畝傍駅発行 畝傍から140円区間ゆき片道乗車券

1983(昭和58)年12月に桜井線畝傍駅で発行された、畝傍から140円区間ゆきの片道乗車券です。


   

桃色こくてつ地紋のB型金額式大人・小児用券で、大阪印刷場で調製されたものです。

同駅はのちに桜井線となる大阪鉄道の高田駅~桜井駅間の開業時に開業した駅で、初代天皇の神武天皇陵や、神武天皇と皇后を祀る橿原神宮の最寄駅で、参拝客で駅は賑わっていたと言われています。また、皇族の利用も想定され、駅には開業時から貴賓室が設けられていたそうです。
国有化された後の1940(昭和15)年、橿原神宮では神武天皇即位から2600年にあたる「皇紀2600年祭」が執り行われることになり、記念事業の一環として畝傍駅は現在の木造駅舎に改築されています。


   

現在の畝傍駅駅舎です。
このような大きくて立派な駅ですが、すぐ近くにある近鉄の橿原線および大阪線の大和八木駅や八木西口駅のほうが利便性の関係から利用者数が断然多いため、国鉄時代に桜井線のCTC化が行われた際に駅員無配置化と荷物取扱いが廃止され、無人駅になっています。


   

現在は塞がれた出札窓口の横には広い改札口があり、その先にはホームへ上がる広い階段があります。


   

さらには、多客時に対応できるよう、駅舎の横には臨時改札口のあった跡とその先には、先ほどの改札口のものとは別のホームへ上がる階段があり、いかに賑わいのある駅であったかということが窺われます。


   

今は板張りされてしまっていますが、同駅には今でも貴賓室が残されており、貴賓室部分の屋根は入母屋風の造りになっています。貴賓室として最後に利用されたのが1959(昭和34)年のことで、現在の上皇様と上皇后美智子様が皇太子様と皇太子妃様であったころに、ご成婚を橿原神宮に報告参拝に来られた時だったとのことです。

このような貴重な木造駅舎のある畝傍駅ですが、JR西日本は畝傍駅舎の橿原市への無償譲渡を提案し、橿原市は活用する民間業者を募る方向だったようですが、維持費の高さや、耐震化工事など初期費用だけで2億円と莫大が額が試算され、財政状況が厳しい中に、橿原市がそこまで負担するのは困難ということで断念し、現在駅舎取り壊しの危機に瀕しています。
JR西日本からの無償譲渡の期限は本年3月で切れており、保全活用の道筋が立てられなければ駅舎は取り壊され、待合室があるだけの小さな駅舎に建て替えられてしまう可能性があります。

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