語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【読書余滴】小沢一郎に流れた36億円のカネ

2010年09月06日 | 社会
 小沢一郎前幹事長が、民主党の第6代代表に就任した2006年の9月25日、臨時党大会で代表に再選されると、党の組織が再編された。財務委員長のポストが新たに設置された。それまでは経理委員長が党の支出をチェックしていたが、その役目はあくまでチェックにすぎなかった。
 初代財務委員長に就いたのは、小沢の側近、山岡賢次衆院議員であった。

 山岡がまず6,800万円を引き出したのは、2006年の9月25日、小沢が党代表に再選された日である。この日以降、2007年だけで12回にわたり、計16億3,210万円を山岡は引き出している。
 山岡の後任は、これまた小沢の側近、佐藤泰介前参院議員であった(2010年7月の参院選で落選、引退)。佐藤は、2008年だけで5億3,000万円、トータルで19億円以上を引き出した。
 2007年から2010、全体の約97%を占める年5月18日まで、民主党の「組織対策費」の総額は36億5,710万円。そのうち、山岡、佐藤泰介両財務委員長に渡った分だけで35億4,210万円、全体の約97%を占める【注2】。

 「財務委員長というポストを作り、子飼いの人物に党のカネをどんどん渡すという手法は、小沢氏が民主党に持ち込んだ手法と見て間違いない」
 小沢は、同じ手法を何度もくりかえしている。
 新進党党首時代には西岡武雄幹事長(現参院議長)に35億円近くの「組織対策費」が支払われ、自由党党首時代にも藤井裕久幹事長(元財務相)らに41億円以上の「組織対策費」が支払われた。

(2)税金の私腹化
 「組織対策費」は、政党における「官房機密費」ともいわれる。受け取った議員の領収書があれば、その使途を明らかにしなくても違法性はない、というのが(2001年の)東京地検の見解であった。ただし、2001年当時の自民党には、幹事長が年間7~10億円、国対委員長が1~2億円、一般議員がモチ代として500万円から1,000万円くらいという暗黙のルールがあった。
 小沢隷下の民主党の場合、山岡のような特定の個人に渡っている。しかも、それを政治資金収支報告書に記載しなくてもよいことになっている。

 「組織対策費」は、使途を明らかにしなくとも法的には問題ない・・・・が、一般会計の「立法事務委託費(立法事務費)」が「組織対策費」に流用されている(2007年)。「立法事務委託費」は、国民が税金によって負担している。各院内会派の議員数に応じて、一人当たり月額65万円が支払われる。これを「組織対策費」に流用するのは、明らかに目的外流用である。
 換言すれば、小沢一派の議員に、税金が本来の主旨から逸れた形で渡っている。

 さらに、調査の過程で不可解な口座移動も見つかった。
 2006年12月27日(山岡財務委員長時代)、従前のりそな銀行衆議院支店の「財務委員長口座」とは別に、新たに同支店に「財務委員長口口座」が開設された。翌日には、この新口座に、旧口座から10億円移された。その2日後、この10億円は党本部の財務委員長金庫に運びこまれた。

 一連の陸山会事件の際、4億円の現金を銀行に預けたうえで同額の融資を受けていたように、小沢の周辺では不可解な資金移動がおこなわれている。

 小沢派に渡った36億円は、いったい何に、どう遣われたのか。 
 ある民主党の1年生議員いわく、2009年の「総選挙のとき、党からの交付金は受け取りました。また私はもらっていませんが、小沢さんから手渡しで500万円、または1,000万円以上もらった新人候補者もいます。資金の出所はわかりませんが、小沢さんにはとても感謝していましたね」
 政党のカネ(税金が含まれる)を、あたかも自分のカネであるかのようにバラ撒いて“私兵”を増やすシステムである。

(3)この親分にこの子分
 8月17日夕刻のニュース番組「news every」(日本テレビ系列)を見ていた民主党本部職員たちは、びっくりした。「なんで、あの人がこんなところに同席しているんだ?」
 同番組は、8月14日に京都は鴨川べりの料亭で会合する小沢たちを独占映像として報じていた。先の参院選で引退した側近、高嶋良充前参院幹事長、佐藤、そして「あの人」、西尾利逸民主党財務・経理担当事務局長・・・・事実上の金庫番である。
 映像は、小沢が頭を下げながら西尾の手を握るシーンもとらえていた。
 「週刊現代」誌が民主党本部の西尾のデスクに架電したところ、狼狽した声が返ってきた。「この電話番号、どこでわかったんですか。直接は電話は受けられません」「とにかく代表(電話)からお願いします」
 この後、言われたとおり代表宛に架電し、西尾を呼び出してもらったが、「西尾は離席しています」と女性職員が答えるばかりなのであった。

 西尾のこの行動、金丸信5億円献金事件で行方をくらませた小沢の行動ととてもよく似ている。「肝心の小沢一郎は9月に入ると外部との連絡を一切断ち隠密行動。派の重鎮である梶山さんが電話を掛けても電話口にも出ない状態だった」(野中広務『私は闘う』
 親分が隠密行動をとれば、子分は居留守を使うのである。

    *

 以上は、「週刊現代」の「スクープ」に拠る。 

 【注1】記事「小沢側近の簿外口座『民主党マル秘報告書』をスッパ抜く」(週刊文春2010年9月16日号所収)によれば、「民主党政治資金に関する特殊調査報告書」、A4版30ページ以上。
 【注2】前掲記事によれば、2005年に民主党が計上した「組織対策費」は、弁護士費用など642万円にすぎない。2006年に小沢が民主党代表に就任して以降、2010年6月までに総額36億5,700万円が輿石東ら小沢に近い5人の議員に支払われた。使途は不明だが、おそらく選挙対策、しかも小沢系の議員に多く流れた、と前掲記事は推定する。「党のカネで自分の派閥つくった」わけだ。

【参考】記事「スクープ その薄汚れた体で総理をやるつもりか 菅の参謀・仙谷が掴んだ小沢の『急所』」(「週刊現代」2010年9月11日号所収)

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