語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【集団的自衛権】vs.カント ~永遠平和の使命~

2014年08月16日 | 批評・思想
 カントが生きた18世紀ヨーロッパでは、王権、領土、商益などをめぐって、のべつ戦争があった。どの国も軍備増強に狂奔して、戦争産業と、戦争資金を貸し付ける金融業が大きく伸びた。
 当時70歳超の老哲学者が『永遠平和のために』を書いたのは、やむにやまれぬ思いからだった。この小冊子は、世界に大きく影響した。国際連合のもとになり、日本国憲法第9条の基本的理念となった。

 カントの平和論の並外れた特徴は、200年以上も前に書かれたものでありながら、おそろしく現代的であることだ。
 <例>カントは「行動派を自称する政治家」について語っているが、「迅速な決断」を語りつつ、考えていることは
   (1)現在の世界を「支配している権力」に寄り添い、かつ、
   (2)「自分の利益を失わない」こと。
 彼らの信条は次の3点。
   (a)まず実行、その後に正当化。
   (b)過ちと分かれば責任転嫁。
   (c)ライバル同士を離反させて支配。
 直ちに、身近なあの人、あの政治家が浮かんでくるではないか。

 さらにカントは、200年余も後の情報化社会を見通したようにいう。
   ① 地上の民族にあって、すでに「共同の意識」は行き渡っており、
   ② 「地球上のどこかで生じた法の侵害」は、どこであれ等しく感じ取れる。
   ③ 永遠平和は、空虚な理念ではなく、「われわれに課せられた使命」なのだ。

 第二次世界大戦後、ヨーロッパは60年に及んで議論を重ね、ヨーロッパ連合を結び、常に関係国間の対話を絶やさない(カント理念の実践)。
 一方日本では、安倍政権誕生後、声高く一定の方向へ誘導する言説がマスコミをにぎわせ、国民をおびえさせる手法がまかり通っている。

□池内紀「永遠平和の使命について 今、カントを読む」(「日本海新聞」2014年8月15日)
□イマヌエル・カント(池内紀・訳)『永遠平和のために』(集英社、2007)
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