語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【震災】復興の基本--産業を東日本と西日本で再配置

2011年04月28日 | ●野口悠紀雄
 復興の大まかな方向づけは、できるだけ早く明らかにする必要がある。民間企業が、損壊した生産設備を元の場所に再建するか、他に移転するかは、それによって大きな影響を受けるからだ。
 その際、「付加価値当たりの電力使用量」を重要な基準とする必要がある。経済活動によって、これが大きく違うからだ。(a)製造業は電力多使用、(b)サービス業は省電力だ。同じ付加価値を生産するために、(a)は(b)の3.4倍の電力を必要とする。

 東日本が深刻な電力制約に直面している半面、西日本は当面は制約がない。(a)が西に移り、(b)が東に移れば、電力制約をかなり回避できる。
 試算の一例では、東の(a)の3割が西に移り、西の(b)の12.4%が東に移れば、両地域のGDPは不変にとどまる。しかし、電力消費量は(a)及び(b)の移動に伴う差し引きで、東で7.4%減り、西で6.9%増える。この程度の電力消費の増加なら、西野現在の発電能力の範囲内で受け入れ可能だろう。これ以上移せば、東の電力事情はもっと改善されるが、こんどは西が供給不足に陥ってしまうかもしれない。
 このような産業配置は、電気料金に対する課税を東だけで行えば、自動的に実現できる。

 問題は、省電力産業をどのようにして東に移すか、だ。西の(b)は大震災で直接的な被害を受けていないので、東に移る格別のインセンティブはない。それに、民間の(b)を移動させるのは、さほど容易ではない。
 そこで、次のようにしてはどうか。国や公的主体が中心となって、大規模な研究センターや医療センターを東北地方につくり、これを復興の核とするのだ。これらに関連してさまざまなサービスが必要になるので、東北地方に雇用が創出されるだろう。
 財源をどう調達するか。(1)マニフェスト関連施策をすべて見直せば、3.6兆円という巨額の財源が捻出できる。(2)電力課税・・・・東の電力使用量を今夏の供給制約をクリアできるほど課税すれば、東京電力管内だけで、ほぼ2兆円の税収が得られる。夏以外の時期にも課税し、かつ東北電力でも同様の課税を行えば、3兆円の税収が得られる。(1)と(2)を合わせれば、7兆円に近い財源の確保は実現可能だ。
 電力課税の税収を新プロジェクトに投入することで、今までムダに使われていた電力を節約し、それによって生まれた資源を新しい目的に投入するわけだ。

 過去にも、震災後に新天地に教育機関を立地した例がある。東京商科大学(現一橋大学)がそれだ。関東大震災で神田の校舎が壊滅したが、北多摩郡谷保村(現国立市)に移転した。神田の狭い敷地に再建したら、その後の発展はなかったろう。
 スタンフォード大学も、当時の辺境地カルフォニアの、何もない原野に創設された。同大学は、シリコンバレーのIT産業を生んだ。
 ただし、未開の土地に行政機能を移転する計画は、成功しないことが多い。イスラマバードやブラジリアなど、外国の例を見てもそうだ。移転が成功したのは、大学や研究所だ。

 東北地方につくられるべき大規模な研究センターは、何をめざして研究するべきだろうか。
 時代の要請があって、かつ、省電力でなければならない。となると、リスクマネジメント、通信・情報処理関係の研究が該当する。今後の日本ではボラティリティが高まるから、それにどう対処するかは、今後の日本にとって重要な課題なのだ。
 これらは、ソフト志向的なものだ。そして、日本はこの分野が弱い。従来の日本の国立大学では育ちにくかった。
 また、海外との連携を強めることも重要だ。今のままでは、国際共同研究で、日本は中国に負ける。

 日本でこれまで行われてきたものとして、筑波研究学園都市建設がある(総事業費3兆円)。60年代の初めに、首都機能移転計画の一部として計画された。その中核の筑波大学は、理系志向のバイアスが強い。筑波の他の研究所も、高度成長型日本産業を支えるタイプの技術に関連している。
 新しい研究センターは、日本経済のこうしたバイアスを是正する役割を担うべきだろう。

 頑張れ日本、立ち上がれ日本・・・・意欲だけあっても方向づけが間違っていれば、成功しない。復興とは、すぐれて経済的な問題だからだ。希少な資源をどう配分するか、という問題なのだ。経済的に合理的な方向が採択されなければ、資源のムダづかいに終わる。
 震災前と同じものを復旧し、それが結局は世界経済の潮流に追いつけずに衰退しては、犠牲者も浮かばれまい。
 何十年か後に、大震災が日本のターニングポイントだった、と評価される復興を実現すること。それが、今の世代に課された課題だ。

【参考】野口悠紀雄「復興の基本方向は産業の東西配置 ~「超」整理日記No.559~」(「週刊ダイヤモンド」2011年4月30日・5月7日号)
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【震災】蔵元消失でもう呑めない「幻の酒」あれこれ

2011年04月28日 | 震災・原発事故
 花見にも祭りにも月見にも、もはや味わうことのできなくなった銘酒。
 美酒少し、海へ流しぬ・・・・。

●「雪っこ」「酔仙 純米酒」
 陸前高田(岩手県)の「酔仙酒造」は、三陸沿岸南部で唯一の蔵元だ。
 社員およそ60人のうち5人が犠牲となり、まだ3人の安否が不明だ(4月4日現在)。
 新酒鑑評会で県知事賞を受賞したが、国の登録文化財に指定されていた本社事務所などが跡形なく消えた。歴史ある建物は、避難所の風呂の焚きつけに利用されている。

●「弁慶の岬」「春のひ」
 石巻(宮城県)の「墨迺江酒造」は、蔵こそ残ったものの、電気が復活するまでの2週間、温度管理ができず、仕込みは中断した。
 蔵元の味を決める酵母は、それぞれの蔵に長年住み着いて特徴が出てくる。だが、すべて流された。

●「千両男山」
 宮古(岩手県)の「菱屋酒造」も津波の被害を受けた。

●「標葉(しろうま)」「GINTAGE」
 日本一海に近い酒蔵をキャッチコピーにしていた浪江町(福島県)の鈴木酒造も津波の被害にあった。

●「白富士」
 地震に耐えた酒蔵もある「富沢酒蔵」は、双葉町(福島県)で創業300年を誇る。
 ただ、福島第一原発から3.6kmしか離れていない。

 以上、記事「蔵元消失でもう呑めない!?『幻の酒』一覧 --花見どころか酒がない」(「FOCUS」2011年4月20日大災害緊急復刊号)に拠る。
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