(1)「健康食品」は、国内で2万種類が流通している。しかし、何が「健康食品」なのか、まったく定義されていない。
このうち政府が認めた制度は、次の三つ。
(a)特定保健用食品(トクホ)・・・・国が製品ごとに健康効果(機能)や安全性を審査、許可したもの。現在1,144品種。
(b)栄養機能食品・・・・効果が明確な栄養成分(ビタミンやミネラル)を補うためのもので、成分が基準値の範囲で含まれていれば、審査を受けることなく表示できる。
(c)機能性表示食品・・・・2015年4月に導入された新制度。効果の科学的根拠などを国に届け出れば、目や骨といった体の部位を挙げて健康効果を表示できる。
(2)健康効果はほとんどなく、あってもごくわずか。 ~第1の罪~
健康食品が表示したり、暗示する効果のほとんどに「科学的根拠」はない。トクホでさえ、効果はきわめて限定的だ。
国立健康・栄養研究所は健康食品の素材(製品ではない)に係る「安全性・有効性情報」をホームページで公開している。
<例1>俗に「美容によい」「骨・関節疾患に伴う症状の緩和によい」などとされるコラーゲン・・・・ヒトにおける有効性に係る信頼できるデータはない。
<例2>俗に「糖分の吸収や血糖値の上昇を抑える」といわれる「ギムネマ」・・・・ヒトにおける有効性や安全性に係る信頼できる十分なデータはない。
(3)品質がバラバラで、未知の科学物質があることも。 ~第2の罪~
健康食品は医薬品と異なり、きちんと製造されたものではないので、表示成分が含まれていないこともあれば、未表示成分が含まれていることも珍しくない。
表示されていても安心できない。
<例>内藤裕史・筑波大学名誉教授は、加齢性黄斑変性という治療法のない眼病を患っているが、勧められて(株)わかさ生活のブルーベリー製品を試したところ、2週間ほどして体のあちこちに発疹が現れた。すぐ服用を止めたが、メーカーによれば15種類の成分のうち「松の樹皮抽出物」が怪しいらしい。服用中止後も痒みとじくじくが続き、治るのに半年以上かかった。
ほとんどの健康食品には製剤化の家庭で多種類の未知の化学物質が混入、追加されていることを忘れてはならない。【内藤名誉教授】
(4)有毒成分を含むものがあり、健康被害が絶えない。 ~第3の罪~
健康食品の歴史は健康被害の歴史でもある。
<例1>2005年に起きたダイエット食品「天天素清脂?嚢」による(疑い)の健康被害では、東京都で死者が出た。分析すると、食欲抑制剤(向精神薬)のマジンドールと肥満症治療薬のシブトラミン(日本では未承認)が検出され、厚生労働省は絶対に服用しないよう呼びかけた。
<例2>摂りすぎると危険なものの一つが「茶カテキン」だ。茶カテキンを大量に摂取すると、肝障害発生の可能性がある。スペイン・フランスでは、茶カテキン・サプリメントを飲んだ13人に肝障害が発生し、2003年に発売禁止になった。米国・カナダでも重症の肝障害が発生し、肝移植を受けた患者まで出ている。
(5)抽出・濃縮・乾燥が問題を生むことも。 ~第4の罪~
自然の物だからといって安全とはいえない。抽出・濃縮・乾燥などによって問題を生むこともある。
<例>俗に「肝臓の機能を高める」と言われ、二日酔い予防に愛用することが多いウコンも、平安時代に中国から渡来したショウガ科の植物だ。ドリンク「ウコンの力」など多くの健康食品が発売されているが、その効果は「消化不良に対しては一部のヒトで有効性が示唆されているものの、その他に信頼できるデータは十分ではない」。安全性については、通常食事中に含まれる量の摂取であれば、おそらく安全だろうが、過剰または長期摂取では消化管障害を起こすことがある。
(6)薬と併用すると薬効が低下する。 ~第5の罪~
サプリと薬を一緒に飲むと、薬の効果が低下する場合がある。
<例1>マグネシウム・アルミニウム・鉄などのミネラルを一部の抗菌薬とともに摂取すると、両方とも吸収されにくくなる。
<例2>体にカリウムを溜め込む作用のある降圧剤や利尿剤を「カリウムを多く含むサプリ」(青汁・クロレラ・アガリクスなど)とともに飲むと「高カリウム血症」になって体がしびれるなどの症状が出るおそれがある。
(7)実態からかけ離れた広告・宣伝で消費者を惑わす ~第6の罪~
健康食品の広告・宣伝は薬事法(現・医薬品医療機器等法)や景品表示法の規制があるから、効果を直接訴えるようなことはできない。暗示し、ほのめかし、イメージで消費者の心を捉えようとする。が、いきすぎも少なくない。
東京都では、2014年度、店舗やネットで購入した125商品のうち125商品(84%)が法違反の疑いが濃い誇大・不適正な表示・広告をしていた。
不当な表示や広告がなくならない理由は、消費者庁が時々景品表示法違反で不当表示の再発防止を求める措置命令を出すだけで、野放しに近い状態で放置しているからだ(東京都は業者に改善命令を出すだけ)。連邦取引委員会(FTC)が強力な取り締まりをしている米国に遠く及ばない。
そのFTCは、2014年6月、ドコサヘキサエン酸(DHA)を有効成分とするサプリの記憶力改善効果の表示広告について、科学的根拠が不十分で虚偽表示に当たると決定、事業者も虚偽であることを受けいれた、と発表した。
(8)悪徳商法の材料となり、経済被害が急増。 ~第7の罪~
健康商品で健康は買えない。これさえ飲めば食事は気まま、というようなものはない。「機能性表示食品」は体の部位を挙げて効果的な文言を表示できるようになるというが、どんな効果があるか、事業者にしつこく問い合わせることを繰り返すべきだ。栄養機能食品に指定されているビタミンやミネラルにはそれなりの保健効果ががるが、これらも適切な食事で必要量を摂取できる。「適度に動く・寝る・食べる」が健康管理の基本だ。
□岡田幹治「七つの大罪 ~健康食品で本当に健康になれますか? アホノミクスで2兆円規模の成長産業~」(「週刊金曜日」2015年4月17日号)
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このうち政府が認めた制度は、次の三つ。
(a)特定保健用食品(トクホ)・・・・国が製品ごとに健康効果(機能)や安全性を審査、許可したもの。現在1,144品種。
(b)栄養機能食品・・・・効果が明確な栄養成分(ビタミンやミネラル)を補うためのもので、成分が基準値の範囲で含まれていれば、審査を受けることなく表示できる。
(c)機能性表示食品・・・・2015年4月に導入された新制度。効果の科学的根拠などを国に届け出れば、目や骨といった体の部位を挙げて健康効果を表示できる。
(2)健康効果はほとんどなく、あってもごくわずか。 ~第1の罪~
健康食品が表示したり、暗示する効果のほとんどに「科学的根拠」はない。トクホでさえ、効果はきわめて限定的だ。
国立健康・栄養研究所は健康食品の素材(製品ではない)に係る「安全性・有効性情報」をホームページで公開している。
<例1>俗に「美容によい」「骨・関節疾患に伴う症状の緩和によい」などとされるコラーゲン・・・・ヒトにおける有効性に係る信頼できるデータはない。
<例2>俗に「糖分の吸収や血糖値の上昇を抑える」といわれる「ギムネマ」・・・・ヒトにおける有効性や安全性に係る信頼できる十分なデータはない。
(3)品質がバラバラで、未知の科学物質があることも。 ~第2の罪~
健康食品は医薬品と異なり、きちんと製造されたものではないので、表示成分が含まれていないこともあれば、未表示成分が含まれていることも珍しくない。
表示されていても安心できない。
<例>内藤裕史・筑波大学名誉教授は、加齢性黄斑変性という治療法のない眼病を患っているが、勧められて(株)わかさ生活のブルーベリー製品を試したところ、2週間ほどして体のあちこちに発疹が現れた。すぐ服用を止めたが、メーカーによれば15種類の成分のうち「松の樹皮抽出物」が怪しいらしい。服用中止後も痒みとじくじくが続き、治るのに半年以上かかった。
ほとんどの健康食品には製剤化の家庭で多種類の未知の化学物質が混入、追加されていることを忘れてはならない。【内藤名誉教授】
(4)有毒成分を含むものがあり、健康被害が絶えない。 ~第3の罪~
健康食品の歴史は健康被害の歴史でもある。
<例1>2005年に起きたダイエット食品「天天素清脂?嚢」による(疑い)の健康被害では、東京都で死者が出た。分析すると、食欲抑制剤(向精神薬)のマジンドールと肥満症治療薬のシブトラミン(日本では未承認)が検出され、厚生労働省は絶対に服用しないよう呼びかけた。
<例2>摂りすぎると危険なものの一つが「茶カテキン」だ。茶カテキンを大量に摂取すると、肝障害発生の可能性がある。スペイン・フランスでは、茶カテキン・サプリメントを飲んだ13人に肝障害が発生し、2003年に発売禁止になった。米国・カナダでも重症の肝障害が発生し、肝移植を受けた患者まで出ている。
(5)抽出・濃縮・乾燥が問題を生むことも。 ~第4の罪~
自然の物だからといって安全とはいえない。抽出・濃縮・乾燥などによって問題を生むこともある。
<例>俗に「肝臓の機能を高める」と言われ、二日酔い予防に愛用することが多いウコンも、平安時代に中国から渡来したショウガ科の植物だ。ドリンク「ウコンの力」など多くの健康食品が発売されているが、その効果は「消化不良に対しては一部のヒトで有効性が示唆されているものの、その他に信頼できるデータは十分ではない」。安全性については、通常食事中に含まれる量の摂取であれば、おそらく安全だろうが、過剰または長期摂取では消化管障害を起こすことがある。
(6)薬と併用すると薬効が低下する。 ~第5の罪~
サプリと薬を一緒に飲むと、薬の効果が低下する場合がある。
<例1>マグネシウム・アルミニウム・鉄などのミネラルを一部の抗菌薬とともに摂取すると、両方とも吸収されにくくなる。
<例2>体にカリウムを溜め込む作用のある降圧剤や利尿剤を「カリウムを多く含むサプリ」(青汁・クロレラ・アガリクスなど)とともに飲むと「高カリウム血症」になって体がしびれるなどの症状が出るおそれがある。
(7)実態からかけ離れた広告・宣伝で消費者を惑わす ~第6の罪~
健康食品の広告・宣伝は薬事法(現・医薬品医療機器等法)や景品表示法の規制があるから、効果を直接訴えるようなことはできない。暗示し、ほのめかし、イメージで消費者の心を捉えようとする。が、いきすぎも少なくない。
東京都では、2014年度、店舗やネットで購入した125商品のうち125商品(84%)が法違反の疑いが濃い誇大・不適正な表示・広告をしていた。
不当な表示や広告がなくならない理由は、消費者庁が時々景品表示法違反で不当表示の再発防止を求める措置命令を出すだけで、野放しに近い状態で放置しているからだ(東京都は業者に改善命令を出すだけ)。連邦取引委員会(FTC)が強力な取り締まりをしている米国に遠く及ばない。
そのFTCは、2014年6月、ドコサヘキサエン酸(DHA)を有効成分とするサプリの記憶力改善効果の表示広告について、科学的根拠が不十分で虚偽表示に当たると決定、事業者も虚偽であることを受けいれた、と発表した。
(8)悪徳商法の材料となり、経済被害が急増。 ~第7の罪~
健康商品で健康は買えない。これさえ飲めば食事は気まま、というようなものはない。「機能性表示食品」は体の部位を挙げて効果的な文言を表示できるようになるというが、どんな効果があるか、事業者にしつこく問い合わせることを繰り返すべきだ。栄養機能食品に指定されているビタミンやミネラルにはそれなりの保健効果ががるが、これらも適切な食事で必要量を摂取できる。「適度に動く・寝る・食べる」が健康管理の基本だ。
□岡田幹治「七つの大罪 ~健康食品で本当に健康になれますか? アホノミクスで2兆円規模の成長産業~」(「週刊金曜日」2015年4月17日号)
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