語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【NHK】が危ない! ~組織に漂う負の雰囲気~

2014年08月17日 | 社会
 NHKが危ない! 
 これまで何度も、幾人もの人が口にしてきたこの言葉。今回ほど、このフレーズがリアリティを持つことはなかった。
 NHK危機の元凶は、むろん籾井勝人・会長その人だが、
  彼の推挙にあたった経営委員会、
  就中「暴言」「愚論」を頻発する複数の委員たち、
  その彼らを任命した安倍晋三・首相
ということになろう。

 NHKの危機を憂慮する声は、籾井会長の罷免を求めるNHKのOBたちによって代表される。
 今では、それに励まされる現役職員も少なくない。
 この動きに他のメディアも注目し始め、OBの会は記者会見を準備【注】。

 NHK内部からも反乱の声が上がった。 
 公開を前提とするNHK経営委員会の議事録(4月22日)に、退任した2人の理事が、経営委員会に向けて異例の苦言を呈したのだ。要するに、会長を任命した経営委員会の責任を追及し、籾井会長の進退にけじめをつけろ、と述べた。
 (1)前理事A・・・・籾井の会長就任以来の混乱を「異常事態」と形容。放送局内に「負の雰囲気が漂い始めて」いると警告。
 (2)前理事B(広報担当)・・・・経営委員会に対して、「新執行部に対する管理監督の役割と責任を十全に果たしていただきたい」と訴。

 かくて、公共放送NHKは、複合リスクの中で身動きならない状態に陥っている。
 発信される情報、表現される内容が急速に説得力を失いつつある。

 いまや「NHKが危ない」は、「危ないNHK」に置き換えることができる。
 籾井の露出度は激減し、その分、舌禍事件の現場を見ることが少なくなった。
 しかし、それは瑣末なことで、深刻なのは、
  「日本軍慰安婦をめぐる歴史認識」
  「特定秘密保護法」
  「集団的自衛権の行使容認」
などに関するNHKの報道が、視聴者をないがしろにした「集団的暴走」に舵を切りつつあることだ。
 最近のNHKは、政府要人の「ゲストルーム」と化している。
  (a)集団的自衛権行使に係る「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」の報告書が出た5月15日、「ニュースウォッチ9」に、磯崎陽輔・首相補佐官(当事者中の当事者)が出演した。
  (b)行使容認の「閣議決定」から2日後(7月3日)、「クローズアップ現代」に管義偉・官房長官が登場した。
  (c)7月13日(この問題に係る衆参両院の「集中審議」を翌日、翌々日に控える)、今度は「NHKスペシャル」に、安倍晋三・首相をはじめとする与党幹部たちが登場し、閣議決定に至るまでの「水面下の攻防」を悲喜こもごも語った。タイトルは「集団的自衛権行使容認は何をもたらすか」だが、内容は苦労の末の「成功物語」にすぎなかった。・・・・そこに見え隠れするのは、永田町のプレーヤー(パイプ役)に励む政治部記者たちだ。

 【注】【OBにまで問題指摘されるNHK】NHKのOB157名がNHK会長辞任又は罷免求める署名を開始,先輩の方々まで憂えられる現在のNHK。

□神保太郎「メディア批評 第81回」(「世界」2014年9月号)の「(1)NHKが危ない!」
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【集団的自衛権】vs.カント ~永遠平和の使命~

2014年08月16日 | 批評・思想
 カントが生きた18世紀ヨーロッパでは、王権、領土、商益などをめぐって、のべつ戦争があった。どの国も軍備増強に狂奔して、戦争産業と、戦争資金を貸し付ける金融業が大きく伸びた。
 当時70歳超の老哲学者が『永遠平和のために』を書いたのは、やむにやまれぬ思いからだった。この小冊子は、世界に大きく影響した。国際連合のもとになり、日本国憲法第9条の基本的理念となった。

 カントの平和論の並外れた特徴は、200年以上も前に書かれたものでありながら、おそろしく現代的であることだ。
 <例>カントは「行動派を自称する政治家」について語っているが、「迅速な決断」を語りつつ、考えていることは
   (1)現在の世界を「支配している権力」に寄り添い、かつ、
   (2)「自分の利益を失わない」こと。
 彼らの信条は次の3点。
   (a)まず実行、その後に正当化。
   (b)過ちと分かれば責任転嫁。
   (c)ライバル同士を離反させて支配。
 直ちに、身近なあの人、あの政治家が浮かんでくるではないか。

 さらにカントは、200年余も後の情報化社会を見通したようにいう。
   ① 地上の民族にあって、すでに「共同の意識」は行き渡っており、
   ② 「地球上のどこかで生じた法の侵害」は、どこであれ等しく感じ取れる。
   ③ 永遠平和は、空虚な理念ではなく、「われわれに課せられた使命」なのだ。

 第二次世界大戦後、ヨーロッパは60年に及んで議論を重ね、ヨーロッパ連合を結び、常に関係国間の対話を絶やさない(カント理念の実践)。
 一方日本では、安倍政権誕生後、声高く一定の方向へ誘導する言説がマスコミをにぎわせ、国民をおびえさせる手法がまかり通っている。

□池内紀「永遠平和の使命について 今、カントを読む」(「日本海新聞」2014年8月15日)
□イマヌエル・カント(池内紀・訳)『永遠平和のために』(集英社、2007)
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【本】『人間素描』

2014年08月15日 | 批評・思想
 17世紀のフランスには文学上の一ジャンルに「ポルトレ」があった。文字をもってする肖像の意で、風貌、気質、行為まで描きだそうとするが、本格的な伝記でも人間研究でもない。
 そう桑原武夫は紹介し、「ポルトレ」を訳せば「人間素描」となる、という。
 本書は、30有余人の「人間素描」をおさめる。

 素描されるのは学者、それも錚々たる学者が多い。しかも、ジャンルを限定しない。中国文学者(内藤湖南や狩野直喜)からサル学者(今西錦司)まで。文法学者(『象は鼻が長い』の三上章)も登場する。
 学者のほか、詩人(三好達治)から作家(中野重治)、翻訳家(米川正夫)まで。特異な実践的技術家(西堀栄三郎)も登場する。京都一中・三高の名物校長、森外三郎もしっかりと「素描」されている。
 海外の人では、作家にして政治家の郭抹若、哲学者にして教育家のアラン、米国の社会主義者スコット・ニアリング夫妻の名が見える。
 じつに幅広い。
 交友圏が広いのである。単に顔が広いだけではなくて、専門分野以外の人ともあい渉る術を著者は心得ていたのだ。
 松田道雄は桑原武夫にふれた文章で、専門外の発言にどう切り込むかのテクニックを教わった、と書く。

 しかし、単に交際術・交渉術・論争術を身につけているだけでは、かくも多数の、ジャンルを超えた「人間素描」は生まれなかっただろう。人間に対する関心、ことに異能の人に対する強い関心が著者にあって、そこから個性を活写する「人間素描」が生まれた。
 健康な知性、達意の文章をあやつる桑原武夫自身、「人間素描」されていい人物だった。桑原は自分で自分を素描することはなかったが、代わりに同僚や弟子が素描した。「桑原武夫--その文学と未来構想」と題するシンポジウムの記録がそれで、樋口謹一、多田道太郎、河野健二、山田稔、杉本秀太郎、松田道雄、水上勉、鶴見俊輔、岩坪五郎、高橋千鶴子、梅棹忠夫、梅原猛、上山春平・・・・といった錚々たる京都学派の名が見える。

□桑原武夫『人間素描』(筑摩叢書、1976)
□杉本秀太郎・編『桑原武夫--その文学と未来構想』(淡交社、1996)
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【料理】1日2食でも十分なワケ ~肥満防止~

2014年08月14日 | 生活
 フリーランスは仕事時間を会社に縛られない。
 1日の食事は2回で十分だ。
  (1)10時から11時ぐらいの間・・・・朝食と昼食兼用。
  (2)18時から20時ぐらいの間・・・・夕食(仕事の終わりに合わせて)

 以前、朝食をしっかり食べていた。1日3食を守っていた。朝からバターたっぷりのオムレツとトマトスープ、パンを組み合わせた献立を作ったりしていた。
 でも、朝食をこれだけしっかり食べると、よほど激しい運動をしない限り、お昼どきにはそれほど腹が減らない。食べ過ぎではないか、という思いがあった。
 そういう時に、伊豆高原の断食施設に通うようになり、その施設の院長に「間食しなければ、1日2食で十分だ」と教えてもらった。
 ちゃんと食べないとダメというのは、間食して食事の習慣が崩れてしまいがちだからだ。きちんと食習慣が規則正しく保てるのであれば、1日2食で十分だ、という話だった。
 事実、その施設における食事時刻は10時と18時の1日2回だった。
 以後、1日2食の習慣を守るようになった。
 最初はともかく、慣れてしまうと1日2食で十分なことが肌で実感できるようになった。おかげでカロリー過多になることもなくなり、健全な生活を送ることができるようになった。

 「食」は結局習慣の問題だ。
 江戸時代ぐらいまでは、日本人はたいてい1日2食だった。
 世界的に見ても、人間が1日3食になったのは、産業革命が起きて、工場などの仕事場に長時間縛られるようになったからだ、という説がある。職住接近の農村時代には、1日2食だった。
 そういう時代にいま立ち戻っていくというのは、私たちの生活の未来への再構築という視点からも大切なことではないか。

 それでも、どうしてもお腹が空いたらどうするか。
 低カロリーで高タンパクのおやつを食べるのだ。十分にお腹がふくらんで、満足感がある。
 <例>無塩のナッツ類(アーモンド、ピーナッツ、カシューナッツ)。ドライフルーツ。甘くないピュアな炭酸水。

□佐々木俊尚(作家・ジャーナリスト・「TABI LABO」共同編集長)「朝ご飯、食べてますか? 1日2食でも十分なワケ ~オヤジの家めし 6~」(「週刊金曜日」2014年8月8・15日合併号)
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 【参考】
【料理】2つのポイント ~片付けの技術~
【料理】毎日もちっとも面倒くさくない ~手抜きの技術~

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【文章】長く文章を書き続ける最大のコツ

2014年08月13日 | 心理
 人に読ませる文章をこれまでまったく書いたことのない人がしばしばおちいる誤りは、文章をどこで区切ったらいいのかわからないので、とにかく《いつまでもダラダラしまりがない文章を書いてしまうという失敗》である。
 その解決は意外と簡単で、とにかくいま書いている文章の途中でもいいから「。」を付けて、強引にその文章を終わりにしてしまうことである。次に、過去の文章は忘れて、前の文章が中途半端のままでもかまわないから、次の行の頭を一段下げて、なんでもいいから別の文章をはじめてしまうことである。頭を一字下げた形で新しい文章をはじめることを「段落を付ける」という。
 文章というのは不思議なもので、《段落さえ付いていれば、読む人の頭が自動的に切り替わって突然まったく新しい文章がそこからはじまってもそのことをなんの不思議もなく受け入れてくれる。》これは日本語の世界の大昔からの約束事だから、誰も変と思わず、段落さえあれば、段落でどんなに続きが悪い文章になっても、みんなつきあってくれる。
 文章を書きなれた人と、書きなれていない人の最大のちがいは、この段落の使い方にあるのではないだろうか。書きなれた人は、なんでもなく段落を使いこなして、長い文章をスラスラと書いていく。途中でつまったらまた新しい段落を立てて、新しい文章を書き起こすだけで、なんの苦もなく文章を書き続けることができる。文章が続かないことで悩む人は、例外なく文章を書きなれていない人手或る。《文章なんてものは、しょっちゅう続かなくなるのが当たり前で、続かなくなったら新しい段落を立てて新しいことを書きはじめればいいんだ》と、頭の切り替えができる人がいい文章を書ける人である。
 文章を書きなれた人は、こんなことをわざわざ教えなくても、そのとおりのことがスラスラできるが、書きなれていない人は、それができなくていつまでも四苦八苦する。

 【注】《》内は原文では太字。

□立花隆『自分史の書き方』(講談社、2013.12)の第1章「自分史とは何か」から引用
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【中国】【食】日本マクドナルドの対策の不徹底 ~中国産チキン問題~

2014年08月12日 | 社会
 中国食品の安全性が問題となる事件がまた明らかになった【注】。その「上海福喜食品」の取引先に、日本のマクドナルドとファミリーマートが含まれていた。
 過去にも中国食品問題はいろいろ起きたが、今回は今までとはかなり異質で衝撃的な事件だ。なぜ異質か。
 (1)映像・・・・床に落ちたナゲットや肉の塊を拾い上げて戻すシーンと、青く変色した牛肉は、衛生面に神経質な女性客にとって許されない行為だ。しかも、落ちた鶏肉も変色した牛肉も大量だった。この映像で、中国は女性を敵にしてしまった。これが新聞記事などの活字や写真だけだったら、こんな大事件にはなっていない。
 (2)会社ぐるみの大偽装事件、かつ、欺された相手が米国のマクドナルドとケンタッキー・・・・世界のビッグネームの大企業がまんまと欺されたのだ。検査時だけは整然と作業をこなし、虚像の世界を組織ぐるみで演出する。ならば、欺した中国人は痛快かというと、そうではない。最終的に欺されたのは、マクドナルドやケンタッキーの客である中国人の消費者だからだ。
 
 上海福喜食品は、HACCP(食品の安全管理システム)の認定工場だ。上海市からも安全工場として表彰されている(現在、上海市は表彰の報道を否定している)。設備も技術も、それを生かすことができる従業員や作業員がいた。
 企業の金儲け主義と、従業員や作業員のモラル欠如も原因だろう。

 7月29日、日本マクドナルドは「安心・安全な商品を提供するための取り組みの強化」策を3つ発表した。
 (a)メニューの原材料の最終加工国、主要原料原産国の情報公開。  
 (b)サプライヤーへの臨時追加監査の実施と毎月の現場での作業確認の実施。
 (c)中国製製品と、タイ製チキン製品の日本国内での品質検査を高頻度に実施。
 しかし、(a)はHP上の公開だけだ。消費者は、買うとき、注文するときに情報を得たいのだ。HPをわざわざ見る人は少ない。店頭での公表でなければ、本当の公表にならない。
 (b)は、これで偽装を本当に防ぐことができるのか、疑問だ。逆に、安全面でのコストが増えることで製造コスト圧力が強くなれば、また欺そうとするかもしれない。コストと安全のバランスは非常に難しい問題だが、最低限の対策(監視カメラを導入して常時関する体制)ぐらいはしないと、消費者は戻ってこないかもしれない。
 (c)は、これで今回のような事件を防ぐことができるか。期限切れの材料を5%程度しか混入されていない商品を細菌分析しても検出できまい。今回の事件は、検査程度で解決できない。しかも、監査していないときの状態が問題になっているのだ。
 しかも、今回の事件は日本マクドナルドの子会社ではなく、他社の工場が引き起こした事件なのだ。もっと踏み込んだ対策はとれない。
 問題は、組織犯罪をどうやって防ぐか、ということになる。相手は欺そうとするのだ。性悪説で防止策を考えるしかない。
  
 テレビでは語られない問題もある。「秘密倉庫」(3つあるらしい)のことだ。
 敷地外の常温倉庫で、他社の箱に入った冷凍鶏肉を「上海福喜食品」の箱に詰め替えていた。この鶏肉を手羽先と伝えたマスコミもあるが、手羽元や他の部位の可能性もある。で、その詰め替えられた鶏肉は、どの企業に納入されたか。
 中国側の正式発表がないのではっきりしないが、日本には来てないらしい。もし、納入先がわかっているのに公表しないのなら、「よほど小さい会社で公表しても影響が少ない」か、逆に「かなり大きな会社なので影響が大きすぎて公表できない」のか、どちらかだ。
 公表されないことが多すぎて、全容が見えてこない。
 この事件の扱いに一番困っているのは中国政府だ。この事件で浮き彫りにされた中国問題はいろいろあるが、今一番注目すべきは、中国政府がどんな幕引きをするか、だ。おそらく多くのことがウヤムヤにされたまま終わるだろう。

 【注】
【中国】チキンの恐怖 ~ファストフード、ファミレス12社~
【食】中国の鶏肉問題--流通のグローバル化で食の安全はますます困難に
【中国】チキンの恐怖 ~日本マクドナルドの中国産鶏肉の危険性~

□垣田達哉「【食】上海福喜食品・期限切れ原料偽装事件 ~“ブラックホール“化する中国食品~」(「週刊金曜日」2014年8月8・15日合併号)
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 【参考】
【中国】チキンの恐怖 ~ファストフード、ファミレス12社~
【食】中国の鶏肉問題--流通のグローバル化で食の安全はますます困難に
【中国】チキンの恐怖 ~日本マクドナルドの中国産鶏肉の危険性~
【中国】習近平、見えてきた独裁者の正体 ~外交・内政・軍事・経済~
【中国】システムの危機と上部からの腐敗 ~老化する大国(3)~ 
【中国】党指導部はゲームの脇役 ~老化する大国(2)~ 
【中国】共産主義の崩壊と伝統的家族への回帰 ~老化する大国(1)~
【中国】低迷する経済 ~習近平政権の1年~
【中国】現地取材で痛感 やっぱり危ない中国産食品
【中国】実録・猛毒食品「僕らだって怖い!」 ~中国人は語る~
【食】添加物の危険性 ~煮付け油揚げ~
【食】危険な除草剤の増加 ~除草剤耐性GM作物~
【食】イオンの産地偽装 ~中国猛毒米~
【中国】汚染大国 ~PM2.5、農薬、重金属まみれの野菜~
【食】中国における食品汚染事件 ~悪質ケース50(抄)~
【食】「危ない中国産」を見破る法 ~ジュース・菓子~
【食】中国産ウナギ肝から国際基準の1.5倍のカドニウム
【食】外食、どのメニューに中国産が入っているか ~中国食品を見破れ(3)~
【食】安いものにはウラがある ~成型肉の添加物~
【食】中国産から身を守るためのQ&A ~中国食品を見破れ(2)~
【食】中国食品を見破れ ~スーパー・外食~
【食】中国猛毒食品(2) ~アサリ・エビ・ピーナッツ・漬物・ウナギ~
【食】中国猛毒食品 ~絶対に食べてはいけない遺伝子組み換え米~
【中国】影の銀行つぶし ~アベノミクスの行方を左右する中国の政策~
【中国】凄まじい貧富の格差
【中国】政経一体システム ~今後どうビジネスを展開するか~
【中国】政府から独立している軍隊 ~尖閣をめぐる軍事的問題~
【中国】外交と国内問題との関係 ~今後の展望~
【中国】改善されない環境問題 ~大気汚染・水質汚染・食品汚染~
【中国】恐るべき階級社会 ~農村戸籍と都市戸籍~
【中国】5大リスク ~不衛生・格差・バブル崩壊・少子高齢化・軍の暴走~
【食】中国産鶏肉の危険(2) ~有機塩素・残留ホルモン~
【食】日本マクドナルドが輸入する中国産鶏肉の危険 ~抗生物質~
【食】中国産食材は大丈夫か? 日本の外食産業は?
【食】【TPP】原産地表示の抜け道 ~食のグローバル化~
【食】中国食品の有害物質混入、表示偽装 ~黒心食品~
【食】中国産薬漬け・病気鶏肉を輸入する日本マクドナルド・その後
【食】中国産薬漬け・病気鶏肉を輸入する日本マクドナルド



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【食】2年ぶりに食品安全委員会の評価再開 ~花王「エコナ」が復活か?~

2014年08月11日 | 社会
 「エコナ」(花王)は、発癌性が問題となって製造発売中止が続いている。
 が、食品安全委員会における安全性評価は継続されていた。
 7月7日、ほぼ2年ぶりのワーキンググループで示された評価書案では、
  「エコナ」はすでに流通していない、
  新たなデータは入手できない、
といった理由で「評価は困難」と結論された。
 しかし、過去に「エコナ」を食べた人たちのリスクはどうなのか? この評価書案どおりでいけば、「評価不能」とされてしまう。

 「エコナ」の安全性が問題とされたのは、「エコナ」の主成分(80%)「ジアシルグリセロール」に発癌促進作用の可能性が指摘されたことに始まる。
 2005年に癌になりやすいラットを使った発癌実験(念のために実施された)で、舌癌増加を示唆する結果が出た。
 その後、主に「ジアシルグリセロール」の安全性について審議が行われ、追加の動物実験の結果は灰色だった。
 2009年、製造過程の不純物として「グリシドール脂肪酸エステル(GE)」が混入していることが判明した。この物質は体内で分解され、「グリシドール」(発癌物質)になる。その段階で花王は「エコナ」の製造販売中止を決定し、特定保健用食品(トクホ)としての許可も失効した。
 その後、不純物のGEの安全性に焦点をあてて、食品安全委員会における評価が続けられた。

 今回の会議における評価書案では、「エコナ」の安全性は評価不能としながら、その主成分「ジアシルグリセロール」の発癌促進作用はシロ、GEの発癌性はクロという結果が示された。
 また、GEは、普通の食用油にも少しばかり含まれるが、それによる発癌リスクは「きわめて小さい」とされている。

 GEを大量に含む「エコナ」を過去に食べた人の発癌リスクについて、会議の記者向けブリーフィングで次のような説明があり、過去のリスクは示されないままになりそうだ。
 <個々人の摂取の形態が違うし、揚げ油などは評価が難しい。安全サイドに立つと、過度な評価になってしまい、数値が独り歩きすると困るので出さない>【山添康・座長】
 <基本的に食べた人たちへのケアはリスク管理機関(厚労省)の仕事だ>【姫田尚・事務局長】
  
 さらに、花王が、問題となったGEを一般食用油並みに減らした 「エコナ」を再販売する可能性が出てきた。
 その点について、<通常のトクホに要求される試験でクリアすれば許可されるだろう>【姫田事務局長】
 しかし、 「エコナ」の発癌性の原因はすべてGEのせいだ、と言い切れるのか。

 評価書案では、「ジアシルグリセロール」はシロとなっているが、過去の会議の議事録によれば、結論が出ているとは言いがたい。
 審議の途中で明らかな発癌性物質の混入が判明したので、そちらに議論がシフトしたが、明らかな発癌性物質を除去したから安全と断言できるのか?
 「ジアシルグリセロール」は、食経験が十分にない食用油成分だ。動物実験をしようにも、摂取量が少ない食品添加物や農薬のように、人の摂取量の100倍超の高用量の試験は不可能だ。
 だとすれば、新「エコナ」が申請された場合、過去に発癌性が見え隠れした発癌感受性の高い動物実験で再度確認することが不可欠ではないか?

□植田武智(科学ジャーナリスト)「花王「エコナ」が復活か? 2年ぶりに食品安全委員会の評価再開」(「週刊金曜日」2014年7月18日号)
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【古賀茂明】安倍政権の武器輸出 ~時代遅れの「正義の味方」~

2014年08月10日 | 社会
 武器輸出三原則。
 これが撤廃されて4か月たった。続々と具体的な案件が表に出てきた。

 今年、世界各地で深刻な国際紛争が発生している。各地で激しい戦闘が繰り広げられている。国境を越えて、いともたやすく武器が拡散している。
 「反政府武装勢力」グループが、高度な武器を使って急速に支配地域を広げる現象が見られるが、それを可能にしたのが、米英仏露、サウジアラビア、カタール、イラン、そして最近では中国などの武器輸出だ。表向きは自衛のため、人道のためと言うのだが、本音はシンプルに自国権益の維持拡大だ。そこでは、自国の敵の敵は味方、味方の敵は敵という短絡的・短期的な視点で武器が供与される。
 <例>カタール(湾岸の親米国)。民主国家ではないが、米国メジャーの利権を守ってくれるから、米国にとっては味方だ。そこで、米国はカタールに武器を供与する。
 スンニー派のカタールにとってシーア派は敵だ。シリアのアサド大統領はシーア派だ。カタールの敵だ。それと戦うスンニー派の反政府勢力は、アサドの敵だからカタールの味方だ。そこでカタールは、彼らスンニー派反政府勢力にこっそりと武器を供与した。
 ところが、その武器がアルカイダの流れを汲むスンニー派武装勢力ISIS(最近「イスラム国」と改称)に流出した。この武器を使って、「イスラム国」が、今、イラクで猛威を振るっている。シーア派のマリキ政権を慌てさせている。
 マリキ政権は、米国が作った政権だ。米国は武器も軍事訓練も供与してきた。
 米国のカタールへの武器供与は、廻り廻って米国のクビを締めている。

 かくのごとく、今や「正義とは何か」が曖昧になっている。
 だから、どの国も、地域紛争に軍事介入することに極めて慎重だ。

 安倍政権は、武器輸出解禁に当たって、国際紛争を助長しないように歯止めをかけた、と説明した。
 しかし、実際には、時代遅れの「正義の味方」路線を採っている。米国は正義で、日本の味方。だから米国の味方は日本の味方だし、米国の敵は日本の敵だ、と考える。
 極めて危ない考えだ。

 7月17日、安倍政権は国家安全保障会議(NSC)で、地対空ミサイル「パトリオット(PAC2)」に使う部品(三菱重工業)の対米輸出案件を承認し、その部品が組み込まれたPAC2完成品のカタールへの輸出まで認めた。
 カタールについては「親米国で紛争に使われるリスクは低い」としている。カタールは親米、つまり米国の味方。だからカタールは日本の味方。そういう短絡的な審査で認めたのだ。
 しかし、カタールが何をやっているかを考えれば、認めてはいけない案件であることは明らかだ。

 米国の軍需産業は強大な政治力を持っている。だから、多少のリスクはあっても、そんな議論は蹴散らかされて、米国政府は危ない橋を渡る。
 それに付き合って、日本はのこのこと危ない橋を渡るのだ。
 日本の武器産業は、表向きは「政府の方針に従うだけ」と言いながら、内心は欣喜雀躍している。
 自民党の国防族も、むろん喜んでいる。
 しかし、それ以上に喜んでいるのが、武器輸出を所管する経産省だ。そこに巨大な利権が生まれ、武器産業への天下りポストも大幅に増えるだろう。

 彼らには、70年かけて築き上げてきた日本の「平和ブランド」など、何の関係もない。
 経産省は、予算も規制の権限も小さく、長らくその存在意義が問われてきただけに、「安部さんは救世主」という声があがっている。 

□古賀茂明「時代遅れの「正義の味方」 ~官々愕々第119回~」(「週刊現代」2014年8月16・23日特大合併号)
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 【参考】
【古賀茂明】またも折れそうな第三の矢 ~医薬品ネット販売解禁の大嘘~
【古賀茂明】「1年後の夏」に向けた布石 ~集団的自衛権~
【古賀茂明】法人減税で浮き彫りにされる本当の支配者 ~官僚と経団連~
【古賀茂明】都議会「暴言問題」の真実 ~記者クラブによる隠蔽~
古賀茂明】集団的自衛権とワールドカップ
【古賀茂明】野党再編のカギは「戦争」
【古賀茂明】電力会社の歪んだ「競争」 ~税金をもらって商売~
【原発】【古賀茂明】規制委員会人事とメディアの責任
【古賀茂明】医師と官僚の癒着の構造
【古賀茂明】電力会社「値上げ救済」の愚 ~経営難は自業自得~
【古賀茂明】竹富町「教科書問題」の本質 ~原発推進教科書~
【古賀茂明】安部総理の「11本の矢」 ~戦争国家への道~
【古賀茂明】理研は利権 ~文科官僚~
【古賀茂明】「武器・原発・外国人」が成長戦略 ~アベノミクスの今~
【古賀茂明】マイナンバーを政治資金の監視に ~渡辺・猪瀬問題~
【古賀茂明】東電を絶対に潰さずに銀行を守る ~新再建計画~
【古賀茂明】「避難計画」なき原発再稼働
【古賀茂明】「建設バブル」の本当の問題 ~公共事業中毒の悪循環経済~  
【古賀茂明】安倍政権の戦争準備 ~恐怖の3点セット~
【原発】【古賀茂明】利権構造が完全復活 ~東日本大震災3年~
【古賀茂明】アベノミクスの限界 ~笑いの止まらない経産省~
【古賀茂明】労働者派遣法改正前にすべきこと
【古賀茂明】時代遅れな、あまりにも時代遅れな ~安部政権のエネルギー戦略~
【古賀茂明】森元首相の二枚舌 ~オリンピックの政治的利用~
【古賀茂明】若者を虜にする「安部の詐術」 ~脱出の道は一つ~

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【佐藤優】ウクライナ政権の「ネオナチ」と「任侠団体」 ~ビタリー・クリチコ~

2014年08月09日 | 社会
 ビタリー・クリチコ、1971年7月19日生、43歳。
 彼はウクライナ政治の混乱を象徴する人物だ。
 ウクライナ現政権は、
  政商ポロシェンコ大統領をはじめとする利権屋
  ウクライナ民族至上主義者(国際基準ではネオナチに相当する)
の寄り合い世帯だ。行政の経験はろくになく、権力欲に取り憑かれた政治家が、当事者にとっては深刻だが、国民の安全や生活には関係のない権力闘争に明け暮れている。
 いま、ウクライナ東部・南部のロシア語を常用する反政府勢力(いわゆる親ロシア派)と殺し合いをしているので、ウクライナ政府はさしあたり団結を保っているが、内戦が終われば政府は瓦解する。

 既にその兆候は現れている。
 <東部での親ロシア派武装勢力との戦闘やマレーシア機撃墜で揺れるウクライナで、近く議会が解散し、総選挙が行われる可能性が高くなった。今年2月に親ロシア路線の前政権が崩壊して以来、親欧州路線の3党が支えてきたヤツェニュク連立内閣から2党が離脱したからだ。国際社会を巻き込む危機の中で、国内の政争を危惧する声もある。
 (中略)
 連立離脱したのは政党「ウダル」と「自由」。予算案をめぐる対立が直接の原因だが、実際は総選挙を意識し、2月以降の国家的危機の中で欧州連合(EU)との関係構築に成果を出したヤツェニュク首相を揺さぶる狙いとみられる。>【注】
 
 連立離脱した政党のうち、「ウダル」は「改革のためのウクライナ民主同盟」の略号、かつ、ウクライナ語で「一撃」の意。また、「自由」の原語はスボボダ。
 予算案をめぐる対立が直接の原因だが、実際は総選挙を意識し、2月以降の国家的意識のうちにEUとの関係構築に成果を出したヤチェニュク首相を揺さぶる狙いらしい。
 7月24日、ヤチェニュク首相は辞意を表明し、暫定首相を指名した。しかし、「ウダル」と「スボボダ」は承認の採決に応じず、政局は混乱を極めている。

 「スボボダ」はネオナチ政党だ。
 他方、「ウダル」はクリチコの個人政党で、クリチコを組長とする任侠団体のような政党だ。クリチコは、キックボクシングを経てプロのボクサーになった。世界ボクシング評議会(WBC)、世界ボクシング機構(WBO)の世界選手権でヘビー級王座を獲得したこともある。ロシア語圏のボクシング・ファンなら誰でも知っている。
 「ウダル」は、クリチコ配下の「自警団」を擁しているので、該当での抗争に強く、他の政党から一目置かれている(欧米や日本では暴力組織として排除される)。
 ポロシェンコ政権は、ウクライナ東部・南部を実効支配できてないとともに、首都キエフにおける影響力も限られている。なぜなら、キエフ市長選挙(今年5月25日)でクリチコが当選したからだ。

 ウクライナの富と情報はキエフに集中している。だから、政治力と腕力のあるキエフ市長ならば、大統領や首相に対抗する力を内政的には十分に確保することができる。
 ヤチェニュク首相の失脚で、「ウダル」と「スボボダ」が政権に与える影響が可視化された。
 「スボボダ」は、イデオロギー的にはネオナチだが、党員の戦闘能力は弱い。他方、「ウダル」党員は、クリチコに服従するという掟以外に特段の思想はないが、腕力が強い。
 ネオナチと任侠団体が政治に影響力を持つようなおかしな国とは、日本は極力関わるべきでない。

 【注】記事「総選挙、大幅前倒しか ウクライナ」(朝日新聞デジタル、2014年7月27日)

□佐藤優「ウクライナ政権の「ネオナチ」と「任侠団体」 ~佐藤優の人間観察 第77回~」(「週刊現代」2014年8月16・23日特大合併号)
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 【参考】
【佐藤優】東西冷戦を終わらせた現実主義者の死 ~シェワルナゼ~
【佐藤優】日本は「戦争ができる」国になったのか ~閣議決定の限界~
【ウクライナ】内戦に米国の傭兵が関与 ~CIA~
【佐藤優】日本が「軍事貢献」を要求される日 ~イラクの過激派~
【佐藤優】イランがイラク情勢を懸念する理由 ~ハサン・ロウハニ~
【佐藤優】新・帝国時代の到来を端的に示すG7コミュニケ
【佐藤優】集団的自衛権、憲法改正 ~ウクライナから沖縄へ(4)~ 
【佐藤優】スコットランド、ベルギー、沖縄 ~ウクライナから沖縄へ(3)~ 
【佐藤優】遠隔地ナショナリズム ~ウクライナから沖縄へ(2)~
【佐藤優】ユニエイト教会 ~ウクライナから沖縄へ(1)~ 
【佐藤優】独裁者の「再選」が放置される理由 ~バッシャール・アル=アサド~
【佐藤優】経済と政治を行き来する新大統領の過去 ~ペトロ・ポロシェンコ~
【佐藤優】安倍首相とイスラエル首相「声明」の意味 ~ベンヤミン・ネタニヤフ~
【佐藤優】ロシアが送り込んだ「曲者」の正体 ~ウラジーミル・ルキン~
【佐藤優】ロシアは日本をどう見ているか ~日本外相の訪露延期~
【佐藤優】ウクライナ衝突の「伏線」 ~オレクサンドル・トゥルチノフ~
【ウクライナ】危機の深層(2) ~ブラック経済~
【ウクライナ】危機の深層(1) ~天然ガス~
【ウクライナ】エネルギー・集団的自衛権・尖閣問題 ~日本外交のジレンマ(3)~
【ウクライナ】米国の迷走とロシアの急成長 ~日本外交のジレンマ(2)~
【ウクライナ】と日本との歴史的関係 ~日本外交のジレンマ(1)~
【佐藤優】ウクライナ危機と米国が陥った「恐露病」
【佐藤優】プーチン政権がついに発した「シグナル」の意味 ~ロシア外交~
【佐藤優】プーチンは「世界のルール」を変えるつもりだ ~クリミア併合~
【ウクライナ】暫定政権の中枢を掌握するネオナチ ~クリミア併合の背景~
【佐藤優】北方領土返還のルールが変化 ~ロシアのクリミア併合~
【佐藤優】ロシアが危惧するのは軍産技術の米流出 ~ウクライナ~
【佐藤優】新冷戦ではなく帝国主義的抗争 ~ウクライナ~~
【佐藤優】クリミアで衝突する二大「帝国主義」 ~戦争の可能性~
【佐藤優】「動乱の半島」クリミアの三つ巴の対立 ~セルゲイ・アクショーノフ~
【佐藤優】ウクライナにおける対立の核心 ~ユリア・ティモシェンコ~
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【航空】スカイマークの経営危機 ~エアバス契約破棄~

2014年08月08日 | 社会
 スカイマークは、国の規制緩和による新規参入の第1号で、航空運賃の低価格路線の先駆けだった。そのスカイマークの経営が揺らいでいる。
 スカイマークは7月29日、エアバス(欧州旅客機メーカー大手の)から、導入予定の大型航空機「A380」について、購入契約解除を通告された、と発表した。

 2011年、エアバスと6機を1,900億円で購入する契約を結んだ。2014年10月から2019年12月にかけて順次受け取る予定だった。
 ところが、円安で実質的な購入価格が上昇した。この外の理由もあいまって、2機の導入を先延ばしにし、残り4機を解約する案をエアバスに打診した。4月から協議を続けてきた。
 エアバスは猛反発した。契約を変更するなら、
  スカイマークは大手航空会社の傘下に入る。
  購入しない場合には違約金を支払う。
といったことを求めている。
 西久保慎一・スカイマーク社長は「現在も交渉中」としているが、
 エアバス側は「終結(terminates)」と発表。カタログ価格で1機400億円を超える航空機だけに、「あらゆる権利を行使する」と強硬姿勢だ。
 スカイマーク側にとって、大打撃だ。前払いしている260億円が返ってこなければ、2015年3月期は黒字見込みが赤字に転落。加えて、エアバスが請求している違約金700億円弱を支払わなければならない事態となれば、わずか450億円程度の自己資本が吹き飛ぶ。
 交渉が縺れると第三国の司法当局に仲裁してもらうことになるが、日本の司法では想像できない厳しい判断が下る可能性もある。経営は根本から震駭する。

 西久保社長は、自らの経営責任を認めている。「円安によるコスト高を読み切れなかった」【注】
 そもそもスカイマーク失速の背景にはLCCの登場がある。
 エアバスと契約した2011年ごろは、スカイマークの経営は好調だった。小型の航空機に絞り、国内のドル箱路線に集中投入することで、2012年3月期には152億円の営業利益を計上していた。
 ところが、それ以降、スカイマークよりさらに安いLCCが日本にも参入し、競争が激化。2014年3月期には25億円の営業赤字に転落。
 そこでスカイマークが打ち出したのが「安さより質」という戦略だった。小型機集中を捨て、大型機導入を進めようとしたのだ。超大型のA380導入もその一環だ。座席の数を減らして大型化し、国際線に参入して、新たな収益源を確保しようと目論んだ。
 この拡大路線こそ失敗だった。
 JALやANAでさえ搭乗率低下を理由にジャンボジェット(ボーイング747)を全て手放した。
 スカイマークの野望は、身の丈に合わないだけでなく、業界の流れに逆行していた。
 
 スカイマークに生き残る道はあるのか。
 西久保社長は、大手航空会社の傘下に入るのを拒否している。西久保社長が退任しても、救済スキームを描くのは困難だ。
  (a)スカイマークは全てリースに頼っていて、担保がない。cf.JALの法的整理前、所有する航空機を実質的に担保にとっていた日本政策投資銀行から融資を受けるなど凌いでいた。
  (b)無借金経営ではあるが、事業の先行きが見通せない。
  (c)JALのように地方路線が多く影響が大きいといった救済の「名分」がない。手を差し伸べる金融機関は多くない。
  (d)羽田の発着枠を36持っているのは大きいが、JALやANAが20%以上出資すればグループ企業とみなされて発着枠を返上しなければならなくなり、無意味になる。
  (e)外資のLCCなどであれば20%以上出資が可能だが、外資に対する規制により経営権を完全に掌握することはできず、これまた救済にはならない。
  (f)羽田の発着枠に魅力を感じるLCCと、航空会社以外の異業種企業を連れてきてタッグを組ませ、救済する。残る最後の「秘策」だ。

 ただし、(f)においてもっとも怖いのは顧客離れの進行だ。航空事業はチケット代という日銭が入っているから利用者さえいれば、すぐに資金がショートする可能性は低い。しかし、今回の騒動で不安に感じた利用者が払い戻しなどを初めてしまうと話は別だ。スカイマークはマイレージサービスを導入していないので、顧客離れが起こりやすい。
 とはいえ、夏の繁忙期で国内線は満杯状態だから、スカイマークをキャンセルして他の便には乗れない。今すぐ顧客離れが雪崩を打つ可能性は低い。

 大手航空会社は、航空機を購入するに当たって、増資などで資金を調達してから契約を結んでいる。
 しかるにスカイマークは公的機関の保証付き融資の交渉を進めているさなか、先が見通せない段階で契約した。ギャンブルさながらの経営だ。
 そのツケが今回の騒動で回ってきた。しばらくは薄氷を踏む状況が続く。

 【注】記事「「スカイマーク、違約金が重荷に=西久保社長「危機ではない」」」(時事ドットコム、2014年8月3日(日) )

□清水量介(本誌)「エアバス契約破棄で浮上するスカイマークの経営危機」(「週刊ダイヤモンド」2014年8月9・16日合併号)
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 【参考】
【航空】“勝ち組”ピーチが大失速 ~日本版LCCの正念場~
【航空】パイロット不足危機の構造 ~ピーチの大量欠航~
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【中国】チキンの恐怖 ~ファストフード、ファミレス12社~

2014年08月07日 | 社会
 「上海福喜食品」問題で、他の外食チェーンは大丈夫か。

 騒動の震源地となったマクドナルドは、「チキンクリスプ」「チキンタツタ」など8商品でタイ産の鶏肉を使用。
 ただし、これは今回の問題を受けて中国産チキンの販売を中止した7月25日以降の話。同社は昨年、中国から17,000トンもの鶏肉を調達していた。

 他社で中国産を使用しているところは意外と少ない。次の2品くらい。
  (a)モスバーガーの「モスチキン」。
  (b)フレッシュネスバーガーの「グリル土チキン」

 日本に輸入される鶏肉には2種類ある。
  ①スーパーなどで購入して主に家庭で調理される生肉、冷凍肉。
  ②外国で加工される鶏肉調整品。
 ①のほとんどがブラジル産。中国では鳥インフルエンザが蔓延しているため、中国からの生肉と冷凍肉の輸入は禁止されている。
 鶏肉輸入量は41万トン(2013年)。うち9割超の39万トンをブラジルから輸入する。【農林水産物輸出入概況】
 モスバーガー、フレッシュネスバーガーファーストキッチンではブラジル産の鶏肉を日本で加工している商品がある。ガストでは「鶏肉を使用するすべての商品」が産地も加工もブラジルだ。

 今回問題になったマクドナルドの「チキンマックナゲット」は②だ。中国の工場で油で揚げられ、最終商品の状態で冷凍して輸出され、日本の店舗で二度揚げして客に提供されていた。
 ②は、①より若干多い44万トン(2013年)。うちタイが21.4万トン、中国が22万トン。

 中国の鶏肉と違って、タイやブラジルの場合は、抗生剤やホルモン剤の投与にうるさい。両国はEUにも鶏肉を輸出している。EUは抗生剤やホルモン剤に係る残留基準が厳しい。だから、鶏肉のみならず豚や牛も、EUへ出荷している国は比較的安全だ。
 今の時代、食の安全を語る際には輸入相手国と日本との関係も重要になってくる。生産または加工に携わる国の人が日本を好きかどうか。ブラジルはもともと日系人が養鶏を広めた国だし、タイも親日的な国だ。他方、中国は日本との関係が悪い。毒ギョーザ事件もそうした土壌から生まれた。衛生面、生産体制に加えて、反日かどうかという視点でも、中国産よりタイ産・ブラジル産の方が安心だ。

 とはいえ、今も鶏肉調整品の半分は中国から輸入されている。ファストフードやファミレス以外に、中国産鶏肉はどこで使われているのか。
 今回「上海福喜食品」からはファミリーマートが輸入していたが、他のコンビニで売られている唐揚げなどの商品も中国産が多い。スーパーの前などで売られている焼き鳥、居酒屋で出される安い唐揚げ、焼き鳥は中国で加工してから冷凍で輸入されるものが多い。日本で加工すると工賃が高いから、安くするには外国で加工するしかないのだ。外食チェーンの商品は産地表示の義務がないし、食べても中国産かどうか、味で見分けることができる人なんていない。
 中国産の鶏肉は、サラリーマンが行くような安い定食屋や社員食堂、老人ホーム、学食などの外食産業に紛れ込んでいる。

 こうした中国産の加工食品の検査体制はどいうなっているか。
 従来はメタミドホス(毒ギョーザ事件で検出)のような危険物質や大腸菌などの細菌が入っていないか、という検査を行っていた。ただ、農薬などの検査をしても、今回のような期限切れの肉を使った商品かどうかまでは分からない。成分を一から調べないと、中国の危険食品を見分けることは難しい。
 国の食品検査に従事する食品衛生監視員は、全国で399人しかいない。人数が全く足りていない。2012年度の輸入食品監視統計によれば、食品の輸入時における届出件数218万件に対し、検査件数は22万件。検査率は1割で、残り9割は検査されていない。

□記事「ファストフード、ファミレス12社実名調査 中国産鶏肉メニューを教えてください」(「週刊文春」2014年8月7日号)
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 【参考】
【食】中国の鶏肉問題--流通のグローバル化で食の安全はますます困難に
【中国】チキンの恐怖 ~日本マクドナルドの中国産鶏肉の危険性~
【中国】習近平、見えてきた独裁者の正体 ~外交・内政・軍事・経済~
【中国】システムの危機と上部からの腐敗 ~老化する大国(3)~ 
【中国】党指導部はゲームの脇役 ~老化する大国(2)~ 
【中国】共産主義の崩壊と伝統的家族への回帰 ~老化する大国(1)~
【中国】低迷する経済 ~習近平政権の1年~
【中国】現地取材で痛感 やっぱり危ない中国産食品
【中国】実録・猛毒食品「僕らだって怖い!」 ~中国人は語る~
【食】添加物の危険性 ~煮付け油揚げ~
【食】危険な除草剤の増加 ~除草剤耐性GM作物~
【食】イオンの産地偽装 ~中国猛毒米~
【中国】汚染大国 ~PM2.5、農薬、重金属まみれの野菜~
【食】中国における食品汚染事件 ~悪質ケース50(抄)~
【食】「危ない中国産」を見破る法 ~ジュース・菓子~
【食】中国産ウナギ肝から国際基準の1.5倍のカドニウム
【食】外食、どのメニューに中国産が入っているか ~中国食品を見破れ(3)~
【食】安いものにはウラがある ~成型肉の添加物~
【食】中国産から身を守るためのQ&A ~中国食品を見破れ(2)~
【食】中国食品を見破れ ~スーパー・外食~
【食】中国猛毒食品(2) ~アサリ・エビ・ピーナッツ・漬物・ウナギ~
【食】中国猛毒食品 ~絶対に食べてはいけない遺伝子組み換え米~
【中国】影の銀行つぶし ~アベノミクスの行方を左右する中国の政策~
【中国】凄まじい貧富の格差
【中国】政経一体システム ~今後どうビジネスを展開するか~
【中国】政府から独立している軍隊 ~尖閣をめぐる軍事的問題~
【中国】外交と国内問題との関係 ~今後の展望~
【中国】改善されない環境問題 ~大気汚染・水質汚染・食品汚染~
【中国】恐るべき階級社会 ~農村戸籍と都市戸籍~
【中国】5大リスク ~不衛生・格差・バブル崩壊・少子高齢化・軍の暴走~
【食】中国産鶏肉の危険(2) ~有機塩素・残留ホルモン~
【食】日本マクドナルドが輸入する中国産鶏肉の危険 ~抗生物質~
【食】中国産食材は大丈夫か? 日本の外食産業は?
【食】【TPP】原産地表示の抜け道 ~食のグローバル化~
【食】中国食品の有害物質混入、表示偽装 ~黒心食品~
【食】中国産薬漬け・病気鶏肉を輸入する日本マクドナルド・その後
【食】中国産薬漬け・病気鶏肉を輸入する日本マクドナルド
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【食】中国の鶏肉問題--流通のグローバル化で食の安全はますます困難に

2014年08月06日 | 社会
 上海福喜食品が期限切れ鶏肉を日本の大手ファストフードやコンビニなどに出荷してた事件が、食の安全問題を再燃させている【注】。
 親会社の「OSIグループ」は、日本を含む世界17か国に60か所の食品加工工場を持ち、40か国以上に食肉を供給している米系大手食品卸売企業だ。同社はグローバル企業で、昨年だけで60億ドル(6,000億円)の売上げを誇る。2010年から中国家禽産業に進出し、2014年には1億羽の家禽取引が予定されていた。
 シェルダン・ラビン会長兼CEOは、上海福喜食品幹部の逮捕を受けて、HP上に謝罪文を掲載し、中国国内へ直ちに調査員を派遣する、と発表した。

 日本は、鶏肉調整品を44万トン(2013年)輸入している。うち、半分の22万トンは中国産が占めている。
 マスコミ報道の大半は中国のずさんな食品衛生管理や中国人の無責任さなどに焦点をあてているが、この問題は一国・一企業に矮小化できない。
 日本マクドナルド社をはじめ、多くの外食チェーンがOSIとの取引を停止する中、日本マクドナルド本社による「OSIとの取引継続」表明がこの事件の本質を浮き彫りにした。

 グローバル化が価格競争を激化させればさせるほど、食料は工業製品に近くなっていく。大量生産かつ低コストという2大条件は、今や中国だけでない。グローバル企業が工場を置く国(原材料と人件費が安い)ならどこでも最優先条件だ。
 <例>成長促進のための成長ホルモン。バッテリーケージ(A4サイズの空間)に鶏を4羽詰める大量育成法。抗生物質(感染防止のため)の大量投与。
 この例は米国でもさして珍しくない。
 鶏肉に限らず、豚や牛も同様だ。

 福島第一原発事故以降、日本国内のスーパーでは豪州産、カナダ産、米国産の肉需要が増えている。
 ところが、米国のスミスフィールド社(世界最大の豚肉生産・処理企業)は、2013年に中国企業が買収済みだ。
 このグローバル流通システム(網の目のように世界を覆う)の中、口にするものの出所を正確に辿るのは、今後ますます難しくなるだろう。

 かたや、日本の食品安全に関する法規は、輸入元の国内事情をz選定に整備されているとは言いがたい。食品検疫検査率は輸入件数の1割程度にすぎず、9割は検査なしに輸入されている。
 食における輸入依存率が年々進んでいるにもかかわらず、食品衛生監視員(食品検疫検査を実施する)の数は相変わらず全国でも400人に満たない。
 今回の事件を教訓に、国は今度こそ人員を増やし、検査率を上げ、食品衛生法を見直すべきだ。
 日本における食費支出は、2040年までに、その7割を外食と輸入食品が占めるようになる。【米国穀物協会が2014年4月に発表した報告書】
 少子化が進み、生鮮食品より加工食品が中心になれば、日本の食生活はますます中国や米国に依存していくだろう。日本政府は、国民の安全をしかと守ることができるか。

 EUと米国間におけるTTIP(環大西洋貿易投資パートナーシップ)交渉でも、食の安全基準が問題になっている。米国製の塩素消毒した鶏肉が、EUの厳しい基準に引っかかるからだ。
 ロシアも最近、米国からの遺伝子組み換え食材輸入全面禁止に踏み切った。
 「遺伝子組み換え食品を選ぶのは米国人の自由だ。だが、我が国には自国民のために有機農業作物を生産する農地が十分にある」【プーチン大統領】
 ロシア政府のこうした姿勢の背後には、食の安全について意識の高い欧州消費者の存在がある。
 企業至上主義の米国が緩い基準を押しつけてくるTPP交渉で、日本政府を後押しするために、国民側は確固たる価値観を差し出すべきだ。
 安価神話を追い求める消費者の欲望が、歪んだ市場(その象徴が中国期限切れ鶏肉事件)を支え続けている。この事実に国民はいつ気づくのか。

 【注】「【中国】チキンの恐怖 ~日本マクドナルドの中国産鶏肉の危険性~

□堤未果「中国の鶏肉問題--流通のグローバル化で食の安全はますます困難に」(「週刊現代」2014年8月16・23日特大合併号)
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【中国】チキンの恐怖 ~日本マクドナルドの中国産鶏肉の危険性~

2014年08月05日 | 社会
(1)「上海福喜食品」
 床に落ちた肉を拾うのは工場のルール。機械を回しながら肉を投入するから、どうしても床に落ちてしまう。だから拾って、設置された青いプラスチックの容器に入れる。容器がいっぱいになったら肉を回収し、細菌殺菌薬「菌敵」を200倍に薄めた溶液で洗浄する。仕上げに度数70%のアルコールでさらに消毒し、再利用する。
 中国・上海のテレビ局「東方衛視」のスタッフが2か月にわたって「上海福喜食品」に潜入取材し、食肉工場の不衛生な実体や期限切れ肉の使用などを暴露した。
 外食チェーン向けの食肉加工品を製造する「上海福喜食品」は、米食肉大手「OSIグループ」の子会社だ。製品納入先は、中国国内の11社(マクドナルド、ピザハット、バーガーキング、ケンタッキーフライドチキンなど)。
 同社が製品を輸出していた日本の2社は、
  (a)日本マクドナルド(「チキンマックナゲット」)
  (b)ファミリーマート(「ガーリックナゲット」と「ポップコーンチキン」)
 問題発覚後、両社はいずれも販売を中止し、(a)は上海福喜食品以外の中国産鶏肉商品の販売もすべて中止した。

(2)ここ10年間で悪化
 上海福喜食品は、4、5年前から工場の様子が急におかしくなった。昔はさすがに米国系企業という感じで、片栗粉(肉の加工に使う)や調味料は輸入品だったのに、質の悪い国産品に格下げになった。さらには、肉に混ぜる片栗粉の量を増やすようになった。工場は24時間稼働の3交代制だが、管理担当社員がいなくなる午後や深夜の時間帯はひどい。テレビで放映されたような、落ちた肉を拾って機械に戻す光景は珍しくない。
 上海万博(2010年)が開催された時、ファストフードの鶏肉が足りなくなった。すると、どこからか、ものすごい異臭を放つ腐った手羽先の山20トンくらいが工場に運び込まれた。その手羽先に業務用スプレーで菌敵の溶液を吹き付けて消毒してから、利用した。
 菌敵の主成分は塩酸ドキシサイクリン。人にも動物にも使われる抗生物質だが、類似成分で催奇形性に係る報告がある。妊産期における経口摂取に注意すべきなのはむろんのこと、動物への投与さえ注意を要する。
 昔は給料が良かったが、今では低すぎて人が集まらない。この10年、中国の物価は上がり続けているが、マクドナルドのメニューはほとんど値上がりしていない。しわ寄せが人件費にいく。従業員の多くは1~2週間で辞める。モラルのレベルは推して知るべし。

(3)「日本マクドナルド」
 日本マクドナルドの中国産鶏肉が危ない、という事実は、すでに報じられていた【注】。
 「河南大用食品グループ」と取引のある河南省の養鶏場で、一度に数万羽単位の大量死があった。その病死した鶏の肉を、河南大用食品は長期にわたって加工販売し、有名ファストフード店に売っていた。日本マクドナルドもその一つだ。
 業界トップの大企業、日本マクドナルドが上海福喜食品と取引を始めたのは2002年。
 日本マクドナルドは、サプライヤーに対していう。
  (a)衛生管理手法・・・・、国際基準のHACCP(ハサップ)に加え、より包括的な製造基準を独自に定めている。
  (b)検査体制・・・・輸入製品に関しては、動物医薬品検査、飼料添加物検査、微生物検査、食品添加物検査を3か月に1回行っている。
 では、なぜ問題が発覚しなかったのか。
 (a)のHACCPは、原料入荷から製品出荷までのフードセーフティを完成させるマニュアルにすぎない。マニュアルに定められたルールを守る意思がなければ、意味をなさない。
 <例1>雪印乳業の食中毒事件(2000年)・・・・雪印は、HACCPを早期に取得した。食品輸出に不可欠な世界基準HACCPだが、いったん取得しさえすれば、その後はいくらでも偽装できる。事実、雪印はずさんな製造管理で食中毒事件を起こしてしまった。
 <例2>上海福喜食品の手口・・・・①問題のある食品は、検査の際、斜め前にある他社の冷凍倉庫に移した。②検査官には、偽の管理データを提出する。会社には、偽データ作成のみに従事する社員が2人いた。結局、従業員は皆、「どうせ自分が食べるものではない」と思っている。

(4)中国産鶏肉の問題点
 (1)の問題が発覚した当初、中国マクドナルドは鶏肉の仕入れ先を上海福喜食品から、河南福喜食品(同じOSIグループの子会社)に変更する、と発表した。
 その後、OSIグループの全工場からの調達停止を発表した。OSIグループが「会社の品質基準に適合しない事実が見つかった」として上海福喜食品の全製品の回収を決定した後で。
 OSIは米マクドナルドの最大の仕入れ先だ。今回の問題に際して、ヤム・ブランズ(ケンタッキーフライドチキンなどを展開)が訴訟の可能性を示唆したが、マクドナルドは当初OSIとの関係続行に固執していた。だから、OSIの全工場との取引を停止したのは、よほど重大な問題が発覚したからであるはずだ。
 中国産鶏肉が抱えるリスクに、抗生物質、成長ホルモン、有機塩素の存在がある。昨年の鶏大量死は、これらの過剰投与が問題になったのを受けて、抗生物質を減らした結果発生した【注】。 
 さらにそれより怖いのが、有機塩素系の農薬や殺虫剤(DDTやBHCなど)による土壌汚染だ。有機塩素系には発癌作用があり、日本では40年以上前に禁止されている。中国でも1983年に禁止されたが、容易に入手できるのだ。そうした汚染土で栽培された穀物(トウモロコシなど)が鶏の飼料になる。当然、鶏肉には有害物質が濃縮・蓄積される。

(5)「河南大用食品」は、今
 河南省は、河南大用食品とともに河南福喜食品のあるところだ。
 河南大用食品の養鶏場は、昨年2月に操業停止になったが、10月中旬に再開した。昨年大量死したのは鶏舎の密度が高くて病気が伝染したからだが、今も密度は変わらない。鶏はすべて大用が持ち込んだもの。餌はすべて大用が配合している。雛が来てから約40日で出荷している。
 日本では通常50~55日で出荷する。40日で出荷されているということは、成長ホルモンを過剰投与している可能性が高い。以前と同じく促成飼養と超過密飼いを行っている(推定)。
 河南福喜食品工場(周口市西華県)は、上海福喜食品の操業停止を受けて「OSIの最新設備を備えている」として選ばれただけあって、広大な敷地に真新しい建物が立つ。ただし、その斜め前に「西華大用福喜基地」が立っている。つまり、1年前に大問題を起こした「大用」と「福喜」が合併して工場を造っているのだ。
 中国では不正を犯した時の「違法コスト」が高くない。ここ数年間、食品問題を起こした後に潰れたのは、メラミン混入粉ミルク事件で乳幼児に死者を出した三鹿集団だけ。他の会社は、問題を処理した後に営業を再開できている。だから、企業にとって役所が検査に来ても、プレッシャーはさほど大きくない。
 中国政府は、食の問題に力を入れて積極的に摘発もしているが、現場ではそれに対抗するための対策を立てている。いたちごっこになっている。金儲けのためなら何をやってもいい、という風潮が蔓延していて、モラルが崩壊している。日本企業が本気で安全を追求するなら、日本人駐在員を常駐させるか、日本国内で見ることのできる監視カメラを何台も設置するしかない。しかし、生産から加工まで全行程を監視するには膨大なコストがかかる。
 安全にはコストがかかるのである。

 【注】
【食】中国産薬漬け・病気鶏肉を輸入する日本マクドナルド
【食】中国産薬漬け・病気鶏肉を輸入する日本マクドナルド・その後
【食】日本マクドナルドが輸入する中国産鶏肉の危険 ~抗生物質~
【食】中国産鶏肉の危険(2) ~有機塩素・残留ホルモン~

□記事「中国チキンの恐怖 本誌告発スクープから1年余 上海マクドナルド食肉工場従業員の告白」(「週刊文春」2014年8月7日号)
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【中国】システムの危機と上部からの腐敗 ~老化する大国(3)~ 
【中国】党指導部はゲームの脇役 ~老化する大国(2)~ 
【中国】共産主義の崩壊と伝統的家族への回帰 ~老化する大国(1)~
【中国】低迷する経済 ~習近平政権の1年~
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【中国】実録・猛毒食品「僕らだって怖い!」 ~中国人は語る~
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【集団的自衛権】の歴史的教訓 ~第一次世界大戦~

2014年08月04日 | 社会
 7月28日は、第一次世界大戦勃発の100周年記念日だ。1914年のこの日、オーストリア・ハンガリー帝国はセルビアに宣戦布告し、侵攻を開始した。
 ロシアは、オスマン・トルコ帝国からバルカン諸国が独立するのを支援し、セルビアの後ろ盾だったから、オーストリア軍の侵攻を索制するため、7月30日に予備役を招集し、戦争の構えを示した。
 これに対し、オーストリアの同盟国だったドイツは、8月1日にロシアに対して、3日にロシアの同盟国フランスに対して宣戦布告。
 フランスと協商関係にあった英国は、8月4日、ドイツに宣戦布告した。
 当初日本で「墺塞(オーストリア・セルビア)戦争」と報じられた小戦争は1週間で「欧州大戦」に拡大し、やがてイタリア、トルコ、日本、米国などを巻き込む「世界大戦」に発展した。

 第一次世界大戦では、軍人の802万人が死亡、2,122万人が負傷した。民間人の死者も664万人に達した。
 敗戦国のドイツ、オーストリア、トルコ、ブルガリアのみならず、戦勝国の英国、フランス、イタリアなども大打撃を受け、途中で脱落したロシア帝国は崩壊した。
 ちなみに日本も、中国・青島のドイツ要塞攻略などで死者300人、負傷者907人を出した。

 敗戦国および戦勝国の双方で3,600万人もの死傷者が出たのは、軍の上層部が近代戦の凄まじさを想定していなかったからだ。
 欧州では1870~71年のプロシア対フランスの戦争以後、40年以上、大国間の戦争がなかった。
 他方、第二次産業革命(1870年代~)によって世界の鉄鋼生産は100万トン(1870年)から3,000万トン(1890年代末)に急増した。発電機、電灯、電話、内燃機関、化学工業などもこの時期に登場した。
 これら機械文明の進歩は、当然兵器に反映され、連発小銃、機関銃、速射砲(毎分20発を発射可)などが造られた。旧来の黒色火薬は白煙を吹き出すため連続発射すると視界を妨げたが、無煙火薬が発明されて機関銃などが真価を発揮。戦場は「殺人工場」と化した。
 だが、軍の上層部は技術の進歩を軽視し、ナポレオン戦争の頃と変わらない先方に固執。開戦2年後の第一次ソンム会戦(1916年7~11月)でも英軍は観兵式のように整列し、横隊を組んで独軍陣地に向けて堂々と行進したから、機関銃、速射砲のまたとない標的となり、攻撃初日に死傷者6万人、11月までに42万人の損害を出した。
 この戦争では、潜水艦、航空機、毒ガス、戦車などの新兵器が登場したが、死傷者の7割は砲弾による。

 終戦(1918年11月)後、
   戦死者 94万人
   負傷者209万人
   乱発した国債の償還に歳入の半分を費やす財政危機に直面
した英国では、「そもそもバルカン半島の戦争になぜわが国が参戦したのか」との疑問が噴出した。
 同盟(集団的自衛)には平時の抑止効果はあるものの、一部で戦争が起こると延焼する危険が再認識され、戦争を非合法化し、それに違反した国には他の諸国が共同で制裁を加える「集団的安全保障」論が流行、その考えに基づく国際連盟が生まれた(1919年)。
 だが、これも第二次世界大戦を防げなかった。  

□田岡俊次(ジャーナリスト)「第一次世界大戦の教訓とは何か 歴史に見る「集団的自衛権」の怖さ」(「週刊金曜日」2014年7月18日号)
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【料理】2つのポイント ~片付けの技術~

2014年08月03日 | 生活
 料理は好きだが、片付けは嫌い・・・・という人は多い。
 料理を作り慣れていない人にとっては、片付けの手順もよくわからない。
 せっかくだから凝った料理を作りたい、となれば、手順は複雑、鍋やフライパンがたくさん必要、頭の中は料理のだんどりでいっぱい。洗い物まで手がまわらない・・・・ということになりがちだ。

 ポイント1:料理をしながら、同時に洗い物をする。
 料理の手順を分解してみると、何もしない時間が意外とある。
 <例1>パスタを茹でるために大鍋の湯が沸くのを待っている時間。
 <例2>天ぷらが揚がるのを待っている時間。
 <例3>鶏肉をフライパンでソテーして、火が通るのを待っている時間。
 こういう時にボンヤリしていてはいけない。この時間に「他にやることがない」と気づいたら、すかさず鍋やフライパンやキッチン道具を洗って、水切りかごに重ねてしまうのだ。水切りかごに洗いずみの鍋がだんだん山になってきたら、今度は空き時間にそっちを乾いたふきんでどんどん拭いて、台所の空いている場所に積んでいく。
 この手順がうまくできるようになると、「料理完成!」「さあ食べるぞ!」というタイミングに、ちょうど洗い物も全部片付いて台所にはピカピカの鍋とフライパンが積まれている、という状態にもっていける。これが完璧にできるようになると、超爽快だ。

 ポイント2:失敗の少ないシンプルな料理を心がける。
 実は、こういう料理のほうが女性には受けがいい。
 <例>用意する食材はホウレンソウ、調味料は醤油だけ。道具は、大きめの鍋が一つとボウルだけ。
 まずボウルに水を張って、ホウレンソウを振り洗いする。根っ子を水の中に入れてゆさゆさと洗ったら、次はひっくり返して頭のほうを洗う。泥が落ちたら、ボウルの水を替えて、ホウレンソウを「生け花」みたいに水に生けておく。15分ぐらいは放置しておく。
 この間に鍋に湯を沸かす。ボウルからホウレンソウを取り出し、ボウルにはもう一度きれいな水を張って氷を入れておく。
 ここからが肝心で、ホウレンソウをひと束ずつ、ぐらぐらの湯にわずか10秒だけ茹でて、さっと氷水に取り出す。
 これを何度も繰り返して、ホウレンソウを全部茹で終えたら、氷水から取り出してギュッと絞り、ざく切りにして、さっと醤油をかけまわすだけ。
 驚くほどにシャキッとしたホウレンソウのおひたしができあがる。
 これは、料理好きの人ほど驚いてくれる、シンプルだけれど、奥の深いレシピだ。

□佐々木俊尚(作家・ジャーナリスト・「TABI LABO」共同編集長)「合間にササッと片付けてできあがりにはピッカピカ ~オヤジの家めし 4~」(「週刊金曜日」2014年7月18日号)
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 【参考】
【料理】毎日もちっとも面倒くさくない ~手抜きの技術~
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