趣味で蒐集した「きっぷ」を見て考えたこと、とか…
JR直営の印刷場名は国鉄時代の印刷場名を使用します。
古紙蒐集雑記帖
西鹿児島駅発行 伊集院接続 日置駅ゆき連絡片道乗車券
1983(昭和58)年7月に鹿児島本線西鹿児島(現・鹿児島中央)駅で発行された、伊集院駅接続、鹿児島交通枕崎線日置駅ゆきの片道連絡乗車券です。
桃色こくてつ地紋のB型一般式大人・小児用券で、門司印刷場で調製されたものです。
乗車経路は、西鹿児島~(鹿児島本線)~伊集院~(鹿児島交通枕崎線)~日置という経路で、途中の伊集院駅で乗換えることになります。
当時の鹿児島交通枕崎線の列車は、1日10往復程度の運転で日中は2時間に1本と大変本数が少なく、一部の列車は途中の加世田駅止まりであったり、朝の混雑時には加世田駅~薩摩湖駅間の、夜の帰宅時間帯に伊集院駅~日置駅間の区間運転があり、3往復については伊集院駅から国鉄鹿児島本線に乗入れし、西鹿児島駅までの列車が運転されていました。そのため、直通列車に乗れば、西鹿児島駅から日置駅間を1本の列車で旅行することができました。
御紹介の券が発行された年の6月21日に加世田豪雨による加世田水害が発生し、枕崎線の線路が甚大な被害を被りました。
加世田水害により、伊集院駅~日置駅間にあるトンネルが漏水して不通となり、加世田駅から先の枕崎駅までの区間についても線路が所々流失したために不通となり、日置駅~加世田駅間のみが運転再開されたものの、伊集院駅~日置駅間および加世田駅~枕崎駅間については復旧されないまま、翌1984(昭和59)年3月に全線廃線になってしまっています。
御紹介の乗車券が発行された時には伊集院駅~日置駅間の鉄道は運休となり、バスによる代行輸送になっていました。
ただし、国鉄との連絡運輸契約上の車両確保の理由と思われますが、自社線内が不通となっていても廃線の日までは鹿児島交通の車両が国鉄線西鹿児島駅~伊集院駅の区間についてダイヤ通り運転されており、国鉄線内のみを往復していました。
加世田の工場の方に伺ったところ、伊集院駅~日置駅間についてはトンネルの漏水のみでレールの流失はなかったため、車両の検査で加世田の工場へ入場させる回送時のみ、旅客扱いをせずに不通区間を自走し、漏水していたトンネルを走り抜けていたそうです。
いくら廃線が決まっていたって言えども、かなり強引なことをされたようです。