに休業を強制してもなんら問題ない業種の筆頭のはずなのに、この理不尽さはいったい何なのか。
「誰の目から見ても理不尽な政策、理解不可能な方針が打ち出されているときは背後にある人とカネの流れを追え」が当研究会の基本動作である。その基本動作に従ったところ、案の定、クラクラするほど明瞭に出てきた。
平成27(2015)年度政治資金収支報告書(日本理美容教育政治連盟)~総務省ホームページから
理髪店・美容院の業界団体である「日本理美容教育政治連盟」から自民党にしっかり献金が渡っている。この資料の7ページに、尾辻秀久参院議員(自民、鹿児島選挙区)に対し、54万円が「顧問料」名目で支払われたとの記載がある。
さらに続けよう。理美容業界の広報媒体である「理美容ニュース」には、この業界と自民党のズブズブの関係をうかがわせる記載がいくつも見られる。例えば、2013年7月23日付「理美容ニュース」には、こんな記載がある。
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●角野悦雄山口県理容衛生同業組合理事長が安倍晋三首相を表敬訪問
参議院議員選挙で自民党が圧勝した翌日の2013年7月21日、安倍晋三首相の地元・山口県の角野悦雄山口県理容衛生同業組合理事長はじめ、山口県組合の役員らが首相官邸を訪問し、安倍首相に祝意を伝えた。
(中略)
安倍首相は山口1区が選挙区で、父・安倍晋太郎氏(外務大臣、故人)より地元の理容組合との関係が深い。また、今回の参議院議員選挙では全国理容政治連盟中央会(会長・大森利夫全国理容生活衛生同業組合連合会理事長)は自民党の衛藤晟一議員(比例区、当選)を推すなど、理容業界と自民党の結びつきは強い。
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2014年12月12日付「理美容ニュース」も以下のように誇らしげに伝えている。
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●選挙に勝つには理美容店との関係が大切
衆議院議員選挙も終盤戦に入ったが、政治家は選挙に勝つためにも地元の理容店美容店との関係を大切にしている。政治家相手の選挙のマニュアル本というのがあるらしく、そう指南している。
マニュアル本いわく
・地元の床屋にマメに行け!できれば月に一度以上、店は何件もハシゴしろ
・店主や美容師と仲良くなれば票になる
・特に床屋は地元の高齢者が集まる情報サロンであり、人脈が広がる可能性がある
というようなことが書いてあるらしい。
(中略)
「短髪のおじさん政治家は頻繁に床屋へ散髪のため顔を出したり、自分が行かなくても後援会メンバーや秘書に足繁く通わせたりするようです。」とある。
理美容業界は政治家との結びつきは強く、業界団体の新年会には毎年多数の国会議員が出席する。業界は業界の要望を政治家に託し、政治家は集票を業界に期待するという持ちつ持たれつの関係が構築されている。
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自分たちへの業界への利益誘導を、ここまで露骨かつ誇らしげに宣伝する業界も今時珍しい。
別に私は、ここ数年精力的に取り組んできたJR北海道の路線存廃問題、特に日高本線の存廃問題をめぐって、積極的に廃線を主導する論陣を張っている地元のネトウヨ理髪店主から2017年秋に受けた個人的な嫌がらせに「私怨」を抱き、その報復をしたくてこんなことを書いているのではない。そんな些末なことは動機ではないと言い切ってしまえばウソになるが、あったとしてもそれは動機全体の1%くらいに過ぎず、残り99%は安倍政権の縁故主義政治を告発するためである。このネトウヨ理髪店主が韓国に対するヘイト書き込みのため、Facebookアカウントを開設直後に一時停止された事実があるからといって、「週刊文春」に告発するつもりもない。せいぜい、大勢が見ている、ここレイバーネットでこっそり告発するくらいにとどめておこう。
すべての東京都民、そして日本の市民に訴える。安倍政権は、国民の一定割合が新型コロナウィルスのため命を落とすかもしれないという未曾有の危急存亡の事態にあっても、営業自粛を求める業界を「自分たちにカネと票を出してくれるかどうか」を基準に決めているのだ。もはや怒りすら湧いてこない。縁故主義と「お友達びいき」でしか政策判断のできない最低レベルの政治しか持ち得なかった日本のなんと不幸なことか!
今は緊急事態である。安倍政権が国民を滅ぼすか、国民が安倍政権を滅ぼすかの最終決戦のときが来たのだ。私たちはこの闘いに勝たねばならない。いつまでも続くこの縁故主義、「お友達ファースト」政治を許し続ければ、次はあなたが「死ぬ番」かもしれないのだ。
(文責:黒鉄好)
新型コロナウィルスは首都圏や関西などの大都市圏で爆発的な流行に発展しつつある。
東京都のホームページを見ると、都の人口は3月1日現在で13,951,791人となっている。これは住民基本台帳に基づいた人口で、都内に住民票がある人の総数だ。実際には住民票を移さないまま住んでいる人もいるから実勢はすでに1400万人を超えている可能性も考えられる(本来なら今年は5年に1度の国勢調査の年だが、国政調査は住民票をどこに置いているかにかかわらず、現住所を書くルールになっているので、国勢調査が予定通り行われれば、来年の今頃には「速報値」の公表によって東京都の実勢人口が1400万人を超えたかどうかが明らかになる。ただ、国勢調査もこの情勢では延期となる可能性がある)。
筆者が子どもの頃は、東京・埼玉・千葉3県の合計でこれくらいの人口だった記憶があるから、人口の東京1極集中はこの間、さらに進んだことになる。「東京1極集中の是正」「多極分散型国土形成」なんて筆者が子どもの頃から言われていたが、お題目とはいえ唱えられていただけマシで、現在ではそんな声もまったく聞かれなくなった。極端な新自由主義政策の下で、日本は東京と心中する政策的方向性を強めつつあったが、新型コロナはそんな1極集中の危険性と脆さを露呈させた。このまま大都市の過密を改めなければ、日本はいずれ滅びることになる。新型コロナは日本に対する天からの警告としか思えない。
さて、東京都を含む7都府県に緊急事態宣言が出され、外出自粛が呼びかけられた。人の多く集まる場所への不要不急の外出を控えることは、このウィルスの持つ性質上やむを得ないが、解せないのは自粛要請の対象範囲だ。病院は言うに及ばず、食料品販売店、ガソリンスタンド、福祉施設などは必要不可欠だから営業を続けるべきであろうし、ホームセンターなども、引越シーズンであることなどを考えると営業せざるを得ない部類に入るだろう。
だが、東京都が営業自粛を求めるべきとした理髪店や美容院に対し、国が営業自粛とすることに激しく抵抗しているのはまったく理解できない。西村康稔経済財政担当相は、理髪店・美容院が「必要不可欠な生活サービスだ」として営業自粛をあくまで求めない構えだが、市民感情からはあまりにかけ離れている。今のこのご時世、死の危険を冒してまで散髪に行きたい人間がいったいどれだけいるのか。補償と引き替えに休業を強制してもなんら問題ない業種の筆頭のはずなのに、この理不尽さはいったい何なのか。
「誰の目から見ても理不尽な政策、理解不可能な方針が打ち出されているときは背後にある人とカネの流れを追え」が当研究会の基本動作である。その基本動作に従ったところ、案の定、クラクラするほど明瞭に出てきた。
平成27(2015)年度政治資金収支報告書(日本理美容教育政治連盟)~総務省ホームページから
理髪店・美容院の業界団体である「日本理美容教育政治連盟」から自民党にしっかり献金が渡っている。この資料の7ページに、尾辻秀久参院議員(自民、鹿児島選挙区)に対し、54万円が「顧問料」名目で支払われたとの記載がある。
さらに続けよう。理美容業界の広報媒体である「理美容ニュース」には、この業界と自民党のズブズブの関係をうかがわせる記載がいくつも見られる。例えば、2013年7月23日付「理美容ニュース」には、こんな記載がある。
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●角野悦雄山口県理容衛生同業組合理事長が安倍晋三首相を表敬訪問
参議院議員選挙で自民党が圧勝した翌日の2013年7月21日、安倍晋三首相の地元・山口県の角野悦雄山口県理容衛生同業組合理事長はじめ、山口県組合の役員らが首相官邸を訪問し、安倍首相に祝意を伝えた。
(中略)
安倍首相は山口1区が選挙区で、父・安倍晋太郎氏(外務大臣、故人)より地元の理容組合との関係が深い。また、今回の参議院議員選挙では全国理容政治連盟中央会(会長・大森利夫全国理容生活衛生同業組合連合会理事長)は自民党の衛藤晟一議員(比例区、当選)を推すなど、理容業界と自民党の結びつきは強い。
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2014年12月12日付「理美容ニュース」も以下のように誇らしげに伝えている。
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●選挙に勝つには理美容店との関係が大切
衆議院議員選挙も終盤戦に入ったが、政治家は選挙に勝つためにも地元の理容店美容店との関係を大切にしている。政治家相手の選挙のマニュアル本というのがあるらしく、そう指南している。
マニュアル本いわく
・地元の床屋にマメに行け!できれば月に一度以上、店は何件もハシゴしろ
・店主や美容師と仲良くなれば票になる
・特に床屋は地元の高齢者が集まる情報サロンであり、人脈が広がる可能性がある
というようなことが書いてあるらしい。
(中略)
「短髪のおじさん政治家は頻繁に床屋へ散髪のため顔を出したり、自分が行かなくても後援会メンバーや秘書に足繁く通わせたりするようです。」とある。
理美容業界は政治家との結びつきは強く、業界団体の新年会には毎年多数の国会議員が出席する。業界は業界の要望を政治家に託し、政治家は集票を業界に期待するという持ちつ持たれつの関係が構築されている。
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自分たちへの業界への利益誘導を、ここまで露骨かつ誇らしげに宣伝する業界も今時珍しい。
別に私は、ここ数年精力的に取り組んできたJR北海道の路線存廃問題、特に日高本線の存廃問題をめぐって、積極的に廃線を主導する論陣を張っている地元のネトウヨ理髪店主から2017年秋に受けた個人的な嫌がらせに「私怨」を抱き、その報復をしたくてこんなことを書いているのではない。そんな些末なことは動機ではないと言い切ってしまえばウソになるが、あったとしてもそれは動機全体の1%くらいに過ぎず、残り99%は安倍政権の縁故主義政治を告発するためである。このネトウヨ理髪店主が韓国に対するヘイト書き込みのため、Facebookアカウントを開設直後に一時停止された事実があるからといって、「週刊文春」に告発するつもりもない。せいぜい、大勢が見ている、ここレイバーネットでこっそり告発するくらいにとどめておこう。
すべての東京都民、そして日本の市民に訴える。安倍政権は、国民の一定割合が新型コロナウィルスのため命を落とすかもしれないという未曾有の危急存亡の事態にあっても、営業自粛を求める業界を「自分たちにカネと票を出してくれるかどうか」を基準に決めているのだ。もはや怒りすら湧いてこない。縁故主義と「お友達びいき」でしか政策判断のできない最低レベルの政治しか持ち得なかった日本のなんと不幸なことか!
今は緊急事態である。安倍政権が国民を滅ぼすか、国民が安倍政権を滅ぼすかの最終決戦のときが来たのだ。私たちはこの闘いに勝たねばならない。いつまでも続くこの縁故主義、「お友達ファースト」政治を許し続ければ、次はあなたが「死ぬ番」かもしれないのだ。
(文責:黒鉄好)