田原総一朗 民主党とのやり取りや復興対策についてはあとでまた話していただくとして、今回は地震・津波の被害そのものもさることながら、福島第一原発で事故が起こってしまったことが事態を複雑にしました。この点も「阪神」との大きな違いです。事故の一報を知ったときには、どう感じました?
石破茂 我々は東海村JCO臨界事故(1999年)や、新潟県中越沖地震(2007年)時の柏崎刈羽原発の事態も与党として経験しています。大きな地震などに見舞われた場合、原発は原子炉の停止→冷却→放射性物質が飛散しないよう封じ込める、という手順で、安全が確保される仕組みになっています。柏崎はこのシステムが完璧に作動したために、放射能汚染などの問題は起こりませんでした。今回も、あれだけ大きな地震だったにもかかわらず、制御棒が作動して発電が停まったということでしたので、少なくともチェルノブイリのように炉心が爆発して高濃度の放射能が広い範囲に拡散するといった最悪の事態にはならないだろうという認識は、当初からありました。
ただ、まさか冷却装置の非常用電源が働かなくなるとは・・・・。原発は、何らかの障害や誤操作などがあった場合に必ず安全側に制御する「フェールセーフ」機能に完全に守られていると思っていたので、燃料が流されディーゼル発電機が使用不能になるなどの事態は、まさに想定外。
田原 石破さんから見ても想定外?
石破 1985年に御巣鷹山にジャンボジェット機が墜落したときにも、当初は、「安全なはずの飛行機がなぜ落ちたんだ」という議論になりました。調べてみたら、過去に機体の後部を滑走路にこする尻もち事故を起こしていて、ボーイング社の修理が不完全だったことが、事故につながった。システムは完璧でも、人間がミスをすると想定外のことが起こる。
田原 明治29年(1896)の三陸沖地震では、やっぱり14、5メートルの津波が来たという記録が残っています。岩手沿岸での話ではありますが、福島第一原発をつくるときに想定した最大の津波が4~5メートルというのは、甘かったのではないですか?
石破 その点は認めざるをえませんね。(下略)
以上、石破茂(自民党政務調査会長)/田原総一朗(聞き手)「福島原発は政府による災害だ」(「中央公論」2011年5月号)から引用した。
*
内閣府「原子力安全委員会」は、「発電用軽水炉の安全設計審査指針」(90年)の解説に、長時間の全電源喪失について「考慮する必要はない」と明記している。
理由は、「送電線の復旧または非常用交流電源設備(非常用ディーゼル発電機)の修復が期待できるため」。国は、外部電源を失ってもすぐに非常用発電機が作動すると想定してきた。各原発は、同指針に基づいて設計されている。
以上、記事「全電源喪失、国は『考慮する必要はない』と解説」((2011年4月9日08時33分 YOMIURI ONLINE)。に拠る。
*
米研究機関は、1981~82年、福島第一原発1~5号機と同じ沸騰水型「マークI」炉(米ゼネラル・エレクトリック(GE))について、全電源が失われた場合のシミュレーションを実施し、報告書を米原子力規制委員会(NRC)に提出した。NRCはこれを安全規制に活用したが、日本は送電線などが早期に復旧するなどとして想定しなかった。
外部からの交流電源と非常用ディーゼル発電機が喪失し、非常用バッテリーが作動するという前提の試算では、
(a)バッテリーが4時間使用可能・・・・停電開始後5時間で燃料が露出、5時間半後に燃料は485度に達して水素も発生、6時間後に燃料の溶融開始、7時間後に圧力容器下部が損傷、8時間半後に格納容器損傷。
(b)6時間使用可能・・・・8時間後に燃料が露出、10時間後に溶融開始、13時間半後に格納容器損傷。
福島第一のバッテリーは8時間使用可能でシミュレーションと違いはあるが、起きた事象の順序はほぼ同じ。
また、計算を当てはめれば、福島第一原発の格納容器はすでに健全性を失っている可能性がある。
日本では全電源が失われる想定自体、軽視されてきた。
原子力安全委員会は、原発の「安全設計審査指針」(90年)を定めた際、「長期間にわたる全交流動力電源喪失は、送電線の復旧又は非常用交流電源設備の修復が期待できるので考慮する必要はない」とする考え方を示した。
原子力安全研究協会の松浦祥次郎理事長(元原子力安全委員長)はいう。「何もかもがダメになるといった状況は考えなくてもいいという暗黙の了解があった。隕石の直撃など、何でもかんでも対応できるかと言ったら、それは無理だ」
以上、記事「原発の全電源喪失、米は30年前に想定 安全規制に活用」(2011年3月31日16時39分 asahi.com)に拠る。
*
日本で、この凶器とも言うべき原発の「安全神話」を主張し、かばい続けたのは自民党政権であり、それにまつわりつくゼネコン利権であることは周知の事実だが、今回の惨事について、自民党から「責任」を認めて詫びる言葉は、全く聞こえてこない。日本を政治責任意識欠如の国にした最大の責任は、誰よりも、50年にわたり政権を握っていた自民党にあることは明らかではないか。
以上、坂本義和(東京大学名誉教授、国際政治学・平和研究)「人間のおごり」(「世界」2011年5月号)から引用した。
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石破茂 我々は東海村JCO臨界事故(1999年)や、新潟県中越沖地震(2007年)時の柏崎刈羽原発の事態も与党として経験しています。大きな地震などに見舞われた場合、原発は原子炉の停止→冷却→放射性物質が飛散しないよう封じ込める、という手順で、安全が確保される仕組みになっています。柏崎はこのシステムが完璧に作動したために、放射能汚染などの問題は起こりませんでした。今回も、あれだけ大きな地震だったにもかかわらず、制御棒が作動して発電が停まったということでしたので、少なくともチェルノブイリのように炉心が爆発して高濃度の放射能が広い範囲に拡散するといった最悪の事態にはならないだろうという認識は、当初からありました。
ただ、まさか冷却装置の非常用電源が働かなくなるとは・・・・。原発は、何らかの障害や誤操作などがあった場合に必ず安全側に制御する「フェールセーフ」機能に完全に守られていると思っていたので、燃料が流されディーゼル発電機が使用不能になるなどの事態は、まさに想定外。
田原 石破さんから見ても想定外?
石破 1985年に御巣鷹山にジャンボジェット機が墜落したときにも、当初は、「安全なはずの飛行機がなぜ落ちたんだ」という議論になりました。調べてみたら、過去に機体の後部を滑走路にこする尻もち事故を起こしていて、ボーイング社の修理が不完全だったことが、事故につながった。システムは完璧でも、人間がミスをすると想定外のことが起こる。
田原 明治29年(1896)の三陸沖地震では、やっぱり14、5メートルの津波が来たという記録が残っています。岩手沿岸での話ではありますが、福島第一原発をつくるときに想定した最大の津波が4~5メートルというのは、甘かったのではないですか?
石破 その点は認めざるをえませんね。(下略)
以上、石破茂(自民党政務調査会長)/田原総一朗(聞き手)「福島原発は政府による災害だ」(「中央公論」2011年5月号)から引用した。
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内閣府「原子力安全委員会」は、「発電用軽水炉の安全設計審査指針」(90年)の解説に、長時間の全電源喪失について「考慮する必要はない」と明記している。
理由は、「送電線の復旧または非常用交流電源設備(非常用ディーゼル発電機)の修復が期待できるため」。国は、外部電源を失ってもすぐに非常用発電機が作動すると想定してきた。各原発は、同指針に基づいて設計されている。
以上、記事「全電源喪失、国は『考慮する必要はない』と解説」((2011年4月9日08時33分 YOMIURI ONLINE)。に拠る。
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米研究機関は、1981~82年、福島第一原発1~5号機と同じ沸騰水型「マークI」炉(米ゼネラル・エレクトリック(GE))について、全電源が失われた場合のシミュレーションを実施し、報告書を米原子力規制委員会(NRC)に提出した。NRCはこれを安全規制に活用したが、日本は送電線などが早期に復旧するなどとして想定しなかった。
外部からの交流電源と非常用ディーゼル発電機が喪失し、非常用バッテリーが作動するという前提の試算では、
(a)バッテリーが4時間使用可能・・・・停電開始後5時間で燃料が露出、5時間半後に燃料は485度に達して水素も発生、6時間後に燃料の溶融開始、7時間後に圧力容器下部が損傷、8時間半後に格納容器損傷。
(b)6時間使用可能・・・・8時間後に燃料が露出、10時間後に溶融開始、13時間半後に格納容器損傷。
福島第一のバッテリーは8時間使用可能でシミュレーションと違いはあるが、起きた事象の順序はほぼ同じ。
また、計算を当てはめれば、福島第一原発の格納容器はすでに健全性を失っている可能性がある。
日本では全電源が失われる想定自体、軽視されてきた。
原子力安全委員会は、原発の「安全設計審査指針」(90年)を定めた際、「長期間にわたる全交流動力電源喪失は、送電線の復旧又は非常用交流電源設備の修復が期待できるので考慮する必要はない」とする考え方を示した。
原子力安全研究協会の松浦祥次郎理事長(元原子力安全委員長)はいう。「何もかもがダメになるといった状況は考えなくてもいいという暗黙の了解があった。隕石の直撃など、何でもかんでも対応できるかと言ったら、それは無理だ」
以上、記事「原発の全電源喪失、米は30年前に想定 安全規制に活用」(2011年3月31日16時39分 asahi.com)に拠る。
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日本で、この凶器とも言うべき原発の「安全神話」を主張し、かばい続けたのは自民党政権であり、それにまつわりつくゼネコン利権であることは周知の事実だが、今回の惨事について、自民党から「責任」を認めて詫びる言葉は、全く聞こえてこない。日本を政治責任意識欠如の国にした最大の責任は、誰よりも、50年にわたり政権を握っていた自民党にあることは明らかではないか。
以上、坂本義和(東京大学名誉教授、国際政治学・平和研究)「人間のおごり」(「世界」2011年5月号)から引用した。
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