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先住民族関連ニュース

先住民族関連のニュース

アイヌ文化を踏まえたトリビアな知識も充実。アイヌ文化に出会う絶好の扉

2019-07-19 | アイヌ民族関連
ニコニコニュース 2019/07/19 06:00ALL REVIEWS

『アイヌ文化で読み解く「ゴールデンカムイ」』(集英社) 著者:中川 裕
物語世界の奥行きを引き出すアイヌへの真摯な眼差し
野田サトルの漫画『ゴールデンカムイ』の群を抜くおもしろさは、いうまでもないだろう。
舞台は明治末期、日露戦争直後の北海道。アイヌが秘蔵していた莫大(ばくだい)な金塊のありかを秘密裏に伝えるため、網走監獄に収監中の囚人たちの皮膚に入れ墨が彫られ、脱獄。かくしてアイヌを巻き込んだ壮絶な「刺青人皮」の争奪戦がはじまる……奇想天外なサバイバルに、ページをめくる指が止まらない。昨年はテレビでアニメ化され、手塚治虫文化賞でマンガ大賞を受賞し、話題をさらった。
本書は、『ゴールデンカムイ』のアイヌ語監修を務める千葉大学文学部教授、中川裕(ひろし)によるもの。漫画の場面を手がかりにしてアイヌの歴史や文化のエッセンスを詳細に解説、リアルな生活文化の手触りが伝わってくる読み応えだ。アイヌ固有の伝統文化、『ゴールデンカムイ』のオリジナルな物語、同時にふたつの世界へ誘い、きわめて風通しのいいおもしろさ。
コミックスの表紙カバー、袖に毎巻こう書かれている。
「カント オロワ ヤク サク ノ アランケプ シネプ カ イサム」(天から役目なしに降ろされた物はひとつもない)
アイヌの言葉を引きながら、その背景へと導く。そもそもカムイとは「人間をとりまいているほぼすべてのもの」、自然に限らず、人工物もふくめた環境すべてを指す。アイヌの思想では、人間は他者の命によって生かされており、霊魂は不滅だ。人間とカムイが共存する世界観は現在の社会にとって重要な考え方だと解くのだが、漫画のコマを多用して物語世界と通じることで、アイヌの精神世界がより立体的に繙(ひもと)かれてゆく。
ヒロインの超人少女、アシリパは『ゴールデンカムイ』の魅力を形成する重要な存在だ。その人物像からアイヌの姿を深掘りする。アシリパの名前の意味、狩りの腕前の背景、いつもはおっている白い毛皮の理由、冬山に入るときの装備にまつわる知恵、信仰、あるいは父親の出自の秘密……。とかくスピード感を大事にする漫画では、なかなか説明し切れない要素を抽出して解説、逆に人物像を肉付けする役割を果たしている。あっぱれなチームワークだなあと思いながら、監修者としての漫画への愛とリスペクトに心動かされる。
『ゴールデンカムイ』では、食べ物をめぐるシーンも印象的だが、本書にはアイヌ文化を踏まえたトリビアな知識も充実している。アイヌはキハダの木の苦くて甘い実を香辛料として使うこと、「ヒンナ」はおいしいという意味ではなく、感謝の言葉だということ、ああおいしい!と気持ちを込めるときは「ケラアン フミー」。フミは「感じ」という意味だということも初めて教わった。アイヌは文字を持たず、口承によって文化を伝承してきた。本書には、その伝承文学にじかに触れるような趣きがある。
『ゴールデンカムイ』の人気を支えているのは、フィクショナルな作品性に加えて、これまで長く社会的な差別を被ってきた人々への眼差し、あるいは文化の多様性、自然との共生などへの関心があるだろう。その奥行きを丁寧に引き出す著者の、アイヌへの想いがひしひしと伝わってくる。本書はアイヌ文化に出会う絶好の扉だ。
【書き手】
平松 洋子
1980年東京女子大学文理学部社会学科卒業。食文化や文芸を中心に、書籍・新聞・雑誌などで広く執筆活動を行う。 『買えない味』(筑摩書房 第16回Bunkamuraドゥマゴ文学賞受賞)。『野蛮な読書』(集英社 第28回講談社エッセイ賞受賞)。主著に『おいしい日常』『おもたせ暦』『夜中にジャムを煮る』『おとなの味』『焼き餃子と名画座』(いずれも新潮文庫)、『韓国むかしの味』(新潮社 とんぼの本)、『彼女の家出』(文化出版局)、『本の花』(本の雑誌社)、『洋子さんの本棚』(小川洋子との共著 集英社)、『サンドウィッチは銀座で』『ステーキは下町で』『小鳥来る日』『ひさしぶりの海苔弁』『あじフライは有楽町で』(いずれも文春文庫)、『食べる私』(文藝春秋)、『日本のすごい味 おいしさは進化する』『日本のすごい味 土地の記憶を食べる』(いずれも新潮社)など。
【初出メディア】
サンデー毎日 2019年7月7日増大号
【書誌情報】
アイヌ文化で読み解く「ゴールデンカムイ」
著者:中川 裕
出版社:集英社
装丁:新書(262ページ)
発売日:2019-03-15
ISBN:4087210723
https://news.nicovideo.jp/watch/nw5667018

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日本時代の先住民制圧の歴史を伝える駐在所 花蓮県が保存へ/台湾

2019-07-19 | 先住民族関連
中央フォーカス台湾 2019年7月18日 20:10

「華巴諾駐在所」に眠っていたロシア製の3インチ砲=花蓮県文化局提供
(花蓮 18日 中央社)日本統治時代に開かれた横断道路「八通関越嶺道路」沿いに設置された「華巴諾駐在所」の現場を記録、保存するプロジェクトが、花蓮県政府によって進められている。同県文化局の江躍辰局長は、世界に誇る登山コースである同道路の文化をより充実させ、歴史の魅力を伝えていきたいと意気込み、地元の先住民、ブヌン族による登山産業創出の契機になることにも期待を示している。
同局によると、日本政府は20世紀初頭、同県のラクラク(拉庫拉庫)渓の流域に住むブヌン族を統治するために、同族が日常的に使用していた猟銃を没収。これが引き金となり、1915(大正4)年には不満を抱くブヌン族が日本人警官を襲撃した「カシバナ事件」や「大分事件」などの抗日活動が頻発し、双方は多数の死者を出した。
台湾総督府はこれを制圧するため、19(同8)~21(同10)年にかけて、ラクラク渓南側の山の中腹に八通関越嶺道路(東側)を建設。約83キロの沿線に計46カ所の駐在所を設けた。華巴諾駐在所は1920年に設置されたもので、宿舎があり、巡査5人と助手6人が常駐していたとされる。
同局は同駐在所の現況図や復元図、文物リストの作成、建築群の50分の1模型の制作などを民間の調査チームに依頼。6月末から7月初めまで、9日間にわたる調査が行われた。
調査では貯水池や台所設備、公共浴場、排水施設などの遺構のほか、酒の空き瓶や鍋、食器なども見つかった。このうち最も注目を集めたのが、倉庫に眠っていた3インチ砲。国立台湾博物館(台北市)の研究員、林一宏氏によれば、3インチ砲はロシアのプチロフ工場(現キーロフ工場)で1903年に製造されたもの。日露戦争で旧日本軍が獲得した戦利品で、このうち6基が先住民対策に用いられたという。
八通関越嶺道路は全長約125キロ。当初、大水窟(花蓮県と南投県の県境)を境界にして東西両側から建設が進められたため、東部・璞石閣(現・花蓮県玉里鎮)を起点とする約83キロが東側、中部・楠仔脚万(現・南投県信義郷)を起点とする約42キロが西側と呼ばれる。
(李先鳳/編集:塚越西穂)
https://www.excite.co.jp/news/article/Jpcna_CNA_20190718_201907180005/

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《嵐休止発表から5か月のいま》松本潤の情熱!宇梶剛士を師にアイヌ文化に飛び込む

2019-07-19 | アイヌ民族関連
楽天ウーマン 2019/07/19 04:00
松本潤。7月1日『ARASHIEXHIBITIONJOURNEY嵐を旅する展覧会』囲み取材で
 松本潤は7月15日に放送されるドラマ『永遠のニシパ~北海道と名付けた男 松浦武四郎~』(NHK)で主演を務めている。同作は幕末の北海道を舞台にした物語だ。
「幕末に蝦夷地を調査し、北海道の名前を考案した探検家・松浦武四郎が、アイヌ文化の豊かさを知り、そこで暮らす人たちのやさしさに共感を抱くようになるというストーリーです。松浦役を松本さん、アイヌの長老役を宇梶剛士さん、アイヌの女性役を深田恭子さんが演じます」(テレビ誌ライター)
 時代劇で、普段なじみのない役を演じるにあたって、松本はこんな勉強をしていた。
「宇梶さんにアイヌについて熱心に質問していたそう。実は宇梶さんのお母さんがアイヌ出身で、彼も北海道にある『アイヌ民族博物館』で現地の文化を紹介するVTRに出演するなど、関わりが深い。松本さんはそんな彼に言葉遣いや現地の人たちの暮らしぶりを教えてもらっていたといいます」(NHK関係者)
“熱血役作り”はこんなところでも。
「アイヌ文化を学ぶために、平取町の『二風谷アイヌ文化博物館』を訪れたり、主人公の人物像を学ぶために『松浦武四郎展』に行って勉強したそうです」(同・NKH関係者)
 時代劇を経験し、俳優としてひと回り成長した松本から目が離せない!
https://woman.infoseek.co.jp/news/entertainment/jprime_15585

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この夏、東京でニュージーランドの伝統工芸品を楽しもう!

2019-07-19 | 先住民族関連
JIJI.com 7月19日(金)
[Te Puia]
- 六本木で、マオリの美術工芸やカパ・ハカのパフォーマンスを間近で見られる「TUKU IHO 受け継がれるレガシー」開催 -
このたび、ニュージーランド政府、およびニュージーランド航空などの支援のもと、ニュージーランド先住民族・マオリの美術工芸品とパフォーミング・アーツを披露する「TUKU IHO 受け継がれるレガシー」展が東京にお目見えすることとなりました。この「TUKU IHO 受け継がれるレガシー」展は、ニュージーランド文化の啓蒙のため、世界各国を巡回する個性的なエキシビションです。

マオリの伝統工芸や現代アートに触れよう!
ニュージーランドの先住民・マオリの伝統文化継承を目的に開校されたニュージーランド・マオリ芸術工芸学校(拠点:ニュージーランド・ロトルア)は、マオリ文化の紹介を目的にニュージーランド政府などが協賛し、世界各国で開催している「TUKU IHO 受け継がれるレガシー」展(入場無料)を、8月1日(木)~31日(土)の間、東京ミッドタウンで開催します。同展では、同校の教員や学生が制作した石材や骨、ポウナム(グリーンストーン)の彫刻や木材彫刻、織物、青銅細工など50点以上のマオリの芸術作品が展示されるほか、ポウナムや木材を使った伝統彫刻の実演もお楽しみいただけます。
マオリの伝統芸能カパ・ハカ(パフォーミング・アーツ)を間近で見よう!
ラグビーの試合開始前に披露されることで有名なマオリ伝統の舞踏パフォーマンス、ハカを含む様々な伝統芸能が組み合わせれた「カパ・ハカ」。昨年のニュージーランド全国高校カパ・ハカ大会で優勝した、ロトルア・ボーイズ高校とロトルア・ガールズ高校の男女混合チーム「ラウクラ」が、8月1日(木)~14日(水)の間、本場の迫力あるカパ・ハカを、東京ミッドタウンで披露します(※)。加えて、「ラウクラ」は期間中、都内各所にてパフォーマンスを行う予定です。
主催者代表コメント
「TUKU IHO 受け継がれるレガシー」展プロジェクト・リーダー、キリ・アトキンソン=クリーン:
「『TUKU IHO 受け継がれるレガシー』展は、今年、ニュージーランド関連の話題の盛り上がりが期待される日本において、ニュージーランドの文化や伝統に触れ、理解を深めていただける絶好の機会です。マオリと日本文化の間には、伝統的な物語や古典舞踏、伝統芸術、現代社会における古代遺産の重要性など、多くの共通点があります。世界を巡回する本展覧会は、人種や文化の異なる世界中の人々にマオリ文化を共有し、先住民族の文化を通して交流を図りながら、民族のアイデンティティーや伝統について広い観点から議論する機会を提供することを目的にしています」
ニュージーランド関連の公式SNSで最新情報を発信
「TUKU IHO 受け継がれるレガシー」展や関連イベントの最新情報は、同展を協賛するニュージーランド航空や、ニュージーランド政府観光局の日本語公式SNSアカウントでも、随時発信してきます。
◆◆◆ 「TUKU IHO 受け継がれるレガシー」展 イベント概要 ◆◆◆
<「TUKU IHO 受け継がれるレガシー」展>
■開催期間:8月1日(木)~31日(土)10:00~18:00
      ※火曜日休館。8月1日(木)は関係者向け内覧会のため、14:30に閉館
■会場:21_21 DESIGN SIGHTギャラリー3(東京ミッドタウン ミッドタウン・ガーデン内)
■アクセス:http://www.2121designsight.jp/gallery3/
■入場料:無料
■展示内容:ニュージーランド・マオリ芸術工芸学校の教員や学生が制作した、石材や骨、ポウナム(グリーンストーン)の彫刻や木材彫刻、織物、青銅細工など、マオリの伝統芸術・現代アート作品50点以上を展示。8月14日(水)まではポウナムや木材を使った伝統彫刻の実演も行います。
<「ラウクラ」カパ・ハカ 東京パフォーマンス日程>
イベント名 :「TUKU IHO 受け継がれるレガシー」展
■公演期間:8月1日(木)~14日(水)
■公演時間:平日13:00~13:20(※火曜日休演)、 土・日曜日13:00~13:20、15:00~15:20
■会場:東京ミッドタウン コートヤード(港区赤坂)
■アクセス:https://www.tokyo-midtown.com/jp/facilities/event/download/pdf/courtyard_map.pdf
■入場料:無料
イベント名:「TUKU IHO 受け継がれるレガシー」展 文化交流
■公演日時: 8月3日(土)11:00~11:20
■会場:神田明神(千代田区外神田2-16-2)
■アクセス:https://www.kandamyoujin.or.jp/access/
■入場料:無料
<ニュージーランド関連ページ>
ニュージーランド航空
・公式ホームページ:https://www.airnewzealand.jp/
・公式Facebook:https://www.facebook.com/AirNZJP/
・公式Twitter:https://twitter.com/AirNZJP
ニュージーランド政府観光局
・公式ホームページ:https://www.newzealand.com/jp/
・公式Facebook:https://www.facebook.com/purenewzealand
・公式Twitter:https://twitter.com/purenzinjapan
「TUKU IHO 受け継がれるレガシー」展について
「TUKU IHO 受け継がれるレガシー」展は、ニュージーランド政府などからの支援を受け、2013年以降、中国、マレーシア、チリ、アルゼンチン、ブラジル、北米など、世界各地を巡り、大成功を収めている展示イベントです。日本では、2019年4~5月に、北海道で初開催しました。本展覧会は、マオリの芸術と工芸と文化を保護し、奨励し、不朽のものにするという、ニュージーランド・マオリ芸術工芸学校のミッションに沿ったものです。ニュージーランド・マオリ芸術工芸学校は、マオリの芸術工芸文化保護を目的にニュージーランドで1963年に制定されたMaori Arts and Crafts Institute Actに基づき、政府系企業として活動するTe Puiaの文化継承部門を担っています。
https://www.jiji.com/jc/article?k=000000002.000046632&g=prt

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日本から2時間半で行けるヨーロッパ、 ウラジオストクが人気上昇中のワケ〈dot.〉

2019-07-19 | 先住民族関連
アエラ 7/19(金) 7:00配信
 極東ロシアのウラジオストクを訪れる日本人が増えている。旅行大手HISの今夏の海外旅行先の予約急上昇ランキングで、ウラジオストクはイスタンブールに次ぐ2位、前年比181%の伸び率だという(JIJI.COM 2019年7月5日)。その人気の理由を紹介する。
*  *  *
■かつて軍港だったウラジオストクが近年注目されている4つの背景
 ウラジオストクは俗に「日本にいちばん近いヨーロッパ」といわれているが、なぜ最近になって日本人旅行者が増えているのだろうか。以下の4つの背景がある。
(1)2017年からビザの取得が簡単になった
 2017年8月からウラジオストクに空路と海路で入国する場合、ネット申請手続きだけですむ電子簡易ビザが発給されるようになった。8日間限定でロシア沿海地方に滞在できる。これまでのロシア旅行に付き物だったビザ取得のための煩雑な手間から解放された。
(2)韓国並み! 日本からフライト2時間半
 成田からウラジオストクへのフライト時間はわずか2時間半。大阪や札幌からはもっと近い。物価も日本に比べて安く、町もコンパクトにまとまっているので、2泊3日の週末旅行でも十分楽しめる。
(3)昔のイメージは一変。明るいヨーロッパの港町へ
 かつての暗くて“おそロシア”なイメージは、もう過去のもの。ヨーロッパの港町そのもののウラジオストクでは、ただ通りを散策しているだけで気分がいい。食事もおいしく、ロシア料理だけでなく、多彩な料理を味わえる。
(4)ロシア側も観光に力を入れ始めた
 2018年のFIFAワールドカップ・ロシア大会の期間中、海外から多くの観戦客の誘致に成功したことから、ロシアは観光客の受け入れに積極的に取り組み始めている。現地のロシア人は親日的で、日本人との交流を待ち望んでいる。
■古き良きヨーロッパの港町は、未知なるグルメシティに変貌
 では、ウラジオストクとはどんなところなのか。
 そこは、文字どおり「日本海に面した港町」だ。時差は日本より1時間早い。それなのに、ヨーロッパの町並みがある。基層となっているのは19世紀後半の帝政ロシア時代に造られた優美なものだ。近隣アジアの都市で見かける高層建築はほぼないため、昔ながらのヨーロッパの趣が残っている。100年以上の歴史を持つシベリア横断鉄道の駅舎や港の絶景が見渡せる展望台など、町の散策スポットはフォトジェニックだ。地元の食材が並ぶ市場や、その脇を走るレトロな路面電車とケーブルカー。そして、北国ロシアのイメージを一変させるのは、夏になると町に近いビーチがパラソルと海水浴客でにぎわう光景だ。
 質の高いレストランが多いのにも驚かされる。口当たりは濃厚だが、上品な味つけのロシア料理は日本人の口に合う。ロシア風水ギョウザのペリメニは見た目がかわいく、ヘルシーで女性に人気。日本海でとれたカニはもちろん、タイガ(針葉樹林)の森の新鮮な素材を使った食の新潮流「パシフィック・ロシア・フード」や、ジョージア(旧グルジア)料理などのコーカサス地方や中央アジアのスパイシーな味わいも、この町ならではだ。世界最古とされるジョージアワインとともにこの町の人たちに愛されている。町中至る場所に居心地のいいカフェやバーがあり、スイーツやお酒も楽しめる。
 町の散策やグルメを楽しむだけなら、滞在は1日か2日で十分かもしれないが、郊外にも訪れるべき場所はある。毎年9月に開催される東方経済フォーラムの会場の極東連邦大学のキャンパスがあるルースキー島には手つかずの自然が多く残る。いまの季節は、地元の若者たちがビーチで海水浴やBBQを楽しむ姿が見られるだろう。ローカル電車に乗って近郊の町ウスリースクまで日帰りで行くのも面白い。そして、シベリア横断鉄道でアムール川のほとりにあるハバロフスクまで夜行寝台の旅に出るのも楽しい。日本ではめったに体験できない食堂車が待っている。
■本場のロシアバレエなど、カルチャートリップも見どころ
 ウラジオストクが韓国や台湾などの近隣アジアの人気旅行先と比べて最も違うのは、ロシアの都市文化を満喫できることだ。代表的なのは、現代屈指の指揮者ヴァレリー・ゲルギエフ率いるサンクトペテルブルクのマリインスキー劇場の傘下にある現地の劇場でのバレエやオペラ観賞だろう。今月24日から(8月7日まで)ウラジオストクのマリインスキー劇場でサマーフェスティバルが開催される。この夏は、端正な顔だちから“マリインスキー・バレエの王子”と呼ばれるダンサーのウラジーミル・シクリャローフや、著名な韓国人ダンサーのキミン・キムらが出演するガラコンサート(記念公演)が注目されている。
 アート散策も楽しめる。ロシア近代絵画を展示する美術館や元縫製工場をリノベーションした現代アートスペース、街角にあふれるストリートアートなど、観るべきものは多い。サーカスや人形劇などのロシアらしいアトラクションや、プロサッカー、アイスホッケー(これは冬のみ)などの人気スポーツも観戦できる。
 そして、歴史に関心のある人なら、黒澤明監督作品「デウス・ウザーラ」の主人公であるロシアの人類学者アルセーニエフの名を関した博物館に足を運ぶといいだろう。ウラジオストクは日本の近代史のさまざまな舞台でもあるからだ。そもそもこの町が誕生したのは1860年。この地にロシア人が現れるまでには、先住民族がのどかに暮らし、渤海などの古代王朝の勃興もあった。1903年のシベリア横断鉄道の開通は、世界史を塗り変える大きな意味があり、その後の日本とロシアの関係を複雑にした。だが、忘れてはいけないのは、同じ時期の20世紀初頭に多くの日本人がこの町に暮らしていたことだ。
 つまり、町並み、グルメ、ショッピング、カルチャーなど、多角的な楽しみ方ができるのがウラジオストクの魅力。「本場」ヨーロッパに行くには早くとも十数時間、旅の予算もかかる。アジア圏の新たな旅行先として、「ウラジオ」が今後よりいっそう注目されることは間違いなさそうだ。
●中村正人(なかむら・まさと)/旅行ジャーナリスト。中国や極東ロシア方面に詳しい。『Platウラジオストク』『地球の歩き方 極東ロシア シベリア サハリン』『同 大連 瀋陽 ハルビン』(ダイヤモンド・ビッグ社)などの編集担当。Webサイト「ボーダーツーリズム=国境観光を楽しもう」を運営。国内ではインバウンドツーリズムの取材を続けており、ブログ「ニッポンのインバウンド“参与観察”日誌』を主宰。著書に『「ポスト爆買い」時代のインバウンド戦略』(扶桑社)など。
https://dot.asahi.com/dot/2019071200076.html?page=1

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