語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【NHK】が危ない! ~組織に漂う負の雰囲気~

2014年08月17日 | 社会
 NHKが危ない! 
 これまで何度も、幾人もの人が口にしてきたこの言葉。今回ほど、このフレーズがリアリティを持つことはなかった。
 NHK危機の元凶は、むろん籾井勝人・会長その人だが、
  彼の推挙にあたった経営委員会、
  就中「暴言」「愚論」を頻発する複数の委員たち、
  その彼らを任命した安倍晋三・首相
ということになろう。

 NHKの危機を憂慮する声は、籾井会長の罷免を求めるNHKのOBたちによって代表される。
 今では、それに励まされる現役職員も少なくない。
 この動きに他のメディアも注目し始め、OBの会は記者会見を準備【注】。

 NHK内部からも反乱の声が上がった。 
 公開を前提とするNHK経営委員会の議事録(4月22日)に、退任した2人の理事が、経営委員会に向けて異例の苦言を呈したのだ。要するに、会長を任命した経営委員会の責任を追及し、籾井会長の進退にけじめをつけろ、と述べた。
 (1)前理事A・・・・籾井の会長就任以来の混乱を「異常事態」と形容。放送局内に「負の雰囲気が漂い始めて」いると警告。
 (2)前理事B(広報担当)・・・・経営委員会に対して、「新執行部に対する管理監督の役割と責任を十全に果たしていただきたい」と訴。

 かくて、公共放送NHKは、複合リスクの中で身動きならない状態に陥っている。
 発信される情報、表現される内容が急速に説得力を失いつつある。

 いまや「NHKが危ない」は、「危ないNHK」に置き換えることができる。
 籾井の露出度は激減し、その分、舌禍事件の現場を見ることが少なくなった。
 しかし、それは瑣末なことで、深刻なのは、
  「日本軍慰安婦をめぐる歴史認識」
  「特定秘密保護法」
  「集団的自衛権の行使容認」
などに関するNHKの報道が、視聴者をないがしろにした「集団的暴走」に舵を切りつつあることだ。
 最近のNHKは、政府要人の「ゲストルーム」と化している。
  (a)集団的自衛権行使に係る「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」の報告書が出た5月15日、「ニュースウォッチ9」に、磯崎陽輔・首相補佐官(当事者中の当事者)が出演した。
  (b)行使容認の「閣議決定」から2日後(7月3日)、「クローズアップ現代」に管義偉・官房長官が登場した。
  (c)7月13日(この問題に係る衆参両院の「集中審議」を翌日、翌々日に控える)、今度は「NHKスペシャル」に、安倍晋三・首相をはじめとする与党幹部たちが登場し、閣議決定に至るまでの「水面下の攻防」を悲喜こもごも語った。タイトルは「集団的自衛権行使容認は何をもたらすか」だが、内容は苦労の末の「成功物語」にすぎなかった。・・・・そこに見え隠れするのは、永田町のプレーヤー(パイプ役)に励む政治部記者たちだ。

 【注】【OBにまで問題指摘されるNHK】NHKのOB157名がNHK会長辞任又は罷免求める署名を開始,先輩の方々まで憂えられる現在のNHK。

□神保太郎「メディア批評 第81回」(「世界」2014年9月号)の「(1)NHKが危ない!」
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