●海
水口憲哉・東京海洋大学名誉教授によれば、放射能汚染は海水、海底の泥、海藻、エビやカニから魚まで、広範囲かつ長期的に監視していかないと安全は判断できない。<例>放射能がプランクトン(表面積が大きい)に付着する。→小魚が食べる。→より大きな魚が食べる。→人間が食べる。・・・・これらの過程で放射能が体内で濃縮されると、環境中より高い濃度で蓄積される。
ヨウ素は、ワカメ、ノリ、ヒjキなど海藻に付着しやすい。汚染水が海に流れている最中に千葉で採ったばかりの海藻は食べないほうがよい。ただし、海藻に付着したヨウ素を魚が食べてその体内で蓄積されて濃縮されるまで時間がかかる。原発からの流出が止まれば、ヨウ素(半減期は8日)は問題なくなる。
セシウム137(半減期30年)は、3月31日にアサリから検出された数値は微量だが、汚染物質が千葉まで流れているのが問題だ。数値の変化を追う必要がある。
海流は、4月までは親潮が房総半島まで南下し、5月から6月には黒潮が東北の沖合に北上していく(関東以西は心配ない)。
海底の泥に放射性物質が落ちる。海水のみならず泥の検査が必要だ。時間の経過とともに、食物連鎖の中で蓄積と濃縮を繰り貸す。こうした物質は、魚の内臓部分に溜まりやすい。長期的に計測していくしかない。
放射性物質は、ヨウ素やセシウムだけではない。今回プルトニウムも検出されているし、1978~79年の調査ではホッキ貝からコバルト60とマンガン54が検出された。
桜井淳・日本原子力研究所元研究員(技術評論家)によれば、スリーマイル島事故やチェルノブイリでは、多量のクリプトン85(ベータ線)が出て土地を汚染した。今回の事故で公表されるのはガンマ線の核種ばかりで、ベータ線を出す核種を調査していない。大量に出ているはずなのに。「東京電力も、保安院も、官房長官も、事実を1割も語っていない」
米国の報告書『WASH-1400』と『NUREG-1150』を読めば、「これからどんな地獄が始まるかがわかる」。
以上、記事「東京電力『原発解体』の緊迫情報」(「週刊文春」2011年4月14日号)に拠る。
*
矢ヶ崎克馬・琉球大学名誉教授によれば、半減期が8日間ということは、8日間で半分の放射線を出すことだ。短期間で被曝するということだ。
渡部輝久氏(海洋生物環境研究所)によれば、一般的に海洋生物でも陸上生物でも、下等生物になるに従って放射性物質への感受性は低くなる。ただ、魚の種類によって事情は異なる。脊椎動物のイワシやアジなどを食べるスズキのような魚のほうが、無脊椎動物のタコやイカなどを食べるアンコウのような魚より、体内のセシウムの値が高い。ヒラメは前者で、カレイは後者だ。
柳哲雄・九州大学教授によれば、放射性物質は淡水の中に含まれる。淡水が海に出て行くと、海水のほうが質量が重いため、汚染水は海の表面付近に浮いて、簡単には混ざらない。北半球では、淡水は海岸沿いでは必ず南へ流れる。福島から南側の茨城、千葉へと向かう。
以上、記事「高濃度放射能タレ流し 気になる『海への本当の影響』」(「FRIDAY」2011年4月22日号)に拠る。
*
ストロンチウム90は骨に、セシウム137は筋肉に溜まりやすい。より大きな魚に汚染が拡大したとき、骨を食べなければよいか、それとも身を食べるのもダメなのかを判断するには、どんな核種が漏れたかが重要になる。
野口邦和・日本大学専任講師によれば、原子力安全・保安院は一貫して正確な汚染濃度や、どんな放射性物質が含まれているかを公表していない。それで安全と言われても判断のしようがない。
●飲料水
東京都は、3月23日、暫定基準値を超える放射性物質が検出されたと、乳児への摂取制限を決めた。翌日には解除し、それ以降は基準値を下回るとし、最近の測定結果は「不検出」が続く。
しかし、「不検出」とは、放射性物質が存在しないことを意味するものではない。
都庁関係者によれば、都は都内3ヵ所の浄水場の水質調査を任せている東京都立産業技術研究センターに、水については1kgあたり20ベクレル以下の場合には放射性物質が検出されても「不検出」として報告すること、と指示している。都民に動揺を与えないため、というのが理由だ。
「週刊現代」誌が東京都立産業技術研究センターに確認したところ、検出する機会が1台しかなく、長時間の検査ができないので微量の場合は測定誤差も考慮して「不検出」としている、と回答があった。
●空気
都は、空気の汚染についても、1立方メートルあたり0.1ベクレル以下は「ND(ノーデータ=不検出)」として公表していない。
放射線物質は、一度漏れ出したら空中を漂い、長期にわたって拡散していく。福島、茨城、栃木、群馬、千葉の一部の各県でホウレンソウなどの出荷制限が行われているのは、ホウレンソウなどが空中の放射性物質を取りこんだからだ。
青山貞一・環境総合研究所長によれば、野菜が放射性物質を取りこむ経路は、大きく二つ。(a)ガス状の放射性物質を葉の気孔から内部に取りこむ。(b)粒子状のものが葉に直接付着する。(b)は、よく洗えばある程度放射性物質を取り除くことができる。(a)はしかし、洗っても簡単には除去できない。
各地の空中の放射線量は、一時期に比べて減っているとはいえ、放射線物質が漏れ続けている以上、風向きや雨の影響で一気に数値があがる可能性は高い。特に雨に打たれた空中の放射性物質は、海に落ちれば海流にのって拡散し、大地に落ちれば地中にもぐって地下水が汚染される可能性がある。
●大地
畑明郎・大阪市立大学大学院元教授(日本環境学会前会長)によれば、いちばん放射性物質が溜まりやすいのは地表から2~5cmの範囲で、この範囲なら野菜でも根菜類は大丈夫だ。しかし、雨が降り続くと根菜類にも被害が及ぶ。環境全体に影響を与える放射能汚染は、生態系そのものを変えてしまう危険性を持っている。安全などと言えるはずがない。
オーストラリア気象地球力学中央研究所は、3月26日、福島第一原発から吐き出された放射性物質は、チェルノブイリ原発事故をすでに超えている、という予測を発表した。同研究所の試算によれば、福島第一原発の1日平均の放射性物質排出量は、ヨウ素131で10京ベクレル、セシウム137で5,000兆~5京ベクレルに達するのだ。
以上、記事「この被曝があと1年続いても安全といえるか」(「週刊現代」2011年4月23日号)に拠る。
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水口憲哉・東京海洋大学名誉教授によれば、放射能汚染は海水、海底の泥、海藻、エビやカニから魚まで、広範囲かつ長期的に監視していかないと安全は判断できない。<例>放射能がプランクトン(表面積が大きい)に付着する。→小魚が食べる。→より大きな魚が食べる。→人間が食べる。・・・・これらの過程で放射能が体内で濃縮されると、環境中より高い濃度で蓄積される。
ヨウ素は、ワカメ、ノリ、ヒjキなど海藻に付着しやすい。汚染水が海に流れている最中に千葉で採ったばかりの海藻は食べないほうがよい。ただし、海藻に付着したヨウ素を魚が食べてその体内で蓄積されて濃縮されるまで時間がかかる。原発からの流出が止まれば、ヨウ素(半減期は8日)は問題なくなる。
セシウム137(半減期30年)は、3月31日にアサリから検出された数値は微量だが、汚染物質が千葉まで流れているのが問題だ。数値の変化を追う必要がある。
海流は、4月までは親潮が房総半島まで南下し、5月から6月には黒潮が東北の沖合に北上していく(関東以西は心配ない)。
海底の泥に放射性物質が落ちる。海水のみならず泥の検査が必要だ。時間の経過とともに、食物連鎖の中で蓄積と濃縮を繰り貸す。こうした物質は、魚の内臓部分に溜まりやすい。長期的に計測していくしかない。
放射性物質は、ヨウ素やセシウムだけではない。今回プルトニウムも検出されているし、1978~79年の調査ではホッキ貝からコバルト60とマンガン54が検出された。
桜井淳・日本原子力研究所元研究員(技術評論家)によれば、スリーマイル島事故やチェルノブイリでは、多量のクリプトン85(ベータ線)が出て土地を汚染した。今回の事故で公表されるのはガンマ線の核種ばかりで、ベータ線を出す核種を調査していない。大量に出ているはずなのに。「東京電力も、保安院も、官房長官も、事実を1割も語っていない」
米国の報告書『WASH-1400』と『NUREG-1150』を読めば、「これからどんな地獄が始まるかがわかる」。
以上、記事「東京電力『原発解体』の緊迫情報」(「週刊文春」2011年4月14日号)に拠る。
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矢ヶ崎克馬・琉球大学名誉教授によれば、半減期が8日間ということは、8日間で半分の放射線を出すことだ。短期間で被曝するということだ。
渡部輝久氏(海洋生物環境研究所)によれば、一般的に海洋生物でも陸上生物でも、下等生物になるに従って放射性物質への感受性は低くなる。ただ、魚の種類によって事情は異なる。脊椎動物のイワシやアジなどを食べるスズキのような魚のほうが、無脊椎動物のタコやイカなどを食べるアンコウのような魚より、体内のセシウムの値が高い。ヒラメは前者で、カレイは後者だ。
柳哲雄・九州大学教授によれば、放射性物質は淡水の中に含まれる。淡水が海に出て行くと、海水のほうが質量が重いため、汚染水は海の表面付近に浮いて、簡単には混ざらない。北半球では、淡水は海岸沿いでは必ず南へ流れる。福島から南側の茨城、千葉へと向かう。
以上、記事「高濃度放射能タレ流し 気になる『海への本当の影響』」(「FRIDAY」2011年4月22日号)に拠る。
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ストロンチウム90は骨に、セシウム137は筋肉に溜まりやすい。より大きな魚に汚染が拡大したとき、骨を食べなければよいか、それとも身を食べるのもダメなのかを判断するには、どんな核種が漏れたかが重要になる。
野口邦和・日本大学専任講師によれば、原子力安全・保安院は一貫して正確な汚染濃度や、どんな放射性物質が含まれているかを公表していない。それで安全と言われても判断のしようがない。
●飲料水
東京都は、3月23日、暫定基準値を超える放射性物質が検出されたと、乳児への摂取制限を決めた。翌日には解除し、それ以降は基準値を下回るとし、最近の測定結果は「不検出」が続く。
しかし、「不検出」とは、放射性物質が存在しないことを意味するものではない。
都庁関係者によれば、都は都内3ヵ所の浄水場の水質調査を任せている東京都立産業技術研究センターに、水については1kgあたり20ベクレル以下の場合には放射性物質が検出されても「不検出」として報告すること、と指示している。都民に動揺を与えないため、というのが理由だ。
「週刊現代」誌が東京都立産業技術研究センターに確認したところ、検出する機会が1台しかなく、長時間の検査ができないので微量の場合は測定誤差も考慮して「不検出」としている、と回答があった。
●空気
都は、空気の汚染についても、1立方メートルあたり0.1ベクレル以下は「ND(ノーデータ=不検出)」として公表していない。
放射線物質は、一度漏れ出したら空中を漂い、長期にわたって拡散していく。福島、茨城、栃木、群馬、千葉の一部の各県でホウレンソウなどの出荷制限が行われているのは、ホウレンソウなどが空中の放射性物質を取りこんだからだ。
青山貞一・環境総合研究所長によれば、野菜が放射性物質を取りこむ経路は、大きく二つ。(a)ガス状の放射性物質を葉の気孔から内部に取りこむ。(b)粒子状のものが葉に直接付着する。(b)は、よく洗えばある程度放射性物質を取り除くことができる。(a)はしかし、洗っても簡単には除去できない。
各地の空中の放射線量は、一時期に比べて減っているとはいえ、放射線物質が漏れ続けている以上、風向きや雨の影響で一気に数値があがる可能性は高い。特に雨に打たれた空中の放射性物質は、海に落ちれば海流にのって拡散し、大地に落ちれば地中にもぐって地下水が汚染される可能性がある。
●大地
畑明郎・大阪市立大学大学院元教授(日本環境学会前会長)によれば、いちばん放射性物質が溜まりやすいのは地表から2~5cmの範囲で、この範囲なら野菜でも根菜類は大丈夫だ。しかし、雨が降り続くと根菜類にも被害が及ぶ。環境全体に影響を与える放射能汚染は、生態系そのものを変えてしまう危険性を持っている。安全などと言えるはずがない。
オーストラリア気象地球力学中央研究所は、3月26日、福島第一原発から吐き出された放射性物質は、チェルノブイリ原発事故をすでに超えている、という予測を発表した。同研究所の試算によれば、福島第一原発の1日平均の放射性物質排出量は、ヨウ素131で10京ベクレル、セシウム137で5,000兆~5京ベクレルに達するのだ。
以上、記事「この被曝があと1年続いても安全といえるか」(「週刊現代」2011年4月23日号)に拠る。
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