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仏領ニューカレドニア 独立の住民投票 中国の影響強まる可能性

2021-12-13 | 先住民族関連
NHK 2021年12月12日 19時01分
南太平洋にあるフランス領のニューカレドニアで12日、独立の賛否を問う住民投票が行われました。
投票の結果、独立することになれば、太平洋地域の島しょ国で関係を深めている中国の影響力がさらに強まる可能性があるという見方もあって、結果に関心が集まっています。
南太平洋のニューカレドニアは大小の島々からなる人口およそ27万の地域で、19世紀にフランスが併合しましたが、貧富の格差などへの不満を背景に先住民族の「カナック」を中心とする独立運動が活発化しました。
独立の賛否を問う住民投票は、フランス政府と独立賛成派などが1998年に結んだ協定に基づき、12日、行われたもので、即日開票されます。
ニューカレドニアは電気自動車のバッテリーなどに使われるニッケルの世界有数の産地で、経済的な重要性も高いほか、フランス軍も基地を置き、インド太平洋戦略を進めるフランスにとって重要な拠点となっています。
一方、ニューカレドニア周辺の太平洋地域の島しょ国では、中国がインフラなどさまざまな分野への投資を通じて関係を深めています。
住民投票はこれまで2回行われ、いずれも反対が多数を占めましたが、2回目は賛成票の割合が増えました。
今回、さらに伸びるのではないかという見方もありますが、賛成派は新型コロナウイルスの影響で準備ができていないなどとして延期を求め、ボイコットを呼びかけています。
投票の結果、独立することになれば、太平洋地域の島しょ国との関係を深めている中国の影響力がさらに強まる可能性があるという見方もあって、結果に関心が集まっています。
独立の賛否問う最後の住民投票
フランス領のニューカレドニアは、オーストラリアの東、南太平洋にある大小の島々からなる地域で、人口はおよそ27万です。
さんご礁の海が広がり「天国に一番近い島」とも呼ばれる日本人にも人気のリゾート地です。
19世紀半ばにフランスが併合し、20世紀前半にかけては凶悪犯や政治犯の流刑地とされましたが、希少金属のニッケルが見つかったことで鉱山開発が盛んになり、ヨーロッパや日本を含むアジアから多くの労働者が移住しました。
一方で1960年代から、権利の回復を求める先住民族の「カナック」を中心に植民地支配からの独立を目指す運動が活発化し、1980年代には貧富の格差などに対する不満を背景に、治安部隊との間で死傷者を伴う衝突にまで発展しました。
その後の1998年、フランス政府と独立派などが、20年後までに独立の賛否を問う住民投票を実施することなどを定めた協定を結びました。
この中では、独立が否決された場合でもさらに2回、住民投票を行うことができるとされています。
この協定に基づいて2018年11月、1回目の住民投票が行われ、反対56.7%、賛成43.3%でした。
また去年10月に行われた2回目の投票では反対53.3%、賛成46.7%と、いずれも独立への「反対」が「賛成」を上回り、過半数を占めました。
ただ、去年の賛成票は前回よりも3ポイント余り増え、差は狭まっていました。
今回は協定に基づく最後の投票ともなり、結果に関心が集まっています。
希少金属の一種 ニッケル世界有数の産地
フランスはインド太平洋地域に多くの海外領土を持ち、この地域での排他的経済水域はアメリカに次ぐ2番目の広さがあります。
このためヨーロッパの中でもいち早く、2018年にインド太平洋戦略を打ち出し、海洋進出を強める中国を念頭に、日本をはじめ、各国との連携を強めていて、ニューカレドニアにあるフランス軍の基地は重要な拠点となっています。
またニューカレドニアは天然資源にも恵まれ、とりわけ電気自動車のバッテリーの原材料として需要も高まっている希少金属の一種、ニッケルの世界有数の産地です。
その最大規模の輸出先が中国となっています。
中国はパプアニューギニアやソロモン諸島、フィジーなど、ニューカレドニア周辺の島しょ国で、インフラ整備や経済支援などを通じて影響力を強めています。
このためニューカレドニアが独立すると中国の進出が本格化し、その影響力が強まる可能性が指摘されています。
太平洋地域の情勢に詳しいフランスの専門家、バスチャン・バンドンディク氏は「もしニューカレドニアが独立すれば、中国の衛星国になるだろう。なぜならフランスが守ってくれなくなるからだ。こうした事態は南太平洋のほかの国々でも起きている」と分析しました。
そのうえでフランスへの影響について「ニューカレドニアがあることで、フランスは太平洋地域での外交や経済、軍事面での活動が可能になっている。もし独立することになれば、フランスは最も重要で戦略的な海外領土を失うことになる」と述べ、フランスは戦略の見直しを迫られるという見方を示しました。
仏メディア「中国の影響下に入るリスク」
今回の住民投票についてフランスのメディアは、投票の結果、ニューカレドニアが独立すれば、中国の影響力が強まる可能性があると警戒する見方を伝えています。
このうちフランスの有力紙「フィガロ」は今月3日、電子版で、オーストラリアの潜水艦の開発計画をめぐってフランスとアメリカなどの関係が一時ぎくしゃくしたことを取り上げ「太平洋地域における中国の拡張主義的な野心を勢いづかせてしまった」と指摘しました。
そのうえで「ニューカレドニアが独立した場合、中国の影響下に入るリスクが各方面から指摘されている」と伝えています。
専門家「フランスが去れば財源不足 中国に支援求めるか」
ニューカレドニアの情勢に詳しい専門家は、仮に独立賛成派が勝利し、ニューカレドニアが独立した場合、中国の影響力が強まる可能性があると指摘しています。
南太平洋では近年、中国が主にインフラ建設への支援や投資によって影響力を強めています。
太平洋島しょ国 地域には14の島国のほか、ニューカレドニアとポリネシアという2つのフランス領があり、このうちソロモン諸島とキリバスがおととし、相次いで台湾と断交し、中国と国交を結びました。
ニューカレドニアの情勢に詳しいオーストラリアのシンクタンク「ローウィー研究所」のアレクサンドレ・ダヤント氏は「ニューカレドニアでは中国の進出をフランスが抑えてきたため、中国の影響力は現時点では少ない」と分析しています。
しかしその一方で「仮に独立した場合、中国にとって最大の利点は、現地で産出されるニッケルを通じた経済面での接近だ。フランスが完全に去ればニューカレドニア政府は財源不足に陥り、中国に支援を求めることも考えられる」と述べ、ニッケルの取り引きなどを通して中国の影響力が強まる可能性があるとの見方を示しました。
現地の日本人「暴動が起きないか心配」
ニューカレドニアでも新型コロナウイルスの感染拡大によって多くの犠牲者が出たことから、住民投票にあたって、先住民を中心とする独立賛成派は「伝統に従い、喪に服す期間が必要だ」として、投票日を延期するようフランス政府に求めました。
しかしフランス政府がこの要請に応じなかったため、賛成派は支持者に投票をボイコットするよう呼びかけていました。
現地では賛成派が住民投票で敗北した場合、暴動を起こすのではないかという不安が高まり、フランス政府は本国から警察や軍を派遣し、警備を強化しています。
投票日前日の11日、最大都市ヌーメアの政府の庁舎や市場の周辺では警察官らが巡回し、警戒に当たっていました。
ニューカレドニア日本人会の理事で、30年近く現地で暮らす高橋リサさんはNHKの取材に対して「前回や前々回の住民投票と比べると街の中は本当に静かで、逆に怖いくらいだ。投票の翌日以降、暴動が起きないか心配している」と話していました。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20211212/k10013385611000.html

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フランス領ニューカレドニア、三たび独立否決

2021-12-13 | 先住民族関連
日本経済新聞 2021年12月12日 20:36 (2021年12月12日 22:08更新)

【シドニー=松本史、パリ=白石透冴】南太平洋の仏領ニューカレドニアで12日、フランスからの独立の是非を問う住民投票があった。暫定結果では反対票が96.5%となり、2018年、20年に続き独立は三たび否決された。投票の延期を求めた先住民ら独立派の多くが投票をボイコットし、賛成票はわずか3.5%だった。
投票率は43.9%で、20年(85.7%)から40ポイント以上下落した。今後、独立賛成派の先住民らが結果を受け入れず、混乱が起きる可能性もある。フランスのマクロン大統領は12日演説し「棄権者が多数いたが、ニューカレドニア住民は独立を否決した。フランスの一部であり続けることが決まった」と強調した。
ニューカレドニアはオーストラリアに近い群島で、人口は約27万人。19世紀にフランスに併合され1946年に海外領土となった。仏軍が駐留し、電気自動車(EV)のリチウムイオン電池に使われるニッケルの世界有数の生産地でもある。
住民はカナクら先住民が41%、欧州系が24%など。カナクを中心に60年代から独立を求める運動が拡大した。欧州系住民の多くはフランスへの残留を希望する。
今回の住民投票は98年に独立賛成派、反対派、仏政府の3者でまとめた「ヌメア協定」に基づくものだ。合計3回まで住民投票の実施が可能で、今回が最後となる3回目だ。独立賛成票は1回目(2018年)が43.3%、2回目(20年)が46.7%と伸び、3回目は賛成票と反対票が拮抗すると予想された。
ただ、21年9月から新型コロナウイルスの影響で外出規制が導入された。同月からの犠牲者数は280人に上る。独立派は死者の弔いや外出規制により十分な活動ができなかったとして仏政府に投票の延期を求めた。
10月には独立派をまとめるカナク社会主義民族解放戦線(FLNKS)が「12月12日に行われる住民投票には参加しないよう呼びかける」との声明を出し、延期しなければボイコットも辞さない姿勢を示した。しかし仏政府は12日の投票を堅持し、多くの独立派が不参加の結果となった。
独立は否決されたが、今後の混乱を懸念する声も出る。ニュージーランド(NZ)メディアは、独立派の幹部らが12日の投票への反対を国連に訴えるためニューヨークに出向いたと報じた。投票結果を巡る混乱が生じれば、22年4月の仏大統領選で対立候補らにマクロン氏への批判材料を与えることになる。
南太平洋では中国がインフラ支援を通じて存在感を強めており、ニューカレドニアが独立すれば中国が影響力を及ぼすとの指摘が出ていた。仏軍事学校戦略研究所(IRSEM)は10月に発表した報告書で、米国やその同盟国の太平洋における影響力をそぐために、中国がニューカレドニアで独立運動を支援しているとの見方を示唆した。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM100I20Q1A211C2000000/

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ニューカレドニア独立問う 住民投票、否決なら混乱も

2021-12-13 | 先住民族関連
日本経済新聞 2021/12/12 09:04
南太平洋のフランス特別自治体ニューカレドニアで12日、フランスからの独立の是非を問う3回目の住民投票が行われた。過去2回の投票はいずれも否決。今回、新型コロナウイルスの影響から独立派はフランス政府に投票延期を求めたが認められなかったため、独立を支持する先住民に投票に参加しないよう呼び掛けている。
12日夜(日本時間同)に大勢が判明する見通し。否決された場合、独立派が結果の受け入れを拒み、混乱が起きる可能性がある。
今年9月以降、新型コロナの感染で計約280人が死亡。大半が先住民カナクとされる。独立運動を主導する「カナク社会主義民族解放戦線」は、「服喪期間が終わっていない」と主張し、投票参加を拒否した。
独立派と反対派、フランス政府が1998年に結んだ「ヌメア協定」は計3回の投票を規定している。
https://www.sankei.com/article/20211212-TUODLNCP5NL6TCQYLGWEXPM64A/

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《失言大賞2021》芸能界・政界・五輪、今年も乱発!大炎上を招いた「やらかし発言」

2021-12-13 | アイヌ民族関連
週刊女性PRIME 12/12(日) 21:01配信

 2021年も残りあとわずか。今年も芸能人、文化人、政治家による失言が後を絶たない1年だった。そこで週刊女性では、失言を“芸能界”“政界”“五輪”“企業・その他”の4つの部門で、勝手に今年を彩った失言を振り返る。
 識者に、『炎上するバカさせるバカ』を上梓したネットニュース編集者の中川淳一郎氏、コラムニストの吉田潮氏を招き、失言の傾向や対策をあれこれ考察! 失言をした人にとっては振り返ってほしくないだろう余計なお世話な本企画。今年は、どんな失言があった!?
失言を超えた“問題発言”で大炎上の芸能界
【芸能界部門】<大賞> 藤井フミヤ
「それはもう、ネットでほとんど見てます」
<次点>
徳光和夫
「(明石家さんまなら)AKBのひとりやふたりは妊娠させられる」
有村昆
「僕が彼女を傷つけてしまったことに変わりはない。(中略)ということで、切腹(離婚)を申し入れたと。(中略)これは武士の世の話ですけど」
メンタリストDaiGo
「ホームレスの命はどうでもいい」
 このように、数多くの失言が飛び出した芸能界。だが、失言の枠を大きく超えてしまい、エントリーを見送ったものがある。識者2人も問題視する、『スッキリ』でアイヌの女性を取り上げたドキュメンタリー作品を紹介した際の脳みそ夫の発言だ。
 問題となったセリフはディレクターが考案し、脳みそ夫は懸念を示していたとも言われるだけにまったくスッキリしない幕引きに。
 この発言と同系列に並べられるのが、ひろゆきが発した「(『雨上がり決死隊』の)蛍原さんは精神的な何かの病気なんですよ(笑)」という失言。これは『雨上がり決死隊』の解散報告会見を受けての言葉だった。
 このとき、ひろゆきは「蛍原さんは実力がない」とまで言い切った。のちに“酔っ払っていた”と言い訳をしたが、ネット上で大炎上に──。
「ひろゆきさんやDaiGoさんの発言もそうですが、差別的な発言は決まって炎上する。ただ、DaiGoさんは騒動後、ホームレス支援団体に寄付をするなどして鎮静化に奔走した。
 脳みそ夫さんもドキュメンタリー作品の出演者に会って謝罪もしたそうですが、そういったことが世間に伝わりきれていないことがもったいないですね」(中川さん)
 吉田さんも、「こういった発言にGOサインを出すテレビ局のモラルを疑う。失言というよりモラルの欠如」とピシャリ。
「地上波である『あさイチ』出演時の藤井フミヤの(『あさイチ』を)“ネットでほとんど見てます”が、本来の失言です(笑)。どこか笑える要素がありますよね。なので、これが大賞かな。
 ほかはあまりに笑えないものばかり。有村昆に関しては、なんで不倫騒動で醜態をさらしたあなたが武士を気取っているのか意味不明。
 武士などという言葉を使った、上っ面の誠意の見せ方はデメリットしかないことを示した好例ではないか。謝罪理由の不倫はもちろん問題ですが、言葉に詰まる東出昌大のような謝罪のほうがよっぽど好感が持てます」(吉田さん)
抜群の安定感!? 政治家のやらかし
【政界部門】<大賞> 木下富美子
「仕事したいのにできない理不尽あった」
<次点>
麻生太郎
「北海道のお米は温暖化でおいしくなった」
小泉進次郎
「プラスチックの原料って石油なんですよね。意外にこれ知られてない」
静岡県 川勝平太知事
「(御殿場市について)コシヒカリしかない」
 失言の宝庫ともいえる政治家たち。とりわけ麻生太郎には安定感すら感じるほど……。
「政治家の失言は、会合や講演会などから漏れたものが多い。つまり、周りに支持者やイエスマンしかいない状況で発言しているわけで、失言ではなく、本音、本質なんですよ。そういう発言をしても“先生”と呼ばれている環境がいちばん恐ろしい」(吉田さん)
 また、芸能人のように世の中の動向に応じてアップデートをしていない点も、政治家から失言や暴言がなくならない一因とも。
「石田純一の“不倫は文化”や、田原俊彦の“僕くらいビッグになると”などの失言のように、芸能人はそのまま仕事の減少に直結する。そのため、どういった発言が災上するのか、常に気を配っているところがありますよね。一方、政治家は失言したところで仕事を失うわけではない」
 そう吉田さんが指摘するように、離党はしても議員を辞するケースはほとんど見られない。その最たる例が、東京都議選の期間中、無免許運転でひき逃げした疑いで書類送検された木下富美子元都議だろう。最終的には、辞意を示したが、最後まで議員という立場にしがみついた。
 中川さんは、「久々に現れたお騒がせ政治家。令和の野々村竜太郎ですよ」と、かつて世間を騒がせた号泣県議の姿を重ねる。号泣しながら意味不明のコメントをし続けた野々村氏同様、木下富美子も往生際が悪かった。
「木下さんは、“食べ物が口を通らないことも”と話していたけど、まったくやつれているようには見えなかったですよね。また、“(議員活動を)ぜひ続けてほしいとの声があるのも事実”と自ら語るなど、ツッコミどころが満載すぎた(笑)。
 野々村竜太郎が登場した2014年は、小保方晴子、佐村河内守といった名物素人が立て続けに出現した奇跡の1年でしたが、その時代を彷彿とさせる珍キャラクターでした」(中川さん)
 無免許運転&ひき逃げは許されることではないが、確かに強烈なインパクトを残したという意味では、今年を象徴する人物のひとりかも。
 また、環境大臣に任命されて以降、独特な言い回しが仇となり、メッキをはがし続ける小泉進次郎も、今年を彩ったひとりだ。
「薄口政治家。人の心をつかむのは上手かもしれないけど、大臣になったことで、いろいろと足りないことが露呈してしまった。ただ、彼は人を傷つけるような発言をしているわけではないですからね。いろいろと足りないだけ」(吉田さん)
「日本の温室効果ガスの削減目標について“おぼろげながら浮かんできたんです、46という数字が”も、言わなきゃよかった失言でしょう。
 インターネット上で、立派にいじられるポジションを確立した1年」(中川さん)
世紀の祭典も“余計な言葉”だらけ
【五輪部門】<大賞> 張本勲
「嫁入り前のお嬢ちゃんが顔を殴り合ってね。こんな競技好きな人がいるんだ」
<次点>
森喜朗
「女性がたくさん入っている理事会は時間がかかります」
トーマス・バッハ IOC会長
「目指すのは万人が安全な大会。万人とはアスリートであり、各国選手団であり、チャイニーズピープル」
河村たかし
「歯が食い込むようなかみ方はしていない。跡はついとらんと思う」
 メダルラッシュに沸いたオリンピック・パラリンピック。失言の数も負けていない。
 なんといっても、これまで「神の国」「必ず転ぶ」といった数々の失言を繰り返してきた森喜朗の盤石さが目立つ。「有名人は田んぼを走ったらいいんじゃないか」という失言もあった。
「森喜朗、河村たかし、張本勲……彼らは根底に女性は見下すものという価値観がある。女は、“結婚しろ”“子どもを産め”“歯向かうな”といった本音が私には透けて見えます。
 俺ファーストであり男ファーストなんですよ。そういう人たちが領袖であったり、ご意見番として重宝されていることにめまいがします(苦笑)」(吉田さん)
 そのうえで、中川さんは「張本勲が謝罪をするまでに至ったのは大きな変化」と語る。
「張本さんは、以前にもカーリングのVTR後に、“この子たちは掃除好きでいい奥さんになるよ~”といった趣旨のトンデモ発言をしているのですが、そのときは騒動にはなっていない。今回の発言も彼からすれば通常運転なんだけど、世間は許容しないことが示された。
 謝罪といっても隣の唐橋ユミさんが謝って、本人は“気をつけます”しか言ってないものの、ついに張本さんの発言も許されなくなってきたかという印象」(中川さん)
 少し前なら笑ってごまかせたかもしれないが、森喜朗は辞任、河村たかしは袋叩きに──。
「謝罪文が殴り書きだったように、河村たかしは何が悪いのか理解できていないんでしょう。そもそも、後藤希友選手に対して、挨拶で“恋愛してるか?”“(身体が)大きいな”なんて平気で言ってしまうほど、デリカシーが低レベルなんです」(吉田さん)
 女性蔑視的な失言が多かったことを考えると、世間の反応がわからないオジサンたちの失言からの災上は来年以降、もっと増えそう!? 彼らと比べれば、日本人をチャイニーズピープルと言い間違えたバッハ会長は可愛いものかもしれない。
「流行語大賞候補に、バッハ会長を揶揄する“ぼったくり男爵”がノミネートされたように、みんなどこかで苦々しく思っていたのでしょう(笑)。彼に対する日本人の底意地の悪い部分が“ぼったくり男爵”ノミネートという事実に見事に集約されている」(吉田さん)
コロナで増えた?“トップの失言”
【企業・その他部門】<大賞>  サントリー 新浪剛史社長
「45歳定年制を敷いて会社に頼らない姿勢が必要だ」
<次点>
タマホーム 玉木伸弥社長
「ワクチン接種をしたら5年後に死ぬ」
八代英輝弁護士
「共産党は暴力的な革命を廃止していない」
高橋洋一
「日本の新型コロナウイルス感染状況は先進国に比べて“さざ波”」
 今年は、「企業のトップによる失言が多かったイメージがある」とは吉田さん。サントリー、タマホームのほかに、KADOKAWA代表取締役である夏野剛さんが、子どもの運動会や発表会などが無観客で行われていることに対し、「くそなピアノの発表会なんてどうでもいい、オリンピックに比べれば」と発言し炎上したことも記憶に新しい。
「サントリーの46歳以上の社員のモチベーションが心配になる(苦笑)。若手は将来、リストラされるかもしれない恐怖を感じたでしょうし、まさに失言ですよね」(吉田さん)
 また、タマホームは「接種したら無期限の自宅待機」とも発言し、株価が暴落した。こうしたコロナ関連の失言が目立ったのも、今年の特徴だろう。
「データを見るにさざ波だったのは事実なのに、高橋洋一さんは内閣官房参与を辞任した。コロナを過度に恐れる人たちによって辞めさせられたといっても過言ではない。
 また、『サンデーモーニング』で、第5波で急激に陽性者が減ったことを受け、関口宏が“これでいいんですかね……”とこぼしていた。減ってんだからいいに決まっているだろと(笑)。コロナに紐づく形でSNSを中心にトンデモ発言が多かったことも特徴」(中川さん)
 また中川さんは、今年は過去の失言が発掘されるケースが顕著だったとも付言する。
「最たる例は、小山田圭吾や小林賢太郎。彼らは過去の問題発言が引き金となり、オリンピック関連の仕事から辞任した。
 障害者に対するイジメの事実は言語道断ですが、何十年も前の発言をまるで遺跡発掘のように探し出し、引責を要求するのは、さすがにやりすぎではないか」
 前出のDaiGoも過去には、「差別発言ってね、頭が悪い証拠なんですよ。IQが低い人ほど差別的な発言をする」という発言をしていた。それを発掘した人たちからは、今回の失言に対して「特大ブーメラン」と揶揄する言葉が。差別主義者をディスっていた過去の言葉で、自らが斬られてしまう結果になった。彼の場合は自業自得だが、
「発掘された失言が、突然、ブーメランのように戻ってくる。こうした背景には、テレビやラジオの発言を切り取るだけで取材をしない“こたつ記事”が氾濫し、質の悪いニュースでもPVを稼げることが大きい。
 有名人の失言がコンテンツとして消費されることがわかったため、過去の発言でさえ商品化してしまう」(中川さん)
 吉田さんは、「区別が必要」と話す。
「差別的、侮蔑的発言は、失言とは違いますよね。そういった発言にはきちんとノーを突きつけないといけない。そして、失言の中には“うっかり”ではなく、その人の本音もある。
 有名人が失言をしたときに、受け取るわれわれが本当にそれが失言なのかを区別しなきゃいけない。過去の失言なんて、人間だったら誰だってあるはず。それを今の時代に失言と受け取っていいのか?」(吉田さん) 
 出てこないことが望ましいが、人間の“性”なのか、なくなることのない失言。どうせ出てきてしまうのなら、笑い飛ばせる失言で来年は楽しませてほしい!
中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう)●博報堂を退社後『TV Bros.』編集者を経て、2006年からネットニュース編集者に。近著に『炎上するバカさせるバカ』(小学館)がある。
吉田潮(よしだ・うしお)●コラムニスト。医療、健康、下ネタ、テレビ、社会全般など幅広く執筆し、『週刊フジテレビ批評』のコメンテーターも務める。著書に『親の介護をしないとダメですか?』などがある。
<取材・文/我妻アヅ子>
https://news.yahoo.co.jp/articles/3957ebf92f6287bbd4d5ac49f11896513c8e471a

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