中国食品の安全性が問題となる事件がまた明らかになった【注】。その「上海福喜食品」の取引先に、日本のマクドナルドとファミリーマートが含まれていた。
過去にも中国食品問題はいろいろ起きたが、今回は今までとはかなり異質で衝撃的な事件だ。なぜ異質か。
(1)映像・・・・床に落ちたナゲットや肉の塊を拾い上げて戻すシーンと、青く変色した牛肉は、衛生面に神経質な女性客にとって許されない行為だ。しかも、落ちた鶏肉も変色した牛肉も大量だった。この映像で、中国は女性を敵にしてしまった。これが新聞記事などの活字や写真だけだったら、こんな大事件にはなっていない。
(2)会社ぐるみの大偽装事件、かつ、欺された相手が米国のマクドナルドとケンタッキー・・・・世界のビッグネームの大企業がまんまと欺されたのだ。検査時だけは整然と作業をこなし、虚像の世界を組織ぐるみで演出する。ならば、欺した中国人は痛快かというと、そうではない。最終的に欺されたのは、マクドナルドやケンタッキーの客である中国人の消費者だからだ。
上海福喜食品は、HACCP(食品の安全管理システム)の認定工場だ。上海市からも安全工場として表彰されている(現在、上海市は表彰の報道を否定している)。設備も技術も、それを生かすことができる従業員や作業員がいた。
企業の金儲け主義と、従業員や作業員のモラル欠如も原因だろう。
7月29日、日本マクドナルドは「安心・安全な商品を提供するための取り組みの強化」策を3つ発表した。
(a)メニューの原材料の最終加工国、主要原料原産国の情報公開。
(b)サプライヤーへの臨時追加監査の実施と毎月の現場での作業確認の実施。
(c)中国製製品と、タイ製チキン製品の日本国内での品質検査を高頻度に実施。
しかし、(a)はHP上の公開だけだ。消費者は、買うとき、注文するときに情報を得たいのだ。HPをわざわざ見る人は少ない。店頭での公表でなければ、本当の公表にならない。
(b)は、これで偽装を本当に防ぐことができるのか、疑問だ。逆に、安全面でのコストが増えることで製造コスト圧力が強くなれば、また欺そうとするかもしれない。コストと安全のバランスは非常に難しい問題だが、最低限の対策(監視カメラを導入して常時関する体制)ぐらいはしないと、消費者は戻ってこないかもしれない。
(c)は、これで今回のような事件を防ぐことができるか。期限切れの材料を5%程度しか混入されていない商品を細菌分析しても検出できまい。今回の事件は、検査程度で解決できない。しかも、監査していないときの状態が問題になっているのだ。
しかも、今回の事件は日本マクドナルドの子会社ではなく、他社の工場が引き起こした事件なのだ。もっと踏み込んだ対策はとれない。
問題は、組織犯罪をどうやって防ぐか、ということになる。相手は欺そうとするのだ。性悪説で防止策を考えるしかない。
テレビでは語られない問題もある。「秘密倉庫」(3つあるらしい)のことだ。
敷地外の常温倉庫で、他社の箱に入った冷凍鶏肉を「上海福喜食品」の箱に詰め替えていた。この鶏肉を手羽先と伝えたマスコミもあるが、手羽元や他の部位の可能性もある。で、その詰め替えられた鶏肉は、どの企業に納入されたか。
中国側の正式発表がないのではっきりしないが、日本には来てないらしい。もし、納入先がわかっているのに公表しないのなら、「よほど小さい会社で公表しても影響が少ない」か、逆に「かなり大きな会社なので影響が大きすぎて公表できない」のか、どちらかだ。
公表されないことが多すぎて、全容が見えてこない。
この事件の扱いに一番困っているのは中国政府だ。この事件で浮き彫りにされた中国問題はいろいろあるが、今一番注目すべきは、中国政府がどんな幕引きをするか、だ。おそらく多くのことがウヤムヤにされたまま終わるだろう。
【注】
「【中国】チキンの恐怖 ~ファストフード、ファミレス12社~」
「【食】中国の鶏肉問題--流通のグローバル化で食の安全はますます困難に」
「【中国】チキンの恐怖 ~日本マクドナルドの中国産鶏肉の危険性~」
□垣田達哉「【食】上海福喜食品・期限切れ原料偽装事件 ~“ブラックホール“化する中国食品~」(「週刊金曜日」2014年8月8・15日合併号)
↓クリック、プリーズ。↓
【参考】
「【中国】チキンの恐怖 ~ファストフード、ファミレス12社~」
「【食】中国の鶏肉問題--流通のグローバル化で食の安全はますます困難に」
「【中国】チキンの恐怖 ~日本マクドナルドの中国産鶏肉の危険性~」
「【中国】習近平、見えてきた独裁者の正体 ~外交・内政・軍事・経済~」
「【中国】システムの危機と上部からの腐敗 ~老化する大国(3)~ 」
「【中国】党指導部はゲームの脇役 ~老化する大国(2)~ 」
「【中国】共産主義の崩壊と伝統的家族への回帰 ~老化する大国(1)~」
「【中国】低迷する経済 ~習近平政権の1年~」
「【中国】現地取材で痛感 やっぱり危ない中国産食品」
「【中国】実録・猛毒食品「僕らだって怖い!」 ~中国人は語る~」
「【食】添加物の危険性 ~煮付け油揚げ~」
「【食】危険な除草剤の増加 ~除草剤耐性GM作物~」
「【食】イオンの産地偽装 ~中国猛毒米~」
「【中国】汚染大国 ~PM2.5、農薬、重金属まみれの野菜~」
「【食】中国における食品汚染事件 ~悪質ケース50(抄)~」
「【食】「危ない中国産」を見破る法 ~ジュース・菓子~」
「【食】中国産ウナギ肝から国際基準の1.5倍のカドニウム」
「【食】外食、どのメニューに中国産が入っているか ~中国食品を見破れ(3)~」
「【食】安いものにはウラがある ~成型肉の添加物~」
「【食】中国産から身を守るためのQ&A ~中国食品を見破れ(2)~」
「【食】中国食品を見破れ ~スーパー・外食~」
「【食】中国猛毒食品(2) ~アサリ・エビ・ピーナッツ・漬物・ウナギ~」
「【食】中国猛毒食品 ~絶対に食べてはいけない遺伝子組み換え米~」
「【中国】影の銀行つぶし ~アベノミクスの行方を左右する中国の政策~」
「【中国】凄まじい貧富の格差」
「【中国】政経一体システム ~今後どうビジネスを展開するか~」
「【中国】政府から独立している軍隊 ~尖閣をめぐる軍事的問題~」
「【中国】外交と国内問題との関係 ~今後の展望~」
「【中国】改善されない環境問題 ~大気汚染・水質汚染・食品汚染~」
「【中国】恐るべき階級社会 ~農村戸籍と都市戸籍~」
「【中国】5大リスク ~不衛生・格差・バブル崩壊・少子高齢化・軍の暴走~」
「【食】中国産鶏肉の危険(2) ~有機塩素・残留ホルモン~」
「【食】日本マクドナルドが輸入する中国産鶏肉の危険 ~抗生物質~」
「【食】中国産食材は大丈夫か? 日本の外食産業は?」
「【食】【TPP】原産地表示の抜け道 ~食のグローバル化~」
「【食】中国食品の有害物質混入、表示偽装 ~黒心食品~」
「【食】中国産薬漬け・病気鶏肉を輸入する日本マクドナルド・その後」
「【食】中国産薬漬け・病気鶏肉を輸入する日本マクドナルド」
過去にも中国食品問題はいろいろ起きたが、今回は今までとはかなり異質で衝撃的な事件だ。なぜ異質か。
(1)映像・・・・床に落ちたナゲットや肉の塊を拾い上げて戻すシーンと、青く変色した牛肉は、衛生面に神経質な女性客にとって許されない行為だ。しかも、落ちた鶏肉も変色した牛肉も大量だった。この映像で、中国は女性を敵にしてしまった。これが新聞記事などの活字や写真だけだったら、こんな大事件にはなっていない。
(2)会社ぐるみの大偽装事件、かつ、欺された相手が米国のマクドナルドとケンタッキー・・・・世界のビッグネームの大企業がまんまと欺されたのだ。検査時だけは整然と作業をこなし、虚像の世界を組織ぐるみで演出する。ならば、欺した中国人は痛快かというと、そうではない。最終的に欺されたのは、マクドナルドやケンタッキーの客である中国人の消費者だからだ。
上海福喜食品は、HACCP(食品の安全管理システム)の認定工場だ。上海市からも安全工場として表彰されている(現在、上海市は表彰の報道を否定している)。設備も技術も、それを生かすことができる従業員や作業員がいた。
企業の金儲け主義と、従業員や作業員のモラル欠如も原因だろう。
7月29日、日本マクドナルドは「安心・安全な商品を提供するための取り組みの強化」策を3つ発表した。
(a)メニューの原材料の最終加工国、主要原料原産国の情報公開。
(b)サプライヤーへの臨時追加監査の実施と毎月の現場での作業確認の実施。
(c)中国製製品と、タイ製チキン製品の日本国内での品質検査を高頻度に実施。
しかし、(a)はHP上の公開だけだ。消費者は、買うとき、注文するときに情報を得たいのだ。HPをわざわざ見る人は少ない。店頭での公表でなければ、本当の公表にならない。
(b)は、これで偽装を本当に防ぐことができるのか、疑問だ。逆に、安全面でのコストが増えることで製造コスト圧力が強くなれば、また欺そうとするかもしれない。コストと安全のバランスは非常に難しい問題だが、最低限の対策(監視カメラを導入して常時関する体制)ぐらいはしないと、消費者は戻ってこないかもしれない。
(c)は、これで今回のような事件を防ぐことができるか。期限切れの材料を5%程度しか混入されていない商品を細菌分析しても検出できまい。今回の事件は、検査程度で解決できない。しかも、監査していないときの状態が問題になっているのだ。
しかも、今回の事件は日本マクドナルドの子会社ではなく、他社の工場が引き起こした事件なのだ。もっと踏み込んだ対策はとれない。
問題は、組織犯罪をどうやって防ぐか、ということになる。相手は欺そうとするのだ。性悪説で防止策を考えるしかない。
テレビでは語られない問題もある。「秘密倉庫」(3つあるらしい)のことだ。
敷地外の常温倉庫で、他社の箱に入った冷凍鶏肉を「上海福喜食品」の箱に詰め替えていた。この鶏肉を手羽先と伝えたマスコミもあるが、手羽元や他の部位の可能性もある。で、その詰め替えられた鶏肉は、どの企業に納入されたか。
中国側の正式発表がないのではっきりしないが、日本には来てないらしい。もし、納入先がわかっているのに公表しないのなら、「よほど小さい会社で公表しても影響が少ない」か、逆に「かなり大きな会社なので影響が大きすぎて公表できない」のか、どちらかだ。
公表されないことが多すぎて、全容が見えてこない。
この事件の扱いに一番困っているのは中国政府だ。この事件で浮き彫りにされた中国問題はいろいろあるが、今一番注目すべきは、中国政府がどんな幕引きをするか、だ。おそらく多くのことがウヤムヤにされたまま終わるだろう。
【注】
「【中国】チキンの恐怖 ~ファストフード、ファミレス12社~」
「【食】中国の鶏肉問題--流通のグローバル化で食の安全はますます困難に」
「【中国】チキンの恐怖 ~日本マクドナルドの中国産鶏肉の危険性~」
□垣田達哉「【食】上海福喜食品・期限切れ原料偽装事件 ~“ブラックホール“化する中国食品~」(「週刊金曜日」2014年8月8・15日合併号)
↓クリック、プリーズ。↓
【参考】
「【中国】チキンの恐怖 ~ファストフード、ファミレス12社~」
「【食】中国の鶏肉問題--流通のグローバル化で食の安全はますます困難に」
「【中国】チキンの恐怖 ~日本マクドナルドの中国産鶏肉の危険性~」
「【中国】習近平、見えてきた独裁者の正体 ~外交・内政・軍事・経済~」
「【中国】システムの危機と上部からの腐敗 ~老化する大国(3)~ 」
「【中国】党指導部はゲームの脇役 ~老化する大国(2)~ 」
「【中国】共産主義の崩壊と伝統的家族への回帰 ~老化する大国(1)~」
「【中国】低迷する経済 ~習近平政権の1年~」
「【中国】現地取材で痛感 やっぱり危ない中国産食品」
「【中国】実録・猛毒食品「僕らだって怖い!」 ~中国人は語る~」
「【食】添加物の危険性 ~煮付け油揚げ~」
「【食】危険な除草剤の増加 ~除草剤耐性GM作物~」
「【食】イオンの産地偽装 ~中国猛毒米~」
「【中国】汚染大国 ~PM2.5、農薬、重金属まみれの野菜~」
「【食】中国における食品汚染事件 ~悪質ケース50(抄)~」
「【食】「危ない中国産」を見破る法 ~ジュース・菓子~」
「【食】中国産ウナギ肝から国際基準の1.5倍のカドニウム」
「【食】外食、どのメニューに中国産が入っているか ~中国食品を見破れ(3)~」
「【食】安いものにはウラがある ~成型肉の添加物~」
「【食】中国産から身を守るためのQ&A ~中国食品を見破れ(2)~」
「【食】中国食品を見破れ ~スーパー・外食~」
「【食】中国猛毒食品(2) ~アサリ・エビ・ピーナッツ・漬物・ウナギ~」
「【食】中国猛毒食品 ~絶対に食べてはいけない遺伝子組み換え米~」
「【中国】影の銀行つぶし ~アベノミクスの行方を左右する中国の政策~」
「【中国】凄まじい貧富の格差」
「【中国】政経一体システム ~今後どうビジネスを展開するか~」
「【中国】政府から独立している軍隊 ~尖閣をめぐる軍事的問題~」
「【中国】外交と国内問題との関係 ~今後の展望~」
「【中国】改善されない環境問題 ~大気汚染・水質汚染・食品汚染~」
「【中国】恐るべき階級社会 ~農村戸籍と都市戸籍~」
「【中国】5大リスク ~不衛生・格差・バブル崩壊・少子高齢化・軍の暴走~」
「【食】中国産鶏肉の危険(2) ~有機塩素・残留ホルモン~」
「【食】日本マクドナルドが輸入する中国産鶏肉の危険 ~抗生物質~」
「【食】中国産食材は大丈夫か? 日本の外食産業は?」
「【食】【TPP】原産地表示の抜け道 ~食のグローバル化~」
「【食】中国食品の有害物質混入、表示偽装 ~黒心食品~」
「【食】中国産薬漬け・病気鶏肉を輸入する日本マクドナルド・その後」
「【食】中国産薬漬け・病気鶏肉を輸入する日本マクドナルド」