北海道新聞 12/26 05:00
<書評>武田 徹
《1》林達夫 編集の精神 落合勝人著(岩波書店 3960円)
《2》転んでもいい主義のあゆみ 荒木優太著(フィルムアート社 2200円)
《3》「アイヌ新聞」記者 高橋真 合田一道著(藤原書店 2970円)
《1》はルネサンス文化に通じ、「東洋のエラスムス」と称された林達夫の評伝。翼賛体制に抗(あらが)って断筆・隠棲(いんせい)した戦時中を挟み、生涯を通じて寡作だった林は「書く人」よりも「読む人」と思われてきた。そんな林を「作る人」、つまり広義の文化の編集者として光を当てて再評価する。
間違いながらの漸進をよしとする米国の新思想「プラグマティズム」はどのように受容されたのか。《2》は「失敗は成功の母」と信じて疑わないアメリカ的ポジティブ気質からほど遠い日本人思想家たちの奮闘の軌跡を描く。在野研究者として筆1本で勝負する気迫がみなぎる個性的文体も一読の価値あり。
《3》は「アイヌ新聞」発行者だった高橋真の評伝。先住民自身が先住民問題を告発したメディアの実態報告は、日本社会を内に閉ざす「単一民族幻想」がいかに形成されたかを批判的に検証するうえで役立つだろう。それにしても数少ない資料からよくぞ1冊にまとめ上げたと感心する。
(ジャーナリスト)
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/627920
<書評>武田 徹
《1》林達夫 編集の精神 落合勝人著(岩波書店 3960円)
《2》転んでもいい主義のあゆみ 荒木優太著(フィルムアート社 2200円)
《3》「アイヌ新聞」記者 高橋真 合田一道著(藤原書店 2970円)
《1》はルネサンス文化に通じ、「東洋のエラスムス」と称された林達夫の評伝。翼賛体制に抗(あらが)って断筆・隠棲(いんせい)した戦時中を挟み、生涯を通じて寡作だった林は「書く人」よりも「読む人」と思われてきた。そんな林を「作る人」、つまり広義の文化の編集者として光を当てて再評価する。
間違いながらの漸進をよしとする米国の新思想「プラグマティズム」はどのように受容されたのか。《2》は「失敗は成功の母」と信じて疑わないアメリカ的ポジティブ気質からほど遠い日本人思想家たちの奮闘の軌跡を描く。在野研究者として筆1本で勝負する気迫がみなぎる個性的文体も一読の価値あり。
《3》は「アイヌ新聞」発行者だった高橋真の評伝。先住民自身が先住民問題を告発したメディアの実態報告は、日本社会を内に閉ざす「単一民族幻想」がいかに形成されたかを批判的に検証するうえで役立つだろう。それにしても数少ない資料からよくぞ1冊にまとめ上げたと感心する。
(ジャーナリスト)
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/627920