語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【詩歌】村野四郎を読む(4) ~鹿~

2015年04月28日 | 詩歌
 鹿は 森のはずれの
 夕日の中に じっと立っていた
 彼は知っていた
 小さい額が狙われているのを
 けれども 彼に
 どうすることが出来ただろう
 彼は すんなり立って
 村の方を見ていた
 生きる時間が黄金のように光る
 彼の棲家である
 大きい森の夜を背景にして

 *

 <この作品はわずか11行の短さなので、作者の力量が全的に打ちこまれているとはいえない。どちらかといえば見過ごされやすい小品である。
 それにもかかわらずこの作品には、村野四郎氏の詩的思考や表現の特色がはっきりとあらわれている。いま生と死が入れかわろうとする一瞬のあわいに、眼前の死の谷へ射ちおとされようとする瞬間に、夕陽をうけてきらめくあざやかな時間! なんのための時間のきらめきなのか。空しさそのものの価値のようなものだ。この一篇は私どもの生にひそむ一回的な最終の歎息を、自分の呼吸で吸いあげるかのように組立てられている。>【伊藤信吉「解説」(『村野四郎詩集』(思潮社、1987))】

□村野四郎「鹿」(『亡羊記』、1959)
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 【参考】
【詩歌】村野四郎を読む(3) ~さんたんたる鮟鱇~
【詩歌】村野四郎を読む(2) ~体操~
【詩歌】村野四郎を読む(1) ~飛込~

   
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【米国】が狙い撃ちする日本の自動車部品メーカー ~カルテル摘発続出~

2015年04月28日 | 社会
 (1)自動車部品カルテルの米国での摘発状況・・・・
 累計31社、合計24億3,442万ドル(2,900億円)、46名、罰金各万ドル。
 31社は米司法当局が摘発した日本企業の数、その結果、逮捕・起訴された社員の数が46名だ。
 これらの数値は経産省が作成した一覧表に記載されているものだ。2011年9月から2014年11月までの、わずか3年間余の出来事だ。

 (2)カルテル摘発は自動車関連のみならず、日本企業にとって、その衝撃は図りしれない。
 古河電工、デンソー、パナソニック、三菱電機、ブリジストン・・・・摘発された46人の多くが禁固刑に処せられている。最短で1年と1日、長い刑で2年間の禁固が科せられる。
 日本のビジネスマンが数珠つなぎで米国の刑務所にぶち込まれているかのようだ。日本の自動車部品メーカーの狙い撃ちと言うほかはない。

 (3)カルテルとは、同業者が談合により価格などを決めてしまうことを指す。世界中、独占禁止法に基づいて禁止している半面、中には政治的な摘発も少なくない。
 わけても中国では、日本のビジネスマンが逮捕され、帰国できなくなるケースがしばしば報道されていた。
 それは中国に限った話ではなくて、米国にもある。しかし、3年で31社、46人の摘発は余りにもひどい。さすがに自民党の一部議員もそれを問題視し始めた。【経産省の関係者】

 (4)自動車分野における日米の軋轢は今に始まったことではないが、最近でいえば、タカタ製のエアバッグの事故がやり玉に挙げられた。(1)の一覧表にもタカタの社名がある。
 「タカタ 課徴金7,130万ドル(86億円)」。決定日:2013年10月9日)。
 米司法当局は、1人の米国人を含む5人のタカタ社員を検挙。2013年11月までに、うち4人に禁固刑が科せられた。短くて4か月、長くて19か月も獄につながれたのだ。
 タカタ問題の裏には、米フォード・モーターが議会で取り上げるよう、共和党員に働きかけたロビー活動もあった。
 特にタカタのエアバッグ問題で打撃を受けるのはホンダ。そこに付け入りたい米国メーカ-の思惑がちらつく。
 だが、実は、タカタの事故は日本で起きていない。米国でも限れた地域の事故だ。カルテル摘発を含め、これは実質国有化もされた米自動車メーカーと日本メーカーとの政治的な闘いでもある。

 (5)米司法当局に狙われる中でも、自動車部品メーカーが多いのは、米国がTPP交渉を有利に運ぼうとしているせいか。日米の最終交渉で、日本への輸出を増やしたい米国が、日本の安全基準を緩めるように要求し、揉めている。

□森功「カルテル摘発続出--米国で狙い撃ちされる日本の自動車部品メーカー ~ジャーナリストの目 第249回~」(「週刊現代」2015年5月2日号)
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 【参考】
【TPP】の最大の抵抗勢力 ~米国の議会と社会~
【TPP】というゾンビに食い荒らされる日本
【TPP】というドラキュラの死とTPPのゾンビ化
【食】【TPP】原産地表示の抜け道 ~食のグローバル化~
【食】「多古町旬の味産直センター」の試み ~農業経営の安定化~
【TPP】「限界農業」化の危機 ~農業の持続可能性~
【TPP】持続可能な農業を ~いま必要な政策~
【TPP】自民党の二枚舌、甘利大臣の無知
【TPP】国家主権の放棄 ~国民の知らないところで~
【TPP】条件闘争は不可、途中下車も不可 ~韓米FTA~
【TPP】1%の1%による1%のための協定 ~医療・食の安全~
【TPP】安部首相の二枚舌 ~信じがたい事態~
【TPP】医療制度崩壊を招くTPP参加
【TPP】その先にあるFTAAP ~国家ビジョンの不在~
【TPP】米国製薬会社の要求 ~日本医療制度の営利化~
【TPP】蚕食される医療保険制度 ~審査業務という盲点~
【経済】TPP>米韓FTAの「毒素条項」 ~情報を隠す政府~
【経済】TPPは寿命を縮める ~医療と食の安全~
【経済】中野剛志の、経産省は「経済安全保障省」たるべし ~TPP~
【経済】中野剛志『TPP亡国論』
【震災】原発>TPP亡者たちよ、今の日本に必要なのは放射能対策だ
【経済】TPPをめぐる構図は「輸出産業」対「広い分野の損失」
【経済】TPPで崩壊するのは製造業 ~政府の情報隠蔽~
【経済】中国がTPPに参加しない理由 ~ISD条項~
【社会保障】TPP参加で確実に生じる医療格差
【社会保障】「貧困大国アメリカ」の医療 ~自己破産原因の5割強が医療費~
【経済】TPPとウォール街デモとの関係 ~『貧困大国アメリカ』の著者は語る~
【経済】TPP賛成論vs.反対論 ~恐るべきISD条項~
【経済】米国は一方的に要求 ~TPP/FTA~
【経済】伊東光晴の、日本の選択 ~TPP批判~
【経済】伊東光晴の、TPP参加論批判
【経済】TPPはいまや時代遅れの輸出促進策 ~中国の動き方~
【震災】復興利権を狙う米国
【読書余滴】谷口誠の、米国のTPP戦略 ~その対抗策としての「東アジア共同体」構築~
【読書余滴】野口悠紀雄の、日本経済再生の方向づけ ~外資・外国人労働力・TPP・法人税減税~
【読書余滴】野口悠紀雄の、中国抜きのTPPは輸出産業にも問題 ~「超」整理日記No.541~
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