カントが生きた18世紀ヨーロッパでは、王権、領土、商益などをめぐって、のべつ戦争があった。どの国も軍備増強に狂奔して、戦争産業と、戦争資金を貸し付ける金融業が大きく伸びた。
当時70歳超の老哲学者が『永遠平和のために』を書いたのは、やむにやまれぬ思いからだった。この小冊子は、世界に大きく影響した。国際連合のもとになり、日本国憲法第9条の基本的理念となった。
カントの平和論の並外れた特徴は、200年以上も前に書かれたものでありながら、おそろしく現代的であることだ。
<例>カントは「行動派を自称する政治家」について語っているが、「迅速な決断」を語りつつ、考えていることは
(1)現在の世界を「支配している権力」に寄り添い、かつ、
(2)「自分の利益を失わない」こと。
彼らの信条は次の3点。
(a)まず実行、その後に正当化。
(b)過ちと分かれば責任転嫁。
(c)ライバル同士を離反させて支配。
直ちに、身近なあの人、あの政治家が浮かんでくるではないか。
さらにカントは、200年余も後の情報化社会を見通したようにいう。
① 地上の民族にあって、すでに「共同の意識」は行き渡っており、
② 「地球上のどこかで生じた法の侵害」は、どこであれ等しく感じ取れる。
③ 永遠平和は、空虚な理念ではなく、「われわれに課せられた使命」なのだ。
第二次世界大戦後、ヨーロッパは60年に及んで議論を重ね、ヨーロッパ連合を結び、常に関係国間の対話を絶やさない(カント理念の実践)。
一方日本では、安倍政権誕生後、声高く一定の方向へ誘導する言説がマスコミをにぎわせ、国民をおびえさせる手法がまかり通っている。
□池内紀「永遠平和の使命について 今、カントを読む」(「日本海新聞」2014年8月15日)
□イマヌエル・カント(池内紀・訳)『永遠平和のために』(集英社、2007)
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当時70歳超の老哲学者が『永遠平和のために』を書いたのは、やむにやまれぬ思いからだった。この小冊子は、世界に大きく影響した。国際連合のもとになり、日本国憲法第9条の基本的理念となった。
カントの平和論の並外れた特徴は、200年以上も前に書かれたものでありながら、おそろしく現代的であることだ。
<例>カントは「行動派を自称する政治家」について語っているが、「迅速な決断」を語りつつ、考えていることは
(1)現在の世界を「支配している権力」に寄り添い、かつ、
(2)「自分の利益を失わない」こと。
彼らの信条は次の3点。
(a)まず実行、その後に正当化。
(b)過ちと分かれば責任転嫁。
(c)ライバル同士を離反させて支配。
直ちに、身近なあの人、あの政治家が浮かんでくるではないか。
さらにカントは、200年余も後の情報化社会を見通したようにいう。
① 地上の民族にあって、すでに「共同の意識」は行き渡っており、
② 「地球上のどこかで生じた法の侵害」は、どこであれ等しく感じ取れる。
③ 永遠平和は、空虚な理念ではなく、「われわれに課せられた使命」なのだ。
第二次世界大戦後、ヨーロッパは60年に及んで議論を重ね、ヨーロッパ連合を結び、常に関係国間の対話を絶やさない(カント理念の実践)。
一方日本では、安倍政権誕生後、声高く一定の方向へ誘導する言説がマスコミをにぎわせ、国民をおびえさせる手法がまかり通っている。
□池内紀「永遠平和の使命について 今、カントを読む」(「日本海新聞」2014年8月15日)
□イマヌエル・カント(池内紀・訳)『永遠平和のために』(集英社、2007)
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