語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【震災】復興の財源(案) ~社会資本整備特別会計と農林漁業関係公共事業予算の統合など~

2011年04月20日 | 震災・原発事故
(1)被災地のインフラを復旧し、中小企業や農林水産業を復興するための財源
 「社会資本整備特別会計」(3.2兆円)を廃止し、農林漁業に関係する公共事業予算(0.5兆円)を統合する。
 そのうえで、(a)当該予算の半分は、地域主権を促進するための「一括交付金として配分する。
 (b)残りの半分は、東日本大震災の復興資金(年間2兆円)【注1】として、被災した東北・関東地域に重点的に配分する。その際、都市と農村の土地利用計画制度を一元化・総合化する。併せて、防災を加えたスマートシティ化を目標とする。

 【注1】5年間の大震災地域復興特別会計。

(2)他の特別会計などの洗い直し
 再度行う。余剰金を捻出して上記特別会計に繰り入れる。

(3)税制改革
 5年間の期間限定の「社会連帯税」(所得税の付加税)を導入し、相続税率を引き上げ、さらに環境税【注2】を新設するなどの税制改革を行う。

 【注2】実態上の道路特定財源の活用。

(4)法人税
 現行の租税特別措置を廃止した上で、内部留保について原則として課税強化を行う。一定の戦略産業【注3】への投資、雇用の増加を実現した場合に法人税減税を実施する。

 【注3】再生可能エネルギー、医療など。

(5)再生可能エネルギー
 固定価格買取制度の実現のために、所得に配慮しつつ電力料金を引き上げる。

(6)復興債
 以上の施策を実施しても財源が不足する部分について、復興債を発行する。と同時に、借換債について永久債を発行し、売買禁止を前提に日銀引き受け等によって調達する。

 以上、金子勝(慶應義塾大学教授)「後戻りせず、前に進もう -日本復興計画の提言」(「世界」2011年5月号)に拠る。

  *

 河野太郎衆議院議員によれば、公益財団法人原子力環境整備促進・資金管理センターは、典型的な「原子力村」天下り組織だ。3兆円の積立金を保有し、うち2兆4,491億円が使用済燃料再処理等積立金だ。今回の事故で再処理や核燃リサイクルの先行きは不透明で、積立金が使用されない可能性がある。ならば、法改正して賠償金に充てるべきだ。原発関連団体を精査し、さらなる埋蔵金を掘り起こしたい、云々。

 北沢栄(ジャーナリスト)によれば、特別会計から、年金・労働保険資金を除く積立金や剰余金をかき集めると、ざっと50兆円になる。たとえば、外国為替資金特別会計の積立金は20.5兆円だ。さらに、財政投融資、エネルギーなど各特別会計が内部留保している積立金も莫大な額にのぼる、云々。

 以上、記事「原子力村の埋蔵金3兆円を賠償に充てろ」(「サンデー毎日」2011年5月1日号)に拠る。
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【震災】漁業を再生させる新たなしくみ ~米国CSA運動に学ぶ~

2011年04月20日 | 震災・原発事故
 「3万5,000kmあまりの海岸線をもつわが国には、平均して12kmごとに2,914の漁港があり、18万隻の漁船が魚を追いかけている。そして海岸線5.6kmごとに6,298の漁村集落がある。ここに生きる20万人余の漁業就業の懸命の努力によって私たちの食卓は支えられ、漁食文化はかろうじて保たれてきたのである」
 大震災と大津波に打ちのめされ、住み慣れた海辺の町に背を向けて新しい人生を歩もうと決意しはじめた漁師たちに、私たちの明日の食卓のために漁を再開してほしい、と頼むことは可能か。できるとすれば、具体的にはどんなことがあるか。

 そのヒントは、近年米国で急速に広がっているCSA運動にある。CSA(Community Supported Agriculture)は、「地域で支えあう農業」とでも訳すべきものだ。大規模単一栽培が主な米国農業の中で、多品種少量生産の家族農業を応援し、農村環境を保全しながら、地域社会を維持しようとする運動だ。
 「グローバル化で歪んでしまった食と環境コミュニティを健全なものに回復させようと始まったアメリカのCSA運動は、全米で1万3,000農場で取り組まれており、質の高い食材を生産する小農を守ろうとはじまったイタリアのスローフード運動や韓国の身土不二運動、日本の地産地消運動とも共通するものがあるが、CSAは消費者と農業者の結びつきが一歩も二歩も深くつながっている」
 契約関係を前提としている。農作業作付け前に消費者と農家が話し合って農作物代金を1年分前払いする。年間600ドルが一般的だ。前払いされた農家は、安心して生産に勤しむことができる。しかも、冷害など不作の時は、契約上、返金しなくてよい。農業は、自然相手のリスクの高い仕事だ、という認識が米国の消費者に広がっているからだ。このリスクを生産者だけに負担させず、消費者もリスクを負担するのだ。
 CSA運動は、格差社会への配慮も行っている。低所得者で参加したい消費者には、割引するし、払えない分は労働(雑草取り・収穫・配達など)による交換を積極的に進めている。

 「このようなしくみを海辺の町の再生に活用することはできないだろうか。私たちにかわって魚をとってくれる漁師さんに月々5,000円の会員が1年分の6万円を前払いして、これが200世帯集まると1,200万円になる。これを新造船の費用や油代、労働費その他の費用にあて、消費者は毎月5,000円分の魚を受け取る」
 結城登美雄は、宮城県旧鳴子町の山間地で、「鳴子の米プロジェクト」を始めて5年になる。
 「食べる人々が米を作る農家を支えている。魚についても可能性はあると思うがどうだろうか」

 以上、結城登美雄(民俗研究家)「漁業の再生と食の未來」(「世界」2011年5月号)に拠る。
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