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語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【読書余滴】小沢と鳩山「ゾンビの大暴走」 ~政治とカネ~

2010年09月05日 | 社会
 8月24日夜、小沢一郎前幹事長の最終決断に向けた動きが表面化した【注1】。
 この夜、小沢は鳩山悠紀夫前首相に架電したのである。「今すぐお会いできないか」
 ホテルニューオータニの一室で、小沢、その側近の樋高剛衆院議員、鳩山、平野博文前官房長官が集い、「小鳩会談」が始まった。
 鳩山は、挙党態勢の確立を条件に、「現時点では菅さんに頑張ってもらいたいと思う」と、菅支持を伝えた。しかし、小沢は、代表戦不出馬の条件として、仙谷由人官房長官らの更迭を提示した。
 25日、鳩山は、首相官邸で、小沢の意向を菅直人首相へ直接伝達した。だが、菅は、参院選直後に小沢が会談を拒否したことなどを楯に、首を縦にふらなかった。
 26日朝、小沢は、鳩山事務所で、鳩山の支援を条件に出馬を伝えた。老獪にも、仲介役を応援団に取りこんだのである【注2】。

 8月30日夜、菅・鳩山は、記者団の前で芝居を打った。その共同会見のシナリオ・・・・会見前に輿石東党参院議員会長から菅に提案があった。「トロイカ体制を大事にすると記者たちの前で言ってほしい。そしたら人事は好きにやってよいから」云々。もう一つ、菅が6月に小沢に「静かにしていただきたい」と言ったことに詫びをいれること。
 それだけの条件で小沢に人事権を与えなくてもよいなら、菅には好条件である。
 ところが、翌日、鳩山は翻意した。
 31日の昼間、議員会館で、小沢・鳩山・輿石の三者が会談。その席で鳩山は菅に架電し、談合を持ちかけたのである。菅が断ると、輿石が電話をかけ、鳩山と同じ話をした。人事の話をしないなら4人で会ってもよい、と菅が答えると、「じゃあ、選挙をするしかないな」と輿石は電話を切った。

 鳩山、急に小沢支持へと舵をきった理由を記者団に語っていわく、、「小沢さんは私を首相へと導いた。その恩に対して恩返しをするべきだ」。
 鳩山の側近、牧野聖修衆院議員は、ガクッときた、と言う。「国民ですよ、鳩山さんを総理にしたのは! 自民党政権から一度、民主党に任せようと支持してくれたのは国民で、小沢さんじゃない」
 はたして、8月最後の週末に地元に帰った民主党議員たちは、全国津々浦々で有権者から罵声を浴びた。
 神奈川では横灸勝仁衆院議員がこんな体験をしている。「道を歩いていると、『軽井沢の研修会には行ったの?』と聞かれます。参加していないと言うと、『ああ、よかった』と。グループの人数を見せつけて、他のグループを圧勝しようとする動きには、辟易していると言われるんです」

 鳩山は、6月2日の辞任表明演説で「政界引退」を明言している。小沢も、「政治とカネ」の問題の責任を問われて、「クリーンな民主党を作りあげるため」幹事長を辞任した(はずだ)。
 わずか3か月で復権・・・・民主党のある議員いわく、「これではまるでゾンビです」。
 ゾンビのコンビ・・・・。

 「もともと小沢には代表戦に出馬する選択肢そのものがなかった。小沢がこの“戦い”挑むに当たって二つの条件が必須だった。一つは出馬に大義名分があること。そして勝算があることだ。
 今回の代表戦のタイミングを考えれば、どうひいき目に見ても小沢に大義名分はない。つい2ヵ月前に『政治とカネ』の問題で幹事長を辞任、『とことんクリーンな民主党にしてください』とダブル辞任した2人が相携えて『菅倒し』に向かうのはいかにもおかしい。
 しかも、政治資金規正法違反事件をめぐる2度目の検察審査会の審議が継続中で、代表戦への出馬は『検察審査会つぶし』【注3】と言われかねない」【注4】

 それでも小沢派の議員は、鼻息が荒い。「世論調査で、菅支持が7割といっても、それは外の世論の話だ」
 国民に選出された国会議員は、世論を形成する国民とは別世界に棲息しているらしい。

 国民のみならず、国会議員のなかでも別世界を形成しているらしい。「選対が作成した小沢支持の名簿には、約200人の議員の名前が記載されている。しかし、菅支持議員の名前を勝手に使用している。明らかに先走っていて、勢力を誇張している」(小沢派選対関係者)【注5】
 小沢派の動きに冷ややかな新人議員もいる。柴橋正直衆院議員は、小沢政治塾出身だが、菅支持を表明。次のように語る。
 「小沢さんの政治家としての手腕には期待しています。でも、小沢支配の問題は、異を差し挟むことを許さないグループの体質です。側近が虎の威を借りる狐になっている。取り巻きが大臣になり、権力を握ると危険です」

 2009年5月、小沢が西松建設の違法献金事件で代表を辞任するのでは、と騒がれた時、当時浪人中だった柴崎は地元有権者の声を要望書にまとめて、小沢に手渡した。「代表を退かれた方が、この国のためだと思います」
 そう進言する柴崎に、握手しながら小沢はこう言った。「お前のような人間が小選挙区で勝ち上がることが、政権交代につながる。全力で頑張れ」
 ところが、翌日、小沢側近から電話があり、「お前、余計なことを言ったらしいな」と早くも苦言。「あいつは許せない」という側近たちの声が伝わってきて、それ以降、小沢派の一新会倶楽部の会合には一切呼ばれなくなった。

 こうした小沢のペースにまんまと乗せられ、「伝書鳩」として振る舞ったのが鳩山なのであった。
 ベテラン政治記者いわく・・・・小沢の手法は、経世会時代からまったく変わっていない。交渉するとき、必ず使者をたてる。今回も、前首相を使って、ハッキリと具体的な要求は口にせず、あたかもポストを要求したり党を割るように思わせて圧力をかけたのだ。小沢が出ざるを得なくなった最大の理由はカネだ。党代表、幹事長時代に抑えていた政党助成金約170億円【注6】が菅政権になってから意のままに使えなくなり、官房機密費約14億円【注7】もまわってこない【注8】。このままでは150人近くいる(らしい)小沢グループの運営が難しくなってきたのである【注9】。

   *

 以上、資料1に拠る。

 【注1】資料5によれば、8月19日、軽井沢町の鳩山の別荘で開催された研修会において、小沢は出馬を伝えていない。
 【注2】このパラフラフは、資料7に拠る。
 【注3】資料4によれば、小沢の資金管理団体「陸山会」の土地取引事件で東京第5検察審査会が2度目の審査に入っていて、起訴議決となれば強制起訴される。しかし、憲法第75条の定めるところによれば、国務大臣は在任中内閣総理大臣の同意がなくては訴追されない。
 【注4】このパラグラフは、前掲資料7から引用した。
 【注5】資料6によれば、今回の立候補表明の「直後には側近議員が1年制議員を集めて現金を配っている。その際、口約束では足りず支持者にサインさせている」。
 【注6】【注7】金額は、前掲資料6に拠る。
 【注8】資料3によれば、民主党財務委員長の小宮山洋子衆院議員が担当して公認会計士とともに党内のカネの流れを調査したところ、小沢が代表に就任し、7月に参院選挙が行われた2007年、党の「組織対策費」16億3,210万円が山岡賢次財務委員長(当時)に流れていた。「子飼いの人物に党のカネをどんどん渡すという手法」である。2007年から2010年5月までの「組織対策費」の総額は36億5,710万円。そのうち、山岡、佐藤泰介両財務委員長(当時)に渡った分だけで全体の約97%にあたる35億4,210万円を占める。
 【注9】資料2によれば、ある民主党秘書いわく、「参院選の際、小沢氏は独自に秘書や配下の議員を、肝煎り候補のもとに派遣してテコ入れをしていました。ただ、党費がまったく使えなくなったため金穴に陥り、『応援のための旅費や経費は自腹を切れ』という話になり、一部でかなり揉めたそうです」。

<資料1>記事「小沢と鳩山『ゾンビの大暴走』 恥ずべき内幕」(「週刊文春」2010年9月9日号所収)
<資料2>記事「小沢一郎『総理』の可能性大」(「週刊現代」2010年9月11日号所収)
<資料3>記事「菅の参謀・仙谷が掴んだ小沢の『急所』」(「週刊現代」前掲誌所収)
<資料4>記事「呵々大笑『小沢一郎前幹事長完全勝利でも喉に突き刺さった骨」(「週刊新潮」2010年9月9日号所収)
<資料5>記事「総理就任後の『日本改造計画』の全貌 小沢総理で日本はこうなる」(「週刊朝日」2010年9月10日号所収)
<資料6>上杉隆「菅VS.小沢の民主党代表選は アンシャンレジームと破壊者との最終決戦だ」(「週刊朝日」前掲誌所収)
<資料7>後藤謙次「急転直下で出馬表明した小沢前幹事長の胸の内 ~永田町ライブ! No.12~」(「週刊ダイヤモンド」2010年9月4日号所収)
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