語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【安保】戦争プロパガンダ10の法則

2015年04月07日 | 批評・思想
(1)我々は戦争をしたくない。
(2)しかし敵側が一方的に戦争を望んだ。
(3)敵の指導者は悪魔のような人間だ。
(4)われわれは領土や覇権のためではなく、偉大な使命のために戦う。
(5)われわれも意図せざる犠牲を出すことがある。だが敵はわざと残虐行為におよんでいる。
(6)敵は卑劣な戦略や兵器を用いている。
(7)われわれの受けた被害は小さく、敵に与えた被害は甚大。
(8)芸術家や知識人もこの戦いを支持している。
(9)われわれの大義は神聖なものである。
(10)この正義に疑問を投げかける者は裏切り者である。

 以上は、国家による戦争プロパガンダの「法則」だ【注】。
 これをまとめたアーサー・ポンソンビーは、英国の貴族出身であり、自由党議員、労働党議員も歴任した。彼は、1871年生まれ。つまり、この10項目は第一次世界大戦における英国の策謀を中心にまとめたものだ。だが、その後のさまざまな戦争にも見事に当てはまる。

 異様な雰囲気を醸しだしつつ、「戦争をする国」に向けて暴走する安倍晋三・首相。彼の頭には、すでに「10の法則」が染みついているのではないか。積極的平和主義の名の下、正義を掲げた日本は敢然として卑劣な敵に戦いを挑む・・・・申すまでもなく、「敵」はまだどこにも存在しない。存在しなくても関係ないのであろう。仮想敵国どころか、夢想敵国であっても差し支えない。「偉大な使命のために戦う」のであれば、何でもいい・・・・らしく見える。

 集団的自衛権の関連法が整備されたら、安倍政権の戦争プロパガンダはますます勢いを増すだろう。
 2015年度の政府広報予算は83億円。対前年度比の、実に3割増だ。ちなみに、野田政権(民主党)時の2012年度は40億円だった。

 市民はいかに対抗すべきか。
 「権力は必ずウソをつく」という現実を肝に銘じておくことだ。デマの嵐をかいくぐり、真実にたどりつく。この作業を一人ひとりが主体的に行わなければならない。

 【注】アンヌ・モレリ(永田千奈・訳)『戦争プロパガンダ10の法則』(草思文庫、2015)

□北村肇「戦争プロパガンダ10の法則 ~風速計~」(「週刊金曜日」2015年3月27日号)
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【沖縄】辺野古対抗と「わが軍」 ~安倍政権の思考停止~

2015年04月07日 | 社会
 (1)3月6日以降の4週間、沖縄県政は、相変わらず米軍基地問題の対応に明け暮れた。
 新聞の一面で紹介されただけでも、
    10日、辺野古の新基地建設のアセスメントをめぐる沖縄防衛局の資料改竄問題発覚。 
    11日、沖縄防衛局の海上作業の監視開始。
    16日、飛行中のオスプレイから部品落下発覚。
    17日、米軍電子偵察機が飛行中にパネル落下発覚。
    20日、名護市辺野古の新基地建設現場調査を米軍へ再申請。
    21日、新基地建設に反対する県民集会への副知事参加。
    23日、米軍嘉手納基地跡地で見つかったドラム缶に高濃度の有害物質を検出。
    同日、翁長雄志知事が辺野古の作業停止を指示。

 (2)対する国政はというと、
    12日、 新基地建設に関連するボーリング調査再開。
のほかに、基地関連の対応はほとんど見えない。
 30日、林芳正・農林水産相は、翁長知事の作業停止指示について「無効」を通知したが、これは基地から派生する問題への取り組みというよりも、県政への対応と見るほうが正しいだろう。

 (3)新基地をめぐる問題のほかにも、
    相次ぐ米軍用機の事故
    返還された土地の汚染
など、沖縄は相変わらず基地から派生する問題に翻弄され続けている。
 これまでは、形式上であっても、事故へのコメントや日本政府と沖縄県の関係者協議の開催など関心を示してきた政府だが、安倍政権発足後、いわゆる基地問題への対応はピタリと止まった。
 <例>長年の働きかけにより日本政府は昨年10月、沖縄の基地負担軽減策として日米地位協定に環境条項を加える初改定を大筋合意したはずだ。しかし、その後に発生している環境問題について同条項が適用されたかどうか、まったく不透明なままだ。
 一方、たびたびテレビに登場した菅義偉・官房長官の発言からは、基地問題に対する政治の思考停止状態が万人の目に明らかだった。
    12日、記者にボーリング調査再開の意図を問われて、「(新基地建設を)粛々と進める」。
    23日、翁長知事の作業停止指示に対しても、「粛々と作業を進めていく」。
    24日、辺野古での海上作業について「本日も粛々と進めている」。
 同じ文言を無表情に繰り返す姿は、ガタがきたロボットのようだ。それは、沖縄との関係において安倍政権が、一切の政治を放棄した、というメッセージにほかならない。

 (4)では、政権の執る政治はどこへ向いているのか。
 政権発足時から活発な「外遊」か。
 「外交」ではないのは、やたら遠くの国に好んで出かけ、かつ、中国や韓国など複雑な交渉を要する隣国との対話が進まないところからも明らかだ。

 (5)国会での舌禍問題も相変わらず活発だ。
    17日、三原じゅん子参議院議員による「八紘一宇」発言。
    27日、参院予算委員会において安倍晋三・首相自身が自衛隊を「わが軍」と発言。
 極めて異質な発言も、以前なら出たであろう政権内や自民党内での異論は表に出てこない。野党が少し騒ぎ、いくつかの新聞とテレビ番組が申し訳ない程度に扱った以外、さしたる問題となっていない。
 今や安倍政権は何をしようが、まったくお咎めなしの裸の王様になってしまった。

□黒島美奈子「辺野古対抗と「わが軍」 安倍政権の思考停止 ~黒島美奈子の政治時評~」(「週刊金曜日」2015年4月3日号)
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 【参考】
【沖縄】の今(2) ~日米同盟の再構築へ向けて~
【沖縄】の今(1) ~東アジアの中の琉球~
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