「エコナ」(花王)は、発癌性が問題となって製造発売中止が続いている。
が、食品安全委員会における安全性評価は継続されていた。
7月7日、ほぼ2年ぶりのワーキンググループで示された評価書案では、
「エコナ」はすでに流通していない、
新たなデータは入手できない、
といった理由で「評価は困難」と結論された。
しかし、過去に「エコナ」を食べた人たちのリスクはどうなのか? この評価書案どおりでいけば、「評価不能」とされてしまう。
「エコナ」の安全性が問題とされたのは、「エコナ」の主成分(80%)「ジアシルグリセロール」に発癌促進作用の可能性が指摘されたことに始まる。
2005年に癌になりやすいラットを使った発癌実験(念のために実施された)で、舌癌増加を示唆する結果が出た。
その後、主に「ジアシルグリセロール」の安全性について審議が行われ、追加の動物実験の結果は灰色だった。
2009年、製造過程の不純物として「グリシドール脂肪酸エステル(GE)」が混入していることが判明した。この物質は体内で分解され、「グリシドール」(発癌物質)になる。その段階で花王は「エコナ」の製造販売中止を決定し、特定保健用食品(トクホ)としての許可も失効した。
その後、不純物のGEの安全性に焦点をあてて、食品安全委員会における評価が続けられた。
今回の会議における評価書案では、「エコナ」の安全性は評価不能としながら、その主成分「ジアシルグリセロール」の発癌促進作用はシロ、GEの発癌性はクロという結果が示された。
また、GEは、普通の食用油にも少しばかり含まれるが、それによる発癌リスクは「きわめて小さい」とされている。
GEを大量に含む「エコナ」を過去に食べた人の発癌リスクについて、会議の記者向けブリーフィングで次のような説明があり、過去のリスクは示されないままになりそうだ。
<個々人の摂取の形態が違うし、揚げ油などは評価が難しい。安全サイドに立つと、過度な評価になってしまい、数値が独り歩きすると困るので出さない>【山添康・座長】
<基本的に食べた人たちへのケアはリスク管理機関(厚労省)の仕事だ>【姫田尚・事務局長】
さらに、花王が、問題となったGEを一般食用油並みに減らした 「エコナ」を再販売する可能性が出てきた。
その点について、<通常のトクホに要求される試験でクリアすれば許可されるだろう>【姫田事務局長】
しかし、 「エコナ」の発癌性の原因はすべてGEのせいだ、と言い切れるのか。
評価書案では、「ジアシルグリセロール」はシロとなっているが、過去の会議の議事録によれば、結論が出ているとは言いがたい。
審議の途中で明らかな発癌性物質の混入が判明したので、そちらに議論がシフトしたが、明らかな発癌性物質を除去したから安全と断言できるのか?
「ジアシルグリセロール」は、食経験が十分にない食用油成分だ。動物実験をしようにも、摂取量が少ない食品添加物や農薬のように、人の摂取量の100倍超の高用量の試験は不可能だ。
だとすれば、新「エコナ」が申請された場合、過去に発癌性が見え隠れした発癌感受性の高い動物実験で再度確認することが不可欠ではないか?
□植田武智(科学ジャーナリスト)「花王「エコナ」が復活か? 2年ぶりに食品安全委員会の評価再開」(「週刊金曜日」2014年7月18日号)
↓クリック、プリーズ。↓
が、食品安全委員会における安全性評価は継続されていた。
7月7日、ほぼ2年ぶりのワーキンググループで示された評価書案では、
「エコナ」はすでに流通していない、
新たなデータは入手できない、
といった理由で「評価は困難」と結論された。
しかし、過去に「エコナ」を食べた人たちのリスクはどうなのか? この評価書案どおりでいけば、「評価不能」とされてしまう。
「エコナ」の安全性が問題とされたのは、「エコナ」の主成分(80%)「ジアシルグリセロール」に発癌促進作用の可能性が指摘されたことに始まる。
2005年に癌になりやすいラットを使った発癌実験(念のために実施された)で、舌癌増加を示唆する結果が出た。
その後、主に「ジアシルグリセロール」の安全性について審議が行われ、追加の動物実験の結果は灰色だった。
2009年、製造過程の不純物として「グリシドール脂肪酸エステル(GE)」が混入していることが判明した。この物質は体内で分解され、「グリシドール」(発癌物質)になる。その段階で花王は「エコナ」の製造販売中止を決定し、特定保健用食品(トクホ)としての許可も失効した。
その後、不純物のGEの安全性に焦点をあてて、食品安全委員会における評価が続けられた。
今回の会議における評価書案では、「エコナ」の安全性は評価不能としながら、その主成分「ジアシルグリセロール」の発癌促進作用はシロ、GEの発癌性はクロという結果が示された。
また、GEは、普通の食用油にも少しばかり含まれるが、それによる発癌リスクは「きわめて小さい」とされている。
GEを大量に含む「エコナ」を過去に食べた人の発癌リスクについて、会議の記者向けブリーフィングで次のような説明があり、過去のリスクは示されないままになりそうだ。
<個々人の摂取の形態が違うし、揚げ油などは評価が難しい。安全サイドに立つと、過度な評価になってしまい、数値が独り歩きすると困るので出さない>【山添康・座長】
<基本的に食べた人たちへのケアはリスク管理機関(厚労省)の仕事だ>【姫田尚・事務局長】
さらに、花王が、問題となったGEを一般食用油並みに減らした 「エコナ」を再販売する可能性が出てきた。
その点について、<通常のトクホに要求される試験でクリアすれば許可されるだろう>【姫田事務局長】
しかし、 「エコナ」の発癌性の原因はすべてGEのせいだ、と言い切れるのか。
評価書案では、「ジアシルグリセロール」はシロとなっているが、過去の会議の議事録によれば、結論が出ているとは言いがたい。
審議の途中で明らかな発癌性物質の混入が判明したので、そちらに議論がシフトしたが、明らかな発癌性物質を除去したから安全と断言できるのか?
「ジアシルグリセロール」は、食経験が十分にない食用油成分だ。動物実験をしようにも、摂取量が少ない食品添加物や農薬のように、人の摂取量の100倍超の高用量の試験は不可能だ。
だとすれば、新「エコナ」が申請された場合、過去に発癌性が見え隠れした発癌感受性の高い動物実験で再度確認することが不可欠ではないか?
□植田武智(科学ジャーナリスト)「花王「エコナ」が復活か? 2年ぶりに食品安全委員会の評価再開」(「週刊金曜日」2014年7月18日号)
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