語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【詩歌】戦争を礼賛する牧師 ~E・ケストナーによる諷刺~

2015年04月18日 | 詩歌
 故郷にへばりついていた或る牧師が
 当時だいたいこんなことを言った
 --イエスさまが今日生きておられたら
 機関銃をお執りになったでありましょう」

 この牧師の居所を誰か教えてくれないか
 誰も知らないのか この男はどこに住んでいるのか
 もしわかったら--おれは明日にでも
 彼のところへいって横っ面をはりとばしてやる

 われわれは彼の家を取り巻いてやる
 ここにはわれわれの手、そこには彼の顔
 君は僕の提案をご免だというのか
 紳士的でないというのか そうだ、紳士的ではないだろう

    *

 牧師はそんなことは言わなかったというのか
 捏造でなければ歪曲だと君は信じるのか
 この引用文における最悪の点は
 みんなありそうなことだと思われることだ

□エーリヒ・ケストナァ「偉大な時代よりの引用文 (常連用食卓のためのもの)」、(板倉鞆音・訳編)『ケストナァ詩集』(思潮社、1975)所収
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【食】新しい遺伝子操作技術が続々 ~安全が不明なまま~

2015年04月18日 | 社会
 (1)JRシンプロット社(米国)が、新しい遺伝子操作技術を用い、遺伝子組み換え(GM)ジャガイモを開発した。このジャガイモは、「RNA干渉(RNAi)技術」が用いられ、加熱した際に生じる発癌物質アクリルアミドが低減されている。
 RNA干渉技術とは、RNAを用いてRNAの働きを止める技術だ。
 RNAは通常は一本鎖だが、ごく稀に二本鎖RNAが存在する。二本鎖RNAは、遺伝子の働きを抑えるRNA干渉をもたらす。その原理を利用して、人工的に二本鎖RNAを作り出し、RNAの働きを止めて、遺伝子の働きを封じるのだ。

 (2)(1)の新しい遺伝子操作技術に対して、オーストラリア・アデレード大学の研究者が警告を発した。これに続いて、米国農務省(USDA)農業研究局の研究者が、作物の安全性を評価するには現行の通常90日の試験ではなく、長期試験(生物の寿命の長さにおよぶ影響を見る)が必要だ、と指摘した。

 (3)ジャガイモに続いて、(1)の技術を用いて害虫の成長を遅らせたり、殺したりする技術の研究が現在進められている。だが、標的の害虫のみならず、益虫やその他の動にまで害をおよぼすのではないか、という懸念が示されている。
 JRシンプロット社のジャガイモの主な購入者であるマクドナルド社は、このジャガイモを使用しない、と明言している。

 (4)2012年、徳島大学と広島大学の両大学院の研究チームが、色素のない「白いコオロギ」を作り出した。
 これに用いた技術が、人工制限酵素を用いた「ゲノム編集技術」だ。制限酵素は、DNAを切断する。
 現在、人工制限酵素を用いた遺伝子操作が盛んになっている。
   ・「ZEN法」
   ・「TALEN法」
との2種類があり、いずれも人工的に合成した制限酵素を用いて、狙いを定めた特定のDNAを自在に切断することができるようにしたものだ。
 「白いコオロギ」は、コオロギの表皮に黒い色素をもたらす遺伝子をターゲットとし、その遺伝子を切断し、遺伝子の働きをノックアウトして作られた。
 かかるノックアウト技術は、以前から遺伝子の働きを調べるために使われていたが、複雑な遺伝子組み換えが必要だった。

 (5)(4)の人工制限酵素は、
   ・DNAを切断する部分
   ・修復する部分
とを併せ持っている。切断した後に修復が行われる。その際、一定の割合で遺伝子の働きが止められ、白いコオロギのような現象が起きる。
 また、修復の際に、その部分に遺伝子を挿入することもできる。だから、特定の場所の遺伝子を止め、そこに新たな遺伝子を挿入することで、遺伝子の入れ換え(これまでの遺伝子組み換え技術ではできなかった)が可能になり、こまめな遺伝子操作を行うことができる。
 この技術を「ゲノム編集技術」と言う。現在、作物ほか、さまざまな生物への応用が広がっている。

 (6)これまでの遺伝子組み換え技術にとどまらず、合成生物学、RNAi技術、ゲノム編集技術など、遺伝子を操作した食品の開発に、多様な遺伝子操作技術が用いられるようになった。
 中には、遺伝子組み換えでない、ということで、環境影響評価や食品の安全審査を免れる方向で動いているものもある。

□天笠啓佑(ジャーナリスト)「RNA干渉技術にゲノム編集技術 新しい遺伝子操作が続々」(「週刊金曜日」2015年4月10日号)
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