北海道新聞 10/10 05:00
アイヌ民族にはサケ漁を行う先住権があるとして、確認を求めた訴訟の第1回口頭弁論で、原告のアイヌ民族団体ラポロアイヌネイション(十勝管内浦幌町)は9日、儀式など文化的な理由でしか捕獲ができない現行制度の規制は、アイヌ民族には適用されないと強調した。各地のアイヌ民族団体も先住権の確認を求める国内初の訴訟を注視。連帯する動きも広がっている。
「生活に結びつく生業としてサケをとり、経済的に自立することを目標にしている」。9日の弁論後、札幌市内で開かれた報告会で、ラポロアイヌネイションの差間正樹名誉会長は、訴訟の意義をこう強調した。
明治以降、河川でのサケ漁は開拓使によって規制され、1951年制定の水産資源保護法で全面禁止になった。道も64年、道内水面漁業調整規則を制定し禁止措置を明文化。86年から許可申請を条件に道が同規則上の特別採捕を認めるが、目的は文化や伝統儀式の継承に限られ、経済活動としてのサケ漁はできない。
訴状のなかで、浦幌十勝川流域のアイヌ民族が江戸時代、集団(コタン)ごとに独占的にサケ漁をしていたとした主張は、新北海道史の総編集長も務めた研究者、高倉新一郎の文献などが根拠だ。原告代理人の市川守弘弁護士(旭川)は「いわば外国だった北海道を明治政府が不当に国有地化しており、規制は当たらない」とする。
同日の弁論を傍聴した静内アイヌ協会(日高管内新ひだか町)の葛野次雄会長は「ようやくこうした問題を語る場ができた」と歓迎する。「原告の主張は多くのエカシ(長老)やフチ(おばあさん)が言いたくても言えなかったこと。これからもっと声を出していきたい」と力を込める。
サケ漁を巡っては、道の許可を得ずに河川でサケを捕獲したとして今年2月、紋別アイヌ協会長らが水産資源保護法(サケの採捕禁止)違反などの疑いで道警に書類送検された。
会長らはその後不起訴処分となったが、この事態に危機感を強めたアイヌ民族らが3月、市民団体「アイヌ(=ひと)の権利をめざす会」を発足。紋別アイヌ協会の主催で9月、紋別市内で行われた儀式「カムイチェプノミ」には、めざす会の呼び掛けでラポロアイヌネイションの会員ら15人のアイヌ民族が集まり、権利回復を求めることを確認した。
めざす会はサケ漁の権利回復を求める署名運動も行い、すでに約3千筆が集まった。早ければ年度内に国や道に提出する方針。貝澤耕一共同代表(日高管内平取町)は「裁判所がアイヌの権利をいかに検証するか注目している」。先住権を明記し、国連が2007年に採択した先住民族権利宣言は日本政府も賛成票を投じており、「政府は宣言に沿って権利を認めるべきだ」と話す。(斉藤千絵、田鍋里奈)
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/469275
アイヌ民族にはサケ漁を行う先住権があるとして、確認を求めた訴訟の第1回口頭弁論で、原告のアイヌ民族団体ラポロアイヌネイション(十勝管内浦幌町)は9日、儀式など文化的な理由でしか捕獲ができない現行制度の規制は、アイヌ民族には適用されないと強調した。各地のアイヌ民族団体も先住権の確認を求める国内初の訴訟を注視。連帯する動きも広がっている。
「生活に結びつく生業としてサケをとり、経済的に自立することを目標にしている」。9日の弁論後、札幌市内で開かれた報告会で、ラポロアイヌネイションの差間正樹名誉会長は、訴訟の意義をこう強調した。
明治以降、河川でのサケ漁は開拓使によって規制され、1951年制定の水産資源保護法で全面禁止になった。道も64年、道内水面漁業調整規則を制定し禁止措置を明文化。86年から許可申請を条件に道が同規則上の特別採捕を認めるが、目的は文化や伝統儀式の継承に限られ、経済活動としてのサケ漁はできない。
訴状のなかで、浦幌十勝川流域のアイヌ民族が江戸時代、集団(コタン)ごとに独占的にサケ漁をしていたとした主張は、新北海道史の総編集長も務めた研究者、高倉新一郎の文献などが根拠だ。原告代理人の市川守弘弁護士(旭川)は「いわば外国だった北海道を明治政府が不当に国有地化しており、規制は当たらない」とする。
同日の弁論を傍聴した静内アイヌ協会(日高管内新ひだか町)の葛野次雄会長は「ようやくこうした問題を語る場ができた」と歓迎する。「原告の主張は多くのエカシ(長老)やフチ(おばあさん)が言いたくても言えなかったこと。これからもっと声を出していきたい」と力を込める。
サケ漁を巡っては、道の許可を得ずに河川でサケを捕獲したとして今年2月、紋別アイヌ協会長らが水産資源保護法(サケの採捕禁止)違反などの疑いで道警に書類送検された。
会長らはその後不起訴処分となったが、この事態に危機感を強めたアイヌ民族らが3月、市民団体「アイヌ(=ひと)の権利をめざす会」を発足。紋別アイヌ協会の主催で9月、紋別市内で行われた儀式「カムイチェプノミ」には、めざす会の呼び掛けでラポロアイヌネイションの会員ら15人のアイヌ民族が集まり、権利回復を求めることを確認した。
めざす会はサケ漁の権利回復を求める署名運動も行い、すでに約3千筆が集まった。早ければ年度内に国や道に提出する方針。貝澤耕一共同代表(日高管内平取町)は「裁判所がアイヌの権利をいかに検証するか注目している」。先住権を明記し、国連が2007年に採択した先住民族権利宣言は日本政府も賛成票を投じており、「政府は宣言に沿って権利を認めるべきだ」と話す。(斉藤千絵、田鍋里奈)
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/469275