JR直営の印刷場名は国鉄時代の印刷場名を使用します。
10年以上前に御紹介した券も再度御紹介しようかと思います。
古紙蒐集雑記帖
JR西日本 宮島口駅券売機発行 往復乗車券
前回エントリーに引き続き、宮島航路の券売機券の話題です。
宮島口駅の券売機には往復乗車券専用の券売機がありました。
桃色JRW地紋のキレート券紙が使用されていて、左右に「かえり券」と「ゆき」券が繋がっている体裁は硬券の往復乗車券の様式を踏襲していますが、一般式が繋がっているのではなく、矢印式券となっています。
宮島口駅でフェリーの乗車券を購入する旅客は日帰りの観光客が多いせいか、帰路の乗車券を購入する必要のない往復乗車券はかなり需要があったようです。そのため、券紙に捺印印字される印板は激しく摩耗しており、記載事項がほとんど分かりません。
記載事項が鮮明ではありませんが、左側の「かえり」券には発駅である「宮島」が縦書きの四角囲みで表記され、三角矢印の右側に着駅である宮島口と横書きで記載されています。その下には大人往復運賃である320円と記載され、そにの下には小さく「小児160円」と小児運賃が記載されています。
右側の「ゆき」券には発駅である「宮島口」が縦書きの四角囲みで表記され、三角矢印の右側に着駅である宮島と横書きで記載されています。
もともとはあったものが磨耗してしまったのかもしれませんが、「発売日共2日間有効」の表記はありません。
特筆すべきは「かえり」券と「ゆき」券の間で、よくよく見るとミシン線のようなものが見られます。
裏面から見てみましょう。
あまりはっきりしませんが、縦にミシン線が入っていることが分かります。
宮島航路では宮島口から乗船する旅客は改札を通らず乗船し、宮島駅で下船時に乗車券が回収されます。逆に、宮島駅で乗船する旅客は乗船時に改札を受けて乗車券が回収される方法が採られており、往復乗車券を所持した旅客は宮島で下船する際、右半分の「ゆき」券をもがれて回収されたものと思われます。
ミシン線部分を拡大して見ます。はっきりと、ミシン線があることが分かります。
当初この券を購入するまでは、この券売機がなぜ往復乗車券専用なのか理解できませんでしたが、この券を手にした時にその謎は解けました。券紙は片道券のものと同じものですので、印字されて発券される間に、ミシン線を入れる工程がひとつ入れられている特殊な券売機であったものと思われます。
現在でも券売機による往復乗車券は宮島航路だけでなく全国各地のJR線の駅で発売されていますが、現行では「ゆき」券と「かえり」券が別々に発券されて2枚一組となっているのが通例であり、発売時にミシン線を入れるような発券方法は全国的にも珍しいものであったものと思われます。