3月27日、菅直人首相は、官邸で原発事故に係るレクチャーを受けた。アドバイザーは、マサーチューセッツ工科大学で原子力工学を学び、高速増殖炉の設計に関わった人物だ。聞きながら菅首相の顔は次第に青ざめていった・・・・らしい。
アドバイザーが示した「最悪のシナリオ」は、圧力容器下部に溶け出したウラン燃料が蓄積し、密度が高まって「再臨界」することだった。再臨界が起これば、核分裂反応の制御は非常に困難になる。
アドバイザーは、福島第一原発で起きていることの可能性として、幾つかのケースを首相に提示した。
(a)炉心溶融→格納容器底部を溶融→水漏れ
(b)炉心溶融→格納容器底部に富士山型に蓄積→再臨界
(c)炉心溶融→圧力容器底部に集合・再臨界→暴走
そして、かのアドバイザーは、福島第一原発が沈黙させるまでに最低5~10年はかかる、と断言した。再臨界の危機が取り除かれていない中で作業することになるのだが、次のような手順となる。
(a)非常手段として注水・冷却(数日間)
(b)安定的に注水・冷却(3~5年)
(c)原子炉建屋全体をテントのようなもので覆う(3ヵ月後)
(d)建屋内のクレーンなどの修復・設置、格納容器・圧力容器を外し炉心から燃料抽出、核分裂物質の排除(5年以内)
(e)コンクリートで永久封印(6年後)
以上、記事「疑われる最大の危機 福島第一原発『再臨界』の可能性!」(「FRIDAY」2011年4月15日号)に拠る。
*
4月1日、日本の原子力研究を担ってきた専門家が、国・自治体・産業界・研究機関が一体となって緊急事態に対処することを求める「提言」(下記)を発表した。
福島第一原発1~3号機は、燃料の一部が溶けて原子炉圧力容器下部にたまっている。現在の応急的な冷却では、圧力容器の壁を熱で溶かし、突き破ってしまう。3基の原子炉内に残る燃料は、チェルノブイリ原発事故をはるかに上回る放射能があり、すべて封じ込めなければならない。
「提言」に名を連ねた一人、松浦祥次郎・元原子力安全委員長【注1】は、「原子力工学を最初に専攻した世代として、利益が大きいと思って、原子力利用を推進してきた。(今回のような事故について)考えを突き詰め、問題解決の方法を考えなかった【注2】」と陳謝した。
以上、2011年4月2日01時42分 YOMIURI ONLINEに拠る。
【注1】松浦は、「発電用軽水型原子炉施設に関する安全設計審査指針」(1990年)制定の際、長期間の電源喪失事故が起きる可能性について、「隕石の直撃など、何でもかんでも対応できるかと言ったら、それは無理だ」と、ごまかした(広瀬隆「原発破局を阻止せよ! 緊急連載3」、「週刊朝日」2011年4月15日号)。
【注2】提言者の一人、佐藤一男・元原子力安全委員長は、JOC事故(1999年)のときの原子力安全委員長だ。この経験も踏まえて『原子力安全の論理』(日刊工業新聞社、2006)を上梓した。本書には、このたび福島第一原発で起きた事故が理論的可能性として想定され、シミュレーションが行われている。福島第一原発事故は、「想定外」ではなかった(「【佐藤優の眼光紙背】菅直人首相は、原子力安全委員長経験者たちの緊急建言を国益のために活用せよ」)。
*
3月30日付けの「福島原発事故についての緊急建言」によれば、「特に懸念されることは、溶融炉心が時間とともに、圧力容器を溶かし、格納容器に移り、さらに格納容器の放射能の閉じ込め機能を破壊することや、圧力容器内で生成された大量の水素ガスの火災・爆発による格納容器の破壊などによる広範で深刻な放射能汚染の可能性を排除できないことである」。
かかる深刻な事態を回避するためには、一刻も早く電源と冷却システムを回復させ、原子炉や使用済燃料プールを継続して冷却する機能を回復させることだ。これが唯一の方法だ。
福島原発事故は極めて深刻な状況にある。更なる大量の放射能放出があれば、避難地域にとどまらず、さらに広範な地域での生活が困難になる。
当面なすべきことは、原子炉及び使用済核燃料プール内の燃料の冷却状況を安定させて内部に蓄積されている大量の放射能を閉じ込めること、サイト内に漏出した放射能塵や高レベルの放射能水が環境に放散することを極力抑えること。これを達成できなければ、事故の終息は覚束ない。
さらに、当面の危機を乗り越えた後は、継続的な放射能の漏洩を防ぐための密閉管理が必要となる。ただし、この場合でも、万が一にも水素爆発を起こさない手立てが必要だ。
原子力安全委員会、原子力安全・保安院、関係省庁に加えて、日本原子力研究開発機構、放射線医学総合研究所、産業界、大学等を結集し、我が国がもつ専門的英知と経験を組織的、機動的に活用しつつ、総合的かつ戦略的な取組みが必須だ。
提言は、「原子力の平和利用を先頭だって進めて来た者」16人の連名で発表された。
青木芳朗(元原子力安全委員)、石野栞(東大名誉教授)、木村逸郎(京大名誉教授)、齋藤伸三(元原子力委員長代理、元日本原子力学会会長)、佐藤一男(元原子力安全委員長)、柴田徳思(学術会議連携会員、基礎医学委員会 総合工学委員会合同放射線の利用に伴う課題検討分科会委員長)、住田健二(元原子力安全委員会委員長代理、元日本原子力学会会長)、関本博(東工大名誉教授)、田中俊一(前原子力委員会委員長代理、元日本原子力学会会長)、長瀧重信(元放射線影響研究所理事長)、永宮正治(学術会議会員、日本物理学会会長)、成合英樹(日本原子力学会会長、原子力安全基盤機構理事長)、広瀬崇子(前原子力委員、学術会議会員)、松浦祥次郎(元原子力安全委員長)、松原純子(元原子力安全委員会委員長代理)、諸葛宗男(東京大学公共政策大学院特任教授)だ【注】。
以上、「福島原発事故についての緊急建言」(Peace Philosophy Centre)に拠る。
【注】3月31日、田中俊一、松浦祥次郎ら3人は菅直人首相に陳情しようとしたが、首相は彼らに会いもしなかった(「週刊朝日」2011年4月15日増大号)。
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アドバイザーが示した「最悪のシナリオ」は、圧力容器下部に溶け出したウラン燃料が蓄積し、密度が高まって「再臨界」することだった。再臨界が起これば、核分裂反応の制御は非常に困難になる。
アドバイザーは、福島第一原発で起きていることの可能性として、幾つかのケースを首相に提示した。
(a)炉心溶融→格納容器底部を溶融→水漏れ
(b)炉心溶融→格納容器底部に富士山型に蓄積→再臨界
(c)炉心溶融→圧力容器底部に集合・再臨界→暴走
そして、かのアドバイザーは、福島第一原発が沈黙させるまでに最低5~10年はかかる、と断言した。再臨界の危機が取り除かれていない中で作業することになるのだが、次のような手順となる。
(a)非常手段として注水・冷却(数日間)
(b)安定的に注水・冷却(3~5年)
(c)原子炉建屋全体をテントのようなもので覆う(3ヵ月後)
(d)建屋内のクレーンなどの修復・設置、格納容器・圧力容器を外し炉心から燃料抽出、核分裂物質の排除(5年以内)
(e)コンクリートで永久封印(6年後)
以上、記事「疑われる最大の危機 福島第一原発『再臨界』の可能性!」(「FRIDAY」2011年4月15日号)に拠る。
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4月1日、日本の原子力研究を担ってきた専門家が、国・自治体・産業界・研究機関が一体となって緊急事態に対処することを求める「提言」(下記)を発表した。
福島第一原発1~3号機は、燃料の一部が溶けて原子炉圧力容器下部にたまっている。現在の応急的な冷却では、圧力容器の壁を熱で溶かし、突き破ってしまう。3基の原子炉内に残る燃料は、チェルノブイリ原発事故をはるかに上回る放射能があり、すべて封じ込めなければならない。
「提言」に名を連ねた一人、松浦祥次郎・元原子力安全委員長【注1】は、「原子力工学を最初に専攻した世代として、利益が大きいと思って、原子力利用を推進してきた。(今回のような事故について)考えを突き詰め、問題解決の方法を考えなかった【注2】」と陳謝した。
以上、2011年4月2日01時42分 YOMIURI ONLINEに拠る。
【注1】松浦は、「発電用軽水型原子炉施設に関する安全設計審査指針」(1990年)制定の際、長期間の電源喪失事故が起きる可能性について、「隕石の直撃など、何でもかんでも対応できるかと言ったら、それは無理だ」と、ごまかした(広瀬隆「原発破局を阻止せよ! 緊急連載3」、「週刊朝日」2011年4月15日号)。
【注2】提言者の一人、佐藤一男・元原子力安全委員長は、JOC事故(1999年)のときの原子力安全委員長だ。この経験も踏まえて『原子力安全の論理』(日刊工業新聞社、2006)を上梓した。本書には、このたび福島第一原発で起きた事故が理論的可能性として想定され、シミュレーションが行われている。福島第一原発事故は、「想定外」ではなかった(「【佐藤優の眼光紙背】菅直人首相は、原子力安全委員長経験者たちの緊急建言を国益のために活用せよ」)。
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3月30日付けの「福島原発事故についての緊急建言」によれば、「特に懸念されることは、溶融炉心が時間とともに、圧力容器を溶かし、格納容器に移り、さらに格納容器の放射能の閉じ込め機能を破壊することや、圧力容器内で生成された大量の水素ガスの火災・爆発による格納容器の破壊などによる広範で深刻な放射能汚染の可能性を排除できないことである」。
かかる深刻な事態を回避するためには、一刻も早く電源と冷却システムを回復させ、原子炉や使用済燃料プールを継続して冷却する機能を回復させることだ。これが唯一の方法だ。
福島原発事故は極めて深刻な状況にある。更なる大量の放射能放出があれば、避難地域にとどまらず、さらに広範な地域での生活が困難になる。
当面なすべきことは、原子炉及び使用済核燃料プール内の燃料の冷却状況を安定させて内部に蓄積されている大量の放射能を閉じ込めること、サイト内に漏出した放射能塵や高レベルの放射能水が環境に放散することを極力抑えること。これを達成できなければ、事故の終息は覚束ない。
さらに、当面の危機を乗り越えた後は、継続的な放射能の漏洩を防ぐための密閉管理が必要となる。ただし、この場合でも、万が一にも水素爆発を起こさない手立てが必要だ。
原子力安全委員会、原子力安全・保安院、関係省庁に加えて、日本原子力研究開発機構、放射線医学総合研究所、産業界、大学等を結集し、我が国がもつ専門的英知と経験を組織的、機動的に活用しつつ、総合的かつ戦略的な取組みが必須だ。
提言は、「原子力の平和利用を先頭だって進めて来た者」16人の連名で発表された。
青木芳朗(元原子力安全委員)、石野栞(東大名誉教授)、木村逸郎(京大名誉教授)、齋藤伸三(元原子力委員長代理、元日本原子力学会会長)、佐藤一男(元原子力安全委員長)、柴田徳思(学術会議連携会員、基礎医学委員会 総合工学委員会合同放射線の利用に伴う課題検討分科会委員長)、住田健二(元原子力安全委員会委員長代理、元日本原子力学会会長)、関本博(東工大名誉教授)、田中俊一(前原子力委員会委員長代理、元日本原子力学会会長)、長瀧重信(元放射線影響研究所理事長)、永宮正治(学術会議会員、日本物理学会会長)、成合英樹(日本原子力学会会長、原子力安全基盤機構理事長)、広瀬崇子(前原子力委員、学術会議会員)、松浦祥次郎(元原子力安全委員長)、松原純子(元原子力安全委員会委員長代理)、諸葛宗男(東京大学公共政策大学院特任教授)だ【注】。
以上、「福島原発事故についての緊急建言」(Peace Philosophy Centre)に拠る。
【注】3月31日、田中俊一、松浦祥次郎ら3人は菅直人首相に陳情しようとしたが、首相は彼らに会いもしなかった(「週刊朝日」2011年4月15日増大号)。
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