語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【震災】原発>驚愕の数値77京ベクレル 放出放射能は「2倍」

2011年06月18日 | 震災・原発事故
 住民保護の理論上のシステム(原子力災害特別措置法に基づく防災計画・対策マニュアル)・・・・
 事故発生→東電から放射性物質の種類と量を保安院へ通知→保安院は直ちに緊急時対策支援システム(ERSS)を起動、原子炉の状態を分析→ERSS起動と同時に文部科学相へ連絡→文科省は直ちに緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)に乗せるて各自治体へ流す→各自治体は情報を見ながら住民を避難させる。

 その現実・・・・
 システムはまったく動かず、相次いだ爆発事故の時も自治体にはファックス1枚さえ届かなかった。
 ERSSを動かすための不出源情報などは、現在まで一切保安院に届いていない。

 保安院からの命令により、東電は事故記録を提出。保安院は、これを基に米国の原子力規制委員会(NRC)が管理する解析コードMELCORを使って、放出された放射性物質の種類や量を試算した。
 これを保安院は6月6日に発表した。3月11日から100~150時間中に係る試算値だ。
 大気への総放出量は、放射性ヨウ素換算で推定77京ベクレル。保安院の4月時点での推計の2倍強だ。
 放出された放射性核種は、31種類で、プルトニウム239が32億ベクレル。ストロンチウム90が140兆ベクレル、など。

 これだけの試算値が出ながら、事故以来現在に至るまでの3ヶ月間に、東電が原発敷地内の土壌からプルトニウムを採取した回数は18回。ストロンチウムにいたっては、2回しか採取していない。空気中からは、それぞれ6回、2回だけだった。
 「どこからどのくらい出て、住民たちはどのくらい浴びたのか。そういう放射性物質の『暴露』情報が、5年後、10年後、重要になってくる」【池田直樹弁護士】

 以上、佐藤章(編集部)「驚愕の数値77京ベクレル 放出放射能『2倍』だった」(「AERA」2011年6月20日号)に拠る。
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【震災】脱原発の経済学

2011年06月18日 | ●野口悠紀雄
(1)日本経済の構造的変化 ~貿易立国の終焉~
 貿易収支は4月に赤字となり、5月上旬には赤字額が拡大した。今後、LNGなど発電用燃料の輸入が増えるので、赤字が継続する可能性が高い。貿易赤字の定着は、日本の経済構造が大きく変化したことを示している。
 貿易収支が今赤字である原因は、生産設備の損壊だが、これは比較的短期間のうちに克服されるだろう。
 それ以降も赤字が続くのは、電力について量的制約が続き、コストが上昇するからだ。
 そして、このような制約が生じる基本的な理由は、原子力発電に依存できないことだ。原子力発電に制約がかかったことが、貿易赤字定着の本質的な原因なのだ。
 これまでの日本の「輸出立国」は、「原発は絶対に安全」という神話の上に築かれたものだった。しかし、このたび神話は崩壊した。その結果が「貿易赤字」という誰にもはっきり見えるかたちで示された。日本が貿易立国できる時代は終わった。

(2)隠されていた課題
 80年代は、世界経済の環境が日本にとってまことに好都合な時代だった。(a-1)中国工業化の影響はまだ顕在化せず、(b-1)原油価格は落ち着いていた。70年代末から99年夏頃まで、一時的な例外はあったものの、1バレル当たりの原油価格は、20ドルを超えなかった。90年代末には10ドルに近づく場合もあった。
 00年代になって、それらの問題が顕在化した。まず、(a-2)中国の工業製品が世界市場で日本製品を圧迫し始めた。そして、(b-2)中国をはじめとする新興国の工業化の結果、原油価格が上昇した。
 しかし、これらはいずれも隠蔽することができた。(a-3)中国工業化による日本製品の優位性低下は、円安で日本の輸出産業の競争力を見かけ上高めることによって、(b-3)原油価格の上昇は90年代に原子力の比重が高まっていたので、隠蔽できた。
 ところが、(a-4)円安依存の輸出戦略は、経済危機で崩壊した。そして、(b-4)原子力への依存が大震災で突き崩された。
 円安も原子力も、日本にとって本当の解決ではないことがわかった。
 今必要とされるのは、もともと潜在的には必要だった構造に日本経済を変えることだ。

(3)製造業の海外移転
 エネルギー基本計画は、現在「白紙」だ。仮に原子力への依存を今後低めるのであれば、エネルギー計画の枠内だけでは、その目的は達成できない。自然エネルギーの比重を高めることは必要だろうが、量的に見てそれだけでエネルギーの需給均衡を達成できるはずはない。
 脱原発の主張は、それを実現するための具体性を欠いている。
 この問題は、日本経済全体の問題としてとらえるべきものだ。製造業は電力多使用産業なので、製造業の比率が低下すれば、電力需要も減る。したがって、燃料輸入も減る。90年代以降、「輸出産業にとっていいことは日本にとっていいことだ」と考えられてきた。しかし、もはやそうは言えなくなる。
 日本国内だけの調整で、この問題を処理することは不可能だ。生産拠点の海外移転の動きを止めることはできない。日本の製造業は、国内ではなく国外で生産を行う時代になった。

(4)円高のメリット
 変化は、かなりのものが市場価格の変化で自動的に進む。それを妨害してはならない。企業の海外移転と円高に逆らわないことだ。
 円高は日本人を豊かにする。原油価格がこれをはっきり示す。原油価格は、09年1月初めの1バレル34ドルから11年4月末の121ドルまで、4倍近くに上昇した。しかし、日本の原油粗油の輸入単価は、この間に2.15倍にしか上昇していない。円高のおかげで、日本人は世界的な石油価格高騰の影響からかなり隔離されたのだ。このことは日本ではあまり評価されていないが、大変重要なことだ。
 今後もLNGなどの発電用燃料の輸入が増えるので、国内での価格上昇を招かないために、為替レートが円高になることが重要な意味をもつ。
 他方、円安になったところで、自動車等の輸出は増えない。生産そのものが制約されているからだ。
 貿易赤字を食い止めるためには、円高が必要なのだ。

(5)雇用政策の重要性
 海外での生産は基本的には望ましいことだが、唯一の問題は国内の雇用減少だ。すでに失業率は上昇し始めている。新卒の就職内定率には、もっとはっきりしたかたちで表れるだろう。
 だから、雇用政策は重要だ。雇用調整金のような弥縫策では解決できない。また、雇用を製造業に頼り、そのための需要喚起策を行っても、電力供給制約下の経済では機能しない。ここにおいても必要とされるのは、政府のコントロールを弱めることだ。
 量的に最大の雇用吸収力をもつのは介護分野だが、雇用を増やすには規制緩和が必要だ。
 質的な面で重要なのは、付加価値の高いサービス産業を成長させることだ。そのために、外国人高度人材の参入に対する規制緩和が必要だ。

【参考】野口悠紀雄「貿易赤字は継続する 輸出立国時代は終焉 ~「超」整理日記No.565~」(「週刊ダイヤモンド」2011年6月18日号)

   *

 メディアの数字を信じてはいけない。
 <例>米国人は日本人よりはるかに野菜を多く摂取している。
 まさか、と思うかもしれないが、統計上は正解なのだ。
 しかし、実は、この野菜にジャガイモが含まれている。あの、たっぷり油で揚げたマクドナルドのポテト(とてもおいしい!)を食べても、野菜摂取量に入るのだ。
 現代は飽食の時代、食べ過ぎると「メタボ」になるのでカロリー摂取を控えよ、と言われる。メタボこそ、生活習慣病の原因だ、と言われる。
 では、どれだけカロリー摂取量を減らすべきなのか。
 47年、終戦後のまだ食うや食わずの頃と、現在の日本人のカロリー摂取量は、ほとんど変わらないのだ。厚生労働省のデータがはっきり示している。
 大多数は、これを聞いてびっくりするだろう。
 そんなはずは・・・・あるのだ。新聞・テレビを使ったダイエット産業による完全なる刷り込みが成功した例で、冷静に数字を見る必要がある、ということだ。

 円高が日本経済を壊滅させる、というが、日本のGDPのうち輸出が占める割合は、高度成長期も、当時より倍以上円高になった今でも、10%台だ。経済を回復させるには、輸出の問題としてではなく、残り約80%の内需の問題と考えるべきなのは明らかだ。
 メディアを信じてはいけない。

 以上、ぐっちーさん「メディアの数字を信じてはいけない ~ぐっちーさんのここだけの話 No.175~」(「AERA」2011年6月20日号)に拠る。
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【震災】原発>原発報道の破綻

2011年06月17日 | 震災・原発事故
 「3ヶ月たった。政府の方ではやるのに、テレビや新聞は、このままシラをきって逃げきる気か。いくら公式発表に従ったとはいえ、おまえらが垂れ流したのは、初日からまったくの大誤報だったじゃないか」
 「それもこれも、テレビや新聞が、ウラも取らず、疑いもせず、それどころか、喜々として政府と東電のケツ持ちをやったせいなのだから、そりゃもう報道機関として自殺行為だった。もうあんたらの話なんか、だれも信用していない」
 「なぜノーチェックで、加害当事者である政府や東電の言い分を流したのか。(中略)報道機関に専門知識が無かった、などという言いわけが通用するか。まともな専門家に聞きもしなかったじゃないか。それどころか、トンデモな連中に、トンデモな解説をさせ、混乱と誤解とウソを助長させただけ。あの日、あの時、誰が何を言ったか、司会者やコメンテーターを含め、私たちはけっして忘れてはいないぞ」
 「今回の大誤報、歪曲報道の背景として疑われている買収の問題はどうする。報道機関がカネで身を売っていたとなれば、放送免許停止こそが当然だ」
 「実際、ネット上の人々は、英語やドイツ語、中国語、その他の言語圏の情報ソースの方が依存度が高くなってしまっている。政府発表やマスコミの話より、シロウトが自分たちで勝手に測定したデータの方が信頼性が高くなってしまっている。この状況で今のテレビや新聞は、危機感を持たないのか」
 「報道の仕事の原点を思い出せ」
 「いま、自分たちの報道組織の内部に腐敗があり、今回の大誤報をごまかしてやり過ごそうとするなら、まずその問題にこそ眼を向けるべきだ」

 以上、純丘曜彰(大阪芸術大学芸術計画学科教授/元テレビ朝日報道局報道制作部『朝まで生テレビ!』ブレーン)「テレビ・新聞は原発大誤報を自己検証をしろ!」(BLOGOS)に拠る。

    *

 福島原発事故から約2ヵ月たって、メルトダウンが起きていたことが公表された。
 事故当初は、政府・東電によってももっぱら「安全」「安心」が強調されていた。それはその後、事実によって次々と破綻させられた。
 こうなると、会見での発表内容を誰も信用しなくなる。危機管理のあり方としては最悪の事態だ。

 政府や東電に対する不信感は、それをそのまま伝えたメディアに対する不信感となって噴出している。昨年の検察報道をめぐるメディア不信以上に不信感が高まった。きわめて深刻な事態だ。
 震災・原発事故の直後にパニックが起きないように配慮したことは、ある程度やむをえない。ただ、その場合でも、政府や東電の発表をチェックし、市民の側にたって監視するのがメディアの本来の役割だった。この認識を報道の側がどれだけ持っていたか。それが問題だ。この認識を欠いては、政府発表を垂れ流すだけの広報機関になってしまう。まさに戦時中の大本営発表と同じだ。
 当初のテレビ報道などには、政府との間に距離がとれているのか疑わしい場面が少なくなかった。これは恐らく、メディアの側に本来あるべき自覚が希薄になっていたことの反映だ。

 政府、産業界、学者の原発推進の態勢づくりが作られてきた(「原子力ムラ」)。
 マスメディアもまた、その中に複雑に組みこまれていた。
 そうした問題も、一連の事態の中で何度も議論の俎上に載せられた。
 まず、事故発生当時の3月11日、東電の勝俣恒久会長を団長とする一行が中国ツアーの真っ最中で、新聞社幹部や雑誌編集長が参加していた、という話がある(「【震災】東電トップは、あの3日間何をしていたのか?」参照)。最初にスッパ抜いたのは「週刊文春」3月31日号の「中国ツアー 『大手マスコミ接待リスト』を入手!」だ。記事の中では、「東京・中日新聞社、西日本新聞の幹部や毎日新聞の元役員」などと媒体名が挙げられていたが、雑誌関係者については媒体名が挙げられていなかった。後に、それが花田紀凱「WiLL」編集長や元木昌彦・元「週刊現代」編集長らだったことが明らかになった。
 電力会社とメディアの関係については、前者が大きなスポンサーであることを含め、丁寧に検証する必要があろう。

 検証すべきもう一つは、記者会見の問題だ。マスメディアの報道が大本営発表のごときになったのは、記者クラブ制度と関わりがあるのは明らかだろう。
 福島原発取材規制をめぐる問題も、今後大きな議論になると思う。既に4月段階で、大手マスコミは30キロ圏外に避難し、20キロ圏内で取材を行っていたのは主にフリーのジャーナリストだった。イラクなどの戦場取材と同じ状況が、原発取材でも生まれていたのだ。そして、4月下旬以降、フリーも20キロ圏内には自由に入れなくなった。
 まだまだ課題は多い。本誌は、今後も引き続き、この問題を検証していく。

 以上、篠田博之「原発報道とメディアの責任 --メディアは真実を伝えているのか」「創」2011年7月号)に拠る。
 上記の論考は、「創」7月号の特集「原発報道とメディアの責任 --メディアは真実を伝えているのか」のプロローグをなす。以下、今西憲之「福島原発事故と取材の自主規制」、綿井健陽「福島第一原発敷地内取材への提言」、金平茂紀「報道の現場で何を考えるべきか」、柴田鉄治「原発報道は失敗の連続だった」、浅野健一「福島原発『事件』報道の犯罪」、上杉隆「記者クラブの体質と原発報道」、日隅一雄・木野龍逸「東電会見『混沌』の功と罪」、津田大介「原発とネットメディア」・・・・が続く。
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【震災】原発>高濃度汚染水は地下水になった ~飲料水は大丈夫か~

2011年06月16日 | 震災・原発事故
 福島第一原発の収束作業が、膨大な汚染水のため混迷をきわめている。原子炉冷却のために毎日注がれてきた水は、敷地内に溜まって、すでに10万トン。工程表の実現が疑問視される理由の一つだ。異様なことに、この汚染水の詳細について、ろくに情報が明かされていない。
 情報開示を求めても、政府は応じない。サンプル提供も断られている。【太田富久・金沢大学大学院教授】
 しかも、この汚染水が一部漏出している。
 消えた水は、例えば3号機では少なくとも4,270トン。これは海だけではなく、地下水に出た可能性が十分にある。しかも、津波でどさっと入った水が汚染されて漏れでた分もある。漏出した汚染水は、全体で数千トン単位、最悪で1万トンを超えている可能性もある。国会で質問したが、政府からは具体的な答はなかった。隠蔽以前に、政府は消えた汚染水の量すらきちんと把握していないらしい。これが一番の問題だ。【浅尾慶一郎・衆議院議員】

 損壊した原子炉の中の放射線量は、想像を絶するほと高くなっている。注水の汚染度も尋常ではない。核燃料再処理工場で扱う高レベル放射性廃液並みでもおかしくない。【青山繁晴・独立総合研究所社長】
 すでに1~3号機でメルトスルーが起こったことが判明している。実際には、さらに格納容器や建屋の床に溶けた部分があって、そこから高濃度汚染水が地中に吸い込まれていることが考えられる。他の号機では、原子炉建屋とタービン建屋の地下1階を結ぶ配管の周辺や、屋外のトレンチの亀裂から漏れているのではないか。【桜井淳・技術評論家】

 東電をはじめとする原発関係者は、「水」の重要性について認識が不足していた。原発で水を受けもつ業者を格下扱いをして、水の扱い方を勉強してこなかった。
 だから、今回のような大事故が起こると、汚染も排水も考えずに「とにかくぶっかけろ」となる。汚染水が大量に溜まって、初めて大慌てしている。【早川哲夫・麻布大学生命・環境科学部教授】
 汚染水に含まれる放射性物質のうち、セシウム、ストロンチウムが危険だ。プルトニウムが最も危険だ。原発の敷地の内外でプルトニウムが検出されている。汚染水にもプルトニウムが含まれているのは間違いない。プルトニウムは重い元素なので、大気中では遠くへ飛散する量は少ない。しかし、地下水の中では関係ない。

 地下水は、やがて海と川へ流れこむ。川から上水道が引かれているので、水道水が高濃度放射性物質に汚染される可能性がある。すでに継続的に水道水をモニタリングしている所もあるが、もっと細かく厳密に警戒する体制づくりが必要だ。【太田教授】
 地下水から直接汲み上げる井戸水も要注意だ。飲料水にしている家庭もあるし、生活用水や農業用水として使っているケースも少なくない。だから、特に浅い水を使っている井戸水は、検査が急がれる。汚染していない、という結果が出ても、長期にわたり定期的に検査しなくてはならない。相当の手間とコストがかかる。
 地下深く流れている水の場合、非常に長く汚染の影響が続く可能性がある。地下1,000mの水を調べたら、江戸時代に降った雨水だったことがある。数百年後、深いところから汲み上げた井戸水に福島第一原発から今漏れている放射性物質が混じっている、というような事態も生じ得る。【伊藤伸彦・北里大学教授】

 福島第一原発は、氷河期に形成された5mほどの堆積層の上に建設されている。その下には、水を通しにくい粘土層がある。漏出した水の大半は、スポンジのような堆積層にしみこんで地下水となり、ごく少量が下部の粘土層にしみこむ。そして、地勢の傾きに沿って、海に少しずつ流れていく。堆積層で地下水に混じった汚染水がすべて海に流れるのに5~10年かかる。粘土層にしみこんだ水は数百年だ。【丸井敦尚・産業技術総合研究所地下水研究グループ】
 汚染水が地下水になるには、まったく別のルートもある。大気中に拡散した放射性物質が地表に落ち、雨水と共に地中にしみこんで地下水に混じるのだ。そして、地下水の流れに乗って、内陸部で濃縮ないし拡散していく。
 福島県の地下水環境は、原発から30km前後より遠くの場所では地下水が原発の反対方向へ流れていく。特に、盆地にあるいわき市や郡山市などに地下水が集まっていく。この両市の周辺では、汚染されにくい深い井戸を整備し、水供給システムを強化する中長期的な対策をとる必要がある。【丸井氏】

 原発からの水漏れは一刻も早く止めなければならない。が、今はまだその手段がない。
 それどころか、梅雨になると汚染水はさらに増え、地下に漏れる分が増加するだけでなく、6月下旬には敷地内に溢れてしまう危険もある。

 以上、記事「飲料水は大丈夫なのか 高濃度汚染水は地下水になった」(「週刊現代」2011年6月25日号)に拠る。
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【読書余滴】なぜ年をとると時間の経つのが速くなるのか(その2) ~心理学と介護~

2011年06月16日 | 心理


 その1は、こちら
 さて、重症の記憶障害になった人は、ごく短期間に、あるいは長期にわたって、知的資本の大部分を失う。神経損傷、酸素欠乏、感染症、アルツハイマー症、コルサコフ症候群・・・・原因は何であれ、身につけたり覚えたりしたことや、苦心の鍛錬の末にものしたことの、ほとんどが消えてしまう。
 テオデュル・リボーの古典的な学説によれば、いちばん最近の記憶が真っ先に消え、いちばん古い記憶が最後に消える。ただし、このプロセスを単純化しすぎてはならない、と彼は警告している。古い記憶は、繰り返し頻繁に思い出されるために他の記憶とより密接に関連づけられ、そこに強い連携的結合が生まれる、というのがリボーの説だ。

 健忘症の経過に関する最近の説においても、古い記憶が比較的傷つきにくいことの説明には、結合が強いからだ、という仮設がいまだに重視されている。
 古い記憶は脳の中でも侵されにくい部分にたくわえられている、とも提唱されている。怪我をする直前の出来事の記憶が欠落するのは、その外傷が記憶痕跡の定着にかかわる化学的プロセスを妨げてしまったことを示す、とされる。

 逆行性健忘ではなく、忍び足の侵入のような記憶障害においては、ときに、外見上は普通の生活を送るのに十分なものが残っていることもある。慣例、反復、そして決まったパターンで反応するだけですむような環境は、多くの場合、自力ではほとんど生き延びられない記憶を長時間にわたって支え続ける。

【参考】ダウエ・ドラーイスマ(鈴木晶訳)『なぜ年をとると時間の経つのが速くなるのか -記憶と時間の心理学-』(講談社、2009)

   *

 「親父はいつの間にか、ファスナーの使い方を忘れているらしい。ズボンは全部前を開けたまま、リハビリパンツ(という名の紙オムツ)が丸見え。そんなコーディネートで裾を引きずりながら歩く。年取ると身体も縮んでくるので、前に履いていたズボンはブカブカでサイズが合わない。ただでさえ転びやすくなっているのに、カカトを踏んづけそうで危ないったらありゃしない」

 これは、慣例、反復、決まったパターンも失われた事例だ。
 心理学者なら、ここで終えてよい。診断すれば、彼/彼女の仕事は終わる。彼/彼女の仕事は、普遍的事象の認識だ。
 しかし、家族は違う。この認識は、まさに出発点だ。そこから家族の仕事は始まる。

 「いろいろなところを探してみたが、メンズのSサイズというのはほとんどないし、ズボンにはすべてファスナーやらボタンやらが付いている」

 そりゃ、そうだ。ファスナーやらボタンやらが付いてなければ、彼はトイレに行けない。
 だが、この書き手はへこたれない。

 「そこで考えた。『何も男ものにこだわる必要ないじゃん』。ホラ、よくオバアちゃんが履いてるウエストがゴムのズボンあるでしょ。試しにあれを履かせてみたら、これがかなりいい。ほとんどがポリエステルなどの化繊なので、洗ってもすぐ乾く。オヤジくさい色合いが多いので、違和感もなし!」

 発想の転換である。切羽詰まるとアイデアが湧くのだ。
 ところが、問題はまだ残る。

 「しかし、問題はこれからの防寒着だ。デイサービスに行くときなど外出時に、ユニクロのダウンは軽くて暖かいのでピッタリなのだが、すべてファスナーで着脱するようになっており前が閉められない。風邪でもひかれたら大変だ。身体&脳機能の衰えた人向けの服って、どうしてこんなに少ないんだろ。シルバーショップなどにあることはあるが、極端にモノが少ない。おまけに高い! こういうものこそ、税金かけないで安くするべきだろ(怒)。あ?あ、いっそのこと冬のトップスも女ものにするかな」

 身体が機能低下した人向けのファッションは、車いす利用者向けのものをはじめ、ぼつぼつ開発されている。
 しかし、脳機能の衰えた人向けのファッションは、あるかもしれないが、寡聞にして知らない。
 我が国の認知症患者は、2010年で226万人。今後うなぎ上りに増え、2035年には337万人に達すると推計されている【注】。企業が参入すれば、成長間違いなし、の分野ではあるまいか。

 【注】我が国の認知症患者数の推移および将来推計(認知症・アルツハイマー病を理解する 原因・症状・診断・治療・介護など)

 以上、引用は「オバアちゃん服のススメ」(フンコロガシの詩)に拠る。
 ブログ「フンコロガシの詩」には、記憶力が低下した高齢者の意表外な行動と、それに対応する家族のてんやわんやが綴られている。問題は深刻なのだが、このブロガーの語り口は陽気だ。上記のように、ちっともへこたれない。
 かつて大岡昇平は、もはや殲滅されるしかない未來が待ち受けている兵士たちが「墓掘り人夫のように陽気だった」と書いた。人は、どうしようもない事態に否応なく直面すると、開きなおることができるらしい。誰もがそうだ、というわけではないけれども。
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【震災】原発>英国における科学者と政治家の連携システム ~情報の透明性~

2011年06月15日 | 震災・原発事故
 福島第一原発事故で在日外国人の間でパニックが広がり、大勢の外国人が日本から逃げだした。ところが、在日英国人は、比較的落ち着いて行動していた。英国政府が、駐日英国大使館を通じて、「日本から退避する必要はない」と告知していたからだ。
 英国政府は、なぜ、すぐさまこうした対応ができたのか。
 科学者と政府とが連携する仕組みがあったからだ。

 英国では、国民の健康に影響のある緊急事態が発生すると、「緊急時の科学助言グループ」(SAGE)が集まり、危険の程度を分析し、対策を協議する。首席科学顧問が意見を集約し、結論を首相に助言する。その際、助言内容を一般に公表し、議論の内容を議事録として後日公開する。
 首相など政治家は、政治的事情も勘案して最終的に判断する。そして、内外の自国民にいち早く伝達するのだ。政治的判断の結果、助言通りに行動しないこともある。この場合でも、科学者はそれを当然と受け止める。助言が反映されなくても、辞任することはない。
 ただし、政治家は、なぜ科学者の助言通りにしなかったか、を国民に公表しなくてはならない。常に意思決定のプロセスを透明にしておくのだ。
 それが、民主主義だ。【首席科学顧問のジョン・ベンディントン教授】

 首席科学顧問は、第二次世界大戦中、チャーチル首相の時代に設置され、歴代首相のアドバイザーを務めている。米国の科学技術担当大統領補佐官は、政権が代わると入れ替わるが、英国の首席科学顧問は政治的に任命されるポストではない。ベンディントン教授は、08年に任命され、労働党のブラウン首相にも今の保守党のキャメロン首相にも、科学者を代表して助言している。
 <例>09年に発生した新型インフルエンザや10年のアイスランドの火山噴火に伴う火山灰など。
 
 福島第一原発事故が起きたときも、ベンディントン教授がSAGEの意見をとりまとめ、英国民の日本からの退避は不要、大使館の機能をよそに移す必要はない、と助言した。最悪のシナリオを想定した上で、30キロ圏外なら大丈夫、と結論を下したのだ【注】。日本政府と同じ結論となったが、日本政府の情報を鵜呑みにしたわけではない。
 最悪のシナリオとは、次のようなものだった。「炉心溶融によって核燃料が圧力容器の外に出て、格納容器に落下。爆発が起きて、放射性物質が500m上空まで吹き上げられ、そのとき東京に向けて風が吹いていて、しかも東京に雨が降っている・・・・」
 この場合でも、30キロ圏外に落ちる放射性物質は、妊婦や幼児にとっても問題のないレベルである、という結論だったのだ。
 日本にある英国学校から「休校を続けるべきか」という問い合わせがあったが、その必要はない、と返答した。

 ベンディントン教授は、さらに、3月15日には電話会議を通じて、駐日英国大使館の職員や在日英国人の質問に答え、その直後に来日。17日には駐日英国大使館で記者会見を開いた。
 記者会見で、ベンディントン教授は述べている。今回の事故は、チェルノブイリ原発事故とは事情が違う、と。チェルノブイリ原発事故では、原子炉を停止できないまま大爆発が起き、黒鉛炉心が火災を起こして放射性物質を拡散させた。何年もの間、現地の食料や水に含まれる放射性物質は検査されず、人々は危険を知らされないまま飲食を続け、病気になった。

 以上のように、英国では科学者の助言と政治家の判断の関係のルールが確立している。  
 ひるがえって、日本の場合はどうか。
 菅内閣も専門家から種々の助言を受けているはずだ。が、助言内容が明らかにされていない。だから、政府が助言どおりに対策をとっているか、政治的判断を付加しているか、それがわからない。これでは国民の不安が募る。
 なお、日本のことわざ「猿も木から落ちる」の通り、専門家も間違える。助言が正しいかどうかをチェックできる仕組みが必要だ。【ベンディントン教授】

 以上、池上彰「科学者の助言をどう生かすか ~池上彰のそこからですか!? 連載30~」(「週刊文春」2011年6月16日号)に拠る。

 【注】いまや周知のとおり、30キロ圏外でもホットスポットが次々に見つかっている。ベンディントン教授が自ら言うように、「猿も木から落ちる」のだ。ただし、この事実は科学者と政治家の連携システムを揺るがすものではない。「最悪のシナリオ」をより精緻にするか、一度立てたシナリオの迅速な修正をシステムに盛りこめば足りる。そして、日本では、システムそのものが存在しない。改良しようにも、改良すべき基盤そのものがない。

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【震災】原発>ヘリウムガス冷却計画 ~工程表以外の方法~

2011年06月14日 | 震災・原発事故
 福島第一原発の収束を妨げている最大要因は、施設内に充満する放射能汚染水だ。仏・原子力企業「アレバ」などが製作中の浄化装置の稼働が遅れた場合、6月20日にも汚染水は溢れ出る。
 工程表では、装置で汚染水を浄化後、冷却水として再利用し、原子炉を循環させる。が、完全に作動するかどうかは不明だ。むしろ、メルトダウンによる原子炉の破損が濃厚となった現状では失敗に終わる可能性がある。

 東京とワシントンに拠点をもつ原発コンサルタント会社「IAC」は、事故分析、事故収束策、原子炉の冷温停止後から廃炉プロセスまで綴られている文書を作成している。文書は、日本政府を飛び越え、米原子力規制委員会(NRC)、米エネルギー省(DOE)などの公的機関、さらに米原子力業界に極秘裏に送付され、現在、米国側の評価を待っている。
 3月末、「IAC」は米国経由で事故分析レポートを官邸に届けた。しかし、政府は同社の提言を生かせず、東電に“丸投げ”している。同社は、今回、意図的に米国を優先し、外圧によって政府に行動を促そうとしているのではないか。

 工程表に対する文書の評価は厳しい。特に、浄化後の汚染水を原子炉の冷却に再利用する循環冷却システムを「現実的でない」と切り捨てている。漏出する汚染水を100%回収できるなら循環注水システムは意味がある。しかし、実際は大量の汚染水が循環系の外部に漏れ続けている。循環冷却を長期続ければ、地下水、海洋への汚染がますます拡大するばかりだ。「冷やす」「閉じこめる」が両立していない。
 要するに、工程表に従えばカネも時間もかかりすぎ、国民の被曝は食い止められない。
 そこで文書が提起するのは、「ヘリウムガス冷却」だ。
 現在の「水冷」から「空冷」に切り替えるために、現時点で水が漏出している原子炉の破損箇所を塞ぐ必要がある。注水にガラス繊維と微粒子をまぜる手段などが考えられる。その後、1号機はヘリウムガスを強制循環させて1年程度冷却。さらに空気の強制循環を2年間行い、以降は建屋に排気筒を設けて空気を自然対流させる。2、3号機はヘリウムガス冷却に2年、その後8年間は空気の強制循環を行い、9年目から自然対流に移行する。当然、汚染水は発生しない。ヘリウムガスは、次世代の原子炉「高温ガス炉」の冷却材に使われる媒体だ。熱伝導率が高く、徐熱効果が高い。高温状態でも核燃料などと化学反応を起こさず、安全だ。【佐藤暁・「IAC」上級原子力コンサルタント】
 計画では、各炉は解体せず、建屋全体をコンクリートで固め、「石棺」化する。地下もコンクリート壁で遮断し、地下水や海洋への汚染を防ぐ。さらにヘリウムや空気を循環させるための配管、換気装置などの設備を外部に設置。それまでに貯めこんだ低濃度汚染水は、コンクリート調合用として再利用し、高濃度汚染水はガラスで固めて地下に埋没する。
 溶融して格納容器外へ漏出した核燃料【注】の回収は、超高度の放射線量や残留熱などから、ほぼ不可能。このため、原発敷地を最終処分地として100年以上管理する廃炉計画が盛りこまれている。
 なお、空冷に移行する際、コンクリートで固められた建屋は密閉空間になる。この時、高温の燃料がコンクリートを分解して水素、酸素が発生して建屋内に充満すれば爆発のリスクは高まる。残留熱で水を蒸発させることで、爆発を回避する。

 循環冷却による冷温停止は、廃炉に向けた単なる道標にすぎない。しかし、政府は冷温停止後の廃炉に至る大綱を示していない。コスト面を含めて工程表の先にある廃炉に向けた議論になれば、と計画案をまとめた。【佐藤】
 廃炉に至る計画案は、「IAC」以外にも、東芝、日立などが既に東電と政府に提出している。
 現状以外の方法論を知れば、事態収束に向けた議論は深まるはずだ。
 「政府は“東電任せ”ではなく、事態収束の主導権を握って国民に道筋を示すべきだ」【佐藤】

 【注】「IAC」文書によれば、1~3号機の原子炉内で溶融してマグマ状になった核燃料は、格納容器から漏出している可能性が十分にある。格納容器下部とコンクリートの溶融(放射性エアゾルの大量発生をもたらす)は現在は起きていないと考えられるが、初期段階では発生した可能性がある。コンクリートは、おそらく貫通していない。

 以上、記事「菅アテにせず!“機能不全”の官邸スルー ヘリウムガス冷却計画」(「サンデー毎日」2011年6月19日号)に拠る。
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【震災】まだ表われていない大震災の経済的影響~課題の整理~

2011年06月13日 | ●野口悠紀雄
 大震災が日本経済に与える(or今後与える)影響は、次のようなカテゴリーに分けて識別する必要がある。
 (1)すでに影響が生じており、その大きさをデータで確かめられるもの、生産設備の損壊に伴う問題。
 震災による直接的な影響で、そのほとんどは生産量の減少や電力の供給制約だ。
 この影響は、鉱工業生産指数や貿易統計にすでに表れている。3月の自動車の生産は、66年の統計開始以来最大の下落幅(57.3%減)となった。貿易収支は4,637億円の赤字となった。
 生産設備はいずれ回復する。ただし(3)の海外移転が進む可能性があり、どの程度進むか、現時点では十分な評価が難しい。
 発電施設も、火力については復旧・増強が行われている。定量的な見とおしは可能だ。ただし、(2)の電力コスト上昇の問題が生じ得る。

 (2)今後生じることは確実だが、明確な形の影響はまだ生じておらず、したがって現時点では定量的に把握しにくい問題。
 (a)原子力発電に関わるもの。
 浜岡原発が運転停止となり、電力の量的制約は全国的な広がりを持つことになった。定期点検などで停止中の原発の運転再開は、不確実性が大きい。浜岡原発のような事態がほかでも生じれば、量的な電力制約はさらに広がるだろう。

 (b)原子力から火力へのシフトに伴う発電コスト上昇。
 近未来に生じることが確実であり、定量的にもある程度は見当がつく。東電は、LNGの輸入増加のため1兆円程度のコスト増が生じる、としている。中電、さらにほかの電力会社でも同じ事態が発生する可能性が高い。
 電力コストの上昇要因は、ほかにもある。東電には、原発事故の賠償金、事故収束への費用、廃炉に必要な費用が発生する。5月13日に決定された賠償スキームには、東電の賠償責任に上限が設けられていないので、基本的には電気料金に転嫁されると思われる。
 これらに起因する料金引き上げがどの程度になるか、現時点では完全には把握しにくい。しかし、東電の場合には、火力シフトと合わせて料金が2割以上、場合によっては4割程度の値上げとなる可能性もある。

 (c)震災で損壊した生産施設、住宅、社会資本の復旧のための投資。
 これらが行われることは確実で、どの程度の額になるか、おおよその見当はつく。被害総額が16兆~25兆円(内閣府の見とおし)だとして、復旧期間が2~3年とすれば、毎年の投資額は10兆円程度になる。
 ただし、これらの投資がいかにファイナンスされるか、現時点でははっきりしない。財政が関与する部分(主に社会資本)について、主な財源が税になるのか国債になるのか、まったく不明だ。
 民間主体による復興投資についても、金利や為替レートによって、動向が大きく左右される。そして、金利や為替レートは経済政策によって大きく変わる。

 (3)極めて重大であるにもかかわらず、定量的な把握が現時点では難しい問題。
 最も重要なのは、生産拠点の海外移転だ。これは円高によって、すでに昨秋から顕著に生じている。すでに日本の製造業は、怒濤の勢いで生産拠点の海外移転を進めている。しかし、震災後の状況については、現時点で得られるデータが極めて少ない。
 (2)の(a)や(b)によって、海外移転が一層加速する可能性が極めて高い。また、(2)の(c)の増加で金利が上昇すれば、国内での工場再建は不利になる。金利上昇が円高をもたらせば、さらにその傾向が強まる。 

 これまで日本の中核産業であった製造業が海外に移転してしまえば、深刻な雇用問題が発生する。だからといって、民間企業に雇用の責任を負わせることはできない。製造業に国内にとどまってほしい、と要請することはできない。だから、製造業に代わって雇用を生み出す産業を作り出すことが、どうしても必要だ。それがいかなる産業になるかは、日本経済の命運を決める重大なポイントだ。
 これまでも、製造業の雇用は減り続けてきた。問題は、製造業からあふれる雇用を受け入れる受け皿が小売業、飲食店など生産性が低いサービス業しかなく、そこでパートタイム形態の雇用が増えたことだ。ために、全体として給与水準が低下し、日本経済の所得が低下した。
 「生産性の高いサービス産業を作ることは、これまでも必要とされてきたことだが、それが一刻の猶予も許されない緊急の事態となった」

【参考】野口悠紀雄「まだ表われていない大震災の経済的影響 ~ニッポンの選択 最終回~」(「週刊東洋経済」2011年6月4日号)
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【震災】岩手を見捨てた小沢一郎/岩手に見棄てられた小沢一郎

2011年06月13日 | 震災・原発事故
 何よりも小沢一郎・民主党元代表の凋落を物語るのは、実は、地元岩手における酷評だ。
 「小沢氏が権力者の表舞台に戻ってくることに対して、誰もが会合で『もうウンザリだ』『えらい迷惑だ』とぼやいていた。マスコミはすぐ地元を小沢王国と呼ぶが、もう嫌気が差しているんです。水谷建設の事件であまりにもイメージが悪いし、震災後、一度しか岩手に帰ってきていない。しかも、行ったのは県庁だけ」【地元関係者】

 「そもそも国難の時に頼りになるという期待感が小沢にはあった。ところが、いざとなったら何もしないことがよくわかった。選挙の時だけ、地を這えと人を動かすのに、被災地に誰も寄こさない。先日、岩手で経営者ら200人が集まった時、みんな『小沢は地に墜ちた』と非難囂々でした」【小沢の元選対幹部】
 倒閣のために小沢グループの政務三役5人が辞表を出した騒ぎも、致命的だ。5人のうち、東祥三・内閣府副大臣は原子力と防災担当だ。樋高剛・環境政務官は、瓦礫など災害廃棄物の処理担当責任者だ。
 「ここまで被災地を無視した政局はありえない」【政治部記者】

 壊滅的な被害を受けた陸前高田市は、中選挙区時代、小沢の選挙区だった。政治の停滞が、ここで深刻な問題をひき起こしている。
 瓦礫を撤去しても、県はまだ3月分の代金を全額支払っていない。支援金も義援金も入ってこない。だから、重機のリース代、従業員の賃金が払えない。銀行はカネを貸してくれない、云々。【瓦礫を撤去した土木業者】
 瓦礫撤去には手をつけない業者がけっこうある。復興計画が確定していない現状では、タダ働きになるからだ。今は資材を調達している。小沢派の代表格だった会社が自民党に頼んでいるほどだ。これまで小沢は「用があれば秘書に言え」と言ってきたが、誰も来ないから頼りにならない、云々。【被災していない地域の建設業者】

 小沢王国を支えてきたのは、建設業者だった。しかし、震災以前から、県内の業者は小沢離れを始めていた。
 10年に公正取引委員会が、「談合を繰り返していた」と県内の80社を認定したのが発端だ。公共事業の指名停止処分と課徴金の納付命令で自主廃業や倒産に追いこまれる企業が出てきたのだ。
 除け者にされなくない、という恐怖心から談合サークルに入っていた業者も巻き添えを食らった。もう政治活動どころではない。【県政関係者】
 選挙のたびに動員を要請され、名簿の提出を求められていた建設業者が、「政治には疲れた」と離れていった。そこへトドメの一撃となったのが、震災への無策だ。

 小沢が被災地を訪れないのは、「警備などで迷惑をかけるから」ではない。
 小沢は、被災地で陳情されるのが嫌なのだ。陳情されても、「よし、わかった」と言えない。政府に対する力がなくなったから、空手形を切れないのだ。【小沢グループに詳しい関係者】
 それでも、「人としておかしいだろ」と、瓦礫を撤去する別の土木業者は言う。2月の市長選挙の時、小沢ら現職国会議員、県議、県知事が陸前高田を訪れた。「陸前高田を明るくする」と言っていたが、連中は薄情にも来ない。だから、我々市民は「なんだよ、選挙の時だけ来て」と言うんだ。自分の選挙地盤だった所だから、小沢に常識があれば顔くらい見せるだろ。「うちの母ちゃんもじいちゃんも亡くなったんだ」と叫ぶ子どもが、ここにはいっぱいるのに、一体、国会で偉そうに何をやってんだ、云々。
 黄川田徹・衆議院議員の秘書の遺体が上がった後、焼き場に来た民主党の人間は黄川田議員だけだった。小沢の秘書も他の民主党の連中も来なかった。死に水を取ることもできないヤツらに、政治なんてできねえよ、云々。【黄川田議員の支持者】
 「小沢にとって、我々は票集めの道具でしかない」【後援会幹部】

 以上、記事「岩手を見捨てた小沢一郎 有力後援者が続々『絶縁宣言』」(「週刊文春」2011年6月16日号)に拠る。
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【震災】原発>放射性物質から体を守る食品 ~味噌・海苔・茶~

2011年06月12日 | 震災・原発事故
(1)味噌
 チェルノブイリ原発事故後、日本から輸出量が急増し、旧ソ連や欧州の人々が競って食べたものがある。味噌だ。
 きっかけとなったのは、秋月辰一郎『体質と食物』だ。英国で出版された。
 秋月氏は、1916年生。生来虚弱だったが、89歳まで生きた(2005年没)。しかも、長崎の爆心地から1.4キロの距離にあった浦上第一病院(現・聖フランシスコ病院)で被曝しながら。当時、秋月氏は同病院の医師だった。氏も、同じ病院の看護婦(当時)で今も健在な細君(93歳)も、従業員も、患者の救助、付近の人々の治療にあたったが、原爆症は発症していない。「その原因の一つは『わかめの味噌汁』であったと私は確信している」と、氏は著書で書いている。
 原爆投下後、氏は玄米飯に塩を加え、味噌汁を毎日従業員や患者に食べさせた。そもそも、以前から院内に備蓄された味噌とわかめを使った味噌汁が日常食だった。被曝後は、砂糖は許可せず、近くでとれた南瓜や茄子の味噌漬けを食べさせた。
 空中の放射線量も高く、当然、南瓜や茄子のとれた土壌も汚染されていた。生き延びた秘訣は味噌にあった。【渡邊敦光・広島大学原爆放射線医科学研究所名誉教授】
 渡邊名誉教授、爆放射線医科学研究所の実験によれば、味噌には外部被曝・内部被曝の両方に対する防護効果(小腸細胞の再生・セシウム137が筋肉から減少)がある。
 味噌の産地や素材を変えた実験も行われている。唯一差が出たのは、熟成期間の違いだった。
 熟成段階で生まれるメラノイジンが放射線防護効果のある成分かもしれない。【渡邊名誉教授】
 メラノイジンは、醤油にも含まれる。実験では、味噌に比べると結果は劣るが、小腸の再生に一定の効果があった。
 納豆にも、放射性物質からの防護効果がある、とされる。大豆の発酵時に生まれる成分に何らかの防護効果があるのではないか、と考えられている。
 ただし、防護効果を高めるには、日頃から味噌を食べていることが重要だ。「一日2杯の味噌汁を飲んでほしい」【渡邊名誉教授】

(2)海苔
 チェルノブイリ原発事故では、もうひとつ注目を浴びた食品がある。スピルリナだ。海苔の一種で、藍藻綱ユレモ目に属する。たんぱく質が多く含まれ、日本では健康食品として販売されている。
 ベラルーシの放射線医学研究所の実験によれば、スピルリナ服用によって、被害の大きかった地区の子どもの尿中の放射線レベルが減少した。スピルリナには、体内のセシウムやストロンチウムを吸着し、排出する働きがある、と考えられている。
 内部被曝が怖い理由の一つは、放射線が体内の水分子を攻撃し、毒性の強いフリーラジカル(OHラジカル)という分子を生むからだ。OHラジカルは、活性化すると細胞膜に穴をあけ、その穴から細胞内に入った放射性物質が遺伝しを傷つける。その結果起きた細胞の突然変異がガンへと進行する。
 しかし、OHラジカルは抗酸化作用のある物質で除去できる。
 味噌に含まれるメラノイジン(アミノ酸と糖質が結合してできる)も、スピルリナに含まれるβカロチンやビタミンEも、強い抗酸化作用を持っている。

(3)茶
 サトウキビに付着している黒酵母に含まれるβグルカンや、お茶に含まれるカテキンには抗酸化作用がある。免疫力を高める。DNAは、免疫力があれば自力で回復する。ただし、お茶のなかでも太陽光下で新芽を育てる煎茶や番茶などの苦いお茶にしかカテキンは含まれていない。【長谷川武夫・京都府立医科大学特任教授】
 赤ワインに含まれるポリフェノールも抗酸化作用がある、と言われている。

 以上、澤田晃宏・福井洋平(編集部)「放射性物質から体を守る食品 一日2杯の味噌汁が効く」(「AERA」2011年6月13日号)に拠る。
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【震災】小沢一郎は終わったか ~政治の停滞~

2011年06月12日 | 震災・原発事故
●もう表舞台に出ない方がいい(山口二郎・北海道大学大学院教授)
 今は政治的空白を作る時期ではない。内閣不信任否決(6月2日)は評価できても、採決前に鳩山前首相と菅首相が密室で協議したことは理解できない。
 政党政治の基本原則は民主主義だ。首相退陣を条件に造反を回避させるのは、政党政治の基本政治に反する。
 菅首相は、事態収拾のため退路を明確にし、復興への道筋を具体的につけなければ求心力は保てない。
 菅首相は、結局、挙党態勢を築くことができなかった。
 小沢一郎元代表の周辺で新党の話が出ているが、彼は自民党時代から政争ばかりしている。今回、不発に終わったことで、政治家としての役割は終わった。もう、表舞台に出ないほうがいい。
 話し合いで重要事項を決められない民主党は、政党の体をなしていない。民主党が国民の信頼を回復させるためには、鳩菅時代を終わらせる必要がある。しかし、若ければよい、というものでもない。ポスト菅は、鹿野道彦農水相か。安定感があり、政府を動かす実務的な能力を兼ね備えている。彼が衆議院任期満了まで党内融和を図り、次の世代につなげるのが望ましい。

●首相が零点なら国民も零点(佐藤優・作家/元外務相分析官)
 今回の不信任騒動に一番問題のあるのは自民党だ。政権は実力で取るべきなのに、復興第一の時期に、民主党内に手を回し、権力を奪取するゲームを考えた。建設的な政策的提言をして次の選挙で勝つ、というのがまっとなやり方だ。そういう努力は何一つしていない。
 次に問題なのは小沢一郎元代表だ。菅直人は、国民が決めた国会議員が選んだ首相だ。それを野党と組んでひっくり返そうとした。国民を愚弄している。小沢を追いつめたのは菅首相だが、小沢のやり方は民主主義の原則に照らして支持できない。
 菅首相は、日本の政治家のメンタリティを考えた場合、最も責任を取らざるを得ない状況に追いこまれている。菅首相が零点ということは、選んだ国民が零点ということだ。
 国際社会は、菅首相に一定の理解を示している。米国大使館やCIAは、少なくとも9月までは菅政権がもつ、と判断した。5月のサミットでオバマ大統領が9月に菅首相を招くと明言したのは、日本政治情勢が安定してほしい、というメッセージでもある。

●浅ましい自民に乗った小沢氏(浜矩子・同夜大学大学院ビジネス研究科教授)
 今回の政争では、内閣不信任案を出した自民党の浅ましさが目立った。解散総選挙に持ちこみ、09年の選挙で落選した議員を復活させたい魂胆。それに小沢一郎元代表などが乗っかってしまった。茶番にうつつを抜かしている場合ではない。
 自民党は、長期政権の上にあぐらをかき、日本中に道路を造るため建設国債を発行してバラマキを行ってきた。民主党の子ども手当もバラマキと言われるが、投資の対象が「コンクリートから人」に変わっただけで、人に投資したほうがまだいい。
 赤字国債など自民党時代の負の遺産を処理している最中に、足を引っ張ることばかりしている。そんな党が政権についても借金体質は変わらず、財政はさらに悪化するだろう。
 大連立は、結局のところ民主主義の本質違反だ。容易に、そこへ行くべきではない。

●不信任を言うなら政策を提示せよ(五十嵐敬喜・法政大学法学部教授)
 復興構想会議の検討部会のメンバーでもある自分の元には、被災地から切羽詰まった声が連日のように寄せられる。状況打開のためには、国や自治体が一刻も早く復興策をまとめねばならない。
 国は、やる気のあるところにいち早く資金、物、知恵をつぎ込むべきだが、これには法律や予算がいる。国会が動かねばならない。ところが、現実は不信任騒動だ。このまま放っておくと復興策は秋になる。それまでに多数が疲弊して亡くなる。被災した議員もいるのに、なぜ分からないのか。
 誰が総理であろうと、やるべきことは明確だ。まずは原発の冷温停止と放射能の拡散防止。そして、すべての被災者の救済と復興だ。莫大な費用をどう調達するか。
 不信任を唱える人は、自分の政策をはっきり打ち出すべきだ。しかるに、今回は前向きな話がほとんどない。 

●大連立構想に隠された罠(金子勝・慶應義塾大学経済学部教授)
 今回の混乱の直接の震源地は、小沢一郎元代表だ。震災後の復興対策に遅れる菅政権への批判を繰り返し、菅政権が退陣して次の内閣が自民党と大連立を組めば震災復興が一気に進むかのような錯覚を起こしている。しかし、原発安全神話を言い続けてきた自民党の罪は大きい。過去の原子力行政の過ちから国民の目をそらせようとする意図が“大連立構想”に隠されている。
 小沢グループは、菅首相に対する批判を繰り返しても対案は出せないでいる。選挙には強い政治家だが、政策は立てられない。そこに自公が乗っかったのだ。
 今の民主党には、政策の議論がない。同じ党内でも意見の食い違う物が対立したままだ。この状態で誰がトップに立っても、同じ過ちを繰り返すだけだ。今の最重要課題は、大震災からの復興に焦点を絞り、マニフェストに照らしてどこまで実現できるか、だ。復興を最優先させつつ何ができるかをはっきりさせ、まずは民主党内で合意を形成して政策目標を国民に提示することが先だ。内閣総辞職やポスト菅選びは、それから考えるべきだ。被災地は問題が山積みしている。政治が停滞している場合ではない。
 福島第一原発からの放射能汚染の被害を最小限に食い止めるため、放射線量の計測箇所を増やし、放射能マップを作り、汚染度の高い地域は立ち入り禁止にすべきだ。原子力からのエネルギー転換、社会保障の再建、東北の農林水産業を立ち直らせて雇用を創出することに全力をそそいでもらいたい。

 以上、記事「豪腕は終わったのか」(「サンデー毎日」2011年6月19日号)に拠る。
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【震災】サマータイムが蝕む体内時計 ~身体という自分に最も身近な自然~

2011年06月11日 | 震災・原発事故
 サマータイムは、欧米を中心に70ヵ国以上で導入されている。
 日本では、48年から52年にかけて、GHQの下でサマータイムが実施された。その後何度か導入が試みられたが、国民の理解が不十分、といった理由で見送られてきた。
 このたび、節電策として、既に森永乳業、日本製紙グループ本社が開始。キャノン、東京都庁、宇都宮市役所が導入を表明した。
 一方、「自主的に操業時間を1~2時間前倒しする効果は数十万kW減程度で、誤差の規模」だ【今中健雄・電力中央研究所・社会経済研究所主任研究員】。NECは、シミュレーションの結果大規模な節電効果はない、と見送った。 
 節電効果が小さいどころか、むしろ健康への悪影響が大きい・・・・という声が医療関係者からあがっている。
 なお、以下、サマータイムは「ST」、サマータイムへ入る切り替え時を「ST切替時」、サマータイムを実施している期間を「ST期間」と略する。

(1)睡眠不足
 米国のデータによれば、ST期間に睡眠時間が平均40分短縮する。
 1時間早く起床する分、1時間早く就寝すればよいのだが、働き過ぎの日本人は残業したり仕事を持ち帰って睡眠時間を削る可能性が高い。睡眠不足は、消化器の不調やめまいなど、さまざまな病気を引き起こす恐れがある。【高橋正也・労働安全衛生総合研究所上席研究員】
 実験的にSTを導入した北海道のデータによれば、「体調が悪くなった」人が「健康増進に役立った」人を上回る。悪くなったのは20代、30代に多く、若年層では朝早く起きても就寝は今まで通り標準時に合わせた行動をとっているか、仕事上そのような行動をとらざるを得ないケースが推定される。

(2)体内時計 ~朝の光~
 STは、人間の体内時計を無視した施策、という意見もある。
 体内時計(生体時計)は、人間の脳の奥、視交叉上核にあり、人間の1日のリズムを刻む司令塔的役割を担う。ホルモン分泌や体温調節に深く関わる、とされる。体内時計の1日は、大多数の人がおおむね24.5時間、とされる。つまり、体内時計と地球の周期には1日0.5時間のズレがある。1日ごとにリセットされないと、ズレは1週間で210分となる。
 リセットするには、午前中に太陽の光を浴びる必要がある。目の網膜を通じて太陽光が視交叉上核に伝わるとズレを解消し、体内時計を24時間に戻す。人工光では同調効果は小さく、太陽光でも午後になると同調の動きはなくなる。
 ST切替時、1時間時刻を早められると、その日は23時間で過ごさねばならない。これは1時間の時差ボケに相当する。たった1時間の時差ボケも、治すには1週間かかる、とされる。よって、ST切替時の直後の1週間は辛い。

(3)体内時計 ~夜の光~
 夜の光は、朝の光と逆に、体内時計の周期を25時間以上に長くする。夜の光は、体内時計の働きを停止させる、という報告もある。夜の自由時間が増えたから、といって光を浴びすぎると、起床後朝の光を浴びても24時間にリセットされにくくなる。やはり時差ボケ状態になり、体調が悪化する。
 夜の光は、体内時計の調節、睡眠促進、抗酸化作用をもつホルモン「メラトニン」の分泌を抑制する。コンビニの2,000ルクスの光はもとより、家庭の照明もメラトニンの分泌を抑える。
 ドイツのデータによれば、ST切替時に体が慣れるまで4週間、秋に標準時に戻す時には3週間かかる。睡眠時間は、ST期間の間、平均25分短縮する。標準時には日の出時刻と連動していた睡眠リズムが、ST期間には日の出時刻と連動しない。

(4)交通事故
 ST切替時の直後の1週間は、「魔の刻」だ。
 カナダのデータによれば、ST切替時の直後に交通事故が増加する。英国にも類似のデータがある。
 ST終了時に事故が増える、という逆の報告もある。
 交通事故には眠気以外にさまざまな要因が絡むが、交通事故の少なくとも20%は眠気に起因する。STと交通事故との関連は無視できない。

(5)心血管系疾患・糖尿病・肥満・鬱・自殺・ガン
 スウェーデンのデータによれば、ST切替時には心筋梗塞が増える。逆に、ST終了の直後には減少する。
 体内時計は、血流の調整も行っている。ST切替時には、体内時計が乱れることで心血管系に悪影響を受ける人もいるのだ。
 交通事故や心筋梗塞は急性の健康障害だが、STが継続的に取り入れられると慢性的な健康障害が引き起こされる可能性がある。
 睡眠不足の慢性化は、糖尿病や肥満の危険を高める。鬱や自殺の引き金になる、という指摘もある。夜間に光を浴びすぎてメラトニンの分泌が抑制されると、不眠のみならず発ガンの危険が高まる、という報告もある。

(6)自衛策
 たかが1時間。されど1時間。STが自分の職場に導入されたら、自己コントロールするしかない。
 何時に寝るかを決める。そこから逆算し、仕事や入浴の時間を決める。だらだらと夜更かししない。
 眠くなったら「自然の声」を謙虚に受け止めるのだ。気合いや根性で乗り越えようとするのはナンセンスだ。
 「今震災では、人間が自然を制御できないことを痛感させられた。実は自分の体が最も身近な自然である。体内時計を意識しながら、夏を送りたい」

 以上、菊池香(本誌)「サマータイムが蝕む体内時計」(「サンデー毎日」2011年6月19日号)に拠る。

   *

 子どもの体内時計の周期が通常の人(24.5時間)より大きくズレている場合、不登校の一因となる。
 体内時計の維持安定は、認知症の症状を軽快させる。朝、定刻に朝の光を浴びるとよい。
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【震災】原発>検査員の告発「泊原発の検査記録改竄」 ~隠蔽の組織的構造~

2011年06月10日 | 震災・原発事故
 原子力安全基盤機構は、03年に発足した独立行政法人だ。11年4月現在、職員は426人。原発や原子力施設の検査、設計の安全性解析などを業務とする。保安院の下請け的立場で全国の原発の検査を行う。保安院の検査担当者は「検査官」、同機構のそれは「検査員」と区別される。検査官による検査はごく一部で、大半は同機構の検査員が検査する。
 同機構は、経産官僚の天下り組織だ。理事長の曽我部捷洋は元通算官僚で、原子力安全課長などを歴任後、天下り、西武ガス常務などを経て同機構発足と同時に理事に就任した。曽我部理事長のほかに3人いる理事のうち2人は通算官僚OBだ。他にも部長クラスにOBたちがいる。
 同機構に多数いる技術者は、「保安院の役人の下働きのように使われている。実際の検査にあたっても、コストを抑え、期限内に検査を終えることばかり要求される。厳密にやるほどカネと時間がかかるから、どうしても手抜きになりがち。それでも検査結果の提出先である保安院は素人中心だからフリーパス状態。職務に忠実な検査員ほど、このままではダメだと思うでしょうね」【伴英幸・「原子力資料情報室」共同代表】

 藤原節男氏(62歳)は、原発との関わりが40年以上に及ぶ。大阪大学工学部原子力学科を卒業後、三菱原子力工業(後に三菱重工に合併)入社し、日本原子力研究所(現・日本原子力研究開発機構)への派遣などを経験した。55歳で退職。05年に原子力安全基盤機構に再就職し、検査業務部の調査役を務めた。
 その藤原氏(以下「F氏」と略する)が、上司から検査記録の改竄を命じられたのは、09年3月のことだった。
 
 当時、泊原発(北海道電力)3号機は建設が終わり、使用前検査の段階に入っていた。F氏は、電気工作物検査員として、同原発で3月4日および5日の2日間、「減速材温度係数測定」を行った。これは、原子炉内で何らかの原因で冷却材の温度が上がっても原子炉出力を抑制できるかどうかを判定する基本的な検査だ。この検査抜きで原発を運転できない。
 ところが、4日の検査では、本来なら「負」になるべき係数が「正」になった。このまま運転し続ければ臨界事故につながりかねない。そこで、翌日の検査では部分的に制御棒を挿入し、ホウ酸の濃度を薄めるなどの対策をとって検査し直した。その結果、係数が「負」になったので、条件付き合格とした。
 4日の「不合格の検査記録」と5日の「条件付き合格の検査記録」の両方を上司(グループ長)に見せた。
 すると、グループ長は、4日の「不合格の検査記録」を削除するよう指示した。記録改竄である。
 F氏は納得せず、検査実施要領にもあるとおり、4日の「不合格の検査記録」も必要だ、と抗議した。
 しかし、グループ長は、このままでは承認印を押さない、要求に従わない場合には査定の評価を絶対に下げてやる、と恫喝した。

 F氏は、グループ長の上司、検査業務部長(経産省OB)に報告した。この部長は、「検討タスクグループ」を発足させ、この問題の検討を指示した。
 結論は、このまま提出すればよい、となった。他方、グループ長の改竄指示命令については不問に付された。
 記録改竄指示をなかったことにはできない、と考えたF氏は、とにかく検査記録を提出せよ、と求める部長に抗議した。
 すると、6月に配置転換を命じられ、勤務査定は5段階評価の下から2番目の「D」評価となった。7月には賞与が8%カットされた。部長の業務命令に背いた、というのが理由だ。
 F氏は、配置転換後は仕事らしい仕事を与えられなかった。その後も再び「D」評価を受けた。10年3月末に定年を迎えたとき、大半の人が再雇用されるところ、F氏は再雇用不可とされた。
 現在、F氏は、再雇用拒否処分の取り消しを求めて、機構側と係争中だ。

 実は、F氏は、09年11月、保安院に対して4件の内部通報を行っている。
 (1)09年3月の記録改竄命令について
 (2)記録改竄命令を問題にせずに放置した原子力安全基盤機構の組織の問題について
 (3)99年7月に敦賀原発2号機で配管に亀裂が入り、冷却水が漏出した事故の原因について
 (4)原子力安全基盤機構の検査業務部で、検査ミスを報告する際に本来の報告書を使わず、簡略化した書式で済ませていることについて

 (3)が原発の安全性の面では最も重大だった、とF氏はいう。
 敦賀原発2号機の事故が起きたとき、F氏は三菱重工で事故対策本部に属し、原因究明にあたった。事故原因が再生熱交換機にあり、他の原発でも同様の事故が起こる可能性がある、と主張した。ところが、敦賀原発2号機に特有の事故原因であり、その再生熱交換機だけを交換すればよい、という結論になった。はたして、同様の事故が03年9月に泊原発2号機で発生した。
 後でわかったことだが、三菱重工では、この謝った事故原因の裏づけをとるために実験したところ、期待どおりの結果が出なかったので、実験データを改竄したのである(02年7月、三菱重工の別の社員が保安院に内部通報した)。
 F氏が、泊3号機の検査で、不合格の検査記録を残すことにこだわったのも、このときの経験によるところが大だ。「危険性があるのに放置したり、なかったことにしてしまうと、日本の原発はいつまでも同じような事故を起こし続けることになってしまう」
 (4)についても、問題は大きい。簡易書式に書かれた検査ミスの中には、「判定基準が間違っていた」「検査結果の数値が一部間違っていた」など検査の信頼性を疑わせるような記述があるのだ。

 以上、記事「原発検査員が実名で告発 『私が命じられた北海道泊原発の検査記録改ざん』」(「週刊現代」2011年6月18日号)に拠る。
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【震災】原発>非常時冷却システムを撤去していた勝俣恒久・東京電力会長

2011年06月09日 | 震災・原発事故
 なぜあれほど簡単にメルトダウンしてしまったのか。
 福島原発の設計時には、最後の砦となる冷却システムが存在していた(「蒸気凝縮系機能」)。
 ところが、事故のとき、そのシステムはなかった。
 蒸気凝縮系機能は、緊急時炉心冷却装置(ECCS)の一系統だ。通常の場合、原子炉を止めても、高圧炉心スプレーと低圧炉心スプレーなどの系統で冷却できる。しかし、これらの系統は電源がないと動かない。緊急時炉心冷却装置は、電源がなくても作動する。震災などの非常時にはいちばん大事な役割をはたすはずだった冷却システムだ。
 それが、肝心かなめの大地震の際、無かった。

 03年2月17日に開催された「第10回原子力安全委員会定例会議」で、削除/撤去が検討された。
 当時、蒸気凝縮系機能は問題を抱えていた。01年11月に浜岡原発(中電)で原子炉が停止する「レベル1級」の事故が発生したのだ。蒸気凝縮系で水素爆発が起こり(日本初の水素爆発)、配管が破断したことが原因だった。
 この事故後、中電は配管内に水素が溜まらないよう遮断弁を設置して対応した。しかし、02年から逐次、蒸気凝縮系の配管を撤去し、機能を削除した。遮断弁の保守管理に手間がかかるからだ、というのが中電の説明だ。
 中電に遅れて、東電も蒸気凝縮系機能の削除を申請した。申請者は、当時社長だった勝俣恒久だ。東電経営陣の事務系社長は、安全より収益を優先していたのだ。
 原子炉を止めても“残留熱”=崩壊熱は続くから、原理の中の水は沸騰する。→圧力が上がる。
 「それを外に導いて凝縮させて冷却するという蒸気凝縮系のシステムは必要なのです。もともと必要があるから付けた機能を削除するなんて通常では考えられないことです」。設備を増強して安全を期すなら分かるが、事故の恐れがあるから外すのは本末転倒だ。【小出裕章京大原子炉実験所助教】
 蒸気凝縮系を削除して問題はなかったか。
 東電担当者は答えた。一度も使ったことがなく、水位の制御が極めて難しい。浜岡原発で水素ガスが爆発した事故もあり、撤去した、と。

 日本の原子力行政は、保安院と原子力安全委員会のダブルチェック体制で運営されてきた。が、それはナアナアの“ぬるま湯チェック”にすぎなかった。
 経産省は、東電の主張を丸呑みし、削除は妥当と判断を下した。
 原子力安全委員会はもっと情けない。03年5月8日の安全委臨時会議では、削除を審議したが、さしたる議論はなく、質問はなかった。

 東電が福島第一原発から蒸気凝縮系機能を撤去しようとした03年は小泉政権時代だ。「電力会社と二人三脚で原発を指針してきたのは自民党政権そのものだった」
 撤去を認めた当時の経産大臣は、原発推進派で知られる平沼赳夫(旧・自民党、現・たちあがれ日本)だ。平沼は、勝俣と仲がよい。福島第一原発事故後も、再三、擁護する発言を繰り返している。事故の収束の見とおしがたたないのに、5月31日には「地下式原子力発電所政策推進議員連盟」を発足させ、会長に就任している。

 以上、上杉隆+本誌取材班「福島原発内部文書入手! 非常時冷却システムを撤去した勝俣会長」(「週刊文春」2011年6月9日号)に拠る。
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【震災】3年間のペアリング支援で地域主権の復興が可能に ~宮城県岩沼市~

2011年06月08日 | 震災・原発事故
(1)現地では何が問題か
 被災後2ヵ月経った今、本格的な復興に向けて舵を切らなければならない。インフラや住宅の復旧を早く進める必要がある。被災者が自ら考える地域主権の復興でなければならない。
 今の問題点は、現地に人がいないことだ。現地の自治体は、行方不明者の捜索、瓦礫の処理、仮設住宅の建設といった仕事で手いっぱいだ。時間、体力、気持ち、アイデアなどすべての面で余裕がない。
 そこで、ほかの自治体が被災地をそれぞれ受けもって長期的な復興を後方支援する「ペアリング支援」が必要だ。

(2)ペアリング支援の一例
 四川大地震で、世界から49チームが支援呼びかけに応じた。日本からは石川教授のチームが復興のグランドデザインを提案し、3年間支援を続けた。
 中国が復興のために採用したのは「対口支援」だ。基本は自力更生で自ら計画を立てるが、被災地ではない省や市が特定の被災地を受けもち、人的・資金的・物的支援を行った。「対口」とはペアを組む、という意味だ。この方法で、中国では小さな農村も見捨てないキメ細かい支援を行い、めざましい復興を実現した。
 重要なことは、単なる復旧ではなく、中国が直面している大問題(都市と農村の格差)の解決に取り組んだことだ。被災地の農村では近代化がほかの地域に先駆けて一気に進み、モデルケースとなった。

(3)国がなすべきこと
 このたび、関西広域連合は自主的にペアリング支援を進めている。国が音頭をとり、被災地全体にペアリング支援を導入すべきだ。
 すでに地域によって格差ができつつある。資金や人材に差があるからだ。特にリーダーのいる所といない所との違いは大きい。格差が広がらないうちに、ペアリング支援のための法の枠組みや制度を整備する必要がある。国が自治体に、長期支援のために派遣する者の身分を保証するのだ。
 政府の支援は、今のところ物資の供給や医療などの短期支援にとどまっている。これと、復興へ向けた長期支援とを区別しなければならない(自力更生が基本で、ペアリング支援は3年くらいがめど)。
 国が法や制度を整備し、自治体同士のペアリングを行い、現地で取り組むテーマについて(例>農業や水産業の復興、空港の再建などの分野別に)タスクフォースを作るのが復興には有効だ。民間企業、NPO、ボランティア、国際社会などがこれに参加できる。今はチャンネルがないので、こうした人々や組織がらち外に置かれ、善意を生かせていない。

(4)自治体ができること
 10人でやっている仕事を9人にして1人を被災地に派遣する。派遣した側の自治体も防災能力を高められる。逆に自分たちが被災した場合、援助を受けることが可能になる。
 日本ではどこの自治体も財政状態が厳しい。資金面まで支援できない。が、支援する人材と組織を作れば、そこが動いて民間から資金を導入することもできる。
 地元に張り付いてチャンネルを作らないと、具体的に物事は動かない。

(4)東京大学と岩沼市のペアリング
 4月から始め、復興計画を作っている。自分の町の復興は、自分たちが決め、立ち上げる、という志が大事だ(「地域主権」)。日本の民主主義の真価が問われている。モノだけでなく、将来の夢や暮らしの場の再生につながる支援も重要だ。
 (a)集落全体で安全な所へ移住したい、というのが被災者全員の意向だ。だから、それがまず前提となる。
 (b)土地の履歴を基本に考える。住宅は内陸部に移し、今回の震災で生じた瓦礫を使って沿岸から1kmの間に丘を複数造り、森にしていく。多重構造の丘で津波の勢いを削ぎ、住宅地まで及ばないようにする。丘を造れば、景観も美しく、防災にもなる。渡り鳥、絶滅危惧種の生物といった生物多様性を維持する森にもなる。津波に対抗できる高さの人工地盤を造るのは、時間とお金がかかりすぎる。景観も美しくない。現実を厳しく認識した責任のある提案が必要だ。
 (c)リアリティがあり、かつ、夢と希望のある計画を作ることが必要だ。岩沼市の農業支援の一環で、塩を被った土地で育てると甘みが出るトマトを栽培する計画を進めている。塩害を逆手にとった。大阪・住吉のロータリークラブが援助する。
 (d)瓦礫で山を造る試みには、ネーミングライツで資金を導入する。

 以上、記事「3年間のペアリング支援で地域主権の復興が可能に ~日本激震!私の提言 第8回 石川幹子~」(「週刊東洋経済」2011年6月4日号)
 石川幹子は、ランドスケープアーキテクト、農学博士、技術士(都市及び地方都市)。東京大学大学院教授。岩沼市の復興会議議長。宮城県復興会議にも参加している。
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