先住民族関連ニュース

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先住権確認訴訟 アイヌの男性“川でのサケ漁は普遍的な権利”

2023-10-20 | アイヌ民族関連

NHK10月19日 18時20分

十勝の浦幌町のアイヌ団体が地元の川でサケを取ることは先住民の権利、先住権によって認められるとして法律などで規制されないことの確認を求めている裁判が19日開かれ、アイヌの男性が「アイヌにとってサケは米と同じで、サケ漁は普遍的な権利であるべきだ」などと証言しました。
漁業権を持たずに川でサケ漁を行うことは水産資源保護法などで原則、禁じられていますが、浦幌町のアイヌ団体「ラポロアイヌネイション」は国や道に対し、先住民の権利、先住権として、浦幌十勝川の河口から4キロの間では法律などで規制されないことの確認を求めています。
これまでの裁判で被告の国と道は「原告が求める漁業権には法的な根拠がない」として、訴えを退けるよう求めています。
19日札幌地方裁判所で開かれた裁判では、平取町二風谷にあるアイヌ資料館の館長でアイヌの萱野志朗さんへの尋問が行われ、「アイヌにとってサケは米と同じで、サケをとることは普遍的な権利であるべきだ。明治時代になって一方的に禁止され、先祖は理不尽に感じていたと思う」などと証言しました。

https://www3.nhk.or.jp/sapporo-news/20231019/7000061795.html


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シロフクロウの愛称募集 おびひろ動物園

2023-10-20 | アイヌ民族関連

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北海道新聞2023年10月19日 22:07

 おびひろ動物園は、今年6月にふ化したシロフクロウ幼鳥3羽の愛称を決める投票を受け付けている。「白いもの」「宝石」「アイヌ語」をモチーフにした名前の候補一覧が園内コンドル舎横に掲示されており、その場で専用の用紙にシールを貼って投票できる。

 「白いもの」はマシュマロのマシュ、ヨーグルトのグルト、ライチ、「宝石」はムーン、ロック、クリスタル、「アイヌ語」はコンル(氷)、シト(団子)、ワッカ(水)の3種類。それぞれで投票が最も多い名前を3羽につける。

 投票は29日までで、・・・・

https://www.hokkaido-np.co.jp/article/927912/


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「イタ」普及に貢献 アイヌ伝統工芸家 二風谷の高野さん大臣表彰

2023-10-20 | アイヌ民族関連

会員限定記事

北海道新聞2023年10月19日 18:55(10月19日 18:57更新)

伝統的工芸品の二風谷イタを長年制作し、経済産業大臣表彰を受けた高野繁広さん

 【平取】町二風谷のアイヌ伝統工芸家の高野繁広さん(73)が、経済産業省が指定する伝統的工芸品「二風谷イタ(木の盆)」の普及に貢献したとして、本年度の経済産業大臣表彰(功労賞)を受けた。40年以上、アイヌ工芸品の魅力を発信し、後継者育成でも評価された。高野さんは「工芸品の作り手として認められたことで、若い工芸家の励みになればうれしい」と喜ぶ。

 伝統的工芸品に携わる人の意欲向上や工芸品の振興を目的とした同分野の功労賞は2020年度に、町二風谷のアイヌ工芸家で二風谷民芸組合の貝沢守代表理事(58)が、道内で初めて選ばれた。同じ二風谷でアイヌ工芸に携わる高野さんは、これに続く快挙となった。本年度の功労賞は全国から高野さん含め41人が選ばれた。

 二風谷イタは主にカツラやクルミを使った円形や四角い木製の盆で、食べ物を盛る道具。盆の内側にはアイヌ文様がデザインされ、高野さんは渦巻き状の「モレウノカ」やとげの形の「アイウシノカ」などの伝統文様を精巧に彫り込む。魚のうろこを模した「ウロコ彫り」の緻密なデザインは評価が高い。

 高野さんは東京都日野市出身。高校卒業後に実家の電器店を4年間手伝い、22歳で、「東京から離れた空気の澄む地域で暮らそう」と所持金3万円で北海道に渡った。ある日ヒッチハイクの運転手の勧めで平取町二風谷を訪問。マキリ(小刀)に心を奪われた。

 物づくりが好きで伝統工芸の職人になるのが夢だった高野さん。二風谷でアイヌ民族の木彫家で、貝沢さんの父の故守幸さんに頼み込み弟子となった。7年間修業し、守幸さんら先輩の作業を近くで見て技を覚え、資料館の展示品を見よう見まねで再現し夢中で腕を磨いた。

 同郷の啓子さん(70)と結婚し、1980年に民芸店「高野民芸」を二風谷に開いた。夫婦でイタやマタンプシ(鉢巻き)などのアイヌ工芸品を販売している。

・・・・・・・・・・

(杉崎萌)

※「アイウシノカ」と「マタンプシ」のシは小さい字

https://www.hokkaido-np.co.jp/article/927718/


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杉田水脈氏「コメントない」 再び「人権侵犯」 政府触れず語らず

2023-10-20 | アイヌ民族関連

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北海道新聞2023年10月19日 17:56(10月19日 23:52更新)

 自民党の杉田水脈衆院議員(比例中国ブロック)は19日、自身のブログなどにアイヌ民族らへの差別的な投稿をしたとして大阪法務局から「人権侵犯」の認定を受けたことについて、記者団に「コメントすることは何もないと何度も申し上げている。既に削除し謝罪しているので、それに対するコメントは何もない」と述べた。札幌法務局に続く認定となったが、政府・自民党は静観を続けている。

・・・・・

 松野博一官房長官は19日の記者会見で、一般論として「特定の民族や国籍の人々を排斥する趣旨の言動は許されない」と述べたものの、杉田氏が議員辞職など責任を取る必要があるかを問われ「個々の議員の活動について、政府の立場で申し上げるのは差し控える」と言及を避けた。杉田氏が所属する自民党安倍派の塩谷立座長も同日、党本部で記者団に「重く受け止め今後の政治活動に励んでもらいたい」と述べ、辞職は必要ないとの認識を示した。

 杉田氏を次期衆院選で公認するかについては、茂木敏充幹事長も「資質などを踏まえる」と述べるにとどめており、及び腰の姿勢が目立つ。立憲民主党の長妻昭政調会長は19日の会見で「(自民総裁の)岸田文雄首相がけじめをつけないといけない」と述べ、臨時国会で追及する考えを示した。(小林史明、敦沢政俊)

https://www.hokkaido-np.co.jp/article/927647/


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杉田氏の投稿、静観と批判 立民「自民はけじめを」

2023-10-20 | アイヌ民族関連

有料記事

北海道新聞2023年10月19日 13:06

 立憲民主党の長妻昭政調会長は19日の記者会見で、自民党の杉田水脈衆院議員がフェイスブックなどへの投稿を巡り、札幌、大阪両法務局に人権侵犯と認定されたことを自民が静観していると批判した。「これでいいのか。自民はけじめをつける必要がある」と述べた。

 認定後に杉田氏が記者会見で説明せず、自民も処分していないと指摘。20日召集の臨時国会で追及する考えを示した。

 松野博一官房長官は会見で、一般論と断った上で「特定の民族や国籍の人々を排斥する趣旨の不当な差別的言動は、いかなる社会においても許されない」と語った。

 ・・・・・

https://www.hokkaido-np.co.jp/article/927499/


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杉田水脈議員「アイヌ民族衣装のコスプレおばさん」などの投稿、大阪法務局も「人権侵犯」と認定

2023-10-20 | アイヌ民族関連

読売新聞2023/10/19 18:07

 衆院議員が在日コリアン女性らへの差別的な投稿をしたとして、大阪法務局が「人権侵犯があった」と認定していたことが、関係者への取材でわかった。

杉田水脈衆院議員

 対象は、杉田氏が2016年にブログやフェイスブックに投稿した書き込み。参加した国連の会議に関して、「チマチョゴリやアイヌの民族衣装のコスプレおばさんまで登場。完全に品格に問題があります」などと写真付きで投稿した。

 関係者によると、会議に参加した大阪府の在日コリアン女性らが今年2月に同法務局に被害を申し立て、同法務局の担当者らが今月18日に認定内容を説明した。同法務局は杉田氏に対し、人権尊重の理解を深めるよう「啓発」を行ったという。

 杉田氏の投稿を巡っては、札幌法務局も9月、アイヌ民族への人権侵犯があったと認定し、杉田氏に啓発を行っている。

 杉田氏は事務所を通じ、「一部認定された部分については、既に昨年削除して謝罪している」とコメントした。

https://www.yomiuri.co.jp/national/20231019-OYT1T50166/


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「韓服女性嘲弄」日本議員の懲戒に…徐坰徳教授「基本的な品格守るべき」

2023-10-20 | アイヌ民族関連

 中央日報2023.10.19 10:53

誠信女子大の徐坰徳(ソ・ギョンドク)教授が、日本国会議員が韓服姿の女性を嘲弄するようなコメントを載せて懲戒を受けた事件に言及しながら「基本的な品格を守るよう願う」と指摘した。

徐教授は自身のインスタグラムで「他国の代表的な伝統衣装に対する基本的な礼儀がない発言であることを認め、心から謝罪しなければいけない」と促した。

徐教授は「共同通信によると、自民党の杉田水脈衆院議員は2016年にSNSに『チマチョゴリやアイヌの民族衣装のコスプレおばさんまで登場』『完全に品格に問題がある』などと投稿した」と伝えた。

続いて「杉田議員は2016年に国連女性差別撤廃委員会に出席した際、チマチョゴリを着た在日韓国人女性と北海道原住民アイヌ族の衣装を着用した女性を見て、このように書いた」とし「特に『 同じ空気を吸っているだけでも気分が悪くなる』とコメントし、論議を呼んだ」と説明した。

徐教授は「当時会議に出席した大阪府の在日韓国人女性が2月に大阪法務局に人権救済を申請し、今回、人権侵害決定を受けた」とし「9月には札幌法務局が杉田議員に対し『人権侵害』と認定し、『アイヌ文化を学び、発言に注意すること』と伝えた」と紹介した。

https://japanese.joins.com/JArticle/310352


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南アフリカ先住民のスピリチュアリティを讃える写真集 3年間の記録

2023-10-20 | 先住民族関連

ボイスジャパン2023.10.19 Thu. - 12:59 JST

さまざまな文化、言語、宗教が存在する多民族国家、南アフリカ共和国。人口の8割以上を黒人と先住民族が占めるが、16世紀以降、わずか8%ヨーロッパからの入植者の子孫が領土を占領してきた。

総人口のほんの一部に過ぎないにもかかわらず、ヨーロッパ人は南アフリカの文化と歴史に多大な影響をもたらした。数十年におよぶ土地の収奪、人口移動、構造化された白人至上主義、ヨーロッパの言語と宗教の強要によって、地元のコミュニティはアイデンティティを維持し、白人のルールのもとで生き残るべく奮闘してきた。

このような複数の信条を強要された生活が、ギヤ・マコンド=ウィルズ(Giya Makondo-Wills)の写真集『They Came From The Water While The World Watched』にありありと写し出されている。英国と南アフリカの両方にルーツを持つマコンド=ウィルズは、家族の出身地であり現在の生活拠点でもある北部のリンポポで、このテーマを掘り下げることにした。リンポポは500万人を超える住民が英語、セペディ語、ツォンガ語、ベンダ語、アフリカーンス語、ツワナ語、北ンデベレ語と南ンデベレ語、ソト語、ズールー語を話す、南アフリカの多様性を象徴するような州だ。

現在オランダで暮らしているマコンド=ウィルズは、「19世紀の植民地化や宣教師の活動に関連するこれらの地域の歴史だけでなく、21世紀の彼らの体験や先住民の習慣のレジリエンスを学ぶため」にこのプロジェクトに取り組んだという。今回のプロジェクトとそこから学んだことについて、彼女に話を聞いた。

VICE:なぜ今回のプロジェクトで南アフリカの霊的な信仰を調べようと思ったのでしょうか?

ギヤ・マコンド=ウィルズ:アイデアが生まれたのは、祖母が家を出る前にお祈りしているのを見たときです。祖母はひとりの神様ではなくすべての神様、彼女いわく「先祖」に祈っていたそうです。

このような複数の信仰対象から、南アフリカにキリスト教と先祖から伝わる信仰が共存していること、そしてこの宗教的な混同の起源について考えさせられました。また、個人的にこのような作品に取り組もうと思ったのは、家族が南アフリカと英国の両方にルーツがあるからです。このふたつがわたしの原点にあり、わたしは両方の信仰に触れながら育ちました。

写真という媒体を選んだ理由は?

写真はアクセスしやすく同時に複雑で、さまざまな意味で平等な媒体です。唯一無二の方法で対話を生み出し、主流なナラティブに挑むことができます。

わたしの人生における情熱や衝動の源は、この時代の差し迫った問題に対する懸念と、それが周縁化されたコミュニティの歴史といかに関わっているのか、ということです。わたしの取り組みの中心にあるのは、西欧の視点に挑むということ。カメラはアイデンティティ、人種、植民地化、権力構造をめぐる新たなナラティブを描くという重要な役割を担っているのです。

このプロジェクトに関わる伝統について、もう少し詳しく教えてください。

南アフリカの伝統は、地域や出身部族によって大きく異なります。先住民には自分たちの先祖や一族、そして土地とのつながりを保ち続ける慣習がたくさんあります。わたしたちはその慣習のおかげでより良い自分になり、他の要素に反発するのではなく調和しながら生活する大きなシステムの一部として、自分たちの居場所を見出すことができるのです。これらの慣習はヨーロッパ中心主義にも西欧の資本主義の枠組みにも基づいていないので、世界の見方がまったく異なります。

毛皮を纏っている男性の写真は?

彼はリンポポの父が育った村に住んでいる伝統的な治療者〈サンゴマ〉です。普段からよくこの村に帰って家族と過ごしているのですが、今回のプロジェクトでも村でたくさん撮影をしました。このサンゴマは父が幼い頃のかかりつけ医でした。アパルトヘイトの影響下で、サンゴマは郊外に住む人びとが唯一医療知識を求めることができる存在でした(アパルトヘイトの政策は、主に黒人が暮らす地域から隔離されていた白人の南アフリカ人に医療資源を割くものだった)。

わたしは叔父を通じて彼に会い、一緒に写真を完成させました。彼は南アフリカを代表する伝統的な治療者のひとりです。サンゴマの学校も運営しています。この写真は彼がほとんどの儀式を行なっている彼の自宅で撮影しました。写真の衣装やポーズは彼が考えたものです。デジタルのメリットが最大限に活かされた時間でした。完成した写真をすぐ見せることができたので、両方が満足する仕上がりになるまで調整を重ねました。

では、この巨大なヘビを巻きつけている男性は?

このヘビは聖書のエデンの園や〈さおの上のヘビ〉、わたしの部族ベンダ族のパイソンダンス(ドンバ)、一部のサンゴマが使うパイソンの脂肪など、さまざまなものを表しています。

この男性に会ったのはヨハネスブルクのヘビ保護区で、ラッキーなことにその日保護区を訪れたのはわたしひとりだけでした。いろんなヘビを撮りながら保護区をまわり、最後にこのパイソンに出会いました。それで一緒にこの写真を完成させました。

写真集を見たひとの感想は? モデルになってくれたひとにも送りましたか?

この本をつくったのはパンデミックのまっただ中(撮影は2016~2019年)で、2020年に出版してから南アフリカには戻っていません。来年持っていくつもりです。プロジェクトの途中で、この本に写っているなかで連絡のついたひとのために小さなプリントを数枚持って帰りました。ようやく完成したので、早く帰って家族にも見せてあげたいです。

反応はポジティブなものばかりです。だからわたしはコラボレーションが好きです。撮られるひと全員に満足してほしいので。お人好しといわれるかもしれませんし、ドキュメンタリーフォトグラファーとしては至らない考えかもしれません。でも、ひとを撮るときに攻撃的になったりとか、生々しすぎる表現は好きではないんです。

これらの伝統は南アフリカで忘れられつつあると感じますか?

わたしは数百年続いてきた伝統はどんな形であれ、生き残り続けると信じています。個人的には、若い世代がこれらの伝統が消えないように番人になるべきだと思います。世界中の人びとに、自国の先住民族の伝統を詳しく調べてほしい。伝統は人間についてさまざまな教訓を与え、わたしたちがわたしたちである理由を教えてくれます。

https://www.fashionsnap.com/article/2023-10-19/africa-photo/


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映画にも、オセージ族連続怪死事件とは、米先住民60人超が犠牲に

2023-10-20 | 先住民族関連

ナショナルジオグラフィック2023.10.19

『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』が描く実話、FBI誕生の契機

1923年3月、オセージ族のリタ・スミスと夫のウィリアム・E・スミスは、自宅を爆破されて亡くなった。当時、60人以上のオセージ族が資産目当てに命を奪われた。(PHOTOGRAPH BY BETTMANN ARCHIVE, GETTY IMAGES)

 毒物、嫉妬、殺人、野望――。マーティン・スコセッシ監督の最新作『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』は、20世紀初頭、オクラホマで暮らすオセージ族の富を奪うため、悪に手を染める白人入植者たちの姿を描いた、いかにもハリウッド映画らしいストーリーだ。この映画の原作は、2017年にベストセラーとなったデイヴィッド・グラン氏のノンフィクション小説『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン オセージ族連続怪死事件とFBIの誕生』であり、架空の物語ではない。

 連邦政府が誤った政策を導入し、先住民の土地が生む富を狙う白人入植者の欲望が火に油を注ぎ、この地域の裕福なオセージ族60人以上が命を奪われる事態となった。実際の犠牲者はもっと多いとされている。いったい何が起きたのか? なぜ全容が解明されないままなのか? そして、この事件が米国の近代的な法執行機関の誕生のきっかけとなった経緯を紹介しよう。

石油という莫大な富を手にした先住民

 1890年代にオセージ族保留地の地下から石油が発見されたために、オセージ族は巨額の富を手にした。1920年代には、現在の価値で年間約4憶ドル(約600億円)に相当する石油が人々の生活を潤し、オセージ族は世界で最も裕福な部族と称されるまでになった。

 当時の米国では、「アメリカ先住民は世間知らずで粗野な人々であり、手にした富を浪費しないよう白人が監督する必要がある」という見解が広く浸透していた。政府も、歴史的にアメリカ先住民は連邦政府の保護を必要とする依存的な部族と見なし、先住民に権限を持たせるのではなく「保護する」ための法整備が進められていた。

 しかし、こうした法律は、先住民の利益を守るどころか、先住民とその先祖伝来の土地を白人入植者たちが奪って思いのままにする手段として利用されることが多かった。

 たとえば、1887年に制定されたドーズ法(一般土地割当法)では、先住民部族が共有する土地を分割し、文化的同化に同意する先住民に与えた。しかし、この法律では割り当て後の「余った」土地を白人入植者に売却したので、先住民部族が所有する土地が大幅に減る結果となった。

 1872年にカンザス州の先祖伝来の土地から追われた際、オセージ族はオクラホマの約6000平方キロメートルの土地を連邦政府から即金で購入しており、この「割り当て」制度を免れることができた。

 オセージ族はこの土地をすべて分け合い、各人が約2.7平方キロの土地を所有した。また、オセージ族として鉱業権も保有し、部族内の人々には保留地の鉱物資源から得る利益の「均等受益権」が与えられた。この権利は相続可能だった。

 保留地の石油がもたらす利益は増え続け、オセージ族の人々はオクラホマの他の住民よりも裕福になったが、これが外部の注目を集め、さらには干渉を招いた。

「金銭管理能力がない」と一方的に後見人を付けられる

 オセージ族が新たな富を得たことで、部族の人々の金銭管理に世間の関心が高まった。お抱え運転手付きの自家用車や豪邸、ぜいたくな装いが新聞で報道されると、オセージ族はもっと賢く金銭を使うべきだ、と眉をひそめる人々も出てきた。

 オセージ族には金銭管理能力がないという抗議の声を受け、1908年、裁判官が判断した「未成年者および無能力者」の所有地の管轄権を、米連邦議会がオクラホマ州の郡遺言検認裁判所に付与した。これを受けて遺言検認裁判所は、無能力者とされた人に対して白人の後見人を指名できるようになった。この後見人は、その先住民の財務管理を監督し、彼らが所有する土地を賃貸に出したり売却したりすることも認められた。

 1921年、議会はさらに厳格な定めを設け、純血のオセージ族およびオセージ族の血を半分引いた者だけでなく、オセージ族の血を引く21歳未満の者は誰でも、自らの能力を証明するか、州裁判所が指名し財務管理を担う後見人を付けなければならないとした。責任能力がないという疑いがあるだけでも、裁判所は白人の後見人を任命した。

 後見人は、オセージ族の金銭を散財したり法外な事務手数料を請求したりすることで、四半期で1000ドルという上限を超える額をふところに入れることができた。ジャーナリストのデニス・マコーリフ氏の著書によれば、監督業務も報告義務も果たさない600人の後見人が、わずか3年の間に余剰資金から800万ドルを着服したという。

毒殺疑惑、自殺に見せかけた死、列車からの投げ落としも

 こうして財務面の悪事が行われる環境が生まれ、やがて連続怪死事件にまで発展する。1921年以降、オセージ郡では不可解な死が次々と報告されるようになった。

 1921年5月、アナ・カイル・ブラウンといとこのチャールズ・ホワイトホーンの遺体が、同じ日にオセージ郡の別の場所で発見された。2カ月後には、アナ・カイル・ブラウンの均等受益権を相続した母リジー・カイルが毒殺される。

アナ・カイル・ブラウン、享年35歳。保留地で60人以上が犠牲となった一連の怪死事件で亡くなった。(PHOTOGRAPH BY VINCE DILLION, OKLAHOMA HISTORICAL SOCIETY/GETTY IMAGES)

[画像のクリックで拡大表示]

 次いで、1923年2月にはリジーの甥が殺害された。3月10日には自宅で不審な爆発が起き、リジーの娘夫婦と使用人が死亡した。

 連続する殺人事件はオセージ郡の人々を恐怖に陥れ、「恐怖時代」として知られるようになった。一方、カイル一族の巨額の富は、一族の生存者であるモリー・カイルと夫のアーネスト・バークハートが相続した。モリーは純粋なオセージ族であり、リジー・カイルの娘としてただひとり生き残った。

 この頃に毒殺疑惑、自殺に見せかけた死、列車からの投げ落としなどの不審死を遂げたオセージ族はカイル一族だけではなく、1921年から1925年の間に少なくとも60人のオセージ族が殺されたり行方不明になったりしている。犠牲者はすべて均等受益権で富を得た人々だった。

 オセージ族評議会は、地元の有力な牧畜業者である白人、ウィリアム・K・ヘイルに疑いの目を向けていた。テキサス出身のヘイルは、オセージ族を食い物にする金融取引で知られ、郡で絶大な影響力を誇る人物だった。彼は銀行や地元の雑貨店、葬儀場を所有あるいは部分的に支配し、予備保安官でもあった。

 ヘイルの甥であるバークハートはモリー・カイルと結婚していたので、カイル家の数百万ドルの資産を受け継いだ。

 殺人事件は連続して起きていたが、地元の捜査関係者や警察の力では、この一連の事件を解決することができなかった。そこで、オセージ族評議会が事件の解決に連邦政府の支援を求めたところ、現在の米連邦捜査局(FBI)の前身である捜査局が、現地で秘密裏に捜査を開始した。

 ヘイルと殺害事件とのつながりは徐々に明らかになってきたが、殺人事件はさらに発生した。モリー・カイルが「自分は毒を盛られているかもしれない」と司祭に告白したことから、捜査官が事態を打開した。ヘイルが甥にカイルとの結婚を迫り、その後に殺人請負人を雇いカイル一族を皆殺しにするよう命じた事実が明るみに出たのだ。伯父から圧力をかけられたバークハートは、毒入りウイスキーを妻に与えていたこともわかった。

 オクラホマ州と連邦政府による数々の劇的な裁判だけでなく、証人となるべき数人が殺害されたことも、全米の注目を集めた。最終的にヘイルと共犯者2名には終身刑が言い渡された。しかし、連続怪死事件の大部分は未解決のままだ。

「私たちは過去の遺物ではありません」

 オセージ族の富の物語も、殺人犯の有罪判決で幕を降ろしたわけではない。

 1925年、オセージ族ではない者が、オセージ族やその他のアメリカ先住民の子孫が所有する均等受益権を相続することを禁じる法律を連邦議会は制定した。しかし、オセージ族の資産への政府の対応については、不満が収まらなかった。

 数十年間に及ぶ法的争いを経て、2011年、連邦政府はオセージ族に3億8000万ドルの和解金を支払い、オセージ族の資産管理を改善するさまざまな対策を行うことに同意した。

 広範囲に及ぶ捜査やおとり捜査、情報提供者の協力を駆使して複雑な刑事事件を解決しようとするFBIや近代的な警察が誕生したのは、オセージ族の事件がきっかけだった、と今日では広く考えられている。この連続怪死事件が始まったのは1世紀以上も前のことだが、今もこの事件はオセージ族の暮らしや金銭管理に傷痕を残している。

『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』について述べたオセージ族のウェブサイトの声明によれば、現在もオセージ族の均等受益権の約26%を部族以外の人が所有しており、オセージ族ではない事業体に随意に譲渡できる。そして、次のように強調している。

「『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』は遠い過去の事件を取り上げた作品ですが、私たちは過去の遺物ではありません。オセージ族は、オクラホマ州北東部の保留地で力強く生きています。私たちはたくましく、希望にあふれ、情熱に満ち、過去の物語を尊び、明日の社会を築きあげます」

文=ERIN BLAKEMORE/訳=稲永浩子

https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/23/101700530/


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10月19日 「海外旅行の日」オーストラリア ケアンズ観光局インタビュー動画『ケアンズのサステナブルな取り組み』本日より公式YouTubeにて公開

2023-10-20 | 先住民族関連

ケアンズ観光局2023年10月19日 14時00分

 ケアンズ観光局(オーストラリア クイーンズランド州ケアンズ、CEO:マーク オルセン)は、2023年10月19日(木)より、環境配慮に積極的に取り込んでいるケアンズの地元企業を紹介するインタビュー動画「ケアンズのサステナブルな取り組み」を公式YouTubeにて公開いたしました。

ケアンズ観光局 「ケアンズのサステナブルな取り組み」

公開日:2023年10月19日(木)

公式YouTube:https://www.youtube.com/watch?v=JzHEnuUHU7c

 オーストラリア ケアンズへの渡航者数は2023年8月に14,373人となっており、2019年8月の15,137人と比較すると95%まで回復しています。また、2019年8月にオーストラリアへの全渡航者数のうちケアンズへ訪れる割合が24%だったのに対し、2023年8月では33%を占めています。

 渡航制限などの緩和に伴い順調に渡航者数が回復する中、9月14日(木)に実施したプレス発表会では、「未来を育む観光のカタチ」をテーマにケアンズの現状と今後について発表しました。ケアンズ観光局管轄地域にはグレートバリアリーフと熱帯雨林の2つの世界自然遺産があり、その玄関口の街「ケアンズ」には多くの魅力があるとともに、それらを未来につなぐ責任があります。そこでグレートバリアリーフでクルーズを運航しサンゴ礁保全に関するプログラムを毎日提供している「リーフ・アンリミテッド」や、地産地消や太陽光発電にも取り組み、自然保護や食廃棄など地域への貢献も行っているホテル「クリスタルブルック コレクション」、エコ・ツーリズム・オーストラリアから地域として初の認定を受けた「ポートダグラス&デインツリー地域」など、ケアンズの地元企業が取り組む環境配慮についてインタビューにまとめました。

 「海外旅行の日」に合わせて、ケアンズへの旅行の際はもちろんのこと、世界各地への旅行の際にも少しでも環境配慮の大切さを考えるきっかけにしてみてください。いつもとは一味違った視点での発見や楽しさが増えるでしょう。

 ケアンズ観光局では、様々な取り組みについてこれからも積極的な情報発信を続けていきます。

■リーフ・アンリミテッド

スカイダイビングによる冒険のような体験や、先住民族の文化的体験、グレートバリアリーフやアウターリーフへのクルーズ船の運航など、多くのツアーを提供しているExperience Co.によるツアーのブランドで、リーフマジックには最大250名が乗船可能。2022年4月に導入されたばかりのポンツーンでは、サンゴ礁保護に関するプログラムを毎日提供するほか、先住民族ガイドによって世界最大のサンゴ礁で、世界最古の物語や習慣を伝え続けています。

■クリスタルブルック コレクション

2018年のホテル開業時よりペットボトルやアメニティボトルの使用削減に努め、ホテル内で消費される食材の8割は、車で3時間以内の場所で生産されているものを調達。ルームキーは木製、ハンガーはカーボン紙製、スマホにホテルのアプリを入れれば、そのスマホがルームキーにもなります。ゲストルームにはミネラルウオーターの入ったエコ・グラスボトルを用意し、紙の削減のため全室iPadを完備。全ホテルエコトランスファー(無料レンタル自転車)を用意しています。

■ポートダグラス・デインツリー地域

ポートダグラスとデインツリー地域は、オーストラリアで最初にエコツーリズム観光地(エコ・デスティネーション)として認定された場所です。環境に配慮したロッジから、ダイビングを楽しみつつサンゴの健康状態を記録するリーフツアーまで、地域全体でその維持に努めています。砂浜に沿って樹木が並ぶフォーマイル・ビーチと緑の回廊を守るため、気候変動に対応した都市開発を行っています。

<ケアンズ観光局 公式情報>

■ケアンズ観光局 公式 日本語ウェブサイト:https://www.tropicalnorthqueensland.org/jp/

■YouTube:https://www.youtube.com/user/CairnsGBR

■Instagram:https://www.instagram.com/cairnsjp/

■Facebook:https://www.facebook.com/CairnsJP/

■X(旧Twitter):https://twitter.com/Cairns_JP

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000018.000104755.html


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【News】ミンダナオ島北東部のスリガオ市で第39回ボノック・ボノック祭開催!

2023-10-20 | 先住民族関連

ダバウォッチ2023年10月19日 

ミンダナオ島北東部に位置するスリガオ市は、昨年12月の台風オデットの壊滅的な被害を乗り越え、無事に第39回ボノック・ボノック・マラジャウ・カラジャウ祭を開催した。

これは、9月第1週末にスポーツ・コンプレックスで行われたストリートダンスコンテストのショーでのパブロ・イブ・ドゥムラオ2世市長のスピーチの一節である。「皆さんには、毎年、ボノック・ボノック祭を祝うために参加してもらいたい。毎年参加することで、神への感謝を忘れず、一貫して表現することが大切だ」と市長は挨拶した。

ボノック・ボノック祭は、スリガオ市の守護聖人であるサン・ニコラス・デ・トレンティノを記念して毎年9月に開催される、スリガオ市最大の宗教行事である。この祭りに訪れた観光省のマイラ・パズ・バルデロサ=アブバカル次官は、このような祭りは観光客を誘致する方法の1つであり、非常に重要な意味を持つと語った。

「観光客が祭りを見に来るだけでなく、地域社会に利益をもたらすという重要な役割を果たしている。例えば、宿泊施設や事業所の支援、郷土料理や交通サービスの消費による地域経済の活性化、旅行者が祭りを体験しながら探索できる他の観光スポットの紹介などである」とバルデロサ=アブバカル次官は付け加えた。

ストリートダンスコンテストには「フェスティバル・オブ・フェスティバル」と「ボノック・ボノック・ベース」の2つの部門がある。フェスティバル・オブ・フェスティバル部門で優勝に輝いたのは、Agusan del Sur Artists Guildで、賞金100万ペソを受け取った。準優勝はアグサンデルノルテ州ナシピットからの参加者、第3位はスリガオ市国立芸術高校特別プログラムのチームで、それぞれ50万ペソと30万ペソの賞金を受け取った。

ボノック・ボノック・ベース部門では、スリガオ私立中央小学校が優勝し、賞金50万ペソを獲得した。準優勝はスリガオ市国立高校のHingas San Juan Performing Arts、第3位はカンラニパ国立高校のBagtik Sumasajaw Nan Canlanipaのチームで、それぞれ賞金35万ペソと20万ペソを獲得した。

地元の歴史専門家によると、この祭りのルーツはスリガオの先住民族であるママンワ族にあるという。「ボノック」とは「豪雨」を意味し、天からの祝福を象徴している。この言葉を繰り返すことで、絶え間なく降り注ぐ恵みの雨を表現している。

ミンダナオ島のまちにはそれぞれの象徴的なお祭りがあるが、ボノック・ボノック祭もその1つだ。ダバオでは祭りのシーズンは過ぎたが、他の地域ではまだの場所もある。フィリピンのローカルなお祭りの熱気を感じる旅行も楽しいかもしれない。

https://davawatch.com/articles/2023/10/19/74772.html


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オーシャン・オブ・ファイヤー(映画)のネタバレ解説・考察まとめ

2023-10-20 | 先住民族関連

リノート2023.10.19

『オーシャン・オブ・ファイヤー』とは2004年に公開されたアメリカ映画である。実在の騎手フランク・ホプキンスの半生を基に、アラビアの砂漠を横断するエンデュランス競技を圧倒的スケールで描き話題となった。監督はジョー・ジョンストン、主演のヴィゴ・モーテンセンが主人公フランクを演じた。凄腕の騎手フランク・ホプキンスの元に、アラブの族長シーク・リヤドが訪れ自らが主宰するレースに招待する。唯一のアメリカ人参加として多くの差別や妨害を受けながら愛馬ヒダルゴと共に灼熱の砂漠へと降り立つのだった。

『オーシャン・オブ・ファイヤー』の概要

『オーシャン・オブ・ファイヤー』とは2004年に公開されたアメリカ映画である。実在した騎手フランク・ホプキンスの半生をモデルに、灼熱の砂漠を舞台に行われる大陸横断レース「オーシャン・オブ・ファイヤー」を愛馬ヒダルゴと共に挑戦する姿が描かれている。監督は『ジュマンジ』や『ジュラシック・パークIII』を手がけたジョー・ジョンストン、主演は『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズでアラゴルン役を演じたヴィゴ・モーテンセンが主人公フランクを務めた。
過酷な環境で繰り広げられる濃厚な人間ドラマに加え、レース参加者たちに襲いかかる自然の脅威をVFXによる圧倒的スケールで表現され話題となった。世界興行収入は1億0810万ドルを記録した。
19世紀末、アメリカ西部のカウボーイ、フランク・ホプキンスの元に、アラブの族長シーク・リヤドが訪れ自らが主宰するレース「オーシャン・オブ・ファイヤー」に招待する。それは3000マイルに及ぶアラビア砂漠を横断する過酷なレースであり、1000年以上もの歴史を持つ伝統あるレースの覇者には莫大な賞金と名誉が約束される。フランクは自身の命と誇りを賭け、愛馬ヒダルゴと共に灼熱のアラビア砂漠へと赴くのだった。

『オーシャン・オブ・ファイヤー』のあらすじ・ストーリー

伝統レースへの招待

19世紀末、アメリカ西部のカウボーイ、フランク・ホプキンスはムスタング種の愛馬ヒダルゴに跨り、多くのエンデュランス競争において輝かしい成績を収めていた。その功績からアメリカ騎馬隊の伝令役を担い、ある日先住民スー族が住まうウーンデッド・ニーで宿営中のウィットサイド少佐に速達を届ける依頼を受ける。速達を目的地まで届け、そのまま帰路につくも突然ヒダルゴが踵を返したため、フランクは胸騒ぎを感じ野営地へ戻る。そこにはスー族の死体が転がる凄惨な光景が広がっていた。先程の速達はスー族の蜂起を防ぐため武装解除を執行するものであり、スー族は抵抗したことで騎兵隊に鎮圧されるという憂き目に遭ってしまったのだ。白人とスー族の混血であるフランクは、自身のルーツであるスー族の虐殺に間接的にでも関わってしまった事に深い絶望を味わうのだった。
8ヶ月後、フランクは酒に溺れバッファロー・ビル・コーディ 率いるウエスタン・ショーで各地に巡業する荒れた生活を送っていた。以前は巧みな乗馬技術とヒダルゴとの連携で多くの人を魅了していたが、今ではショーにも支障が出るほど泥酔して醜態を晒していた。そんなある日、アラブの首長シーク・リヤドと家臣のアジズ、ロー・ラスムセンがフランクの元を訪れる。リヤドはエンデュランス競争で無類の強さを誇るフランクの噂を聞きつけ、自身が主催する伝統的レース「オーシャン・オブ・ファイヤー」に是非参加して欲しいと打診する。1000年以上の歴史を持ち、3000マイルに及ぶアラブ砂漠を横断する過酷なレースであり、レース優勝者には100万ドルの賞金と地位と名誉が約束されるというのだ。しかしスー族の虐殺を目の当たりにして生きる活力を失ったフランクは、まるで関心を示さず一度その誘いを断る。ショーの仲間でスー族のイーグル・ホーンはフランクが負った心の傷を理解しながら、過去を乗り越え再起することを望みフランクに発破をかける。彼の活躍を期待する仲間たちも出場料の1000ドルをカンパして集め、フランクは皆の思いを受け止めレース参加を決意する。
「オーシャン・オブ・ファイヤー」は1000年以上の歴史と由緒ある血筋を持つアラブ馬が多数参加することから、初のアメリカ人参加であるフランクは差別的な目で見られていた。船でサウジアラビアへ向かう道中、野生馬であるヒダルゴも存外な扱いを受けレース前から波乱を予感するスタートとなった。
サウジアラビアに到着すると主催者のリヤドはフランクを歓迎し、自身のテントに招き入れる。レースにはリヤドが所有する”サバイバル・レース最高の名馬”と謳われるアル・ハタルや、ダヴェンポート少佐の妻レディー・アンが所有するカムリアなど多くの名馬が参加し、数々の思惑が飛び交う中、初のアメリカ人参加であるフランクにリヤドは健闘を祈るのだった。レース当日、ヤギの乳を盗んだ罰としてフランクに仕えるよう命令されたユーセフと雇った奴隷の少年をお供に、準備を済ませスタート地点に立ったフランクとヒダルゴ。 名馬アル・ハタルに跨るアルリー王子や、鷹を連れた手練れの騎手サクルといった顔ぶれが並び、スタートの号令と共にレース参加者は一斉に駆け出していく。フランクは過去と向き合い誇りを取り戻すため、愛馬ヒダルゴと共に灼熱の砂漠へ駆け出すのだった。

灼熱の砂漠へ

スタート地点からだいぶ離れたところで参加者は一斉に駆け出すのを止め、慎重に砂漠を歩きだす。フランクとヒダルゴもまた慌てず体力を温存させながら一歩ずつ進んでいく。レース序盤でルブ・アル・ハリ砂漠の過酷な暑さや巨大な砂嵐が牙を剥き、一人また一人と脱落者が増えていく。フランクもまた自然の脅威に晒されながらも、確実に歩を進めることで砂漠の中間にある休息ポイントに到着した。誰もがフランクは生き残れないと思っていた為、彼の健闘に驚きより一目置かれる存在となった。
1日の休みを許されたその夜、テントで疲れを癒すフランクの元に首長リヤドの娘ジャジーラが訪れる。ジャジーラはナツメヤシやラクダのバターを与え、この先の道中に現れるイナゴは災いではなく食料になるとアドバイスを送る。なぜ自身を助けるのか問うと、名馬アル・ハタルに跨るアルリー王子が優勝すると、5番目の妻として嫁ぐことになり、奴隷のような扱いを受けるという。異国から参加し逆境を乗り越えていくフランクとヒダルゴに感化され、希望を見出したというのだ。しかしジャジーラがフランクのテントに入ったところを目撃した家臣たちの密告により、テントにリヤドたちが乗り込んでくる。首長の娘に手を出したと疑われ拘束されたフランク。ジャジーラは彼に何も罪はないと必死に弁明するも、そもそも異教徒を信用しないリヤドは聞く耳を持たず、フランクの生殖器を切り取る刑に処そうとする。身動きが取れず絶体絶命のなか、突然休息ポイントに盗賊団が襲撃し、辺りは騒然となる。リヤドの甥にあたるカティブによる犯行であり、彼の目的は名馬アル・ハタリの所有権とその繁殖方法を記した秘伝の書であった。騒動の最中、家臣のアジズが現れフランクは助けを求めるも素通りしていき、何と秘伝の書を盗んでいったのだ。
一方、賊の目的がアル・ハタルと気付いたアルリー王子は、馬を連れて騒動から抜け出していく。アル・ハタルが逃げられたことを察したカティブは人質として首長の娘ジャジーラの誘拐を決行する。フランクの拘束を解きに駆けつけていたところを襲い掛かり、彼女を連れ去るとまんまと撤退していくのだった。
翌朝、カティブはリヤドに娘と引き換えにアル・ハタルを要求する。一部始終を目撃していたフランクは、リヤドに家臣アジズが秘伝の書を盗んでいったことを報告。尋問の末、アジズはカティブとグルであり、秘伝の書はすでに渡していることが発覚する。敵のアジトを聞き出し、リヤドはフランクに娘の救出を頼む。日没までに救出し、戻ってくれば昨夜の罪を不問にするというだ。フランクはジャジーラの世話係である剣士ジャファと裏切り者の家臣アジズを連れ、カティブのいるアジトへ赴くのだった。

ジャジーラの救出

形としてカティブが要求するアル・ハタルとジャジーラの引き換えに応じるため、フランク、剣士ジャファ、家臣のアジズはカティブが根城にするアジトへと向かう。当然アル・ハタルを渡す気はなく、白馬に黒の塗料を塗った偽物を用意していた。引き渡しの場へと到着し、緊迫した空気が漂うなか交換が行われる。ジャジーラがフランクたちの所へ戻り、そのまま現場を立ち去ろうとするも、馬が偽物であると見破られカティブたちは戦闘態勢に入る。ジャファが殿を務め、襲い掛かるカティブの手下たちを食い止めてフランクたちを逃がしていく。ジャジーラは盗まれた秘伝の書を取り戻すためにフランクと別行動に移り、フランクはヒダルゴを呼び寄せ、襲い掛かる敵を蹴散らしながら逃走経路を確保する。カティブの部屋に向かい、秘伝の書を取り戻すと駆けつけたヒダルゴに跨りフランクと合流。フランクたちの無事を確認したジャファも撤退して合流しようとするも、裏切り者のアジズが後ろから銃を発射し倒れてしまう。そのまま銃口がフランクたちに向けられるも、最後の力を振り絞ったジャファは剣をアジズに投げつけることで打ち倒し、自身も壮絶な最後を遂げるのだった。悲しみに暮れる間もなく、襲い掛かる敵の攻撃をくぐり抜け、間一髪のところで脱出に成功する。
敵が追いつけない距離まで走り抜け、安全を確認すると一旦簡易的なテントを張り休憩をとった。日没近くにリヤドたちがいる休息ポイントに無事戻ると、約束通り娘を救出したフランクにリヤドは感謝し、罪も不問となり周囲の差別的な目も緩和されるのだった。その夜、レディー・アンから呼び出されテントに向かったフランク。彼女からはレースを棄権してくれたら賞金の30%を支払うというのだ。レディー・アンが所有する馬カムリアがレースで優勝すれば、アル・ハタルとの種付け權利が許され、負ければ賞金の40%を出す約束となっている。フランクは取り引きをやんわりと断るが、現状ヒダルゴの疲労も溜まり、蹄も割れだした為このまま走り続ければ悪化するのは明らかであった。ここから先は尚更生命の保証がないことを痛感し、ここらで潮時かとフランクは思い悩むのであった。
翌朝となり、依然決断を渋るフランクにヒダルゴは何かを察したかのように、独りでにレースのスタートラインでフランクを待っていた。その姿を見たフランクはヒダルゴの意志を感じとり、自らも覚悟を決め完走を目指しレースに挑むのであった。
レースが再開され、レディー・アンの元にカティブが現れ報酬をよこせと要求する。一連の襲撃事件の黒幕であり、カムリアを優勝させるためにカティブを雇っていたのだ。レディー・アンは再度優勝のため、アル・ハタルと目覚ましい活躍をするフランクとヒダルゴの妨害を依頼する。多くの思惑が交差する中、レースは佳境に入っていくのだった。

レースの覇者

レースが再開され、後半の道のりは過酷を極めるものだった。灼熱の暑さに途方もなく続く地平線は、参加者を確実に狂わせ一人また一人と脱落させた。ジャジーラの救出で疲労も溜まり、多くのリスクを抱えながらもフランクとヒダルゴは一歩ずつ進む。途中イナゴの大群に遭遇するも、ジャジーラのアドバイスを思い出し食料として確保する。砂漠の洗礼をこれでもかと受けながらも、ギリギリのところで耐え確実にゴールまで距離を縮めていくのだった。道中、参加者であるサクルの馬を見つけたフランク。サクルの馬は何かを訴えるかのようにフランクを誘導し、連れてこられた先に煮えたぎる沼で横たわるサクルの姿があった。レースは負傷者、遭難者に手を差し伸べるのはルール違反であり、サクルもまたそれを理解していた為救出を拒絶する。しかしフランクはサクルの言葉を無視し、縄を括り付け沼から引き上げるのだった。レースでの生き死は信仰するアラーの意志であり、それを破り救出したフランクをサクルは責めたてる。フランクはそれに対し「お前と馬の意志はどこにあるんだ?」と問いかけ、この先どうするかは好きにしろと言い残しその場を去るのだった。
レースは佳境に入り、トップグループにはレディー・アンの所有するカムリア、アルリー王子が乗るアル・ハタル、そしてフランクとヒダルゴが競う形となった。見渡しの良い荒野に差し掛かった辺りで、カムリアに跨る騎手が合図を送ると、カティブとその一味がフランクとアルリー王子に襲い掛かる。銃で威嚇され、本来の正道から道を逸らされカティブたちが罠を仕掛けたエリアに誘導される。案の定、逃げるフランクとヒダルゴは落とし穴に落とされ、中に仕掛けてある槍にヒダルゴは足を負傷してしまう。カティブはフランクを見下ろし、あえて生かすことで野垂れ死にさせると告げる。ヒダルゴの傷は致命傷を避けていたものの、落とし穴からの脱出は至難の業であった。万事休すと思った時、レースに復帰したサクルが現れフランクとヒダルゴを救出する。アル・ハタル捕獲に向かっていたカティブはサクルの行動に気付き、豹を2頭解き放つ。穴から脱出したフランク、ヒダルゴ、そしてサクルは襲い掛かる豹を迎え討つ。カティブの手下たちも加わり、剣と銃が交差するなかフランクたちは劣勢を跳ね返し奮闘するも、カティブの凶弾によりサクルは絶命してしまう。戦いはフランクとカティブの一騎討ちとなり、苦戦を強いられるがヒダルゴとの連携により落とし穴におびき寄せ叩き落とすことにより勝利を掴む。アルリー王子とアル・ハタルも無事敵の手を逃れられ、フランクはヒダルゴに応急処置を施し先を急ぐ。危機は去ったものの、負った代償は高く、加えて過酷な環境はフランクたちを確実に蝕んでいく。衰弱したフランクはもはや自力で馬上に乗ることが出来ず、縄で自身を括り付けなければいられない程だった。そして今まで数々の苦難を乗り越えてきたヒダルゴも力尽き倒れてしまう。虫の息のヒダルゴにフランクは絶望し、銃を取りだし楽にさせてやろうと構える。しかし苦楽を共にした相棒を手にかける事は出来ず、フランクは項垂れ助けを求めるように自身のルーツであるスー族の唄を歌いはじめる。フランクの目にはかつての幼き自分と亡くなった母親の姿が映り、母親がフランクの名を呼んだ瞬間ハッと我に戻る。目の前にはアルリー王子とアル・ハタルがおり、この地平線の先に海が見えゴールは目前だと告げる。項垂れるフランクを見て、アルリー王子ははじめからお前に勝ち目はない、全ては無駄なことだったと言い放ち自身の勝利を確信する。しかし倒れていたはずのヒダルゴが立ち上がると、驚愕したアルリー王子はすぐさまアル・ハタルを走られせる。首位にはレディー・アンの馬カムリアが走り、それを追うアル・ハタル、そして鞍も全て捨てフランクだけを乗せ臨戦態勢のヒダルゴによる三つ巴となった。すぐさまカムリアを追い抜いたアル・ハタルが首位に踊りでて、ゴールまで一気に駆け抜ける。しかし脅威の追い上げでカムリアを追い抜き、負傷した馬と思えない走り込みでアル・ハタルと並ぶヒダルゴ。ゴールは目前で最後まで気力を絞りだすフランクとヒダルゴは僅かな差でアル・ハタルを追い抜き、見事1位でゴールゲートをくぐり抜けるのだった。目の前には海が広がり、奇跡の1位を遂げたフランクとヒダルゴの元に観客、関係者は駆け寄っていく。ヒダルゴの見事な走り込みにアルリー王子も脱帽し、その勝利を祝い健闘を称えた。リヤドはフランクをテントに招待し、優勝を祝福すると握手を求めた。首長は握手すると予言の力を失くすと聞いていたフランクは困惑するも、リヤドは「本当に予言の力があれば君のまだら馬に賭けていたよ」と言い、フランクは笑みを返し握手するのだった。
レースが終わり数週間後、フランクはアメリカ西部で処分されかけていたヒダルゴと同じ全てのムスタング種を優勝金で全て買い取る。広大の牧草地で解き放たれた馬達は一斉に駆け出し、その様子を見ていたヒダルゴも仲間の元へ行きたそうにしていた。フランクはその思いを汲み、鞍を外し仲間の元へ行くよう促す。ヒダルゴは感慨深い表情でフランクを見つめ、仲間たちの元へ駆け出していく。長年の相棒との別れに寂しい想いもあるが、仲間たちと共に力強く走るヒダルゴを誇らしくも思い、満たされた気持ちでフランクも帰路に着くのであった。

『オーシャン・オブ・ファイヤー』の登場人物・キャラクター

主人公

フランク・ホプキンス(演:ヴィゴ・モーテンセン)

吹き替え:山路和弘
本作の主人公。アメリカ人の父と先住民スー族の母を持つ混血でありカウボーイを生業とする。ムスタング種である愛馬ヒダルゴに跨り、巧みな騎乗技術と類稀なる経験値からエンデュランス競技で無類の強さを誇る。その実績を買われアメリカ騎馬隊の伝令役を担うも、間接的とはいえスー族虐殺に関わってしまった事で罪の意識に囚われる。首長リヤドから伝統レース『オーシャン・オブ・ファイヤー』に招待され、イーグル・ホーンたちから背中を押されたことで自身の誇りを取り戻すため再起する。相棒であるヒダルゴとは強い絆で結ばれていて、言葉なくても意思疎通が可能であり、レース内で起こる妨害や襲撃などを巧みな連携プレーで躱している。

レース関係者

シーク・リヤド(演: オマー・シャリフ)

吹き替え:滝田裕介
アラブの首長であり『オーシャン・オブ・ファイヤー』の主催者。所有する名馬アル・ハタルに絶対の自信を持っており、「最高の騎手」と言われていたフランクの噂を聞き、アル・ハタルが如何に完璧な馬かを証明するためフランクをレースに招待する。西部劇を愛好しており、フランクの出立ちや西部にまつわる話に興味津々な場面がある。6人の息子がいたが皆亡くなっており、残った一人娘のジャジーラを非常に大事にしている。

ジャジーラ(演: ズレイカ・ロビンソン)

吹き替え:目黒未奈
首長リヤドの一人娘。アル・ハタルに跨るアルリー王子が優勝したら5人目の妻として嫁ぐ約束であり、奴隷のように扱われる事を知っている為、フランクとヒダルゴに希望を託しサポートをする。自立心が高く、乗馬に関しても男性顔負けの技術を持つ。気性が荒くフランク以外には懐かないヒダルゴも騎乗を許しており、馬に関しての知見と扱いに相当長けている。

アルリー王子(演: サイード・タグマウイ)

首長リヤドの所有するアル・ハタルの騎乗を許されたレース参加者。リヤドからの信頼が厚く、優勝した暁には娘のジャジーラを5番目の妻として貰う約束となっている。アル・ハタルの有能もさることながら、本人のサバイバル能力も長けておりレースでは常に上位をキープしていた。異国からの参加であるフランクを敵視しており、序盤から妨害を仕掛けていたが次々と乗り越えていくフランクを徐々に認めていき、最終的にフランクとヒダルゴの優勝には素直に健闘を称えた。

レディー・アン・ダヴェンポート(演: ルイーズ・ロンバード)

吹き替え:坪井木の実
ダヴェンポート少佐の妻。幼少期からベドウィン族と暮らしており、優秀な血統のアラブ馬の繁殖に熱心で、手塩にかけて育てた牝馬カムリアをレースに参加させる。カムリアが優勝した暁にはアル・ハタルとの交配の権利が得られ、逆に逃せれば優勝金の40%を払う契約となっている。その為カティブなどの悪党を雇い、フランクやアルリー王子への襲撃を命令するなど冷酷な側面を持ちあわせる。

サクル(演:アドニ・マロピス)

鷹を連れたレース参加者の一人。多くの猛者が参加する中、レースでは常に上位に食い込む熟練の騎手である。異国からの唯一の参加者フランクを快く思っていなかったが、レース後半で沼地に嵌り絶命しかけた所をフランクに救われる。その後カティブたちの罠で窮地に陥ったフランクの元に駆けつけるも、その凶弾に撃たれ命を落としてしまう。

アジズ(演:アダム・アレクシ=モール)

吹き替え:天田益男
首長リヤドに仕える家臣。フランクをレースに招待する際に同行し、終始見下した態度で接していた。カティブによるアル・ハタル強奪に手を貸しており、騒動の際には優秀なアラブ馬を繁殖させる方法を示した書物を盗みカティブに渡している。全てを目撃していたフランクに告発され、ジャジーラ救出作戦に参加させられるがまたも裏切り、剣士ジャファを銃撃するも最後の力を振り絞ったジャファの一撃により絶命した。

カティブ(演: サイラス・カーソン)

吹き替え:山賀教弘
首長リヤドの甥。アル・ハタルの所有権の共有をリヤドに求めているが、毎度拒否されレディー・アンに雇われたことでレース開催中にとうとう強硬手段をとる。歯向かう者は女子供容赦無く手を下す冷酷な人物であり、ことごとく自身の計画を邪魔したフランクをレース後半で妨害するが、ヒダルゴとの連携で落とし穴に叩き落とされ命を落とす。

その他

ユーセフ(演: ハーシュ・ネイヤー)

吹き替え:益富信孝
首長リヤドに仕える山羊の番人であったが、乳を盗んだことで罰としてフランクの世話係を任される。異国からの唯一参加であるフランクを訝しむも、荷造りの準備やレースの危険エリアの説明などサポートした。当初は嫌々ながらフランクと接していたが、思いもしない健闘に少しずつ認めていき、優勝した際は手放しで喜んでいた。

ジャファ(演:ピーター・メンサー)

首長リヤドに仕える剣士。ジャジーラが幼い頃からの世話係であり彼女からの信頼が厚い。剣の腕前が高くジャジーラ救出の際は殿を務めるも、裏切った家臣アジズに銃撃され重傷を負う。ジャジーラたちがあはや撃たれそうなところを、最後の力でアジズに剣を投げ打ち倒すも自身も力尽きる。

イーグル・ホーン(演:フロイド・レッド・クロウ・ウェスターマン)

バッファロー・ビル・コーディ率いるウエスタンショーに所属するスー族の男性。衰退していくスー族やムスタング種を憂いながら、ショーでは罵倒されながらも悪役のインディアンに徹している。フランクの心の傷を理解しており、レースへの参加を渋る彼に発破を掛け再起への後押しをした。

バッファロー・ビル・コーディ(演: J・K・シモンズ)

吹き替え:菅生隆之
ウエスタンショーを取りまとめる男性。ショーにはスー族のイーグル・ホーンや自暴自棄になったフランクが所属しており、大きな差別や偏見を持たず平等に接している。

ロー・ラスムセン(演: ヴィクター・タルマッジ)

吹き替え:牛山茂
首長リヤドの家臣。フランクにレースへ招待するために訪れた際、レースの過酷さとその歴史を説明した。

ダヴェンポート少佐(演: マルコム・マクダウェル)

吹き替え:村松康雄
軍人でありレディー・アンの夫。アラブまで渡航したが陸には降りず船に残っていた。

『オーシャン・オブ・ファイヤー』の用語

オーシャン・オブ・ファイヤー

アラブで1000年以上の歴史を持つ伝統的レース。アラビアの砂漠を走破し、ペルシャ湾岸からイラクを抜ける過酷なコースであり、その距離は約4800kmで脱落することは死を意味する。扱われる馬は由緒ある血統のアラブ馬であり、アメリカ人のフランクにムスタング種のヒダルゴの参加は否定的な声が多く、レース中には嫌がらせや妨害が発生した。世界一過酷なレースと銘打たれるだけに優勝者には賞金10万ドルと名誉が保証される。

スー族

北米の先住民族。 米国北部の中西部に居住するインディアンであり、ラコタ族、ナコタ族、ダコタ族の総称。物語序盤で武装解除を実行したアメリカ騎馬隊に抵抗した為に虐殺されてしまう。フランクはスー族の母とアメリカ人の父を持つ混血であり、自身が届けた令状によって起きた惨劇に罪悪感を持つ。

登場する馬

ヒダルゴ

フランクの愛馬。まだら模様が特徴の小柄なムスタング種。気性は荒いがフランクの指示を正確に実行する聡明さを持ちあわせる。これといった調教を受けていないにも関わらず、フランクとの意思疎通は完璧で多くの危機的状況を回避してきた。

アル・ハタル

首長リヤドが所有するアラブ馬。サバイバルレースで敵なしの名馬と謳われており、その存在価値から繁殖や利権などを求める声が多い。騎乗には優秀な騎手しか許されず、レースでは終始トップをキープする実力を見せつけた。

カムリア

レディー・アンが所有する牝のアラブ馬。優勝した暁にはアル・ハタルとの交配の権利が得られ、逃せば優勝金の40%を払う約束になっている。ヒダルゴやアル・ハタルにはやや劣るものの、過酷なレースを上位で完走する確かな実力を持つ。

『オーシャン・オブ・ファイヤー』の名言・名セリフ/名シーン・名場面

過酷な環境下を伝えるレース序盤シーン

世界一過酷なレースと謳われる『オーシャン・オブ・ファイヤー』のその過酷さが分かるのがレース序盤でのシーンだ。スタート地点から休息ポイントまでの間には、灼熱の暑さに足場の悪い砂漠、巨大な砂嵐がレース参加者を襲い、休息ポイントに辿り着く頃には半分以上の脱落者が出た。砂漠の環境に慣れているアラブ馬でさえ攻略の難しいレースなだけに、異国からの参加であるフランクとヒダルゴが健闘し周りが驚く様はスカッと爽快な気分にさせてくれる。

ジャジーラ救出シーン

ティブ一味による襲撃でリヤドの娘ジャジーラが人質として連れ拐われてしまう。レースを一時中断しフランクたちはジャジーラ救出に向かう。レースの臨場感とはまた違う、救出劇という娯楽性を楽しめるシーンであり、フランクとヒダルゴの見事なコンビネーションが見所である。

フランク「お前と馬の意志はどこにあるんだ?」

レース後半、沼地に嵌った鷹使いのサクルを助けたフランク。しかしレース上のルールで手を差し伸べるのは違反であり、宗教上の理由で死は信仰神アラーの意志と捉えていた。当然サクルもアラーの意志として死を受け入れていたがフランクは逆に問いただす。それが「お前と馬の意志はどこにあるんだ?」である。互いに意思疎通が出来る程ヒダルゴとの絆の強いため、神の意志に全てを委ねるサクルが許せなかったことが伺えるセリフである。

リヤド「本当に予言の力があれば君のまだら馬に賭けていたよ」

熾烈なレースを走りきり見事優勝を果たしたフランクとヒダルゴ。首長リヤドはフランクたちの偉業を称え、預言者の言い伝えを破ってまで握手を求める。困惑するフランクに発したのが「本当に予言の力があれば君のまだら馬に賭けていたよ」である。首長は預言者の力を持つと言われ、握手をするのは予言の力を失うと云われていた。その言い伝えを破る程フランクとヒダルゴの健闘ぶりは感動を与え、宗教や人種を越えたことを実感するセリフである。

『オーシャン・オブ・ファイヤー』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話

ムスタング種の保護活動に貢献したフランク・ホプキンス

本作に登場するフランク・ホプキンスは実在の騎手であり、諸説はあるが400を越えるエンデュランス競争に参加し輝かしい成績を収めている。騎手としての傍、愛馬であるヒダルゴと同様雑種で気性の荒いムスタング種は銃殺の対象になりやすいため、ムスタング種の保護活動に人生を捧げその功績を讃えられた。ヒダルゴも実在しており、その子孫はオクラホマの野生馬保護区を自由に駆けている。

共演した馬を購入したヴィゴ・モーテンセン

本作でヒダルゴを演じたのは5頭のアメリカンペイントホースであり、主人公フランク・ホプキンスを演じたヴィゴ・モーテンセンはその内の1頭を購入した。馬好きであるヴィゴ・モーテンセンは『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズでも共演した馬を買い取っており、それぞれホースショーが行われる牧場でのんびり暮らしているという。

映画を彩るサウンドトラック

1.MAIN TITLE
2.DON'T WASTE OUR MONEY
3.ARRIVING IN THE DESERT
4.MORNING OF THE RACE
5.THE RACE BEGINS
6.THE SECOND HALF
7.SANDSTORM
8.FRANK PUSHES ON
9.KATIB
10.MONTAGE
11.THE TRAP
12.THE LAST PUSH
13.THE FINAL THREE
14.LET 'ER BUCK
作曲、指揮は『ベスト・フレンズ・ウエディング』他を手掛けたジェームス・ニュートン・ハワードが担当。雄大な大自然を彷彿させるダイナミックかつ琴線に触れる旋律が特徴である。

https://renote.net/articles/326098


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書評】『アイヌ神謡集』における表記の変更は在野研究者へのアカデミズムの傲慢か

2023-10-20 | アイヌ民族関連

週刊ポスト10/19(木) 16:15配信

『知里幸惠 アイヌ神謡集』/中川裕・補訂

【書評】『知里幸惠 アイヌ神謡集』/中川裕・補訂/岩波文庫/792円

【評者】大塚英志(まんが原作者)

 本書は、岩波文庫の旧版・知里幸惠編訳『アイヌ神謡集』でなく中川裕補訂『知里幸惠 アイヌ神謡集』として「新刊」として同じ岩波文庫から刊行された。

 底本である『アイヌ神謡集』は大正十二年、柳田國男が刊行主旨を書いた民俗誌のシリーズ「炉辺叢習」の一冊として刊行され、そちらは表紙には「知里幸惠編」、奥付には「著作者 知里幸惠」と記されている。

 つまり底本及び旧版で「編」「著」「訳」として表記されていた知里幸惠の名が書名に組み込まれ、替わりに表紙・奥付に彼女の名のあった欄には「補訂」として中川裕の名のみが表記されるに至った。これについては刊行直後からいくつか疑問がオンライン上で指摘されている。そのいきさつは同書でこう説明される。

 まず、編集部から口承文芸を文字文芸と同じ「著」で表せるのかと疑義が出て、補訂者の中川もそれに同意した。結果、岩波文庫『ホメロスイリアス』の表記に倣い「文学的な意味での著作者・作者でなく、偉大なる伝承者として後世に残したパフォーマンスを行った人物」として知里幸惠の名は書名に含め、「編」「訳」「著」等の表記はせず、結果として中川裕の名が替わって表紙・奥付に唯一、表記されることになった。

 一見、知里幸惠の仕事を古代の吟遊詩人に比し、あたかも世界文学として持ち上げているようにも見える。しかし本書の「解説」にもあるように、知里幸惠はカムイユカラの語り部であった祖母らからの自然な伝承者ではなく、金田一京助に触発されその価値を知り、記録・文字化や日本語訳を行い草稿の推敲作業を終え、急逝した。

 このような研究者としての営みを表記から消し、存在さえ定かでない古代の吟遊詩人に比するのは研究者としての彼女の否定にしか思えない。それが在野研究者への今更のアカデミズムの傲慢なのか、晴れて表紙・奥付に表記される中川裕はまんが『ゴールデンカムイ』の解説本で名を売った人であることもいささか気になる。

※週刊ポスト2023年10月27日・11月3日号

https://news.yahoo.co.jp/articles/5d163d81121ef11f911178e21fc69d7f518a39cf


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アイヌ伝統の漁学ぶ ウヨロ川で白老未来学 竹浦小と萩野小児童

2023-10-20 | アイヌ民族関連

苫小牧民報2023/10/19配信

 白老町の竹浦小学校(千葉康弘校長)と萩野小学校(山田耕一校長)は18日、町教育委員会が今年度スタートさせた白老未来学の一環として、先住民族の文化を学ぶ授業を町内のウヨロ川中流の河川敷で行った。両校の児童32人が一般社団法人白老モシリ主催の…

この続き:545文字

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https://www.tomamin.co.jp/article/news/area2/120823/


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企画展「芹沢銈介ののれん」開催

2023-10-20 | 先住民族関連

上毛新聞2023/10/19 15:00

初期から晩年まで、文字、風景、人物など 多彩な模様を表現したのれん約50点を展示

 静岡市は、静岡市立芹沢銈介美術館(静岡市駿河区登呂5-10-5)において、芹沢銈介の初期から晩年まで、多彩な模様を表現したのれん約50点を展示する企画展「芹沢銈介ののれん」を、2023年10月7日(土)~12月10日(日)の期間、開催いたします。

 静岡市葵区生まれの人間国宝・芹沢銈介(1895-1984年)は、国内外で高い評価を受けた染色家です。染色に専念するようになった30代から持ち前の卓越したデザイン力を発揮し、文字、風景、人物、工芸品など多彩な模様を、次々にのれんに表現していきました。その数は少なくとも300種以上にのぼり、巨匠として国際的な評価を得た80代に至るまで途切れることなく制作が続けられました。
 本展では、初期から晩年までののれん約50点を幅広くご覧いただけます。また、展示室後半の3室には、芹沢銈介の収集品の中から、台湾先住民の工芸品をご紹介します。概要は以下の通りです。

◆企画展「芹沢銈介ののれん」の見どころ◆

1.文字、風景、人物、工芸品など、多彩な模様ののれん約50点を展示
 持ち前の卓越したデザイン力を発揮し、文字・風景・人物・工芸品など、多彩な模様を次々にのれんに表現していきました。のれんは、一般家庭に普及して暮らしを彩るとともに、芹沢の仕事の中にも大きな一角を占めるようになります。本展では、初期の作品、60代のころの名作、晩年の作品、店舗用ののれんに至るまで、約50点を幅広くご覧いただけます。
 また、他館作品36点(所蔵先:柏市、株式会社すずや、日本民藝館)も展示しています。

2.のれんの元となったアイデアを描き溜めた資料も展示
 300種以上ののれんを制作した背景には、膨大な数のアイデアがあります。書き溜めたアイデアを1冊の本にまとめた『のれん上下』や、メモパッドに即興で描いた肉筆画など、のれんの元となった資料を展示します。

3.芹沢銈介の集めた台湾先住民の工芸品約80点も紹介
 芹沢銈介の収集品から、台湾先住民の工芸を紹介します。中でもその染織はアンデス、コプトとともに世界の染織の最高峰と称され、芹沢も愛してやまなかった品々でした。上衣、喪帽など優れた染織品を中心に、約80点を展示します。

◆主な展示作品

『すずや・寿』の字のれん(1960頃) 株式会社すずや蔵

御滝図のれん」(1962)静岡市立芹沢銈介美術館蔵

女人像のれん(1975)柏市蔵安の字のれん(1971)日本民藝館蔵

開催概要

タイトル:芹沢銈介ののれん
会  期:2023年10月7日(土)~12月10日(日)
     ※休館日 毎週月曜日(10/9は開館)、10/10、11/24
              ※臨時休館、開館あり
開館時間:9:00~16:30
会  場:静岡市立芹沢銈介美術館(〒422-8033 静岡市駿河区登呂5-10-5)
アクセス:JR「静岡駅」南口、22番バス乗り場から「登呂遺跡」行き乗車、終点下車徒歩3分
観 覧 料  :一般420(370)円、高校生・大学生260円(200)円、小学生・中学生100(80)円
     ※( )内は30名以上の団体料金
     ※未就学児、静岡市内在住の70歳以上の方・小中学生(通学含む)無料。
     ※障がい者手帳等の提示により、本人及び同伴者1名は無料。
問い合わせ:静岡市立芹沢銈介美術館 054-282-5522
WEBサイト:https://www.seribi.jp
公式SNS:静岡市立芹沢銈介美術館(@seribi_shizuoka)

◆芹沢銈介美術館について
 静岡市立芹沢銈介美術館は、わが国染色界の重鎮、芹沢銈介(せりざわけいすけ・1895~1984)より、郷里の静岡市に作品とコレクションが寄贈されたのを機に建設の運びとなりました。昭和56(1981)年の開館以来、様々な企画展示、作品の保存収集、調査研究を通して、芹沢の芸術を広く紹介し、その偉業を後世に伝えるべく活動を続けています。わが国では珍しい染色作家の美術館として、日本内外から多くの染色ファンを集めています。
 また、建築家白井晟一(1905~1983)の設計による建物も訪れる人々の注目する所です。弥生時代の遺跡として名高い登呂公園の一隅に位置し、その遺跡の雰囲気に自然に融け込むように、石、木、水という天然素材を選んで構成されたこの建物は、白井晟一の個性が遺憾なく発揮された代表作です。石を積み上げた量感ある外壁。ゆるやかな銅板葺きの屋根。そして手斧の跡も温かい白木の楢材の組天井を持つ展示室が池を巡るように配されて、鑑賞の場にふさわしい、ゆったりとした空間を演出しています。
 現在収蔵されている芹沢の作品約1,300点とコレクション約4500点は、年に4回展示替えが行なわれて順次公開しています。
 附属施設として、芹沢の住居と工房があった東京・蒲田から移築した「芹沢銈介の家」があり、
展示期間中、毎週日曜日、祝日に公開しています。(8月は土曜も公開)

https://www.jomo-news.co.jp/articles/-/362110


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