MRに続いて同じく久坂部 羊氏の作品。
ブックカバー表4から
離島で医療を学ぼうと、意気込んで「岡品記念病院」にやってきた研修医の新実市良。ところが先輩医師や看護師たちはどこかやる気がなく、患者が求めなければ重症でも治療を施そうとしない。反発心を抱いた一良は在宅医療やがん検診、認知症外来など積極的な医療を院長の岡品に提案するが、様々な問題が浮き彫りになっていきーー。現代医療の問題点を通して、生とは何か、死とは何かを問いかける、著者渾身の医療エンタメ!
なかなか考えさせられる作品でした。
自分の病気や治療に対する考え方、向き合い方を改めて考え直してみようと思わされました。
内容をあまり出すとネタバレになりますが、考えさせられた一例として、
エピソード4 検診 がん検診を実施した後の一良と岡品医院長との間でこのようなやり取りがありました。
「で、がん検診をやってみてどうだった」
「僕は意味がわからなくなってしまいました」
消沈する一良に、岡品は論するように言った。
「がん検診には膨大な無駄が含まれる。検査の無駄、時間の無駄、医療費の無駄、体力の無駄、精神的な無駄がある。それでも、わずかなリスクを避けるために、受けるというのもひとつの選択肢だ。検診を受けずに、無駄を省いてのんびり生きるのも同じくだ。二人に一人ががんになるということは、二人に一人はがんにならならいということだから、その人にとっては検診はすべて無駄ということになる」
「ですが、検診で早期のがんが見つかり、命拾いする人もいるでしょう」
「たしかにな。しかし、その人は検診を受けなければ助からなかったとは言い切れない。症状が出てから治療しても助かる人はいくらでもいるからな。逆に、検診で見つけても命を落とす人もいる。そういうがんは、遅く見つけたほうが悩む期間が短くて済むという見方もできる」
「でも、検診を受けずに手遅れになったら、後悔する人も多いんじゃないですか」
「そういう人には、無駄を承知で検診を受けてもらうしかないな。無駄もいや、後悔もいやというのは通らんからな」
多くの人は無駄もいや、後悔もいや、悩むのもいやと思っているのだろう。
「がん検診にはいろいろ問題があるのに、勧める医療機関が多いですよね。そこに携わる医師たちは、疑問に思わないのでしょうか」
「さあな、無視しているのか、こんなものとあきらめているのか。医師はみんなわかってやっているんだ。その証拠に、がん検診を受けている医師はごく少数だろ」
そう言えば、白塔病院の先輩医師たちからも、がん検診を受けているという話はほとんど聞かなかった。
私は検査を受ける派です(笑)。
実際に検査で癌が発見されました。
術後の検診で今のところ再発は認められませんが、細胞レベルで癌が潜んでいる可能性はあります。
もし再発したら、もちろん治療は受けます。受けますが、症状が改善せず進行していった時に最後まで抗がん剤の治療を受けるかと言われれば、「受ける」と自信をもって答えられません。
おそらく自分の余命を受け入れて自然に任せたいと思う自分もいるかもしれません。
決断する時が来るのは避けたいですが.......。
前述したこの物語の中で「がん検診を受けている医師はごく少数だろ」という件ががありました。
と言うことは、もし医師が自分ががんであることがわかった時、抗がん剤の治療を施すだろうかという疑問がおきます。
かかりつけ医にこの質問をぶつけたい欲求が起きますが、今は止めておきます。
先にも書いたように、もし自分が末期がんになってしまった時、かかりつけ医に「先生だったら最後まで抗がん剤の治療を受けますか」と聞いてみようと思います。
最後に、エピソード1の赴任について
今までいた都会の病院を訪れる患者と、赴任してきた離島の病院の患者の病気に対する考え方に接して、戸惑う主人公の姿がおかしくもあり、ちょっと病気に対する心構えを考えさせられたエピソードでした。