明治初期の洋画家高橋由一(1828~1894)を絵画修復の視点から論じたのは、私が知る限り、この1冊だけでしょう。著者の歌田眞介氏は長年にわたり絵画修復にたずさわってこられ、現場サイドから書かれた類まれな評論です。また、文章も明快で歯切れが良く、パッと切るようなリズムを感じさせてくれます。
油絵は本当に丈夫なのか?そうした問いかけから、本書は始まります。高橋由一が油絵を描き始めた頃、日本にはまだ描くための材料自体がほとんどなく、制作には相当苦心しました。由一は苦労を重ねながらも、信念を持って絵画制作に取り組んでいきます。修復によって、由一の使った材料や絵の制作方法(背景、つまり遠いほうから先に描き始めたこと)などがわかるのだそうです。歌田氏は、修復をしながら、そこに由一の息遣いを感じていたのでしょう。
また、歌田氏は浅井忠、小山正太郎、松岡寿ら(旧派)と黒田清輝、久米桂一郎、和田英作ら(新派)の油絵の技法、絵具、画布などの相違点からも切り込みます。旧派と新派、比較した場合にどうなのか、それはぜひ本書をご覧いただきたいのですが、非常に興味深く、人によっては絵の見方ががらりと変わるのではないでしょうか。
修復から画家の制作姿勢も見えてくる。ぜひオススメ、というよりも美術が好きな人はぜひ読んでおくべき1冊です。
●『油絵を解剖する』歌田眞介著 NHKブックス 2002年
油絵は本当に丈夫なのか?そうした問いかけから、本書は始まります。高橋由一が油絵を描き始めた頃、日本にはまだ描くための材料自体がほとんどなく、制作には相当苦心しました。由一は苦労を重ねながらも、信念を持って絵画制作に取り組んでいきます。修復によって、由一の使った材料や絵の制作方法(背景、つまり遠いほうから先に描き始めたこと)などがわかるのだそうです。歌田氏は、修復をしながら、そこに由一の息遣いを感じていたのでしょう。
また、歌田氏は浅井忠、小山正太郎、松岡寿ら(旧派)と黒田清輝、久米桂一郎、和田英作ら(新派)の油絵の技法、絵具、画布などの相違点からも切り込みます。旧派と新派、比較した場合にどうなのか、それはぜひ本書をご覧いただきたいのですが、非常に興味深く、人によっては絵の見方ががらりと変わるのではないでしょうか。
修復から画家の制作姿勢も見えてくる。ぜひオススメ、というよりも美術が好きな人はぜひ読んでおくべき1冊です。
●『油絵を解剖する』歌田眞介著 NHKブックス 2002年