語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【震災】手に入りにくい基礎食品 ~食の安心・安全~

2011年04月18日 | 震災・原発事故
 首都圏を中心とする東日本で、品薄の食品は次のとおり。
 品薄の原因は、大別すると三つ。第一、製造工場の被災。第二、原料、包装資材の不足。第三、計画停電による生産量の大幅な低下。
 なお、(a)品薄の背景、(b)回復のめど、(c)予測・・・・の順に記す。

●ミネラルウォーター
 (a)救援物質に使われるため、また、水道水汚染の懸念があって需要が爆発的に拡大した。しかも、キャップメーカー2社が被災で生産停止した。供給は平時の7割に。商品ごとにキャップのデザインやサイズが異なる多品種少量生産のため、増産は容易ではない。
 (b)特例の規制緩和で韓国などから輸入が増加した。フランスへ緊急発注した分は、5月中旬から供給を開始する。消費者の水道水離れで、受給逼迫状況が当分続く。
 (c)6月から回復傾向の見こみ。

●ビール
 (a)大手4者で7工場が被災し、製造中止。缶の上フタの供給も停滞し、缶ビールの製造に支障が生じている。メーカーは計画出荷中。
 (b)4月から被災工場が再稼働(一部、再開が未定)。業界全体、全国的に製造余力がある。夏には供給体制が整う。
 (c)夏には回復の見こみ。

●牛乳
 (a)紙パック製造大手2社の工場が被災した。ラベルを印刷するインクも不足している。首都圏消費の2割を担う福島県と茨城県の牛乳供給停止も影響した。4月に入り、学校給食が始まったことも需給を逼迫させている。
 (b)紙パックは台湾から輸入を開始した。操業再開の工場も出てきた。4月に入り、小売業者は西日本や北海道から調達を開始し、店頭での品薄はかなり改善している。
 (c)5~6月に回復の見こみ。

●ヨーグルト
 (a)東北・北関東の被災工場が多い。生乳が牛乳製造に優先的に回るため、原料が不足する。停電で発酵や冷蔵が行えず、生産効率が極端に悪化している。平時の2割しか供給がない。
 (b)平時に回復するめどが立たない。
 (c)回復の見こみは当面ない。

●納豆
 (a)首都圏の主な供給源だった茨城県や千葉県の大手メーカー2社(タカノフーズ、ミツカン)を含む複数の工場被災が影響している。包装材や容器が不足している。停電で大豆の発酵が行えず、生産効率が悪化している。
 (b)大手メーカーの工場は徐々に再開し、供給は上向く。小売りは西日本から調達開始。極端な品薄感は減少の傾向にある。
 (c)5月に回復の見こみ。

●鶏卵
 (a)鶏卵の大産地、東北・北関東で養鶏農家・工場が多数被災した。沿岸部の飼料工場・倉庫の被害も大きい。被災を免れた農家も、飼料不足が鶏卵生産に影響している。
 (b)西日本からの調達で店頭の品薄感が解消しつつある。ただし、東北・北関東の出荷平常化へのめどが立たず、価格は高めだ。
 (c)5月回復、ただし高値の見こみ。

●アイスクリーム
 (a)計画停電で取扱いを中止する店舗が出現した。ただし、需要減少期なので需給逼迫はない。工場も創業停止で生産を減らしている。原料の牛乳も不足している。
 (b)消費ピークとなる夏場が課題だ。店舗や冷凍設備における停電対策のめどが立たない。例年は夏に向けて生産量を増やすが、現時点での生産量低下が多大な悪影響を及ぼす。
 (c)夏に不安がある。

 以上、記事「食の安心・安全は守られるか」(「週刊ダイヤモンド」2011年4月23日号)に拠る。
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【震災】不足が懸念される魚介類 ~食の安心・安全~

2011年04月18日 | 震災・原発事故
 被災地のシェアが高かったため、今後不足する可能性の高い魚介類は次のとおり。
 なお、(a)特徴、(b)時期(旬)、(c)全国漁獲量に対するシェア、(d)全国順位・・・・の順に記す。

●ワカメ
 (a)国内だけでは代替は難しい。
 (b)3~5月(すでに不足)。
 (c)青森県・岩手県・宮城県で75%。
 (d)岩手県(1位)、宮城県(2位)。

●カツオ
 (a)気仙沼のカツオが危機。
 (b)5~8月。
 (c)青森県・岩手県・宮城県・福島県で14%。
 (d)宮城県(3位)。

●サンマ
 (a)被災地の漁獲量は、北海道に次ぐ。
 (b)8月後半~10月。
 (c)青森県・岩手県・宮城県・福島県で32%。
 (d)宮城県(2位)、福島県(3位)、岩手県(4位)。

●サバ
 (a)石巻の金華サバなどブランド魚が危機。
 (b)10月。
 (c)青森県・岩手県・宮城県・福島県・茨城県で38%。
 (d)茨城県(1位)、福島県(5位)、岩手県(8位)、宮城県(9位)。

●カキ
 (a)被災地は、養殖カキの一大産地。
 (b)10月。
 (c)青森県・岩手県・宮城県で31%。
 (d)宮城県(2位)、岩手県(3位)。

 以上、記事「食の安心・安全は守られるか」(「週刊ダイヤモンド」2011年4月23日号)に拠る。
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【震災】為替レートの大変動 ~高まる不確実性~

2011年04月18日 | ●野口悠紀雄
(1)円高の可能性
 大震災後、為替レートがきわめて大きく変動した。直後に海外市場で急激な円高が進んだ(かなりの投機的取引が推定される)が、18日の協調介入を契機に円安に転じた。その後さらに円安が進んだ(欧米の金融緩和が終了するとの見とおしが広がったため)。4月6日には85円台で、震災直前の水準より円安だ(中期的には10年夏以来の円安)。
 阪神・淡路大震災後の動きと似ているが、今回はこれから先は円安にならないだろう。背後の経済条件に、当時と現在では大きな違いがあるからだ。
 (a)現在の海外との金利差は、当時ほど大きくない。欧米の金利が今後上昇しても、円キャリーを引き起こすほどの金利差にはならない。当時と違って、現在ではこれ以上低下しようがないほど低くなっている。
 (b)マクロ的資金需要が違う。90年代には貯蓄率が高かった。国債発行も多くなかった。復興に要する投資を国内の貯蓄で賄うことができた。金利上昇を招かずにすんだ。現在では、復興資金の増加は資金市場でクラウディングアウトを引き起こし、金利が上昇する可能性が高い。日本の対外資産の取り崩し、日本の対外投資の減少も起こるだろう。よって、ここ数年は円高が進む可能性が高い。

(2)資本収支の変化により大きく変動する為替レート
 為替レートは、経常収支の変化によってはあまり影響されず、資本収支の変化によって大きく変動する。
 大震災→経常収支黒字を縮小→国内での生産が不利、電力制約による生産量拡大の頭打ち→輸入増加、輸出減少。
 80年代までのように資本取引が自由化されていなければ、円に対する需要が減るので、円安になるはずだ。しかし、資本取引が自由化され、巨額の資本取引が行われている現在、資本取引が為替レートに大きな影響を与える。経常収支黒字が今後縮小しても、円安になるとは限らない。
 しかも、長期的な見とおしに立った長期投資ではなく、短期的な資本移動だ。これは、短期的な変動と、その予測に大きく影響される。
 ただし、現実の金利差に反応しているのではなく、今後の金利差がどうなるかの予測に反応している。だから、その動きは単純ではない。

(3)不確実性の時代
 実物面の動きは、かなり正確に予測できる。特に、次の二点は確実だ。(a)夏頃から復興投資が増え、資金需要が増える。(b)夏に電力事情が厳しくなり、これは長期的に続く。
 ただし、不確実性もある。特に、(a)原発被害の広がりと事故収束が見極められない。(b)既存原発や新規原発がどうなるか、現時点では不明だ。(c)生産拠点の海外移転は続くだろうが、どの程度加速するかは不明だ。
 不確実性がもっとも大きいのは、価格の反応だ。資金需要増加→金利上昇→円高。
 ただし、価格は将来の変化を先取りするので、事態が複雑になる。将来価格上昇の予測→現在価格の上昇(「市場の効率性」)。
 市場が完全に効率的ならば、現在予測できる要因は、すべて現在の価格に反映されてしまう。将来の動きは、現在予測できない要因によってしか影響されてないことになる。
 しかも、今後の変化は、方向性の異なる動きだ。長期的には日本経済が弱まり、円安になっていくとしても、「日本売りで円安になる」というようなことにはならない。その前に日本国内の資金需要が増えるから、円高になる。しかし、復興が終われば資金需要が減る。その前に、欧米の金利が上がるから円安になる。
 以上のように、円安要因と円高要因が交互に現れる。しかも、そのタイミングがはっきりとはわからない。それがさらに事態を複雑化する。
 短期的な資本移動は、短期的な変動で利益を得ようとするから、投資の方向が大きく揺れる。それが為替レートの変動をさらに大きくする。かくしてボランタリティが高まる。それが実物経済にも影響を与える。
 震災後の日本経済の大きな特徴は、ボラティリティが高まったことだ。それにどう取り組むか(重要な課題)。

【参考】野口悠紀雄「高まる不確実性と為替レートの大変動 ~「超」整理日記No.558~」(「週刊ダイヤモンド」2011年4月23日号)
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