語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【震災】原発>海は 魚は 本当に大丈夫なのか

2011年04月05日 | 震災・原発事故
 海に入った放射性物質は、どうなるか。次の三つのパターンがあり得る。
 (a)希釈され、太平洋などに拡散する。
 (b)海草などに付着したり、海底に沈んでいく。
 (c)魚や解などの生物が体内に取りこむ。

(1)楽観的な見解
 ヨウ素131は半減期が8日と短く、魚の体内で濃縮されるとは考えにくい(ある専門家)。
 セシウム137も、半減期が30年と長いものの、魚の体内に入ると50日で半分が尿として排出されるので、さほど心配はいらない(政府・東電)。

(2)悲観的な見解
 放射性物質は淡水に混ざっている。海水と淡水では重さが違う。海水のほうが重い。簡単には淡水と海水は混ざらない。放射線は、海水で薄まらない。原発から流れこむ放射性物質が東日本沿岸海域に流れてくる【注】と・・・・沿岸に建つ原発から500m離れた敷地からプルトニウムが確認されているのだから、海までプルトニウムが飛散したと考えるのが自然だ。プルトニウムはヨウ素やセシウムと違って重たいので、海に入れば海底の泥に混じって沈殿する。当然、プルトニウムが付着した餌を魚が食べ、その体内に放射性物質が溜まる、ということもあり得る(柳哲雄九州大学教授)。
 検出されたヨウ素131の濃度の高さからすると、特に危険なのは海草類だ。ヨウ素は海草類に吸着しやすい性質があるからだ。太平洋岸のいまの海流の流れからすると、福島から千葉までの沿岸海域で採れる海草類には注意が必要だ(水口憲哉東京海洋大学名誉教授)。

 「今年の夏、東日本の太平洋沿岸の海水浴場は、閑散としてしまうでしょう」(柳教授)

 以上、記事「放射性物質がドボドボ流れ込んでも 海は 魚は 本当に大丈夫なのか」(「週刊現代」2011年4月16日号)に拠る。

 【注】仏国立科学研究センターなどの計算によれば、放射性物質の拡散は方向によって大きな差がある。放射性物質は、沿岸に沿って南北に広がった後、北側の仙台湾から東西に拡散していく(2011年4月5日14時39分 YOMIURI ONLINE)。
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【震災】危機一髪のときのリーダーシップ ~命救った掛け声~ 

2011年04月05日 | 震災・原発事故
 「みんな逃げろ」
 「高台に上がれ」
 「もっと上に」
 「はよ、山に上がれ」
 「早く逃げんだよ」

 こうした掛け声が多くの命を救った。
 声を上げたのは、水産加工会社の社長であり、ホテルの従業員だった。あるいは民生委員であり、自治会長だった。

 吉川肇子慶応大学教授(社会心理学)は、こうした事例から、危機に際してのリーダーシップを次のように整理する。
(1)地震があったらすぐ高台に逃げる、という重要なことを学んでいた。
(2)地域の顔見知りが声を掛けた例が多い。知り合いの声ということが重要だ。逃げる気のなかった人や、「逃げなければ」とは考えていたものの行動に移さなかった人の背中を押したのだろう。
(3)非常事態では、消防関係者など制服姿の人の言葉に従いやすい。権威を見いだすからだ。ツアー客が賞賛したホテル従業員の誘導も、その制服に一定の効果があったかもしれない。
(4)理由を示していた。ただ「逃げろ」と叫ぶだけではなく、状況を段階的に判断し、理由を示し、さらに高台へ誘導する・・・・という一連の行動があった。1996年、福岡空港ガルーダ航空機炎上事故では、乗客の中から「出られるから落ち着け」という声が上がって、出口に人が殺到しないで済んだ。理由を示すことが大事なのだ。

 岡田弘北海道大学名誉教授(2000年の北海道・有珠山噴火で住民の事前避難に尽力)はいう。
 声を出した人は、地域のキーパーソンが多い。住民は、普段からキーパーソンがどう行動するかを見ている。その人が必死に声を掛けると、「この人があれだけ言うのなら」と従いやすい【注】。

 以上、記事「命救った掛け声」(2011年4月4日付け朝日新聞)に拠る。

 【注】地震発生時、福島第一原発で働いていた多数の(当事者の一人によれば6~7千人の)作業員たちはパニックに陥った。敷地内の道路は地割れし、グラウンドは液状化していた。どこへ避難してよいか、わからない。避難場所への誘導など、東電からは一切なかった。それどころか、東電社員たちは、作業員たちを建屋内に残したまま、真っ先に避難していた(「週刊文春」2011年3月31日号)。
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