語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【詩歌】晩春 ~ハナズオウ~

2015年04月14日 | 詩歌
 江戸時代に中国から渡来したハナズオウ(花蘇芳、紫荊)。歳時記によれば晩春の花。
 2015年の春は、立夏(5月6日)の前日までで、残り1か月もない。

   いまはむかしのいろの蘇芳の花ざかり  飯田龍太

   ハナズオウ、米子市三本松にて。
      

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【TPP】というゾンビに食い荒らされる日本

2015年04月14日 | 批評・思想
(承前)
 (5)TPPはしかし、死亡広告のないまま、墓から出て別な姿で徘徊している(TPPのゾンビ化)。
 ブランドとして確立したTPPの錦の御旗の下で、多国間交渉ではなく、米国必死の二国間交渉とテーマの各個撃破が急展開している。
 それはもはや「オリジナルTPP構想」とは無縁なものだ。米国との二国間の歴史的で特殊な経済・外交・地政学的関係を通じて、関税縮減、制度変更要求を多層的に積み重ね、貿易自由化らしき図式をもたらそうとするものだ(米国主導の「マルチ・二国間貿易協定」)。
 その結果、各国が容易に譲れない課題は「プチ聖域」として処理することになる。日本では聖域5品目死守の国会決議があるが、政府も「プチ聖域」確保で妥協しようとしているのではないか。与党自民党としても、外圧をある程度押し返したと業界に自慢できる。
 最近、西川公也・農水大臣へのTPP関係業界からの献金が表面化し、同大臣は辞任へ追い込まれたが、こういう状況に族議員は妙味を感じるのだ。妥協交渉の細かい数字争いにこそ、政治献金を生む金脈が埋まっている。

 (6)米国は、これまで「年次改革要望書」で日本政府に突きつけたテーマを、今やTPPの旗のもとで、日本収奪の二国間交渉に全力をあげている。
 安倍政権の米国依存傾向は、米国にとって好都合だ。
 それでも本当にTPP基本合意が成立するか否かは不透明だが、それが成立しなくても、すでに安倍政権は国内産業保護の防潮堤や橋頭堡を十分に開け放っている。
     ・米国の自動車産業が目の敵にする軽自動車の税金は上がった。
     ・郵政も米国企業に食い込まれた。
     ・2月には長く日本農業に君臨してきたJA全中の解体も決まった(「分割して収奪」する米国の対日戦略)。
     ・牛肉関税は現行の38.5%から9%まで劇的に減少することになった。
     ・豚の安価肉を対象とする関税おドラマチックに下げる予定だ(キロ482円から50円程度まで)。

 (7)「コメの関税死守」は抵抗のシンボルのようなもので、米国側は別に譲歩にこだわらない。高い輸入関税を残しても、資本・流通の自由化が劇的に進めば、グローバル企業の進出と全国展開で、いかようにも高関税の壁をすり抜けられる。
 さらに、米国の譲歩を引き出すために、日本側はコメの輸入特別枠5万トンを提供すると報道されている。米国が強欲に要求したのではなく、日本側からの「おもいやり」と配慮を米国が受けとめた、という形になる。
 政府は公式にはまだ否定しているが、情けないのはメディアの報道だ。新聞各紙はそれを「TPP交渉」と書いている。二国間だけで、強国の恫喝と卑屈な日本政府の擦り寄りが、なぜ新次元の多国間交渉“TPP”なのか?

 (8)今、抵抗勢力として浮上してきているのは、自動車分野と経済産業省だ。
 両者は当初は25%のトラック(ピックアップ・SUV)輸入関税撤廃を期待してTPP推進の急先鋒だった。しかし、米国は妥協せず、日本車への関税は「実質的に」「結果的に」死守する覚悟だ。
 さらに自動車部品の問題が浮上してきている。米国側は部品のサプライチェーンをターゲットにしている。米国は日本車の輸入阻止は困難と見て、完成車で競争するのではなく、対米輸出される日本車の部品を米国製品にしようとする。ピラミッドのような日本の自動車産業を支える中堅・中小企業を突き崩す戦略だ。

 (9)折しも、
     ①自動車のエアバッグ事件(タカタのリコール)
     ②ソニーピクチャーズの北挑戦指導者をコミカルに扱った映画の放映中止
という事件が起きた。
 ①は、事故発生後から米国運輸省と協議を続けていた同社が、急に議会公聴会に呼び出されてリコールを迫られた。そもそも部品メーカーが直接リコールを迫られること自体が不思議だ。自動車業界や経産省は、日本の自動車の安全基準の高さを盾に米国の圧力と闘っていたが、①は日本の自動車安全基準の主張に影を投げかけた。
 ②も、ハッカー問題がからみ、また、当初、映画館の放映中止に踏み切ったことはソニーが直接関係する問題とは言いがたかったが、なんとオバマ大統領は名指しでソニーの対応を批判した。
 ①、②は単に偶然の一致かもしれないが、結果的に日本が米国の圧力に抵抗する安全基準問題にも、激しい未来市場を争う知的財産権問題の交渉にも心理的影響を与えた。
 米国では、その経済力が衰えを見せ始めた1980年代ぐらいから、貿易はCIA、国防省、NSCなどが関係する問題になっている。「広場で叩いて、密室で妥協を迫る」のが、米国外交の常套手段だ。

□首藤信彦(前衆議院議員)「ゾンビ化するTPPの脅威」(「世界」2015年4月号)
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 【参考】
【TPP】というドラキュラの死とTPPのゾンビ化
【食】【TPP】原産地表示の抜け道 ~食のグローバル化~
【食】「多古町旬の味産直センター」の試み ~農業経営の安定化~
【TPP】「限界農業」化の危機 ~農業の持続可能性~
【TPP】持続可能な農業を ~いま必要な政策~
【TPP】自民党の二枚舌、甘利大臣の無知
【TPP】国家主権の放棄 ~国民の知らないところで~
【TPP】条件闘争は不可、途中下車も不可 ~韓米FTA~
【TPP】1%の1%による1%のための協定 ~医療・食の安全~
【TPP】安部首相の二枚舌 ~信じがたい事態~
【TPP】医療制度崩壊を招くTPP参加
【TPP】その先にあるFTAAP ~国家ビジョンの不在~
【TPP】米国製薬会社の要求 ~日本医療制度の営利化~
【TPP】蚕食される医療保険制度 ~審査業務という盲点~
【経済】TPP>米韓FTAの「毒素条項」 ~情報を隠す政府~
【経済】TPPは寿命を縮める ~医療と食の安全~
【経済】中野剛志の、経産省は「経済安全保障省」たるべし ~TPP~
【経済】中野剛志『TPP亡国論』
【震災】原発>TPP亡者たちよ、今の日本に必要なのは放射能対策だ
【経済】TPPをめぐる構図は「輸出産業」対「広い分野の損失」
【経済】TPPで崩壊するのは製造業 ~政府の情報隠蔽~
【経済】中国がTPPに参加しない理由 ~ISD条項~
【社会保障】TPP参加で確実に生じる医療格差
【社会保障】「貧困大国アメリカ」の医療 ~自己破産原因の5割強が医療費~
【経済】TPPとウォール街デモとの関係 ~『貧困大国アメリカ』の著者は語る~
【経済】TPP賛成論vs.反対論 ~恐るべきISD条項~
【経済】米国は一方的に要求 ~TPP/FTA~
【経済】伊東光晴の、日本の選択 ~TPP批判~
【経済】伊東光晴の、TPP参加論批判
【経済】TPPはいまや時代遅れの輸出促進策 ~中国の動き方~
【震災】復興利権を狙う米国
【読書余滴】谷口誠の、米国のTPP戦略 ~その対抗策としての「東アジア共同体」構築~
【読書余滴】野口悠紀雄の、日本経済再生の方向づけ ~外資・外国人労働力・TPP・法人税減税~
【読書余滴】野口悠紀雄の、中国抜きのTPPは輸出産業にも問題 ~「超」整理日記No.541~
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