語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【震災】国民の知る権利を脅かす圧力~NHK、原子力安全・保安院~

2011年04月14日 | 震災・原発事故
 NHK水野倫之解説委員は、原発の安全性や放射能汚染の危険度について、歯に衣を着せない。
 一見地味な風貌だが、落ち着いた語り口、敢然と政府や東電に物を言う姿勢が、「安定感があって頼もしい」と好評を博している(NHK職員)。
 3月12日、福島第一原発1号機が水素爆発を起こしたとき、民放を含めた各局に登場した“識者”は、それでも「憂慮するような事態ではない」と強調し続けた。しかし、水野解説委員は、「これは非常に深刻な事態だ」と断言し、政府と東京電力の対応に疑問がある、と指摘した。
 ところが、その後しばらくして水野解説委員が画面に登場する機会が急に減り、3月下旬頃には、姿を見せてもあの明瞭な発言がすっかり影をひそめていた。
 圧力をかけられたのだ。事故の深刻度を断言した直後、原子力・電力関係者から「不安を煽っている」と叩かれた。原子力の専門家なる大学教授や研究者からは、「技術者でもないクセに」と猛烈な批判を浴びた。
 しかし、いまや、批判していた「専門家」たちは沈黙を守っている。
 3月27日放送のNHKの特番で、水野解説委員は述べた。「良いことも悪いことも伝えなければならない」

 以上、記事「『言い過ぎ』と圧力をかけられたNHK水野解説委員」(「週刊現代」2011年4月23日号)に拠る。

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 原子力安全・保安院の中村幸一郎審議官は、地震の翌日の12日午後2時、福島第一原発1号機で「炉心溶融が進んでいる可能性がある」と発表した。発電所の周辺地域から、燃料の核分裂に伴うセシウムやヨウ素が検出されたのだ。燃料が溶けて漏れ出たと考えられる。1号機は、核燃料棒を冷やしていた水位が下がって露出していた、うんぬん【注】。

 【注】記事「福島第1原発『炉心溶融が進んでいる可能性』 保安院」(2011年3月12日15:30 日本経済新聞電子版)

 中村審議官は、東大工学部出身の技術キャリアである。震災翌日に、すでに危機的な事態を認識していたわけだ。
 ところが官邸は、「国民に不安を与えた」と問題視し、中村審議官を会見担当からはずせ、と経産省に指示した。
 後任は、かの西山英彦審議官である。

 以上、記事「国難を政治利用する『死の大連立』 『大震災翼賛会』」(「週刊ポスト」2011年4月15日号)に拠る。

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 「どんなにいいにくくともいわねばならぬ真実というものはある」(大岡昇平『レイテ戦記』)
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【震災】自民党の反原発議員、河野太郎の、福島原発損害賠償をまかなう財源3兆円

2011年04月14日 | 震災・原発事故
 与党時代の自民党は、「原子力村」の利権構造にどっぷり浸かり、原発を推進していた。
 その中で反原発を貫いてきたのが河野太郎衆議院議員。核燃料の再処理に反対の声を上げ、膨大な予算の無駄と利権を指摘。さらに、電力会社から巨額な広告料を受け取るテレビ、新聞を批判した。
 原発マフィアのベテラン議員から、「あいつを抹殺しろ」と言われ、テレビ番組からも締め出された。

 変人、協調性がない、となど悪評さくさくだったが、今回の原発事故で「河野は正しかった」と自民党内部で再評価されている(らしい)。
 原発事故以来、日本の原発政策の過ちを解説する河野のホームページは、日々アクセスが増えている。

 河野は大胆な提案を行っている。
 原子力環境整備促進・資金管理センター【注】に、電力業界が使用済み燃料再処理などのため3兆円超の資金を積み立てている。積立金は、法律を変えれば「福島原発の損害賠償に使える」。

 【注】理事長は元東京電力執行役員。専務理事は経産省出身。評議員のほとんどが電力会社の役員か、原子力村の学者。

 以上、記事「核燃料の再処理に3兆円の積立金 これを賠償に回せと河野太郎の『名案』」(「週刊現代」2011年4月23日号)に拠る。
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【震災】東電はどこまで補償するか、または補償しないか

2011年04月14日 | 震災・原発事故
 原子力賠償法に基づく補償は、被曝による被害、避難費用、営業損害などが対象になる。原賠法には免責規定があるが、政府は免責を否定している。東電が払いきれない部分を国が援助することになる。

●営業損害
 JCO事故では、放射性物質の拡散はなかった。2日後に政府が「安全宣言」を出して避難を解除した。それでも、賠償額は150億円(うち10億円を保険会社が負担)で、そのうち7割を営業損害が占めた。茨城県内の農産物などの「風評被害」も認められた。
 今回も、出荷停止されていないのに買い控えられた農産物や水産物の損害も賠償の対象となり得る。

●被曝
 周辺住民の被曝についてはどうか。
 JCO事故では、放射性物質の拡散はなかった。2日後に政府が「安全宣言」を出して避難を解除した。それでも、賠償額は150億円(うち10億円を保険会社が負担)で、そのうち7割を営業損害が占めた。茨城県内の農産物などの「風評被害」も認められた。
 被曝不安の「精神的苦痛」については、年齢、性別、人生観や世界観で人それぞれ異なり、それを認めると過大請求になりかねない、という理由で「損害」の範囲には含まれなかった。
 ただ、今回は、放射性物質の拡散の量、範囲、期間が桁違いに大きい。紀藤正樹弁護士によれば、精神的苦痛についても慰謝料を請求できる可能性がある。

●水
 3月23日、東京都は1歳未満の乳児には水道水を飲ませないように、と発表した。関東の4県が同様に乳児の摂取制限を行った。
 ペットボトルの水が売り切れた。放射性物質の影響は損害賠償の対象になり、摂取制限に従った行動なので、水の実費は請求できる(升田弁護士)。認められるのは、摂取制限中に必要だった分であり、1歳以上の児・者の飲み水、風呂などの水、買い置きした水は認められない。
 ちなみに、都はペットボトルの水48万本を配布した。その実費は東電に請求できる可能性があるし、子どもの健康不安や水を探し回る苦労といった精神的苦痛による慰謝料を請求できる可能性もある(紀藤弁護士)。

●自主避難の交通費・宿泊費用
 東電によれば、「全力で補償しようと考えているが、線引きについて国と調整している段階で、補償の範囲は現段階では言えない」。
 待避の必要性が議論され、福島から東京は相当と言えても、東京から大阪はどうか(升田弁護士)。
 避難した次期と地域の放射線量が実際に身体に影響を与えるレベルだったかどうかで判断される(紀藤弁護士)。

●「計画停電」の補償
 東電によれば、「計画停電の影響による損害賠償には応じられません」。
 停電そのものに違法性はない(升田弁護士)。
 主な警備会社は、顧客と交わす警備契約で「天災地変や停電」を免責条項に入れている。停電をねらって空き巣に入られても、賠償されない(盗難保険に加入していれば、保険金の支払いはある)。
 停電によってエレベーターに閉じこめられてケガをした場合、エレベーターの所有者や管理者に損害を請求することになる(一般的な事故と同じ)。
 信号灯が消えた交差点における事故は、自動車保険に加入していれば、保険金の支払いはある。
 ろうそくが倒れて自宅が全焼したら、火災保険から支払われる。
 病院で治療が受けられず、病気が悪化したら、医療費は医療保険から支払われる。
 保険会社が、計画停電と事故との因果関係が極めて強い、と判断した場合、支払った保険金額を東電に請求することもあり得る。計画停電になった原因を原発事故まで遡って因果関係を証明することができれば、原賠法の損害賠償の対象になるからだ。

●休業手当
 計画停電による休業は、「使用者の責任ではない」(3月15日付け厚労省労働基準局監督課長通知)。

●その他
 計画停電による小さな損失は、あげ始めればきりがない。
 停電に振り回されることも「精神的苦痛」に値する。原発事故との因果関係が証明できれば、損害だけでなく、慰謝料としても請求できる可能性はある(紀藤弁護士)。 

 以上、前部昌義(ライター)/小林明子(編集部)「『東電補償』徹底Q&A」(「AERA」2011年4月18日号)に拠る。
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