語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【震災】そんなに安全だというのなら、原発ムラ科学者たちは現場フクシマへ行け

2011年04月06日 | 震災・原発事故
 原子力分野では、東大工学部、東大原子炉工学研究所、京大原子炉実験所が3大勢力だ。
 京大には、原発の危険性を訴えている研究者グループもいるが、昇進やポスト配分で冷遇されている。研究費はつかない。電力会社の寄付はない。

 原子力政策を支持、推進するのが「原発ムラ」の住民だ。原発ムラは、産・官・学一体となった共同体だ。
 原発ムラの中心メンバーは、東大大学院工学系研究科で原子力を専攻した人たちだ。その中にもヒエラルキーがある。(1)大学、(2)日本原子力研究開発機構(旧・動燃)、(3)原子力プラントメーカー(日立・東芝・三菱など)、(4)電力会社、(5)官僚(経産省・文科省)・・・・だ。

 原発を推進する側も規制する側も原発ムラの住民だ。
 <例1>原発を推進する原子力委員会の委員長・・・・近藤駿介(東大大学院工学系研究科修了、東大名誉教授)。
 <例2>原発を規制する原子力安全委員会の委員長・・・・斑目春樹(東大大学院工学系研究科修了、元東大教授)。
 そして、原発をチェックする原子力安全・保安院(資源エネルギー庁の特別の機関)は、原発を推進する経済産業省の傘下にある。しかも、保安院発足に備えて、検査官の約半数に当たる52人が原発のプラントメーカーなどから中途採用された。ために、仲間意識から互いをかばいあうばかりで、まともな検査ができない。
 ちなみに、もう一つの規制機関、原子力安全委員会の委員5人のうち、斑目委員長【注】、久木田豊、小山田修の3人が東大大学院工学系研究科出身だ。

 経産省や文科省が所管する各種団体も、原発ムラの住民だ。
 これら団体のトップたちは、経産大臣の諮問機関「統合資源エネルギー調査会」の原子力部会に所属し、原子力行政を左右している。
 <例3>斑目原子力安全委員会委員長の先輩、鈴木篤之東大名誉教授は、原子力安全委員会の前委員長であり、10年8月に日本原子力研究開発機構理事長に就任した。同機構は、95年にナトリウム漏出事故を起こした高速増殖炉「もんじゅ」を管理する。規制する側のトップが推進する側のトップに横滑りしたわけだ。
 <例4>石田徹は、資源エネルギー庁長官を辞職した4ヵ月後の11年1月、東電から顧問に迎えられた。6月には副社長に就く予定だった。

 東電から東大に、約10年間で5億円が「寄付」されている。
 その東大の、大学院工学系研究科の関村直人教授はNHKに出ずっぱりで、次のように解説している。
 「燃料のごく一部が溶けて漏れ出たと思われるが、原子炉はすでに停止しているうえ、冷やされている状況だ。冷静な対応を」
 「炉心溶融(メルトダウン)はありえない」
 「冷却水が漏れている可能性は低い」
 中島健京大原子炉実験所教授も、最近メディアへの登場回数が増えている。何を聞かれても、まず大丈夫でしょう、と繰り返す。プルトニウムの漏出についても、「プルトニウムは重いので、遠くまで飛ばないから安全」などと語っていた。
 関村教授も中島教授も、核燃料サイクル安全小委員会の委員を務めたり、文科省の原子力安全技術アドバイザーをしていた。

 御託はもういいから、あの「化け物」をと止めて来てくれ。
 ・・・・記事は、冒頭で然云う。

 【注】斑目委員長は、東大教授当時、浜岡原発をめぐる訴訟に中部電力側の証人として出廷した(07年)。そして、地震などで非常用電源がすべて使えなくなる可能性を問われ、「すべての電源が喪失するようなことを想定していては、原発はつくれない」などと証言した。
  また、地震発生直後に菅直人首相に呼ばれ、原発爆発の危険性を問われて、「大丈夫、水素はありますが爆発するようなことはありません」と答えた。その翌12日、水素爆発が起きたことは周知のとおり。
  福島第一原発2号機から放射線により高濃度に汚染された水が漏れていることが判明した3月28日には、解決法を問われて、「どのような形で処理できるか知識を持ち合わせていない。原子力安全・保安院で指導していただきたい」などと答えている。責任のなすり合いが始まったのだ。

 以上、記事「そんなに『安全』というのなら、テレビに出るのではなく 原発ムラ科学者たちは現場フクシマへ行け!」(「週刊現代」2011年4月16日号)に拠る。
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【震災】原発>「被曝食品」調査の現実

2011年04月06日 | 震災・原発事故
【震災】原発>「被爆食品」調査の現実

(1)問題点
 (a)「被曝」調査は、基準となるべき規制値一つをとっても場当たり的だ。
 (b)規制値の説明たるや、「1年間食べ続けても、ただちに人体には影響のないレベル」などという曖昧なもので、生産者も消費者も混乱する。
 (c)厚生労働省が調査を各自治体に丸投げしたから、調べる野菜などの種類や件数はまちまちだ。
 (d)検査は丸投げなのに、出荷制限は原子力災害対策特別措置法に基づいて内閣府「食品安全委員会」が決定する。

(2)場当たり的な国【注】
 3月17日、厚生労働省は「被曝食品」の暫定値を決めた。
 ところが、3月28日、食品安全委員会で、この暫定値を見直すかどうかが検討された。
 背景に、福島、茨城、栃木、群馬の農家の怒り、悲鳴がある。暫定値を超えた、として4県でホウレンソウ、キャベツ、ブロッコリー、原乳などに出荷制限、摂取制限が出ている(3月31日現在)。一部の地域でも規制値を超えれば、全県でその品目は出荷制限となる。さらに4県では野菜全体が売れなくなった。そこで、前記委員会でセシウム137の規制値を緩和するかどうかが焦点となったのだ。

 チェルノブイリ原発事故で子どもの甲状腺ガンの発症率は5年で130倍になった。放射能の問題は、今だけでなく、10年、20年にわたってついてまわる問題だ。海外の国々がWHOより厳しい規制値を採用しているのは、チェルノブイリを経験したからだ。日本のガイドラインがその場しのぎで変わるご都合主義は許されない。こんなことでは、日本の食品が拒否されるのは当然だ。
 ・・・・そう語るのは、委員会に参考人として呼ばれた長野県松本市長だ。菅谷昭市長は、医師としてチェルノブイリの子どもたちを20年余り支援してきた。
 セシウム137の規制値緩和は見送られた。
 
(3)検査の実態
 厚労省は、各自治体の食品検査数と規制値を超えた品目を一覧表にまとめた(3月30日現在)。
 総計667件の検査件数のうち、最多は福島県で、計235件で、最少は長野県の6件だ。
 検査件数が少ないのは、検査機器がないからだ。原発を抱える自治体は、放射能を分析する施設が充実しているが、栃木県は、大気中の放射能などを分析するだけで手一杯で、農産物まで手がまわらない。だから、農林水産省に依頼する。山形県、宮城県、埼玉県、神奈川県、長野県も同様だ。
 福島県の場合、検査機器のあった大熊町が福島第一原発から半径10km以内にあり、使えない。国が検査を担当した結果、次々に検査件数が増え、規制値を超える品目が増えていった。
 茨城県では、通達の出た3月17日より前に、自主的に検査を行っていた。検査件数は121件で、国が全面的に検査している福島県に次いで多い。地道に検査を続けた結果、当初は抵抗のあった生産者から未検査の品目を持ちこまれるまでになった。

(4)方向づけ
 徹底的に調べ、ここまで調べたなら大丈夫だと消費者が納得すれば、「風評被害」はなくなるか、少なくとも減少するだろう。未検査の品目を避ける、という消費者も出てくるだろう。
 そもそも、国が早い段階で根拠定かな規制値と補償を打ち出し、出荷制限解除の条件を明示しておくべきだった。規制値を恣意的に上下させようとするから、農家と消費者の不安を煽るのだ。はじめから安全ありきでは、意味がない。

 以上、記事「こんな『被曝食品』調査信用していいのか」(「週刊現代」2011年4月16日号)に拠る。

 【注】場当たり的な別の例
  厚生労働省と経済産業省は、3月15日、福島第一原発で緊急作業にあたる作業員の被曝線量の上限を計100ミリシーベルトから同250ミリシーベルトに引き上げた。14日午後、官邸の要請を受けて厚労省と経産省が検討し、文部科学省の放射線審議会に諮問(妥当との答申)。経産省は原子炉等規制法に基づく新たな告示を定め、厚労省は労働安全衛生法の電離放射線障害予防規則を省令で改正した(2011年3月15日23時39分 asahi.com)。
  また、原子力安全委員会は、4月5日、放射線量の高い地域の住民の年間被曝限度量について、政府から見直しの相談を受けて、現在の1ミリシーベルトから20ミリシーベルトに引き上げるべきかを検討し始めた。原発から半径30キロ圏外の福島県浪江町で、放射線量の積算値が上昇しつつあるからだ(2011年4月5日22時21分 asahi.com)。
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