語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【震災】仮設住宅建設が遅れる理由、その解決策

2011年04月04日 | 震災・原発事故
 仮設住宅第一弾32,800戸が発注された。3月26日までに、岩手県、宮城県、福島県で合計2,645戸が着工している。
 問題点・・・・
 (1)避難所で暮らす被災者は、合計177,456人だ(3月29日現在)。被害の全容はまだ明らかにされていない。必要とされる仮設住宅は、前記の戸数を大幅に上まわる可能性が高い。
 (2)東北や北関東に集中している建材や住宅設備のメーカーも被災し、第一弾の予定戸数さえ供給が危ぶまれている。
 (3)市町村は、必要な仮設住宅の戸数を把握の上、都道府県経由で国に申請する。都道府県は事業主体として仮設住宅を設置する。しかるに、今回は多くの市町村が壊滅的被害を受けた。
 (4)(2)と(3)の結果、被災地に仮設住宅を建てる、という従来型の対策がとれない可能性が高い。

 仮設住宅の代替手段となるのが、賃貸住宅の空き室だ(全国で400万戸超)。 
 自治体が県営住宅を提供したり、賃貸業者が賃貸物件を無償提供するなど、全国で支援の輪が広がりつつある。

 しかし、こうした支援を国費でサポートすることは制度上できない。災害救助法が適用される自治体からの請求でなければ補助されないのだ。
 支援する自治体を補助する仕組み、個人が国から直接支援を受けることができる仕組みを作るべきだ、と中村哲治参議院議員は主張する。
 早期の物資調達と仮設住宅の建設が不可能でも、制度改正ならすぐ対応できるはずだ。

 以上、本誌・鈴木洋子「供給不足必至の仮設住宅 求められる支援制度の見なおし」(「週刊ダイヤモンド」2011年4月9日号)に拠る。
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【震災】増税も嫌、円高も嫌、ということなら消費者が復興の費用を負担することになる

2011年04月04日 | ●野口悠紀雄
(1)震災による変化 ~経済~
 国内生産(GDP)+輸入=国内支出(=投資+消費)+輸出
 経済全体として、需要と供給は等しくならなければならない。この式の左辺と右辺は、事後的には必ず等しくならなければならない。
 今回の大震災によって、この式を構成する項目に大きな変化が生じた(今後生じる)。
 (a)投資が増える。災害で失われた資産を復旧するためのものだ。社会インフラや住宅の復旧は迅速に行う必要があるので、損害額(推定20兆円)のかなりの部分に対応する投資を、今後1、2年のうちに行う必要がある。そうだとすると、災害のなかった場合に比べて投資が10兆円程度増加する可能性がある。民間住宅投資、民間企業設備投資、公的資本形成の合計額98兆円(2009年度)の10.2%だ。かなり大きな変化だ。
 (b)災害によって生産設備が損傷したため、国内生産が減少する。もっとも深刻なボトルネックは、電力供給能力の大幅な低下だ。

(2)復興財源は増税で
 (1)の左辺と右辺で変化が生じたことに伴い、利子率や為替レートが変化し、さまざまな項目に影響を与えて最終的な均衡が決まる。この過程に対して政策的な介入が行われると、そうでなかった場合に比べて最終的な均衡のかたちが異なるものとなる。
 (a)格別の政策がとられない場合・・・・国内投資の増大は、クラウディングアウトを引き起こす。→利子率上昇。→海外から資金が流入(海外への資金流出が減少)。→純輸出(輸出-輸入)が減少。
 つまり、①GDPを変化させずに、需要項目を輸出から投資に入れ替える変化だ。②国内投資の増加に対して供給(海外生産=輸入)を増やす変化だ。
 (b)実際には円高を嫌う政治的バイアスがあるので、円高阻止のための政策がとられる。実際、すでに3月18日に介入が行われた。しかし、円ドルレートは、介入後も震災前より円高になっている。マクロ的バランスを達成するために円高は不可避なのだ。にもかかわらず、今後も円高阻止の政策が取られるだろう。→金融緩和。→純輸出の減少が介入のない場合より圧縮される。
 しかし、それでは経済全体の受給が均衡しない。純輸出が減らない分、国内支出が減少する必要がある。利子率がさらに上昇して国内の復興が阻害されるか、金融緩和に伴うインフレによって消費支出が減少する。
 増税によって消費支出を減少させれば、この変化は相殺される(復興予算の財源を考えるポイント)。国債を増発すれば問題が深刻化する。
 なお、対外資産の取り崩しや国債の海外消化も、海外からの資金流入をもたらし、円高を引き起こす。

(3)換言すれば
 国内生産(GDP)=投資+消費+純輸出
 左辺のGDPが電力制約などのボトルネックによって減少するので、右辺が減少しなければならない。どの項目が減少するかは、政策いかんによって異なる。経済の自然な動きは純輸出減少だが、円高阻止政策が行われると、それが実現しない。円高阻止政策が行われると、それが行われない場合に比べて、復興投資と消費の資源の奪い合いが激しくなるのだ。
 円高を阻止せず、増税によって消費を抑制すれば、それだけ復興投資が促進される。
 復興財源として国債が用いられると、上記の歪みは大きくなる。→インフレ→消費が強制的に抑制される(インフレというかたちで明示的な増税よりも不公平な税が降りかかってくる)。
 震災が経済に与えた影響は、①ボトルネックのため国内生産が減少する。②それにもかかわらず復興のために投資を増大しなければならない。
 その負担を誰がどのように負うべきか。その判断が、最終的な資源配分のパターンを決める。

【参考】野口悠紀雄「増税も円高も拒否なら消費者が負担を負う ~「超」整理日記No.556~」(「週刊ダイヤモンド」2011年4月9日号)
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