語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【震災】原発>東電がヒタ隠した放射線データの殺人的数値 ~飯館村・伊達市・福島市~

2011年06月07日 | 震災・原発事故
 事故から2ヵ月以上経ってから、また新たな事実が判明した。5月28日、東電は事故直後から計測していながら、未公表にしていた放射線量データ(福島第一原発構内に係るもの)を公開した。
 福島第一原発の敷地境界には、放射線量を常時測定する観測装置(モニタリング・ポスト、MP)が8ヵ所設置されている。地震発生直後に電源喪失し、機能が停止したMPを除き、(a)敷地南西側の正門付近と(b)南側8MP付近における10分ごとの数値だけ東電は公開してきた。
 ところが、3月12日15時からは、柏崎刈羽原発から借りたモニタリングカーが、(c)1~4号機の北西側、MP4付近で2分間ごとの計測データを記録していたのだ。
 このたび、(a)~(c)の1,500件のデータをようやく公開したのだが、驚くべきは(c)の数値の桁違いの大きさだ。

 以前から公表されていたデータでは、3月12日10時30分で、(a)一時的に385.5μSv/時という高い数値だが、後はほぼ10.0μSv/時で推移している。同時間帯、(b)でも一時的に24.1μSv/時を示したものの、ほぼ横ばいの5.0μSv/時だ。同日15時10分でも、(a)7.0μSv/時、(b)3.3μSv/時だった。1号機が爆発した直後の15時30分は、(a)5.5μSv/時、(b)3.2μSv/時だ。
 ところが、このたび新たに公表された(c)によれば、同日15時13分の数値は162.4μSv/時、1号機が爆発を起こした直後の15時39分には1,015.1μSv/時を記録していた。その後も2分ごとに桁違いの数値を記録し、最低で34.8μSv/時、最高は1,204μSv/時まで達している。

 この隠蔽された数値は、早い時期から事故を起こした原子炉の北西側、(c)の方向に向かって高いレベルで放射能汚染が広がっていったことを明示している。
 4月6日から29日にかけて、文科省と米国エネルギー省が共同で航空機モニタリングを実施した。その結果によれば、セシウム134、137を合計した地表面の蓄積量が300万Bq/平米を超える汚染地帯は、確実に北西に向かって拡大し、半径30キロ圏を超えている。60万Bq/平米を超える汚染に至っては飯館村をすっぽりと覆い、伊達市や福島市の一部にも点在して広がっている。
   
 チェルノブイリ原発事故後、ウクライナは汚染地域を4つの区域に分類した。第1ゾーンは、事故直後、旧ソ連政府によって強制退去となった地域だ。第2ゾーンは、「無条件移住区域」で、ベクレル単位に換算すると55.5万Bq/平米以上だ。
 つまり、飯館村、伊達市や福島市の一部はチェルノブイリ原発事故でいう「無条件移住区域」に該当する。
 ウクライナでも、移住先がない、などの理由で今も第2ゾーンに暮らす地元住民はいる。彼らに膀胱ガンの多発が顕著だ。子どもの甲状腺ガンの多発はよく知られている。膀胱ガンについても、96年にウクライナの研究が公表され、05年、この事実は世界的に認知された。また、膀胱ガン、子どもの甲状腺ガンのみならず、白内障と心臓疾患も増加する。チェルノブイリ原発事故では報告されていないが、心臓と同様に脳梗塞の多発も考えられる。

 飯館村、伊達市、福島市は、汚染が北西に拡大することをもっと早く知っていれば、もっと早く対策を講じることができたはずだ。

 以上、青沼陽一郎「遅れに遅れた退避勧告 東電がヒタ隠した放射線データ 殺人的数値」(「週刊文春」2011年6月9日号)に拠る。

    *

 3月11日22時、原子力災害対策本部事務局は、緊急時対策支援システム(ERSS)を稼働させ、メルトダウンを予測した。その情報は官邸にも報告されていた。
 保安院の資料によれば、予測は原子炉の冷却水の水位などプラント情報が比較的喪失しなかった2号機を中心として行われた。22時のERSS予測は・・・・
 22:50 炉心露出
 23:50 燃料被覆管破損
 24:50 燃料溶融
 27:20 原子炉格納容器設計最高圧到達。原子炉格納容器ベントにより放射性物質の放出。
 原子力災害対策本部事務局は、2号機に係るこの予測をもとに、1号機および3号機の事故進展予測も行った。
 これだけ重要で正確な情報があり、官邸に伝えられていたのだから、その日のうちに避難地域を拡大すべきであった。

 ところで、同対策本部は、緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)に3時半放出という条件で、1号機のベントによる放射能拡散を予測させた。この時作成された試算図【注】では、風は海に向かい、内陸部に放射性物質は拡散しない、という結果をはじき出した。被害を最小限に抑えるタイミングであった。対策本部から、SPEEDI試算図が官邸にファックスで送信された。
 菅首相が原発を視察する(12日7~8時)と、枝野幸男官房長官の記者会見(12日3時過ぎ)で発表された。
 視察に伴って、ベントの予定時刻が変更された。12日3時53分、対策本部は文科省に、1号機のベント実施時刻を正午に遅らせた場合のSPEEDI試算をやり直させた。
 実際のベントは、12日14時30分から実施された。その時刻に近いSPEEDI試算図では、放射性物質は海風に乗って双葉町や浪江町などに拡散する、と予測された。ベントを遅らせたため、放射性物質が陸地方向へ飛び散り、多数の住民を被曝させることになったのだ。

 【注】「ポスト」誌は、3月12日1時12分作成のSPEEDI試算図を官邸は知っていた、と断じる。
 なぜなら、原発視察において「首相を乗せた自衛隊ヘリは、試算図が放射性物質が拡散すると予測した海側を避けて飛行した。陸自幹部が明かす。/『ヘリは南から福島第一原発に接近し、原子炉上空を陸側にぐるっと回避して到着した。そのままでは次の離陸の際には海に向かって飛ぶことになるから、着陸の際には、半回転して機体を内陸に向け直しています』/これこそ官邸がSPEEDI予測を知っていた動かぬ証拠だ」。
 これは妙な証拠である。風向は、SPEEDIによらずとも、天上の雲を見、地上の草木を見れば小学生でもわかる。少し詳しい天気図にも載っている。ヘリに風向計が備え付けてあったかもしれない。・・・・だからと言って、官邸が知らなかったことにはならないが、「動かぬ証拠」と胸を張るなら、せめて中学生にも納得できる証拠を出したほうがよい。

 以上、記事「『再臨界だ!』と煽ったのはやっぱりこの男」(「週刊ポスト」2011年6月10日号)に拠る。
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【震災】原発>明日なき放射性廃棄物 ~処理費用70兆円以上~

2011年06月06日 | 震災・原発事故
 放射能に汚染された土壌と瓦礫の山が、やがて日本を押しつぶす。これらの処理に要する財政負担は余りに大きい。
 放射性廃棄物の処理方法は、法令で厳格に定められている。貯蔵場所や処理場も、日本原子力研究開発機構(JAEA)関連施設や六ケ所村の関連施設などに限定されている。
 JAEAの「放射性廃棄物処理処分料金表」に基づいて試算すると、福島第一原発事故で汚染された瓦礫や土壌などの処理に70~80兆円、場合によっては100兆円もかかる。
 では、放射能汚染された可能性のある廃棄物は、どれだけあるか。全容は政府も把握していない。「AERA」誌が様々なデータをもとに試算した結果は、次のとおり。
 なお、ここであげた金額は東海研究開発センターなどの施設で処理する場合の費用であって、片づけ、運び賃は入っていない。

(1)汚染土壌 
 面積で800平方キロ。琵琶湖の1.2倍。
 文科省が表土除去の目安としている厚さ5センチで計算すると、4千立方メートルになる。東京ドームなら32.2杯分、25メートルのプールに換算すると82,000杯分だ。
 この半分が放射性廃棄物になると仮定すると、最も汚染度が低い場合の処理方法を適用しても処理費用は26兆円になる。さらに10%(400万立方メートル)にはもう少し汚染度が高い場合の処理方法が必要だと仮定すると、その分が、さらに20兆円かかる。
 JAEAの料金表によれば、高濃度に汚染されていて地層処分が必要な土砂の処理費用は、1トンに付き1億3,500万円だ。高濃度汚染土壌が大量に出てくれば、処理費用は飛躍的に跳ね上がる。

(2)汚染水
 福島第一原発内にある汚染水は、現在98,500トン。12月末までに20万トンに増える見こみ。25メートルプール410杯分だ。
 高濃度汚染水の処理費用は、1トンに付き2億円という試算がある。汚染度にばらつきがあるから、半分の1億円を要するとしても、これだけで処理費用は20兆円だ。
 さらに福島第二原発には、津波による海水などが3千トン、25メートルプール6.2杯分ある。

(3)除染水
 Jヴィレッジに、12月末までに720トン、25メートルプール1.5杯分が貯まる見こみだ。

(4)ヘドロ・瓦礫・下水汚泥・防護服・防護マスク
 福島原発から20キロ圏内の海岸線に放置されているヘドロが120万トン。25メートルプール1,477杯分だ。
 瓦礫は控え目にみて64万トン。新幹線912編成(1編成16両)分だ。
 下水汚泥は福島県内だけで1,500トン。25メートルプール2.8杯分。福島県外で1,400トン、25メートルプール2.6杯分だ【注】。
 農産物・家畜が7,554トン。ジャンボジェット機42台分だ。 
 防護服、防護マスクなどが995立方メートル。ゴミ袋(45g)の22,111個分だ。

●現状
 まだ何ひとつ決まっていない。農作物は野積みにされている。原形をととどめないほど腐ってしまったものもある。
 下水汚泥も同様だ。着実に増えているのだが、借り置き場のある県の施設はまだしも、敷地の狭い市町村の下水処理施設では、満杯までカウントダウンが始まっている。

●核のゴミ
 六ケ所村の再処理工場は、容量3千トンに対し、貯蔵量2,800トンと満杯状態だ。
 だから、やむをえず各原発内に置いているが、それも全体で容量の66%に達している。
 ただでさえこうした状態なのに、福島第一原発では一層憂慮すべき状態にある。事故の影響でグシャグシャになった状態ならば、メルトダウンしてしまった原子炉と同様、処理するのに相当の時間と費用がかかる。原子炉の大変な廃炉作業も加えると、全部で天文学的な数字になりそうだ。

 以上、佐藤章・澤田晃宏・岩田智博(編集部)「明日なき放射性廃棄物」(「AERA」2011年6月6日号)に拠る。

 【注】「福島県に続き、東日本各地の下水処理施設の汚泥から相次いで放射性物質が検出され、影響が広がっている。国は処分できる明確な基準を示せず、行き場のない汚泥や焼却灰はたまる一方。セメントの原料などとして再利用できるはずが、受け取りを拒否する業者が相次いでいる」「水道水から放射性ヨウ素が検出され、東京都が乳児への摂取を制限していた3月下旬。東京都江東区の下水処理施設で汚泥の焼却灰から1キロあたり17万ベクレルの放射性物質が検出された。他の施設でも確認されたが、都は『国の基準がなく、問題視しなかった』とそのまま再利用に回したという」(「放射能下水汚泥、行き場なし 業者引き取らず、保管限界」(2011年6月6日14時20分 asahi.com)
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【震災】東電の電気料金は半額にできる ~左団扇の東電~

2011年06月05日 | 震災・原発事故
 東電のリストラ策は、大きく二つ。(1)資産売却、(2)人件費削減、だ。
 (1)は、軽井沢や草津にある「東友倶楽部」をはじめとする27か所の保養所、「東京電力総合グラウンド」など総額6,000億円。
 (2)は、役員報酬を50~100%、社員給与を20~25%カットで年間540億円。
 しかし、政府試算で総額4兆円といわれる賠償費用には遠く及ばない。

 東電のリストラ策はには肝心な部分が抜けている、と古賀茂明・経済産業省大臣官房付はいう。
 (2-2)何度もリストラをやってきたJALさえ、11年3月期の連結業績ではリストラによる改善が1,000億円あった。売上高がJALの4倍以上もあり、しかもリストラを一度もやっていない東電ではJALの何倍もリストラが可能だ。
 (3)殿様商売で無駄だらけの事業を見直すべきだのに、経営合理化対策ではそこに全く手をつけていない。

 電力会社は、発電所や変電所の建設、燃料購入、人件費、宣伝費などの費用に一定の割合(現在3%)で利益を上乗せして電気料金を定める(「総括原価方式」)。コストが大きければ大きいほど、利益も同じ比率で増す仕組みだ。だから、いくら金をかけてもいいから立派な施設を作れ、となるわけだ。海外の発電所建設コストと比べれば、一目瞭然だ。1kW当たりのコストは、原子力発電所が3倍、火力発電所が20倍というデータもある。導入技術の違いを考慮しても日本の建設費は割高だ。
 東電は、営業所などで使うデスク、オフィス機器、文房具、制服などは定価に近い額で購入している可能性が高い。連結で53,000人を抱える東電が相手なら非常に旨みのある取引だ。経産省が電気料金認可時に納入価格を厳しくチェックしている、という話は聞かない。こうした経費はいくらでも絞れる。
 東電を取引先とする企業は5,000社以上。発電所の設計・建設関係の大企業が名を連ねる一方、年間売上高10億円以下で、東電を主要取引先とする企業が7割を占める。その中には、東電OBが経営する企業も目立つ。地元対策として取引する企業が多いのも特徴だ。

 かくて、日本人は、OECD30か国中8番目という高額な電気料金を押しつけられてきた。
 「民間企業はいかにして原材料費や設備建設のコストを安く抑えるかに腐心しているのに、東電をはじめとする電力会社はその真逆のやり方を60年間続けてきた。燃料輸入国という弱点はあるが、高コスト体質に徹底的にメスを入れて発想電の分離をすれば、コストは大幅に下げられる」「原発事故の補償費用があるにしても、値上げなど全く必要ないのです」(古賀・大臣官房付)
 日本に比べて海外の電気料金は、米国(発送電分離)は40%。韓国(発送電一体)でさえ33%だ。
 事業リストラを行えば、現在の半額まで電気料金を引き下げることは可能だろう。

 以上、記事「東電の電気料金は半額にできる」(「週刊ポスト」2011年6月10日号)に拠る。

   *

 舛添要一・元厚生労働大臣は、01年に参議院議員になったが、評論家時代、1回100万円以上で講演料を東電から受け取っていた。ギャラの振込先は細君が社長を務める舛添誠二経済研究所だから、収支報告書に出る政治献金と違って公開されない。
 舛添の東電がらみの講演は、富士市女性夏期大学における「21世紀の福祉について」(01年7月)、エネルギー推進委員会いおける「憲法改正問題」(05年6月)、東電本店における「私にとっての仕事と介護」(06年11月)などがある。

 加納時男・東電元副社長を98年から10年まで参議院議員として送りこむため、東電は、自民党の党友会といった名目で金を集めた。関連会社も含めて億単位が集まった。これで比例名簿の順位が上がった。秘書も東電からエリートが派遣された。
 加納には桁外れの影響力があった。国内に4千社の取引先を持つ東電の代表であり、経団連の代表でもあった。単なる商工族の議員とは違う。加納の引退後、野党ながらそれに近いのは甘利明・元経産大臣だ。
 自民党では、震災後の4月に「エネルギー政策合同会議」が発足した。委員長は甘利、参与は加納という原発推進者の集まりとなっている。

 東電は、超大物へのケアも怠らない。
 小泉純一郎・元総理が退任後の07年、国際公共政策研究センターというシンクタンクができた。小泉が顧問に就いた。多くの大企業からの寄付金で設立された。東電は、トップランクの1億円を寄付し、スタッフを派遣した。

 こうした経費も、総括原価方式で国民が払ってきた。

 以上、記事「小沢一郎と東京電力『蜜月21年』」(「週刊文春」2011年6月9日号)に拠る。

    *

 政府が5月13日に発表した東電の賠償スキームはまったく理解不能な代物ではないか。【古賀】
 東電救済スキームだ。本当なら東電は債務超過なのに、新設する原発賠償補償機構に政府が上限なしの公的資金を投入して「債務超過にはしない」と決めてしまった。政府のお墨付きがあることを前提に、20日の決算発表が行われた。これはいわば、国家的な粉飾決算だ。【高橋】
 福島第一原発から漏出している汚染水の費用は1トン当たり1億円とも言われている。すでに10万トンを超えたそうだが、汚染水処理だけでも10兆円単位になる。【古賀】
 東電の純資産は1兆6千億円だから、汚染水の処理だけであっという間に債務超過(笑)。政府はミエミエのウソをついてまで東電を助けたい、というわけだ。【高橋】
 普通に考えれば東電の債務超過は確実で、明らかな破綻企業だ。それを前提にすれば、東電の処理は株主、債権者の順に責任を負担してもらうのが資本主義市場のルール。そして、減資と債権カットした分だけ、国民負担が少なくなるのが通常の形だ。ところが、今回の賠償スキームは、役員報酬や資産売却で東電をさんざん叩いて国民の鬱憤を晴らしたかのうように見せて、そこから先はいきなり国民負担、という話になっている。【古賀】
 減資も債権カットも行わず、その一方で賠償機構に公的資金=税金を上限を決めずに投入する、という。さらには補償費用捻出のために電気料金が値上げされる可能性も高い。結局のところ国民に負担を押しつけるのだから、完全にバカにしている。本来であれば会社更生法や民事再生法を使えばすむこと。法律に則って株主、債権者の順に債権がカットされていく。原発事故の被災者も債権者になるが、被災者については救済法という特別法によって守る。それこそが立法府のメンバーたる政治家の責任だ。ところが、政治が関与して市場のルールを曲げてしまった。将来に禍根を残す。【高橋】
 東電は、被災者補償について全部は払えないと政府に泣きついているが、なぜか金融機関に対しては債権放棄を求めていない。つまり、被災者より金融機関が優遇されかねない。【古賀】
 債権者と債務者が当事者間で話し合うことはあっても、政府がその仲裁に入ってはいけない。これが大原則だ。本来、それは司法の役割だから、行政が口を出すべきじゃない。それを無防備にやってしまう菅政権は、すごく未熟だとしか言いようがない。【高橋】

 専売公社や電電公社は民営化したし、興銀もある時期から天下国家を論じるゆとりがなくなった。しかし、東電は変わらなかった。電力会社は究極の地域独占企業だし、すべてのコストの上に一定の率で利益を乗せて電気を売ることができるからだ。「総括原価方式」という電気事業法で認められた計算だが、これだとコストが増えればその分だけ利益も増える。普通の企業は1円でもコストを切り詰めようとするが、競争の存在しない電力会社にはそういう苦労が一切ない。【古賀】
 見事に役所だ(笑)。【高橋】
 そういう会社だから歴代の東電の社長はみんな勉強家で、その辺の次官よりずっと教養があった。コストのこともライバルのことも心配する必要がないので、時間に余裕があって、毎日、社長室で哲学書を読んで過ごせるから(笑)。【古賀】
 結局、同質な人間同士の仲間意識が規制を緩くさせ、今日の事態を招いたということになるか。【高橋】

 以上、対談:古賀茂明(現役経産省キャリア)&高橋洋一(元財務省キャリア)「『原発ズブズブ』『東電ズブズブ』の霞が関だもの」(「週刊現代」2011年6月11日号)に拠る。
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【震災】原発>東電仕分け第三者委員会 ~東電解体の始まり~

2011年06月04日 | 震災・原発事故
 賠償スキーム策定の段階で、政府は公的資金を投入して東電を救済する案を飲む代わりに、6つの条件を突きつけた。その中で、東電が最後まで拒み続けてきたのが、第三者委員会の設置だった。
 その第三者委員会が本格的に動き始めた。
 「東京電力に関する経営・財務調査委員会」がそれ。東京電力の資産をすべて洗い出し、徹底したリストラを促す。

 5月13日に賠償スキームが閣僚懇談会で了承されるや、水面下で“東電仕分けプロジェクト”が進行し始めた。キーマンは、仙谷由人・官房副長官だ。
 仙谷副長官は、経産省、財務省、金融庁から官僚を集めて作業部会を立ち上げた。このタスクフォースが早速査定に入った。ここにコンサルタントや投資銀行などのM&A部隊が集められているらしい。
 “仕分け”はビッグチャンスなのだ。東電は、総資産14兆円、純資産3兆円。この処理を決めるのだが第三者委員会で、委員の人選も仙谷副長官が中心となった。

 5月24日に委員5人の顔ぶれが公表されると、東電に衝撃が走った。
 委員長は、下河辺和彦・日弁連元副会長。幾多の企業再生を手がけ、産業再生機構の社外取締役も務めた改革派だ。この名を聞いて、東電幹部は「これでは本当に丸裸にされてしまう」と警戒心を露わにした。
 吉川廣和・DOWAホールディングス(旧同和鉱業)会長は、仙谷副長官と親しい。実質的に第三者委を仕切るのではないか、と目される。吉川会長は、業績不振に喘いでいた老舗企業をわずか7年でV字回復させた実績を持つ。
 葛西敬之・JR東海会長も仙谷副長官から一本釣りされた。葛西会長いわく、「仙谷氏は合理的で現実的な考え方をするので、彼のやることなら応援したいと思いました」。もともと原発推進論者だが、東電改革に意欲的なようだ。国鉄の分割民営化を実践した改革3人衆の1人であり、「四季の会」を通じて荒木宏・東電元会長や勝俣恒久・東電会長とも親交がある。
 引頭麻美・大和総研執行役員は、金融庁の審議委員も務めている。企業会計のエキスパートだ。金融実務を担う、と目される。
 松村敏弘・東京大学社会科学研究所教授は、発送電分離論者だ。東電が最も恐れるのがこの人だ、と言われる。

 民主党関係者も、発送電分離が第三者委の“隠しテーマ”だ、と指摘する。 
 第三者委では、東電の利益の源泉、発送電一体にメスを入れ、競争原理を持ちこむことで発電コストを下げ、配電部門の売却まで視野に入れた議論になりそうだ。
 ちなみに、吉川委員も発送電分離論者だ。本人はいう。「原発を含めたエネルギー政策には健全な競争があるべきだと思う」
 将来の東電社長と噂される葛西委員はいう。「今は誰も長期的なシナリオを考えていない。まずは電力の安定供給を維持することで国民負担の軽減を最優先にしたい。安定供給ができなくなれば日本経済は弱体化する。それは国民に跳ね返ってくることです。緊急措置を施し、発電、送電、配電の体制はこの委員会で少し長いスパンで話し合って行きたい」

 以上、記事「東電仕分け第三者委員会 次期社長に浮上したメンバー」(「週刊文春」2011年6月9日号)に拠る。
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【震災】原発>小沢一郎と東京電力「蜜月21年」+原発事故に関する小沢語録

2011年06月04日 | 震災・原発事故
 1955年、自民党が誕生し、その直後に原子力基本法が制定された。以来、50年以上にわたって自民党と電力業界の蜜月は続いてきた。
 他方、電力総連も野党に議員を送りこみ続け、その系譜は現在の民主党に引き継がれている。
 東京電力を始め、電力業界の触手は政界に網の目のように張りめぐらされてきたのだ。 

 現役議員の中で、東電と最も長く深い関係にあるのは、小沢一郎・民主党元代表だ。東電と小沢との関係は、20年以上の長きに及ぶ。
 小沢の財界における最大の後ろ盾は、長らく平岩外四・東電元会長だった。経世会旗揚げ前の竹下登が、平岩に「小沢のための会を作ってやってくれ」と頼み、財界人で小沢を囲む「一政会」ができた。1980年代半ば、小沢が自民党幹事長になる前のことだ。
 90年11月、豪腕幹事長として絶頂にあった小沢は、日米の草の根交流を図るべく「ジョン万次郎の会」を設立した。平岩は、その発起人にも名を連ねた。
 93年6月、小沢が自民党を飛び出し、8月に細川連立政権を作った。その直後の9月、当時経団連会長だった平岩は、それまで長年おこなわれてきた自民党への政治献金の斡旋を中止した。自民党殲滅をめざした小沢は喜んだ。
 平岩を源流とした小沢と東電との深い関係は、随所で力を発揮した。たとえば、阿部力也・世田谷区会議員は、小沢が自民党幹事長だった頃の秘書で、その後東電のグループ企業、東電不動産に入社し、区議選に立候補。今も同社から給料を貰いながら、区議の仕事をしている。
 また、前述の「ジョン万次郎の会」は、今も小沢が会長で、東電の勝俣恒久会長が理事を務めている。
 その勝俣は、小沢の囲碁仲間だ。六本木のANAホテル37階に高級会員制囲碁サロンがあり、ここで小沢と勝俣は「手談」する。09年の政権交代後、幹事長として小沢が鳩山政権を牛耳っていた頃、勝俣は小沢に食事会を持ちかけ、上島重二・三井物産元会長、今井敬・新日鐵名誉会長と4人で数回会食した。

 小沢、勝俣のそれぞれが囲碁で縁のあるのが与謝野馨・経済財政担当大臣だ。葛西敬之・JR東海貴重が発起人を務める「四季の会」は、与謝野と安倍晋三・元総理を財界人が囲む会で、そのメンバーの一人が勝俣だ。
 与謝野は、中曽根康弘・元総理の薦めで東大法学部から日本原子力発電に就職した。
 与謝野は、今回の大震災後、東電擁護の発言を繰り返している。

 以上、記事「小沢一郎と東京電力『蜜月21年』」(「週刊文春」2011年6月9日号)に拠る。

    *

 小沢は、5月末、外国紙からのインタビューにおいて、こんな発言をしている。
 「日本の領土はあの分減ってしまった。あれは黙っていたら、どんどん広がる。東京もアウトになる」
 「再臨界に達するかもしれない。あそこが爆発したら大変だ。爆発させないために放射能を出しっぱなしにしている。爆発するよりたちが悪い。本当のことを言うとだ。ずっと長年にわたって放射能が出るから」
 復興財源は、「金なんぞ印刷すればいい」。

 以上、記事「民主・自民『敗者復活戦』完全実況中継」(「週刊文春」2011年6月9日号)に拠る。
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【震災】原発>政府と行政の情報隠しが生んだ「風評被害」

2011年06月03日 | 震災・原発事故
 東日本大震災以後発生した「風評被害」という事態には、少なくとも4種類ある。
 (1)国内における農産物や水産物の買い控え。
 (2)海外での日本製品に対する過剰な輸入規制。
 (3)国内および海外からの旅行客の減少。
 (4)福島県からの避難者が宿泊を拒否されるなどの、人に対する差別。
 これらをいっしょにするのは、ちょっと乱暴だ。

 (4)は、「謝った認識にもとづく明らかな人権侵害」だ。基本的人権の尊重をうたった憲法にも違反する。人間は野菜じゃない。
 (3)は、逆の立場だったらどうだろう。米中枢同時テロの直後には米国旅行を、新型肺炎(SARS)が流行した際には中国旅行を、私たちは控えたはずだ。「危なそうな国には行きたくないじゃん」と考えたのではないか。
 (2)についても同様だ。米国で牛海綿状脳症(BSE)の牛が発見されたとき、日本は米国産牛肉の輸入を禁止し、米国に全頭検査と同等の対策を求め続けた。中国産のウナギから合成抗菌剤が検出されたときも、中国製の冷凍ギョーザで中毒者が出たときも、販売中止によってスーパーから中国製の食品が消えた。これらも身勝手な「風評加害」だったのか。
 (2)と(3)については、原発事故が一段落するまである程度は仕方ない、と考えたほうが、むしろ前向きな対策が立てやすい。

 問題は(1)だ。
 風評という言葉は、責任があたかも消費者にあるかのような錯覚を起こさせる。でも、それはとんだ濡れ衣だ。東京電力と国の責任を消費者に押しつける責任転嫁に近い。
 「放射能汚染の実態が明らかになるまで原発に近い地域の農産物は控えたい」と考える人がいて不思議はない。
 人々が「風評」で動くようになった最大の責任は、情報を迅速に開示せず、「直ちに健康に影響はありません」とだけ連呼し続けた政府と行政機関にある【注】。
 それ以上に問題なのは、「風評被害」が情報の隠蔽を正当化する方便に使われていることだろう。風評を避ける、という名目で、詳細な放射線量のデータを公表しなかった政府。荒茶の検査を拒否した自治体。
 健康に害がないのにいちいち騒ぐな、という人は「食の安全・安心」を見くびっている。
 賞味期限を1時間過ぎた弁当を食べても、たぶん健康に影響はないだろう。それでも、私たちの文化は食に厳格な規制と細心の注意を求め、それが生産者と消費者の信頼関係をつくってきた。

 消費者の加害扱いをやめること。風評ではなく、せめて二次被害、三次被害のようなフラットな表現を使うこと。
 政府が信用できない以上、疑心暗鬼を払拭するためにも、生産者と消費者が信頼関係を取りもどすことが必要ではないか。
 両者はともに原発事故の被害者なのだし、そして当分、事故が収束する見こみはないのだから。

 以上、斎藤美奈子「生産者と消費者が信頼を ともに原発事故の被害者」(2011年月日付け日本海新聞)に拠る。

 【注】アイシェア(東京都渋谷区)のアンケート調査によれば、原発事故に関する政府の情報発表は、7割以上の人が「信用できない」と感じている。「すべて信用できる」と答えたのは全体のわずか1%。「信用できるものが多い」と答えた人も25.1%にとどまる。そして、「信用できないものが多い」が61.5%、「すべて信用できない」が12.4%だ。(小川 たまか([編集・ライター/プレスラボ取締役)「パニックを恐れた原発・政府発表の誤算? 国民7割以上が政府の原発関連情報「信用できない ~ザ・世論 日本人の気持ち 【第28回】 2011年5月31日、DIAMOND online)
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【震災】原発>人食いバクテリア ~「放射性ヘドロ」~

2011年06月03日 | 震災・原発事故
 被災地の沿岸部には大量のヘドロが海底から打ち上げられた。
 岩手県や宮城県では順次撤去作業が進んでいるが、福島県だけはほとんど手つかずの状態が続いている。推計500万トン。通常ならば単なる土砂にすぎない。しかし、福島第一原発の放射能に汚染されている可能性が高い、と環境省は埋め立てなどで処分することを認めていない。
 福島県相馬市の場合、60万トンのヘドロが打ち上げられている。農地もヘドロ化し、両者を合わせてヘドロの総量は250万トンに達する。

 津波がもたらすヘドロは、感染症流行の要因だ。 
 もっとも注意すべき感染症は、破傷風だ。復興作業中に釘などの深い刺し傷を放置すると、感染リスクが格段に上がる。事実、国立感染症研究所感染症情報センターには、すでに岩手、宮城両県で計9件の感染例が報告されている。

 もっと恐ろしい感染症リスクもある。
 ビブリオ・バルニフィカス菌による感染症だ。破傷風のような土壌由来ではなく、海水由来の感染症だ。病原菌は、エビなどの海産物の中や、淡水と海水が混ざるところに常住している。感染し、発症した場合、肝疾患を持つ人は重症化し、致死率は70~80%に達する。数時間で手足が壊死し、死に至ることもあるので「人食いバクテリア」とも呼ばれる。早期診断が肝要だ。

 ビブリオ・バルニフィカス菌は、梅雨以降、いっそう怖くなる。
 塩分濃度が海水(3.5%)よりはるかに高い8%でも繁殖する。逆に1%ほどしかなくても平気なのだ。梅雨の時期には、雨でヘドロの塩分濃度が下がっても繁殖するし、夏に塩分が濃縮されると、ますます活性化する。
 ヘドロを放置しておくと、リスクが高まる。

 政府は、まだ何の方針も打ち出していない。

 以上、岩田智博(編集部)「『放射性ヘドロ』が増殖 人食いバクテリアの恐怖」(「AERA」2011年6月6日号)に拠る。
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【震災】原発>政府の情報隠蔽・印象操作あれこれ

2011年06月02日 | 震災・原発事故
●原子炉のメルトダウン
 5月15日、東京電力は、福島第一原発の1号機がメルトダウンしていたことを認めた。24日には、2号機、3号機もメルトダウンしている、と公表した。
 多くの専門家が、事故直後にメルトダウンの可能性を指摘していた。これを政府が知らなかったはずはない。
 3月12日前後の段階で原子炉のメルトダウンが始まっていたとしたら、溶融物に水をかけることで大規模な水蒸気爆発が起こり、壊滅的な被害が出る可能性があった。多数が避難できないまま急性被曝で死ぬ可能性があった。そんな危機的なときに、東電は「これはチェルノブイリとは違う」と言っていた。【後藤政志】

●大気汚染
 東京都内や関東近郊では、大気中の放射線量を18~20mなどという“鳥の目線”で計測している。数値が実は地表より低く出ていることを説明していない。

●海洋汚染
 魚の頭・内臓・骨を抜き取って測定し、“安全”をアピールした。

●文部科学省の研究報告書
 文科省は、管轄下の財団法人・放射線影響協会に調査委託し、研究報告書『原子力発電施設等放射線業務従事者等に係る疫学的調査』を10年3月末にまとめている。これによれば、次のように累積10mSvから死亡率が増加するなどの危険性があるのだが、政府は知らぬ顔で、大人も子どもも区別なく年「間の被曝許容量20mSv」に引き上げてしまった。
 食道ガン、肺ガン、肝臓ガン、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫は、放射線累積線量とともに有意に増加する傾向が認められる。その増加は、累積10~20mSvから現れている。
 ガンの死亡率は、累積線量とともに有意に増加する傾向を示す。死亡率の増加は、累積10mSvから認められ、累積20mSvからは、さらに高まっている。
 
●放射線医学総合研究所の資料
 放射線医学総合研究所は、原発事故後の3月25日に「甲状腺等価線量評価のための参考資料」を報告した。これは体内被曝に係る資料で、きちんと公表していれば避ける方法はいくらでもあったのだ。資料は次のように記す。
 3月12日から23日までの12日間、甲状腺に0.2μSv/時の内部被曝をした場合【注】、
  1歳~3歳未満児・・・・108mSvの被曝
  3歳~8歳未満児・・・・64mSvの被曝
  18歳以上・・・・16mSvの被曝

  【注】福島第一の3号機が爆発した3月15日、東京の一部には20μSvの内部被曝に相当する放射性物質が降り注いだ。

●政府発表の放射性物質の数値
 セシウムとヨウ素が中心で、プルトニウムやストロンチウムなどの数値はほとんど公表されていない。
 プルトニウムは、政府が公表しているγ線の20倍の悪影響がある。ストロンチウムは、新陳代謝が活発な子どもが骨に取り込むと、骨の成長を阻害する。しかし、政府には、福島の子どもを疎開させる、といった発想はない。

 以上、記事「捨てられた日本国民」(「週刊現代」2011年6月11日号)に拠る。
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【震災】原発>テレビが中継しない参議院参考人発言 ~小出裕章・後藤政志・石橋克彦・孫正義~

2011年06月02日 | 震災・原発事故
 5月23日、参議院行政監視委員会において、4人の参考人が、これまでの原発事故に対する政府や東電の対応、これまでの原子力政策について厳しい批判を行った。
 テレビは、この注目すべき委員会を中継していない。

●小出裕章(京都大学原子炉実験所助教)
 3月15日、東京ではヨウ素やセシウム、テルルといった放射性物質が1立方米当たり数百ベクレル検出された。86年のチェルノブイリ原発事故のとき日本に降った量の何百倍、何千倍という濃度だ。
 しかし、このデータを公表しようとしたところ、上司から「パニックを煽る」と言われた。
 行政も数値は把握していたはずだが、「パニックを止めよう」という力がいろいろ働いたのだろう。
 名前は明かせないが、自分の同僚でも、検出したデータを公表しないよう言われた人が何人もいる。

●後藤政志(元東芝の原子炉設計者)
 今回の事故では人為ミスが重なっている。苛酷事故が起きる可能性を「小さい」と言って無視してきた原子力安全・保安院の責任は大きい。もし次に原発事故が起きれば、日本は壊滅する。安全が確信できない限り、原発は段階的に止めていくしかない。

●石橋克彦(神戸大学名誉教授(地震学))
 日本は、ヨーロッパであれば絶対に原発を作らないような場所(地震多発地帯)に原発を作っている。日本の原発は、すべて“地震付き”の原発であることを忘れてはならない。

●孫正義(ソフトバンク社長)
 政府の放射線量の公表数値は、γ線の数値だけだ。自分は、α線とβ線も計れるガイガーカウンターを持っている。それで東京都内を計ると、公表数値の2倍くらいの数値になる。政府はウソをついていないが、本当のことも言っていない。

 以上、記事「捨てられた日本国民」(「週刊現代」2011年6月11日号)に拠る。
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【読書余滴】沢木耕太郎『危機の宰相』

2011年06月01日 | ノンフィクション


 本書は、(1)池田勇人の人となり、(2)彼の活動を支えた人材、(3)「所得倍増」という政治理念の生成と構造を追跡する。
 ここでは、沢木の描く人物像を追ってみる。

 池田勇人は、大蔵省で「赤切符組」と位置づけられ、出世が遅れた。天疱瘡にかかり、闘病すること5年間、同期に決定的に差をつけられた。だが、生死の境をさまよった結果、腹が据わったらしい。
 池田が復職し、主税局国税課長の任にあった1942年、関東地方を大きな風水害が襲った。政府は、甚大な被害があった地域を免税することとした。記者たちは、免税地域と総額を知るべくシノギを削った。常日頃、「三等官僚」と目されていた池田のもとに記者は寄りつかなかったが、松本幸輝久記者だけはよく机の前でおしゃべりしていた。被害地域の調査から帰ってきた池田と省内の廊下でたまたま出くわした松本は、すれちがいざまに、これくらいだろうと思われる金額だけ指を立ててみた。池田は、「そんなところだ」とうなずいた。その金額が新聞に載った。スクープにはなったものの、時の内閣総理大臣、東条英機の逆鱗に触れた。情報を漏らした者の首を取れ、と。
 松本は、池田は関係ないと大蔵省の上司に弁明しようとしたが、池田は達観したように言った。教えたことは事実だし、いま辞めさせられてもかまわない、辞めさせられたら家に戻って酒でも造りながらのんびりするよ、と。松本は、池田の意外な肝の据わり方に驚いた。
 後に側近となった宮沢喜一によれば、池田は「むしろ弱いところのある人だった」が、その底に「依怙地」とも「気骨」ともつかない「激しさ」を潜ませていたのだ。

 池田は病気で多くのものを失ったが、逆に得たものもあった。一つは、深い信仰心だ。特定の信仰を持ったわけではないが、大病後、朝起床すると東方へ向かって柏手を打つことを日課とした。
 宮沢喜一は、訊ねたことがある。「どうもあなたの正直は、ただの正直とは思えない。札所を廻ったとき、もし治ったら自分は一生嘘をつかないという願をかけたんじゃありませんか」
 「その通りだ」と、池田はボソッと答えた。
 沢木は書いていないが、本音しか言えない池田というイメージを逆手にとった「私はウソは申しません」(自民党のテレビCM)は、1960年の流行語にもなった。

 一癖も二癖もありそうな人材が、池田の周囲に多数集まってきたのはなぜか。
 その秘密、池田勇人という人物の全体像がくっきり浮かびあがってくるのは、盟友、前尾繁三郎の銀婚式におけるスピーチだ。その速記録が宏池会に残っている。沢木耕太郎は、あえて全文を引用している。ここではスピーチは引用しないが、スピーチに対する沢木の評を引用する。
 「ここで前尾との付き合いの詳細が述べられているのは当然としても、自分の来歴や当時の心境もさりげなく語られている。病気のこと、赤切符組だったこと、再婚のこと、復職のこと。そして、印象的なのは、前尾との付き合いが、二人にとってどこか『第二の青春』とでも言うべきものではなかったかと感じられるほど生き生きとしていることだ。/またこの挨拶の中には、池田の数字に対する嗜好といったものとは別に、思いがけないユーモアの存在が見て取れる。話は決して上手ではないが、聞いている者の気持ちを明るくさせるものがある。そしてなにより儀礼を超えた情の存在が見てとれる。/ここには、池田の人心収攬術の核心が秘められているのかもしれない。いや、当人には人心を『収攬』しようなどという思いはないのだろうが、巧まずして人の心を捉えることになる能力の存在が示されている。おそらく、将たる者は人に好かれるだけでは足りない。人を好きになる能力が必要なのだ。この挨拶の中には、池田の人を好きになる能力といったものがはっきりと映し出されている」

 人に好かれる、という点では、次のようなエピソードが興味深い。
 官僚から政治家に転身したばかりの頃、池田は新聞記者にまたく人気がなかった。しかし、時の経過とともに、池田の率直な人柄が記者にも理解できるようになった。すると、今度は逆に根強い池田人気が生まれた。雑誌論文やエッセイなどのゴーストライターを引き受けるまでに至った。

【参考】沢木耕太郎『危機の宰相』(魁星社、2006)
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【震災】原発>菅首相の「東電シフト」の実態

2011年06月01日 | 震災・原発事故
 事態の深刻さを、過大でも過小でもなく評価する専門家が必要だ。
 しかるに、官邸で政策に関わっているとされるのは、東電と二人三脚で安全からの逃走を担ってきた望月晴文・前経済産業用次官だ、という。保安院示談に、原発のデータ偽装事件など不祥事をうまく処理し、以来、電力自由化、CO2排出抑制、自然エネルギーの定額買収など、電力会社が難色を示す政策の実施を遅らせてきた。
 浮く島第一原発事故の後に内閣府参与に任命された二人、広瀬研吉・元原子力安全・保安院長と小佐古敏庄・東京大学大学院教授(後に記者会見で涙を流して辞めた)は、スタンスに相当な不安がある。
 広瀬は、保安院長のとき、福島第一を含む原発が津波によって冷却機能が喪失し炉心溶融の危険がある、と国会で吉井英勝議員(共産党)から指摘されたとき、前書を約しながら、実際は何も手を付けなかった。
 小佐古は、原爆症認定においてなるべく範囲を狭める国側の証人だった。講演では、原発の安全神話を説いた。
 菅首相は、一体どういうつもりでこんな「東電シフト」を官邸に敷いたのか。

 斑目春樹・原子力安全委員長は、想定を甘くして安全設計を割りきる、という「安全からの逃走」の推進者だ。
 鈴木篤之・前原子力安全委員長もまた、原子炉規制法の規制緩和を進め、事業者寄りと批判された。

 経産相と東電のネットワークに入らない原子力専門家もいる。旧日本原子力研究所(現日本原子力研究開発機構)、放射線医学総合研究所、京大原子炉実験所などの研究者には、安全からの逃走を潔しとしない人たちもいる。
 そうした専門家たちが、3月31日、緊急提言をまとめて記者発表した。本来なら、安全委などを通して首相や官房長官に意見を伝えるべき専門家たちの声が、なぜか伝わらない。歴代の安全委員長の中で、安全サイドからものを言い、煙たがられた佐藤一男、松浦祥次郎、齊藤伸二、田中俊二なども提言に名を連ねている。
 これは原子力村の中の勢力争いというレベルの問題ではない。誰が原発事故から住民を、国民を守るのかという根源的な問題だと思う。
 将来を見据えて実行する強い権限をもつ管理委員会を設置しないと、日本が沈む。

 いかに抗弁しようとも、原子力損害賠償法で事業者は無限責任を負う。M9.0は、震源の地震規模であって、原発サイトを襲った地震の強さではない。津波をいうなら、女川原発(東北電力)と比較してどうだったかを評価すれば、すぐわかる。
 東電の人脈は金融界にも及ぶ。森本宜久・日銀審議委員は、電気事業連合会の副会長を務めた。特別な救済措置がとられないよう、監視が必要だ。

 以上、塩谷喜雄「なおも暴走する『原子力村』 虚構と偽りの戦後史」(『日本の原発 ~あなたの隣にあるリスク』、新潮社、2011)に拠る。

    *

 「一見まったく関係がないTPP参加表明と、大惨事をもたらした原発政策は、日本の政治土壌の深部でその根を絡み合わせているのである」
 「民主党は、政権をとるべく作成した公約では『脱原発』をうたっていた」
 「だが、菅、仙谷、岡田、枝野、北沢等の諸氏は弊履のようにこれを捨てた」。10年6月8日、エネルギー基本計画を改定し、20年までに原発を9基新増設し、30年までにさらに5基増やす目標を掲げた。
 この目標に加えて、10年10月31日にベトナムを訪問した菅首相は、グエン・タン・ズン首相と会談し、日本の原発を売り込んだ。2基の建設の確約を得、そのための支援を約した。
 「菅首相は原発推進論者なのである」【注1】
 「この原発推進論と、TPP推進とは、いずれも経済産業省がつくりあげた構想であり、それが経産省の、ついで菅内閣の成長戦略となり、政策的思考を持たない管内閣を動かしているのである」【注2】
 「くりかえそう。TPPと原発推進とは、同じ構想のうえに立っているのである」
 「それだけではない。福島原発事故の情況について、テレビで発表する原子力安全・保安院の責任者【注3】は、ついこの間までTPP推進をになっていた経産省の人であったのも、故なしとしない。TPPには戦後世界経済のルールに係る深い知識が必要なはずである。原子炉事故には、単なる自然科学的知識をこえた専門的知識を必要とする。だがこの人【注3】にその二つの知識があるとは思えない。ともに素人なのであり、その上に躍るのが、菅、枝野、仙谷氏等なのであろうか」

 菅政権は、民主党のマニフェストを捨てた。「しかし、政権交代で、この“脱”原発政策を活かしていたら、もっとも古い原発である福島--それは幾度となく事故をおこしている--と、もっとも危険である静岡県の浜岡原発は、運転をとめていたかもしれないのである。菅首相たちは、今回の事故についての政治家としての責任を免れることはできないのである」【注4】。

 以上、伊東光晴「戦後国際貿易ルールの理想に帰れ(下) ~TPP批判~」(「世界」2011年6月号)に拠る。

 【注1】民主党政権の背後に230組合、組合員215,000人の電力総連が控える。全国54基ある原発の選挙区は14、民主党19人、自民党7人、国民新党1人がここから当選している。また、旧民社党グループ「民社協会」(約40人)は、09年までの4年間に計240万円の献金を電力総連から受けている(記事「脱原発できない民主党の“高濃度汚染”」、「サンデー毎日」2011年6月4日号)。

 【注2】「損害賠償スキームは、菅首相のブレーンで元経産事務次官の望月晴文内閣官房参与が経産官僚に書かせた。望月氏は海江田万里経産相や仙谷官房副長官に根回しし、了解を取り付けて菅首相に渡した。要は官僚の絵図に乗っただけ。“原子力村”の要である経産官僚に取り込まれている菅政権では脱原発は無理です」【鈴木哲夫(ジャーナリスト)】(記事「脱原発できない民主党の“高濃度汚染”」、「サンデー毎日」2011年6月4日号)。

 【注3】会見担当の西山英彦審議官は、「『3月13日に着任するまで、経産省大臣官房審議官としてTPPを担当していた。2年前までエネ庁に出向し、原発振興の旗振り役である電力・ガス事業部長をやった経験と、温厚な性格が買われての抜擢ですが、原子力の専門知識はゼロ。東大法学部卒の事務官で、詳しいことをしゃべりようがない。東電に配慮した経産省の計算が透けて見えます』(経産省職員)」(記事「やっっぱりズブズブの関係だった!!東電と経産省の呆れた蜜月ぶり」、「週刊朝日」2011年4月15日号)。
 ちなみに、西山審議官が資源エネルギー庁在職中に、その娘が東電に入社している(「AERA」2011年5月23日号)。

 【注4】5月6日夜、菅首相が緊急会見で発表し、中部電力が9日の臨時役員会で受け入れ決定した「要請」は、一時停止であって、廃炉ではない。
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