先住民族関連ニュース

先住民族関連のニュース

国立アイヌ民族博物館と室蘭工業大学が連携協定 教育充実へ

2023-10-28 | アイヌ民族関連

NHK10月27日 08時21分

胆振の白老町にあるウポポイの中核施設、国立アイヌ民族博物館は、アイヌ民族に関する教育や研究の充実を目指し、室蘭工業大学と連携協定を結びました。
26日、国立アイヌ民族博物館で行われた調印式には、佐々木史郎館長と室蘭工業大学の空閑良壽学長が出席し、協定書に署名しました。
協定は、北海道の地域の特色をいかした教育や研究で連携し、アイヌ民族の歴史や文化の正しい理解を促進することに寄与することを目的としています。
具体的には、▼大学で地域の特性を学ぶ「胆振学入門」の授業で博物館の研究員が講義を行うことや、▼両者で共同研究を進め、その成果を博物館で紹介することなどが検討されているということです。
国立アイヌ民族博物館が大学と連携協定を結ぶのは、北海道大学アイヌ・先住民研究センターに続き2例目です。
佐々木館長は「文系を中心とした研究ではできなかったことを理系の知見を入れることですそ野を広げ、厚みを増していきたい」と話していました。
また空閑学長は「大学ではアイヌ民族の食文化や薬について研究をしているので、その研究がさらに進むのではないかと期待している」と話していました。

https://www3.nhk.or.jp/sapporo-news/20231027/7000062013.html


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アイヌ文化理解へ「理系の知見生かす」 室工大、白老・国立博物館と連携協定

2023-10-28 | アイヌ民族関連

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2023年10月27日 19:40

 【白老】「民族共生象徴空間(ウポポイ)」の中核施設である国立アイヌ民族博物館と包括連携協定を結んだ室蘭工業大の空閑良寿(くがよしかず)学長は26日の締結式で「理系的な知見を生かし、アイヌ民族の歴史や知恵を解明したい」と意気込みを語った。今後は両者が連携し、アイヌ文化の理解促進に向けた取り組みを加速させる方針だ。

 博物館で行われた締結式では、空閑学長と博物館の佐々木史郎館長が協定書に署名し、アイヌ文化の研究や人材育成に共同で取り組むことを確認した。理工学の知見を生かした研究の推進が大きな柱となる。博物館が教育機関と協定を結ぶのは北大アイヌ・先住民研究センター(札幌)に続き2例目。

 空閑学長は、室蘭工業大がすでに釧路管内白糠町とアイヌ民族が利用した植物の機能性の解析や健康食品の開発研究を進めていることを紹介。協定により「博物館の知見や資源を有効活用し、研究がさらに進むと考えている」と述べた。佐々木館長も「アイヌ民族の文化や歴史の背景にある自然現象、伝統的な道具の材質調査などに、理系の知見を取り入れることで研究の厚みが増す」と期待する。

 ・・・・・

(小林彩乃)

https://www.hokkaido-np.co.jp/article/932349/


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アイヌ伝統サケ漁 静内小児童が見学

2023-10-28 | アイヌ民族関連

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北海道新聞2023年10月27日 19:28

児童が見学する前でサケを捕る菅原さん

 【新ひだか】静内小の児童がアイヌ民族の伝統漁具を使ったサケ漁や、サケの解体を見学してアイヌ文化を学んだ。

 12日に町教委が主催し、4年生44人が参加した。町静内目名の静内川で、道の特別採捕の許可を得て実施。新ひだかアイヌ協会の菅原勝吉・民族文化専門員が、先端にかぎ針の付いたマレク(もり)を使って川のサケを捕る様子を児童に見せた。

 菅原さんは児童に対し「サケはアイヌ語で、カムイチェプ(神の魚)やシペ(本当の食べ物)と言います」とアイヌ語も紹介した。・・・・

(杉崎萌)

※「マレク」の「ク」、「カムイチェプ」の「プ」はいずれも小さい字

https://www.hokkaido-np.co.jp/article/932328/


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「池波正太郎に挑む」 作家今村翔吾が語る歴史・時代小説の未来<会いたい 聞きたい>

2023-10-28 | アイヌ民族関連

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北海道新聞2023年10月27日 14:00

 新世代の歴史・時代小説の旗手として注目される一方、直木賞受賞後にはワゴン車で全都道府県を巡ったり、閉店寸前の書店を継承したりと異色の活動を展開するのが作家の今村翔吾さん(39)です。講演や書店訪問のため来道し、関西弁で軽快に話す今村さんに、人気シリーズの今後や書店を経営する理由、憧れの作家に対する思いについて聞きました。(文化部 大原智也)

いまむら・しょうご 1984年京都府生まれ、大津市在住。小学5年生で池波正太郎「真田太平記」を読破するなど多くの時代・歴史小説を読むうちに作家を志すようになる。ダンスインストラクターなどを経て、2017年「火喰鳥(ひくいどり) 羽州(うしゅう)ぼろ鳶組(とびぐみ)」でデビュー。2020年『八本目の槍(やり)』で吉川英治文学新人賞、『じんかん』で山田風太郎賞。2022年、石垣を積む石工集団と鉄砲鍛冶の戦いを描く歴史時代小説『塞王(さいおう)の楯(たて)』で直木賞。受賞を機に、お世話になった人やファンに会いに行く「今村翔吾のまつり旅」を企画し、ワゴン車で118泊119日間をかけて全都道府県を回った。2021年には閉店寸前だった大阪府箕面市の書店「きのしたブックセンター」を継承し、社長に就任した。

■文庫書き下ろしシリーズに力

 ――2022年は「今村翔吾のまつり旅」を企画し、ワゴン車で1年の3分の1をかけて全都道府県を回りました。この旅を通して得たことは。

 「(来道後)北海道の人たちがファンクラブを作ってくれたのもそうやけど、全国的にも多くの人たちとつながって縁をいただいた。延べ1万4千人くらいに会ったのかな。そこから新たな展開もあったし、自分にどういう読者がいるのかがクリアになった。書店では、全国最大規模のコーチャンフォー(ミュンヘン大橋店)だったり、小さいところでは4坪くらいのお店だったり。さまざまなお店に行って、規模や地域ごとの課題が分かった。最寄りの書店がすごく遠いと聞いても、地図で見るのと実際に車で移動してみるのでは、感じることが全然違ってたね」

――直木賞受賞前後は雑誌や新聞の連載も多く抱えていました。

 「直木賞が取れそうだとなるといろんな出版社から連載の依頼が来るんやけど、意外と早く取ってしまって。今は8本ぐらいあった連載を4本まで減らしました。ここからは自分の出自でもある文庫の書き下ろしシリーズに力を入れようと思っているんですよ」

 「羽州 ぼろ鳶組」シリーズ(祥伝社) 江戸時代の火消したちを描いた時代小説。かつて定火消(じょうびけし)として“火喰鳥”と呼ばれた浪人・松永源吾は、羽州新庄藩(現在の山形県新庄市)から召し抱えられ、藩の火消組織の再建を託される。藩の財政は厳しく、鳶人足は寄せ集め、火消の衣装もぼろぼろ。江戸の民からは「ぼろ鳶」とやゆされる始末だが、元力士の壊し手や現役軽業師の纏(まとい)番などが集まり、活躍して次第に名を上げていく。2022年の番外編も含め計13巻でシリーズ累計約75万部。NHKでラジオドラマ化もされた。

 ――デビュー作でもある「羽州 ぼろ鳶組」シリーズは「シーズン1」として完結だそうですね。「シーズン2」はいつごろから始まるのでしょうか。

 「2024年に執筆を再開してスタートになるかな。最初は火消しの話だけでは限界があると思ったし、(クライマックスの)『襲(かさね)大鳳(上・下)』(2020年)の時はむちゃくちゃしんどくて、かなり大変だったけど、書くうちに(新たなキャラクターも活躍して)なんとなくシーズン2が見えてきたね」

 「くらまし屋稼業」シリーズ(角川春樹事務所) 江戸時代が舞台。訳あって江戸から脱出したい人を助ける裏稼業「くらまし屋」の面々が活躍するシリーズ。計8巻で約40万部。コミック化も。

 「イクサガミ」シリーズ(講談社) 明治時代を舞台に、大金目当てに集まった腕自慢の猛者が命をかけて京都から東京を目指すエンタメ時代小説。2巻で約15万部。コミック化も。

■山田風太郎を令和風に

 ――「くらまし屋稼業」シリーズは巻を追うごとにスケールアップし、最新作「風待ちの四傑」(2022年)では極寒の北の地域が「夢の国」として登場します。3部作の「イクサガミ」シリーズは現代のドラマやアニメのような「デスゲーム」のような要素も盛り込まれ、10代の子も入りやすい時代小説で、いずれにもアイヌ民族の弓の名手が出てきますね。

 「『くらまし屋』は、ようやく『夢の国』がどこの辺りかっていうのが分かってきたという感じで、今後は北海道やその周辺が主力になっていく物語ではあるよね。『イクサガミ』は10代、20代の読者がずぬけて多いけど、60~70代の方も結構読んでくれていて。(サイン会や講演で会った)おばあちゃんがこの血なまぐさい話を読んでるのかって思う時もあるけど、『楽しい』って言ってくれる。実はそこらへんは昭和の人のほうが心が強いかもしれん。『イクサガミ』の(アイヌ民族の勇者)カムイコチャは好きな人が多いし、北海道の人も推してくれる。ただ、この小説が“令和風”かといえば、源流は山田風太郎にある。(今の若者に)時代小説は読みにくいと言われるけど、山田風太郎を令和風に整えれば通用するということを試してみたかった。『若い層や海外が待っているのはこういうのやろ』ということも感じながら書いていたね」

 歴史小説と時代小説 一般的に「歴史小説」とは歴史的な事件や人物をテーマにし、史実をもとに書かれた小説のこと。これに対して「時代小説」は古い時代の事件や人物を素材にし、歴史小説よりフィクション性が強い。今村さんの著書「教養としての歴史小説」(ダイヤモンド社)では、「大河ドラマのようなものが歴史小説で、『水戸黄門』のようなものが時代小説」と説明している。

 ――単行本の歴史小説では、4月に平家物語を題材に平清盛の四男・知盛を主人公にした「茜(あかね)唄(上・下)」を出しました。知盛と源義経との関係の描き方も今村さんならではと感じました。

 「直木賞の前後から時代小説と歴史小説、お互いの良い部分をしっかり交流させるようにしたんですよ。『じんかん』までは意識して分けていたけど、直木賞に一歩届かなかったのはみんなが僕に求めている熱波のようなものが足りなかったから。『塞王の楯』は、『ぼろ鳶』を歴史小説風に書いたらどうなるかと挑んだ。それが一つの転機やったかもしれないね。『茜唄』も歴史小説の要諦は守るけど、いきなりアクションから始まるのは、時代小説で得意にしている『引き』(続きを読みたくなる展開)を歴史小説から排除する必要がないと気づいたからなんですよ」

 ――短編集「蹴れ、彦五郎」に掲載されている表題作や「狐(きつね)の城」を読むと、一貫して敗者や弱者の物語、美学を描く姿勢は初期作品から変わっていませんね。

 「勝者を書いてもあまり楽しいと思わないのもあるし、敗者のほうが書きやすいのも正直ある。僕は歴史学にできなくて、歴史小説にできる一番良いところが敗者を書くことやと思ってて、魚においての『トロ』みたいなもん。生き方に一番想像を込めることができるのがここだと思う」

 ――一方で登場人物に現代的な価値観を取り入れています。これは意識的にやってきたことでしょうか。

 「直木賞の選考では、主人公の価値観が現代的すぎる、そんな人はいないと(過去の2回は)落とされてきたけど、僕はそう断定するのは歴史に対して傲慢(ごうまん)じゃないかと思っていて。例えば(ツイッターを買収した)イーロン・マスクが今たたかれているけど、100年後には一つの価値観として確立しているかもしれない。悪も善も天才も含めて、『そんなやつは当時いない』と言い切るこそ、断定的過ぎる。それに、読むのは現代の人。現代につながる価値観を持ち込むことによって時代の逼迫(ひっぱく)感を表現することができる。この間、小説講座で教えたりもしたんやけど、意外とみんなできなくて。僕の特殊能力なのかも」

■違うジャンルから読者を獲得

 ――近年は時代劇の放映が減ったことや若者の本離れなど、昔より時代・歴史小説への間口が狭くなっている気がしますが、今村さんの歴史・時代小説は常に新たなことを盛り込んでいますね。

 「もっと多くの人に読んでもらいたいというのが根源にあって。僕より年上の、多くの読者がいる歴史・時代小説の先生がいますけど、同じジャンルの先輩から読者を奪うより、外から獲得するほうが早いと。小説界全体でもトップ100くらいだけが小説家であり続けられるような厳しい世界。昔、文学賞を辞退されていた西村寿行さんが、『読者が減ったら小説家を辞める』と断言していたけど、そういう思いを失ったら、いくら崇高なことを言っても大衆作家ではないと思うんですよ」

 ――北方謙三さんや佐伯泰英さんのファンに読んでもらうのもいいけど、むしろ歴史・時代小説を読んでいない人たちを呼び込もうということですか。

 「無理やり引っ張り込むつもりはないけど、(新たな読者に)提案していける小説は作っていきたい。それを最初に気づいたのは、2021年に滋賀県で安部龍太郎さんと澤田瞳子さんと鼎談(ていだん)した時。中学生の男の子が走ってきて、手を震わせて『サインしてください』と来たんだけど、安部さんが『ああいう若い読者がいたら安心だな。意外といないよ』って。じゃあ僕はそういう方向を向いて書いてもいいのかなと」

 ――8月にはビジネス書「教養としての歴史小説」が刊行され、10月には華道を題材にした青春小説「ひゃっか!」が文庫版になりました。今後、歴史・時代小説以外の本を書く予定はありますか。

 「書くタイミングがあれば、書くつもりだけど僕は時代・歴史小説だろうが、現代小説だろうが、アイデアは絶対枯渇しない自信がある。これだけアウトプット(続けて出版)してインプットは大丈夫かと質問された時、今まで小説を読んできた“貯金”があるからって答えてたんですけど。最近気づいたのは、ある程度の読書量と知識量を得ると、貯金の“利子”だけで食えるから減らないということ。たぶん80歳くらいまでアイデア切れへんな」

■本屋経営、次世代のために

 ・・・・・・・

 

https://www.hokkaido-np.co.jp/article/930618/


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<ステージ>札幌座「群来、春告魚と蜃気楼」 余市舞台のファンタジー

2023-10-28 | アイヌ民族関連

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北海道新聞2023年10月27日 12:17

 北海道演劇財団の付属劇団「札幌座」は、前身のTPS(シアタープロジェクトさっぽろ)時代から、北海道を題材とした魅力的なオリジナル作品を数多く発表してきました。第61回公演「群来(くき)、春告魚(はるつげうお)と蜃気楼(しんきろう)」もその系譜に連なる新作で、後志管内余市町を題材としたファンタジーです。10月31日まで札幌のシアターZOO(中央区南11西1)で上演中の同作の一部を紹介します。(文化部 赤木国香)

「群来、春告魚と蜃気楼」の一場面。かつてニシン番屋だった旅館の食堂で物語は展開する=いずれも10月25日のゲネプロ、撮影・高橋克己

札幌座「群来、春告魚と蜃気楼」 開演は26日午後7時、27日午後2時と同7時、28日午後2時と同6時、29日午後2時、30日午後7時、31日午後2時。料金は一般3500円、学生2千円、高校生以下千円。詳しいことは同財団のホームページ(http://www.h-paf.ne.jp/)か電話011・520・0710(平日午前10時~午後6時)へ。

 舞台は、立派なはりのある古い旅館の食堂。かつてニシン番屋だったという。格子戸が開くと波の音、カモメの声が聞こえる。札幌座の新作は、後志管内余市駅そばにある架空の小さな旅館で展開する。

 おかみの都(磯貝圭子)と娘の弥生(大森弥子)が切り盛りする旅館に、かつて余市に住み、昨年東京に戻ったはずの信二(泉陽二)が突然現れる。地域おこし協力隊としてブドウ畑で働くという。宿には老犬こんこ(熊木志保)がいる。母娘の前では、「ワン」としか鳴かない寝てばかりの犬だが、信二が一人になると立ち上がり、不思議な話を語り始める―。

 現在と過去、現実と異界をつなぐ存在が、こんこ。犬の着ぐるみなどは使わず、暖かそうなベストという普通の服装だが、しぐさと表情で時にむく犬に、時に老いた女性に見えてくる。

 フゴッペ洞窟の鳥人間の刻画、かつてのニシン漁のにぎわい、アイヌ民族の歌人・違星北斗など、余市にまつわるエピソードが随所に登場。物語はやがて「北海ソーラン祭り」の前夜に現れる、蜃気楼のような壮大な幻影へと導かれていく。

・・・・・

 10月25日のゲネプロを見て。上演時間は約1時間20分。

https://www.hokkaido-np.co.jp/article/932014/


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<人とーく>訪日客へ楽しい道内観光を*北海道通訳案内士協会理事長*恒川恵さん(67)=中央区

2023-10-28 | アイヌ民族関連

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北海道新聞2023年10月27日 10:00

 新型コロナによる行動制限が緩和され、道内の観光地に多くの外国人旅行者が戻ってきました。海外の団体客を相手に、小旗を掲げて案内する通訳案内士。英語や韓国語、中国語、フランス語など10カ国の語学に通じた通訳ガイドら116人(今年3月現在)が所属するNPO法人北海道通訳案内士協会の理事長を2021年から務めています。

 「海外からの旅行者に安全で楽しい旅行をしていただけるようお世話するのが私たちの仕事。相手の英語が聞き取れなかったり、部屋がタバコ臭いので取り換えてと言われたり、大変なこともありますが、どうにか解決し、満足いただけた時はうれしいですね」

 今まで道内各地を訪れた経験から、冬の夜に網走で聞いた、ギギギという流氷がきしむ音、釧路で校庭の雪をみんなで踏み固めて水をまき、スケートリンクを作った思い出など、道産子ならではの話をすると海外客に喜ばれるそうです。

 雄大な自然を楽しみに来る外国人の中には北海道の距離感をつかめない人も。「写真が趣味の人たちを道東でガイドした時、半日しかないのに風蓮湖と摩周湖、屈斜路湖、阿寒湖に行きたいと言われ、驚きました」。全て回るのは無理と伝え、一番関心のあるアイヌ民族の古式舞踊を見に阿寒湖に行き、次に釧路湿原を案内しました。「タンチョウなど野生生物をたくさん見ることができ、喜んで帰られました。難しいリクエストでも、周りの人と協力して解決策を見つけ、可能な範囲でお客さんに満足していただける案を示すよう心がけています」

・・・・・・・

(ライター・藤森祐子)

つねかわ・めぐむ

 1956年、中央区生まれ。小樽商大卒業後、住友銀行に入行し、首都圏で35年過ごす。2012年に全国通訳案内士試験に合格。15年、北海道に戻り、ガイドとして活動を始める。

 全国通訳案内士試験は、観光庁主管で年1回実施される語学関連の唯一の国家試験。1次は筆記で、外国語、日本歴史、日本地理、一般常識、通訳案内の実務と5科目あり、2次は口述試験。

https://www.hokkaido-np.co.jp/article/930733/


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トラベルウォッチ2023年10月27日 21:00平澤寿康

2023-10-28 | アイヌ民族関連

北海道ゾーンはソフトクリーム・ヨーグルト・地酒の試食試飲アリ! 食、観光、文化を目と舌でとことん楽しめる!

2023年10月26日~29日 開催

 世界最大級の旅イベント「ツーリズムEXPOジャパン2023 大阪・関西」が10月26日~29日の4日間にわたり、インテックス大阪(大阪市住之江区)で開催されている。

 北海道ゾーンでは、観光、食、文化など北海道のさまざまな魅力を楽しめる展示が行なわれている。

 メインとなるブースでは、中央にステージを構え、連日さまざまなイベントを開催。北海道の観光地情報や、食、ワイン、地酒の紹介するステージや、クイズ大会などを実施。その左のフードコーナーでは、ヨーグルト、地酒、ソフトクリームなどの試食会を実施。各回ごとの時間に合わせて1回ごとに100枚前後の整理券を配って対応する予定。

 ステージ裏では、アイヌ文様ネックレスや木製しおり、オリジナルハッカスプレーなどの体験ワークショックを実施。このほかにも、HOKKAIDO LOVE! LINE公式アカウントへの友だち登録で、北海道観光PRキャラクター、キュンちゃんのグッズが当たるガラポン抽選会に参加できる。

 ステージ後方には、道北、道東、道南、道央の各地域や、JR北海道、北海道内の主要空港を運営する北海道エアポートがブースを構えている。訪日外国人観光客の伸び率がトップとなり話題となっている当別町をはじめ、最新の観光情報やツアー情報を紹介。この冬の北海道旅行の相談にも乗ってもらえる。

 北海道ブースの横には、ウポポイがブースを構えている。こちらでは、実際のウポポイ同様にアイヌ文化を紹介。アイヌの伝統楽器の演奏や伝統舞踊も披露する。このほかにも、アイヌ言葉を教わったり、アイヌ衣装の試着コーナーなども用意されており、まさにミニウポポイといったブースとなっている。北海道ブースのステージでもイベントを実施予定だ。

アイヌ衣装の試着コーナーも用意されている

 北海道ゾーンでは、美唄市、富良野・美瑛、三笠市などもブースを構え、観光情報を提供。それぞれグッズのプレゼントやワインの試飲などを実施予定。

 そして、北海道ゾーンでは5つのポイントを巡るスタンプラリーも実施。北海道の特産品などが当たるので、こちらも忘れずチェックしたい。

https://travel.watch.impress.co.jp/docs/news/1542794.html


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先住民族出身のデザイナーにスポットライトを当てる、リリー・グラッドストーンのレッドカーペットスタイル

2023-10-28 | 先住民族関連

VOGUE JAPAN2023年10月27日

BY CHRISTIAN ALLAIRE

TRANSLATED AND ADAPTED BY ANZU KAWANO

Photo: Taylor Hill/Getty Images

現在公開中のマーティン・スコセッシ監督最新作、『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』で一躍脚光を浴びている俳優のリリー・グラッドストーン。モンタナ州ブラックフット族の出身である彼女は、先住民族にルーツを持つデザイナーに光を当てる機会としてレッドカーペットを活用、自身が纏うルックを通して世界にその才能をアピールしている。

マーティン・スコセッシ監督の新作映画『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』で大ブレイクしたことで、今年のアカデミー賞の有力候補と評されているモンタナ州ブラックフット族出身の俳優、リリー・グラッドストーンUK版『VOGUE』10月号のカバーも飾るなど、彼女への注目度は高まる一方で、そのレッドカーペットスタイルも同じくらい話題となっている。

全米映画俳優組合(SAG-AFTRA)のストライキ規則を遵守し、従来のかたちでのプレスツアーは行っていない『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』だが、限られたイベントに出席する際には、意志を持って選んだルックを纏っているグラッドストーン。ファッションマンスから今週ニューヨークで行われたTIME100 Nextガラまで、彼女はあらゆる表舞台で、自らと同じ先住民族をルーツに持つデザイナーによるアイテムやドレスを身に着けることで、コミュニティをサポートし、広める機会にしている。

今年5月、ストライキが敢行される前に開催されたカンヌ国際映画祭以降、スタイリストのジェイソン・レンバートとともに細部まで考え抜かれたレッドカーペットルックを作り上げている彼女は、今回の出演作品のプレミアにはフローラルのヴァレンティノVALENTINO)のドレスで登場。そしてアクセントとして用いたのは、アメリカファッション協議会(CFDA)初のネイティブアメリカンメンバーに選出された、南カリフォルニアのラ・ホーヤ・インディアン居留地出身のデザイナー、ジェイミー・オクマが手がけたツノガイのイヤリング。同じ週に行われた公式フォトコールでは、シャネルCHANEL)のケープ付きアンサンブルをシェルビー・リーアン・ゴーマンのビーズとツノガイのイヤリングとマッチ。ほかにもカンヌでのアフターパーティにはトリンギット族をルーツに持つジェニファー・ヤンガーがデザインした銅製のネックレスを着用。

大々的なプレスツアーなくしても、ネイティブアーティストのアイテムをしっかりと取り入れたルックを次々と纏っているグラッドストーン。今月パリで開催されたルイ・ヴィトンLOUIS VUITTON)の2024年春夏コレクションでも、メゾンのアンサンブルにはWOEMPE DESIGNSのスチール製のイヤリングを合わせ、ロエベLOEWE)のショーにはカラーリリーを模したエル・テチチ(EL TECHICHI)のピアスをして出席。そして今月24日(現地時間)に行われたTIME100 Nextガラで纏っていたのは、バーニング・ワゴン・デザインズ(BURNING WAGOON DESIGNS)のプリントドレスとジェニファー・ヤンガーが手がけたアクセサリー。

レッドカーペットで、先住民族にルーツを持つデザイナーのアイテムを纏うセレブはほとんどいないこともあり、グラッドストーンのスタイルは称賛されている。来年、無事にアカデミー賞が開催されることになれば、そのときは再び先住民族デザイナーたちの才能にスポットライトを当ててくれることだろう。

本来であれば刊行されていたプレスツアーを少しだけ味わせてくれる華やかなルックをピックアップ。

https://www.vogue.co.jp/gallery/us-vogue-lily-gladstone-indigenous-designers-red-carpet


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『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』脚本変更でよりスコセッシ映画へ、ディカプリオとデ・二―ロ、グラッドストーンが体現する葛藤と贖罪

2023-10-28 | 先住民族関連

CINEMORE10/27(金) 19:02配信

『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』あらすじ

Apple Original Films『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』大ヒット上映中 配給:東和ピクチャーズ 画像提供 Apple(cinemore)

地元の有力者である叔父のウィリアム・ヘイル(ロバート・デニーロ)を頼ってオクラホマへと移り住んだアーネスト・バークハート(レオナルド・デカプリオ)。アーネストはそこで暮らす先住民族・オセージ族の女性、モリー・カイル(リリー・グラッドストーン)と恋に落ち夫婦となるが、2人の周囲で不可解な連続殺人事件が起き始める。町が混乱と暴力に包まれる中、ワシントンD.C.から派遣された捜査官が調査に乗り出すが、この事件の裏には驚愕の真実が隠されていたーー。

デイヴィッド・グランのベストセラーの映画化

 マーティン・スコセッシ監督の最新作『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』はデイヴィッド・グランが2017年に発表したノンフィクションの映画化である。

 グランはすでに映画化もされている「ロストシティZ 探検史上、最大の謎を追え」(NHK出版)の作者でもあるジャーナリスト。『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』の原作は、日本では2018年に「花殺し月の殺人」(早川書房刊)のタイトルで翻訳されている。まるでミステリー小説でも読んでいるかのようなスリルが体験できるノンフィクションで、アメリカ探偵作家クラブ賞を受賞。<ニューヨーク・タイムズ>では40週に渡ってベストセラーのリストに入り、<ウォール・ストリート・ジャーナル>他、多くの有力媒体がその年の年間ベストブックにもあげている。

 クオリティの高い本の映画化はむずかしいが、今回の映画化の監督はスコセッシ、主演がレオナルド・ディカプリオとロバート・デ・ニーロ、脚本がエリック・ロス(『DUNE/デューン 砂の惑星』21)、撮影監督ロドリコ・プリエト(『アイリッシュマン』19)、プロダクション・デザインがジャック・フィスク(『レヴェナント:蘇えりし者』15)、音楽ロビー・ロバートソンと、考えられうる限り最高のメンバーが集められている。

 原作は主に3つの構成から成立している。<クロニカル1>(1921~1925年)は1920年代にオクラホマ州の保留地で暮らすアメリカ先住民、オセージ族の物語で、保留地の地下で発見された石油のおかげで、彼らは(一部の白人よりも)裕福な生活を送っている。そんな部族のひとり、モリーが主人公で白人男性アーネストと結婚。その後、周囲の先住民や家族が次々に不審な死をとげ、<オセージの恐慌時代>が始まる。

 <クロニカル2>(1925~1971)の主人公は捜査官トム・ホワイトで、オセージ族保留地で起きている謎の連続殺人の解明を上司のフーヴァーに命じられる。ホワイトはテキサスのローン・レンジャー出身で、刑の執行人として正義を貫いた家族のもとで育ち、強い正義感を抱きながら不可解な謎に迫ろうとする。

 <クロニカル3>(2012~)では、オセージ地区を訪ねた筆者グランの新たな捜査が描かれ、モリーの孫娘、マージ―・バークハートとも会う。かつてホワイトの捜査は一定の結果を出したが、21世紀になっても解明されていない過去の先住民の殺人事件があり、一連の事件の根深さが伝わる。

 今回の映画で焦点が当てられるのは、<クロニカル1>と<クロニカル2>の前半のみで、事実に基づきながらも、映画らしい見せ場が作られていく。

原作と映画版の違い~歴史か、キャラクター研究か

 今回の映画化の話が持ち込まれた時、映画好きでもある原作者グランは驚いたという。

 「脚本家のエリック・ロスが脚本を書き、やがてマーティン・スコセッシが参加することになった。しかも、主演がレオナルド・ディカプリオ。現代最高の監督が参加することに驚いた。一方、1920年代に実際に起きた事件なので、オセージ族の反応が心配だった。歴史上、特に衝撃的で、残忍な事件に思えたからだ。ただ、スコセッシとチームの様子を見ていて、不安は消えていった。オセージ族が44の役で参加し、コスチュームやセットのスタッフ、言語指導などでも協力し、いいチームワークが組まれていた」

 グランは<AOL.com>のインタビューでそう振り返る。彼は製作者チームの真摯な態度に感銘を受け、自身も資料の提供者として付き添ったという。

 「映画と本はまったく違うメディアだと思う。私の本はあくまでも歴史書で、すべての文章が事実や資料に忠実に組み立てられている。映画はモリーやアーネストの人物像に焦点が当てられ、それが犯罪の中心に置かれている。本はもっと広いキャンバスで描かれるが、映画はキャラクター研究となっている。それぞれのメディアの特長を生かし、その真実に迫ろうとしている」

 本ではオセージ族の歴史や風習が詳細に語られ、モリーの少女時代の話も出てくる。一方、ディカプリオが演じる彼女の夫アーネストは登場が少なく、事件にとって重要な人物でありながらも、脇役的な人物でしかない。本では中盤以降、捜査官ホワイトの比重が大きく、途中からはアーネストの叔父ヘイルとホワイトの対決ともいえる展開になっていく。ホワイトの物語と共にFBIの基礎を作った彼の上司、フーヴァーも登場。そして、本ではホワイトのヘイル裁判後の後日談も描かれる。

 映画化の話が出た時、最初はヘイルをデ・ニーロが、ホワイトをディカプリオが演じる予定だったという。原作に忠実な映画化と考えると、確かにその方が自然な流れとなっている。本のおもしろさは、ローン・レンジャー出身のホワイトが独自のやり方で真相を暴いていく点にあり、「アメリカ探偵クラブ賞受賞作品」であることもうなずけるミステリー風の展開になっているからだ。

 しかし、スコセッシは途中でシナリオの構成を変更することになる。

歴史の読み直しにこだわるスコセッシ

 今回の映画にかかわった経緯をスコセッシは英国の映画雑誌“Sight and Sound”(23年10月発表)のインタビューで明かしている。それによると、先住民を扱った企画に携わるのは今回が初めてではなく、『ミーン・ストリート』(73)の後、19世紀の先住民の歴史を描いたディー・ブラウンのノンフィクション「わが魂を聖地に埋めよ」(日本では草思社文庫)の映像化の話が出たこともあったそうだ(その企画は流れ、結局、2007年に別の監督の手でテレビドラマ化されている)。

 そして、今回の新作で遂に先住民の話を撮ることになったが、スコセッシはオクラホマでの歴史的な背景に興味を持ったようだ。近年、アメリカの歴史の読み直しにこだわる監督にとって、今回の題材はアメリカの秘められた歴史を語れる、という点において意義ある企画に思えたのだろう。こちらを『アイリッシュマン』より先に撮る計画もあったが、『アイリッシュマン』は出演予定の俳優たちが高齢であるという理由を考慮し、まずは『アイリッシュマン』を先に撮った。

 そして、2017年から2020年にかけて脚本家のロスとじっくり脚本を検討し直した。捜査官ホワイトは、特に欠点のない人物として登場する。そして、ホワイトを演じるレオの演技を思い浮かべ、「これは自分には撮れないウエスタン」と監督は思ったという。また、ホワイトの視点ではオセージ族のある部分しか描けないとも感じた。そんな時、レオに「この映画の核心は?」と聞かれ、そこでスコセッシは考え、「アーネストとモリーの関係」と答えたという。

 実は今回の映画の製作のため、スコセッシは、このアーネストとモリーの孫にあたるマージ―・バークハートと会ったが、彼女の証言によれば、実在した夫婦は本当に愛し合っていたという。アーネストはモリーを窮地に陥れるが、モリーはそんな時も、アーネストの側にいる。本ではアーネストの記述が少ないが、それゆえ映画的な想像がふくらませやすい。

 その結果、原作に沿った犯人捜しの構成はやめることになり、夫婦の愛を軸にした脚本としてリライトすることになった。当初、映画の製作を引き受けていたパラマウントはこの変更に難色を示し、出資を断ってきた。そんな窮地を救ったのが、配信会社のアップルで、この会社が出資し、最終的にはパラマウントも配給を引き受けるという形で協力し、配信前に劇場での大きな興行も実現した(ホワイト役は『パワー・オブ・ザ・ドッグ』(21)のジェシー・プレモンスが演じた)。

 アーネスト像は映画で大きくふくらんだキャラクターとなったが、そんな彼の中に監督は自身の監督作『沈黙―サイレンス』(16)で描いたキチジロー(窪塚洋介)も重ねて見ていたようだ。「彼と同じように、アーネストの人間的な弱さに興味を抱いた。アーネストは弱くて、危険なところもあるが、愛もある。本当に困った人物だが、それこそが人間なのかもしれない。そんな人間像をレオやモリー役のリリー・グラッドストーンと共に追及したいと思った」

 また、スコセッシの祖先はイタリア系で、ヨーロッパからアメリカへと移住して生活を始めた。そんな歴史に対して冷静な視点も抱いていて、「ヨーロッパから白人たちが来て、西洋の文明を持ち込むことでアメリカは開かれたが、そんな過去にも向き合うべきだ。侵略者でもある私たちはみんな殺人者(キラーズ)なのかもしれない」と監督は“Sight and Sound”のインタビューで答えている。

 オセージに住む白人たちは組織ぐるみで、犯罪に手を染めていくが、そんな設定は、スコセッシがお得意とする“ギャング映画”と共通している点も認めている。「まるでシカゴやニューヨークでの犯罪組織と同じやり口を彼らは使っている。組織化された犯罪においては、人物の邪悪な部分が浮かび上がる」と彼は語る(“Indie Wire”23年10月20日号)。

 前述のモリーの孫、マージ―・バークハートから「悪者と犠牲者のふたつにはっきり分けられるほど、現実は単純ではなかった」と言われ、それがスコセッシの頭の中にずうっとあったようだ。

 映画の主人公のアーネストは先住民の妻リリーを愛しながらも、彼女が持つ石油利権をめぐる残忍な事件に手を染めていく。一方、リリーはそんな夫に不信感を感じることはあっても、心のどこかで信じようとする。アーネストは強欲な叔父のヘイルに利用されているが、実はリリーも幼い頃からヘイルを知っていて、信頼を寄せていた時期もあった。

 主人公3人の愛と信頼、裏切りがからまった関係は、確かに白黒がはっきりつけられない。そんな人間関係は、スコセッシがかつて『グッドフェローズ』(90)や『カジノ』(95)、『アイリッシュマン』(19)などで描いたギャング同士の複雑な関係をも思わせる。また、後半の“内なるモラル”との葛藤や贖罪というテーマは、『ミーン・ストリート』以降、監督がこだわり続けてきたもので、近年では『沈黙―サイレンス』や『アイリッシュマン』の主人公が抱き続けた思いでもある。そこに人間の矛盾や不可解さが浮かび上がる。途中で脚本を変更することで、むしろ本来のスコセッシ映画に近い作品になったのではないだろうか。

 また、30年代のラジオ番組「ザ・ラッキー・ストライク・アワー」では事件の顛末がドラマ化されている。原作によれば、フーヴァーの指示で、捜査官のひとりがシナリオまで手掛け、オセージ連続殺人事件の顛末が放送されたようだ。

スコセッシ映画における男性の描写と女性の視点

 今回の作品の大きな話題のひとつは、長年スコセッシ映画を支えてきたふたりの男優、ロバート・デ・ニーロとレオナルド・ディカプリオとのスコセッシ映画での初共演が実現したことだろう。デ・ニーロは70年代の『ミーン・ストリート』以後、10回目のコンビ。ディカプリオは『ギャング・オブ・ニューヨーク』(02)以後、6回目のコンビ作となる。かつて『ボーイズ・ライフ』(93)で共演した子役レオをスコセッシに推薦したのがデ・ニーロで、当初は『ギャング・オブ・ニューヨーク』で共演の噂が出たこともあったが、結局、共演は先送りとなり、遂にこの新作で実現した。

 しかも、今回は叔父と甥という関係ゆえ、スコセッシ一家のふたりの結束の強さ(?)も感じさせる設定となっている。原作によると、レオが演じるアーネストは、28歳で、「西部劇のエキストラにでもいそうなハンサムな顔立ち」で、「妻に献身的な夫」として書かれている。一方、デ・ニーロ演じるヘイルは「人にものを頼むようなタイプではない。命令するタイプだった」と記述されている。どちらも原作のイメージを裏切らないキャラクター作りがされている。

 スコセッシは今回の演技に関して、「ボブもレオも、これまでのベストワークのひとつになっている」と手離しでほめている。一方、製作にも立ち会った原作者グランも、レオの態度に感銘を受けたようだ。「レオからはひんぱんに電話をもらった。彼は本物のアーティストで、必死に役作りに取り組んでいた。その熱意と敬意にすごく感動した」と<AOL.com>のインタビューで語る。

 さらにこの映画の大きな発見となっているのが、アーネストの妻、モリーを演じるリリー・グラッドストーンの好演だろう。前述のインタビューでは、原作者も彼女を絶賛している。「リリーほど見事にモリーを演じられる人物はいなかったと思う。彼女には大きな存在感があり、独特のユーモア感覚も持っている。それまで記録でしか知らなかった人物が、生きた人間として目の前に現れ、すごく驚いた」

 スコセッシはキャスティング担当の人物からケリー・ライカートの監督作『ライフ・ゴーズ・オン 彼女たちの選択』(16)に出演していたグラッドストーンを推薦され、彼女をモリー役に決めた。パンデミック中の製作ということもあり、最初はズームで顔合わせをしたようだが、そこでこの女優の持つ知性や自信、強さにひきつけられたという。この映画で見事な演技を披露した彼女は、ネイティブ・アメリカン系の実力派女優として大きな注目を浴びた。彼女自身は先住民の祖先を持つが、オセージの出身ではなかった。しかし、今回の映画を通じて、この地域の人々と親交を深めたという。

 マーティン・スコセッシの映画は男のドラマが多いが、実は脇であっても、女性は重要な役割を果たしてきた。彼女たちは欲望や野心に突き動かされる男たちに冷静な眼差しを向ける存在だったからだ。どこか時代遅れともいえるマチズモは、今や“有害な男らしさ”と表現されることも多いが、スコセッシのギャング映画には、こうした男らしさを抱えた人物が登場することも多い。『アイリッシュマン』でロバート・デ・ニーロが演じたフランク・シーランも、そんな人物のひとりで、裏街道では殺人にも手を染め、家族のために金を稼いでいる。娘は父親のそんな裏の顔に気づいていて、冷たい眼差しを向ける。

 今回の映画では、デ・ニーロ演じるヘイルは、先住民のために公的な貢献をしているが、一方、白人優位主義者でもあり、先住民の女性たちを利用しようと考える。そんなヘイルや彼の言いなりであるアーネストと対峙し、古い男らしさの奥にある怖さや弱点を浮かび上がらせるのがモリーという女性だ。舞台となる1920年代において、先住民も、女性も、マイノリティの存在だ。偏見や差別が横行した時代において、モリーは悲劇に遭遇しながらも、それにつぶされない強さを持っている。

 スコセッシ映画の近年の女性像の中でも、モリーはひときわ印象的な役柄だが、これまで女性の内なる強さや賢さを、(世界を牛耳ろうとする)男性の野心や弱さと対比して描き続けたスコセッシだからこそ、実現した女性像ではないだろうか。撮影中に「グラッドストーンの演技から目を離すことはできなかった」とスコセッシも語っている。

 近年のアメリカでは<ブラック・ライブズ・マター>で人種問題が浮上し、<#Me Too>以後、女性の主張が注目されるようになり、女性映画や女性監督も力を持つようになった。そんな動きの中で、先住民の女性の生き方に光を当てた作品という意味でも、この新作は現代の映画となりえている。

ロビー・ロバートソンの想い出に捧ぐ

 今回の映画を見て、多くの音楽ファンは最後のクレジット、<ロビー・ロバートソンとの想い出に捧げる>の文字に思わず胸を打たれるのではないだろうか。本作はスコセッシ映画を長年、音楽面で支えたロビー・ロバートソンの遺作となっているからだ。

 スコセッシとロビーの出会いは70年代にさかのぼる。『ミーン・ストリート』の製作者、ジョナサン・タプリンはザ・バンドのツアーマネージャーで、(当時は)無名に近い若い監督のために製作費を出した。その縁でロビーとスコセッシは最初の挨拶を交わしたようだが、本当に親しくなったのは、ライブ映画の傑作『ラスト・ワルツ』(78)でコンビを組んだ時だ。ふたりはこの作品で意気投合し、一時、ロビーはスコセッシの家に住んでいたこともあった。ふたりは音楽や映画のことを語り合い、知識を深めたという。そんなロビーが、作曲者として最初に参加したスコセッシ映画は『レイジング・ブル』(80)。また、『キング・オブ・コメディ』(83)ではヴァン・モリソンなど、ロビーが親しいミュージシャンを起用して、充実のサントラを作った。『ハスラー2』(86)では、ロビーがソリッドなテーマ曲も作り、エリック・クラプトンと共作の挿入歌「イッツ・イン・ザ・ウェイ・ザッツ・ユー・ユーズ・イット」が人気曲となった。

 音楽監修者やコンサルタント、作曲者として、ロビーは10本以上のスコセッシ映画に参加してきた。最初の頃は、お得意のロック寄りのサントラが目立つが、21世紀の『ギャング・オブ・ニューヨーク』あたりからは選曲の幅も広がり、世界の音楽の歴史をたどるサウンドが実現。『シャッター・アイランド』(10)では現代音楽などの選曲も行い、映画の内容に合わせて変幻自在のサントラ作りをしてきた。

 ちなみに映画好きでもあったロビーが生前最後にリリースしたソロアルバムのタイトルは「シネマティック」で、まさに映画から抜け出したような音の世界が展開していた。そのうちの一曲「アイ・ヒア・ユー・ペイント・ハウジズ」は、『アイリッシュマン』の主人公のギャング、フランク・シーランにインスパイアされた曲で、ロビーとヴァン・モリソンの軽快なデュエットが印象的。また、現代の才能あるギタリスト、デレク・トラックス(テデスキ・トラックス・バンド)も参加した悲哀感あふれるインスト曲「リメンバランス」は、『アイリッシュマン』のエンドクレジッドでも使われていた。

 ロビー自身はカナダの先住民の血をひいたミュージシャンで、先住民たちの音楽の歴史を描いたドキュメンタリー『ランブル 音楽界を揺るがしたインディアンたち』(17)にも出演していた(スコセッシも出演)。そんな彼の先住民としてのルーツは、ザ・バンドの物語をロビー自身の視点で語ったドキュメンタリー『ザ・バンド かつて僕らは兄弟だった』(19)でも語られている。

 先住民の歴史を描いた今回のスコセッシの新作は、ロビーが自身のルーツも重ねることのできる待望の企画だったはずだ。油田が発見される冒頭場面の曲「Osage Oil Boom」など、いかにもロビー的なリズムが炸裂する曲作り。一方、この映画で何度か使われる「Heartbeat Theme/Ni-U-Kon-Ska」は、『アイリッシュマン』のサントラに収録されたロビーのテーマ曲同様、ハーモニカが印象的で、人間の揺れ動くダークな深層心理が伝わり、スコセッシが描きたかった「白」でも「黒」でもない複雑な心模様が表現される。

 ロビーは自分の子供の頃に聞いた先住民の音楽をモチーフにして、ブルースを基調にしたサントラを作り上げた。その音楽は<LAタイムズ><イヴニング・スタンダード>など海外のメディアでも絶賛されている。

 ロビーは2023年8月に亡くなり、スコセッシは盟友に対して「彼は親友でいつも側にいてくれた。彼は巨人で、芸術に対して深く普遍的な影響力を持っていた」という公式なメッセージをアメリカの<ビルボード>で発表している。劇映画においても、ドキュメンタリーの分野でも、アメリカの音楽映画の流れを大きく変えてきたスコセッシ。その創造的なパートナーとして、40年以上に渡って彼の側にいたロビー。<ロビー・ロバートソンとの想い出に捧げる>というシンプルな最後のクレジットを見ると、ふたりの長い年月に渡る音楽と映画への思いが読み取れ、深い感慨にとらわれる。

取材・文:大森さわこ

映画ジャーナリスト。著書に「ロスト・シネマ」(河出書房新社)他、訳書に「ウディ」(D・エヴァニアー著、キネマ旬報社)他。雑誌は「ミュージック・マガジン」、「キネマ旬報」等に寄稿。ウエブ連載をもとにした取材本、「ミニシアター再訪」も刊行予定。

Apple Original Films『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』

大ヒット上映中

配給:東和ピクチャーズ

画像提供 Apple

大森さわこ

https://news.yahoo.co.jp/articles/937963edfede85782720a14d08fe79a1ba9630c0


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オーストラリア政府観光局、巨大カンガルー&世界遺産ウルルの前で絶景風フォト! 豪州発オーガニックコーヒー試飲あり

2023-10-28 | 先住民族関連

トラベル Watch10/27(金) 11:19配信

写真:トラベル Watch

 世界最大級の旅イベント「ツーリズムEXPOジャパン2023 大阪・関西」が10月26日~29日の4日間にわたり、インテックス大阪(大阪市住之江区)で開催されている。

【この記事に関する別の画像を見る】

 オーストラリア政府観光局のブースでは、観光キャンペーン「『グッデイ!』ではじめよう、オーストラリア」のキャッチコピーと世界遺産「ウルル-カタ・ジュタ国立公園」がデザインされた看板の前に、公式マスコットのカンガルー「ルビー」を巨大フォトスポットとして設置。

 52kmにわたる海岸線の街「ゴールドコースト」、熱帯雨林とグレートバリアリーフの世界遺産を有する「ケアンズ」、年間を通じてさまざまなイベントが開かれる港湾都市「シドニー」、美食とアートであふれるオシャレな街「メルボルン」といった主要都市のほか、クオッカやペンギンなどの固有種、約6万年前から現存する先住民族アボリジニ文化についてパネル&ムービーで紹介する。

 また、オーストラリア発のオーガニックコーヒーロースター「BUN COFFEE」が出展し、淹れたてのエスプレッソを試飲提供している。東海岸バイロンベイに本社を構えるブランドで、厳選豆を使ったこだわりの味が楽しめる。

トラベル Watch,編集部:白江ちなみ

https://news.yahoo.co.jp/articles/ec11b9f71642fea7e7d80097d4060ce993c25cb4


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FSCニュース】ブラザー販売が「SDGs年賀状」による FSCジャパンへの寄付を通じてSDGsの推進に貢献

2023-10-28 | 先住民族関連

NPO法人日本森林管理協議会2023年10月27日 12:00

ブラザー工業株式会社(社長:佐々木一郎)の国内販売子会社であるブラザー販売株式会社(社長:安井宏一)は、プリンターの活用コンテンツを取りそろえているスマートフォンアプリ「Brotherいつでもはがき・年賀状プリント※1,2」内で、SDGsをテーマにした年賀状のテンプレートを10月16日に公開しました。テンプレートには、絶滅の危機に瀕している動物をモチーフにしたデザインもあります。対象の年賀状1ダウンロードにつき1円が「FSCジャパン」に寄付されます。(ブラザー販売株式会社 FSCライセンスコード:FSC®︎N003672)
FSCジャパンは、ブラザー販売株式会社の取組みとご寄付に深く感謝をし、消費者の皆様が気軽にご参加いただける本企画が弊会の取り組みを強化し、森を守るための重要な一歩であると確信します。今後も森の豊かな恵みを未来へ繋げるため、FSC認証制度の信頼を保ちながら、FSC認証の普及活動に努めて参ります。

※1:アプリケーションは無料でダウンロードできますが、App Store、 Google PlayTMへ接続する際の通信料は、お客様のご負担となります。対応OS等の詳細は、App Store、Google Playにてご確認ください。
※2:製品によって、光沢はがきや自動両面印刷の対応状況が異なります。
※3:「SDGs年賀状」の利用が可能な期間中(2023年10月16日~2024年1月下旬頃)のダウンロード実績を基に集計します。カウントするダウンロード数は、アプリをインストールした1端末ごとに1デザイン1回迄です。複数枚印刷してもダウンロード数は1回でカウントします。

【絶滅危惧種保全年賀状】

■FSCジャパン(特定非営利活動法人 日本森林管理協議会)
FSC(Forest Stewardship Council, 森林管理協議会)は、環境保全の面から見て適切で、社会的な利益にかない、経済的にも継続可能な森林管理の普及を目的に、環境団体、林業者、林産物取引企業、先住民族団体などを中心に、1994年に設立された独立した非営利団体です。現在世界の約1億6000万ヘクタールの森林と55,800ほどの組織がFSCの規格に基づき認証されています。FSCジャパンはFSC国際事務局から正式に承認された、日本の窓口となる組織です。日本国内におけるFSC森林認証の普及や、国内を対象とした規格の検討と作成を行っています。

■FSCマーク
FSCの定めた基準をもとに、適切に管理されていると認められた森林から生産された木材や
回収材等の責任をもって調達された原材料から生産された製品にFSCマークがつけられます。
FSCマークがついた製品を使うことで世界の森林保全につながります。
FSCジャパン公式HP:https://jp.fsc.org/jp-jp
FSC公式Twitter: https://twitter.com/FSC_Japan
FSC公式Facebook: https://www.facebook.com/FSC.Japan?ref=tn_tnmn

https://www.gifu-np.co.jp/articles/-/306771


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徳増ないるアナ ラグビーW杯決勝 皆さんはどちらを応援しますか?…静岡第一テレビアナウンサーまるごとブログ

2023-10-28 | 先住民族関連

スポーツ報知10/27(金) 11:48配信

 ラグビーW杯フランス大会は、いよいよ、29日が決勝戦です! ニュージーランドと南アフリカが激突。それぞれ3回の優勝経験がある世界の強豪。皆さんは、どちらを応援しますか?

 私は、どちらかというと南アフリカを応援しようと思っています。4年前の日本大会の際、袋井市のエコパスタジアム周辺で南アフリカから来日したファンの方々にインタビューし、母国やラグビーへの思いを聞いたからです。「ラグビーは希望! 良いプレーを見ると人々が幸せな気分になる」「政治的な心情や宗教、肌の色が違っても、ひとつになれる」と。

 いまだアパルトヘイト政策の影響で人種差別が残り苦しむ国民を、スポーツの力でひとつにしてくれるラグビー代表チームを敬愛している様子でした。4年前の準々決勝では日本に勝利し、決勝ではイングランドを破って見事優勝した南アフリカの選手達は、特に「ワンチーム」「ノーサイドの精神」の尊さを強く感じさせてくれました。

 もちろんニュージーランドにも頑張って欲しい思いはあります! ニュージーランド代表が試合前に行う先住民族の伝統舞踊「ハカ」もとっても楽しみです。ラグビーW杯フランス大会決勝戦は、Daiichi―TVで29日午前3時45分から放送です!

https://news.yahoo.co.jp/articles/9f73e1b9cd1ab6dc6ee5a973e4632da3d98c7e0f


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NYで見つけた新鋭ブランド16選。個性派デザイナーをチェック!

2023-10-28 | 先住民族関連

ELLE2023/10/27

国際的なデザイナー支援組織「グローバルファッションコレクティブ(Global Fashion Collective)」の注目デザイナーを「エル」が解説! 第2回は、子供服からウェディングまでバラエティあふれるブランドが出そろったニューヨーク編。

BY SAHO KAMIOKA

現地時間2023年9月7日(木)~9月13日(水)の期間で開催された2024春夏ニューヨークファッションウィーク。そこでカナダ・バンクーバーに本拠を置くプラットフォーム「グローバルファッションコレクティブ」が、これから活躍する新鋭ブランドのショーを開催。ニューヨークでは子供服からウエディングドレス、着物など多様なブランドがそろった。未来の“it”ブランドをここでチェックして!

SISIO(シシオ)

シシオ」は中国人デザイナー、シャーロット・シャオによって2018年に設立されたブランド。中国の伝統的なスタイルとアバンギャルドな要素を融合させ、ユニークで魅惑的な美学を追求している。2024春夏コレクションでは日本と中国の伝統文化を掘り下げた。着物や能面をチャイナドレスと融合させたルックや仏教の経典をプリントしたドレスなど、伝統的な文化の壁や固定観念を打ち破る新しいスタイルを生み出した。シャーロット自ら手作りで仕上げたクリスタルジュエリーにも注目。

Mäkira(マキラ)

2015年にメキシコでスタートした「マキラ」の2024春夏のテーマは、イタリア語で「花」や「満開の」を意味する“Fiorenza(フィオレンツァ)”。シルク、タフタ、シフォンなどのさまざまな生地を使い、トロピカルで鮮やかなプリントとフェミニンなタッチを融合させた。ブランドが一番大切にするのは鮮やかな色使い。オレンジとパープル、グリーンとピンクなどの大胆な色の組み合わせは、強烈でありながら調和のとれたインパクトを生み出す。コレクションを見ているだけで、太陽が照らされるメキシコの雰囲気を感じる夏への賛辞となった。

Justin Jacob Louis(ジャスティン・ジェイコブ・ルイ)

GLOBAL FASHION COLLEVTIVE

デザイナーのジャスティン・ジェイコブ・ルイはカナダの先住民であるサムソン・クリー族出身で、ストリートウェアレーベル「SECTION 35」の創設者兼クリエイティブ・ディレクターも務めている。2023年に自身の名を冠した「ジャスティン・ジェイコブ・ルイ」を立ち上げたばかり。ショーの始めに披露された先住民の伝統的なパウワウ・ダンス、その後に続く洗練されたシンプルなアイテムをまとう先住民族出身のモデル、先住民族の伝統的な三つ編みにより、自身のコミュニティの価値観を尊重し、それをファッションショーに取り入れる重要性を訴えた。ファッション界で先住民をメインストリームで表現するという大きな課題を打ち破るブランドの一つになることは間違いない。

Meta Vocus(メタ ボーカス)

ロンドンベースの「メタ ボーカス」は社会問題や環境問題への意識を高めるために生まれたブランド。ブランドのシグネチャーアイテムであるスカーフは65%がエコ・サテン、35%がシルクで作られたサステナブルなもの。今回のコレクションでもほとんどのアイテムがアップサイクルな素材を使用して制作したアイテムだった。8ルックで構成されたコレクションでは、大胆なカラーとパターンを融合し、エネルギーあふれるボヘミアンスタイルを提案。チョーカーやベルト、傘(!)などのスカーフの取り入れ方にも注目して。

#whysocerealz!(#ワイソーシリアルズ!)

映画『ダークナイト』に登場するジョーカーのキャッチフレーズ「Why so serious?」をパロディ化させた韓国発のブランド「#ワイソーシリアルズ!」。そのため毎コレクション必ずジョーカーを彷彿とさせるモデルが登場する。愛について書かれた新約聖書の第13章が着想源となった今コレクションでは、足元にハイカットスニーカーや重量感のあるブーツを取り入れてストリート要素をプラス。カーキやグレー、ネイビーといった落ち着いた色彩で、テーラードジャケットといったシャープなアイテムを取り入れて都会的な印象に仕立てた。

Satomi El Beso(サトミ エル ベソ)

テレビ番組やCM、日本のアイドルたちのライブパフォーマンス用の衣装を制作するオーダーメイドブランド「サトミ エル ベソ」。プログラミング言語からインスピレーションを得て“#if1”と題された今コレクションでは、日本のアイドルを筆頭に、日本文化やサブカルチャーをデザインに落とし込んだ。カタカナが装飾されたり、漫画のプリントをドレスに取り入れたりと、まるで漫画やアニメから飛び出してきたようなルックの数々はファッションにはルールがないことを改めて感じさせた。音楽プロデューサーの松隈ケンタ氏もショーに参加し、アニメーション映像やパンクなサウンドトラックで爽快な雰囲気を演出した。

Sound of Ikebana(サウンドオブ生け花)

MoMAにも作品が展示されているメディアアーティストの土佐尚子氏が立ち上げた「サウンドオブ生け花」。今回のコレクションでは、デジタルテキスタイルプリント技術を使って赤ちゃんの泣き声や心音の形を捉え、デジタル捺染(なっせん)技術を使いファッションに昇華させた。体を優しく包み込むロングドレスやセットアップを軸に、全体的にリラクシーなムード漂うコレクションに。ショーのBGMにも赤ちゃんの泣き声や心音を取り入れ、会場ははかなく幽玄な世界観に包まれた。

Hoshi(ホシ)

日本発のウェディングドレスブランド「ホシ」はあらゆる好みに柔軟に対応する多様なコレクションを発表した。後ろでなびくベールが優雅な白いブライダルスーツからショーがスタートし、ボヘミアンシックなドレス、ミニマルでリーンなシルエットのドレス、ポルカドットのシースルー素材を取り入れたブラックドレスなどが続いた。シルエットやカッティングにこだわり、上品かつ個性的な魅力が光るドレスを提案した。

Evaro(エヴァロ)

フィレンツェ出身のデザイナーのエヴァ・ロランデッリはレザーウェアを中心にビジネスを展開していた父亡き後、遺志を受け継ぎ、ブランド「エヴァロ」を改めて立ち上げた。ブランドが大切にするコードは、色彩、自然への愛とイタリア的美学。今回のコレクションでは、そのコードが多様なカラーパレットや体にフィットするセンシュアルなシルエット、繊細なレースに現れた。エレガントで折衷的、時代を超越したクラシックなイタリアンスタイルと品質の伝統を見事に体現した。

Hyper Couture(ハイパークチュール)

日本発の「ハイパークチュール」は若者の中心、原宿のラフォーレにお店を構え、最近だとDJ KOOや鉄腕アトムとのコラボを発表する人気ブランド。大胆なグラフィックプリントや個性的なデニムアイテムを筆頭に、スマイルマークを多用してポップに演出。ニューヨークで経験を積んだ日本人デザイナーなだけあり、ニューヨークらしいストリート感と東京の遊び心ある“カワイイ”カルチャーが見事に融合されていた。パッチワークの技法など、手が込んだ手法も披露。ラストにはデニム素材のウェディングドレスで華やかに締めた。

Nuance(ニュアンス)

「ローリーズファーム」でデザイナーを務めていた大塚由理氏が“奥ゆかし”をコンセプトに2016年に立ち上げたウェディングドレスブランド「ニュアンス」。今コレクションでは日本製ビーズを使った余白感のあるビージング、生地の透け感のあるレイヤードなどで、細やかさ・柔らかさ・透明感を表現する12着のドレスを発表。花嫁の本来の美しさを引き立てたいという大塚氏の願いが、着る者の体を繊細に包み込む滑らかなシルエットに現れていた。

MIYABI(ミヤビ)

振り袖を中心に取り扱う北九州をベースにするブランド「ミヤビ」は、“花魁(おいらん)道中”をテーマに日本の歓楽街の様子を大胆なデザインで表現。スワロフスキークリスタルで飾られたモダンな振り袖から、虹色のフェイクファーや虎をイメージした生地の陣羽織を着た振り袖まで、着物の概念を打ち破る斬新なコレクションとなった。

Teddy♡me(テディ♡ミー)

2012年に吉野美怜氏が立ち上げた日本の子供服ブランド「テディ♡ミー」のコンセプトは“ゆめかわいい”。パステルカラーやフリル、チュール、リボンをふんだんに使い、ドリーミーな世界観を描いている。ギンガムチェックや花柄など、春を思わせるプリントも多様に取り入れられ、それらをとびきりマキシマムに組み合わせるスタイリング術も光る。

MOURÈNNE(モレンヌ)

ジェシカ・グールドと娘のジゼルが二人で手がける子供服ブランド「モレンヌ」。子供服とはいえ、エレガントでクラシックな魅力が詰まったドレスを扱う。独自のシルク刺しゅうのアップリケから、本物のオーストリア産クリスタル、淡水パール、14Kゴールドビーズに至るまで、あらゆるディテールが慎重に選ばれている。シックなカラートーンや上質なシルク、ゴールドビーズが全体にちりばめられたドレスを着て歩くモデルの子供たちはまるで本物のお姫様のよう。ドレスとセットになった帽子のコーディネートも愛らしい。

Ehyun(イーヒョン)

韓国人デザイナー、ウンジョン・チョウが手がける子供服ブランド「エヒョン」は、頭に巻かれたスカーフやふわっと広がるショートパンツなどどこかノスタルジックさを感じるアイテムをニュートラルな色調でシックに昇華。広々とした草原の中を走り回る子供を連想させるようなラストルックの白いドレスはレースとチュールを重ねた繊細なディテールが光る。

BOUJIE KIDZ(ブージーキッズ)

リアリティ番組に出演するインフルエンサーのダニエル・カブラルが手がける「ボウジーキッズ」は上流階級や高級品を好む人のことを指すスラング“Boujie(ブージー)”なスタイルにストリート要素をミックスさせたブランド。レオパード柄や迷彩柄、チュールのドレス、お団子ヘアなど、子供らしさあふれるとびきりカラフルでポップなスタイルを提案した。

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講演会「森林住民から見たアマゾンの保全・利用・開発」

2023-10-28 | 先住民族関連

東京外語大学2023/10/27

アマゾンの森はかけがえのない地球の宝です。本講演会では、ブラジル・アマゾン川の主要な支流のひとつであるシングー川流域で長年に渡って熱帯雨林の保護とその地に暮らす先住民の支援に取り組んできた熱帯森林保護団体(RFJ)の南研子代表をお迎えし、第一部ではアマゾンの保全と開発の現状をご講演いただき、第二部ではアマゾン開発にまつわる研究者たちとの討論会で、そこに住む人々の暮らしから日本に住む私たちの生活を振りかえります。

日時

2023年12月7日(木)12:40~15:50

  • 第一部 講演会(12:40~14:10)
    「アマゾンの森からのメッセージ」
    講演者:南研子(特定非営利活動法人 熱帯森林保護団体 代表)
    会場:東京外国語大学本部管理棟 中会議室
  • 第二部 討論会(14:20~15:50)
    「アマゾンの様々な開発と人々の暮らし」
    登壇者
    石丸香苗(福井県立大学学術教養センター教授)
    倉内ひかり(東京外国語大学国際社会学部ポルトガル語科4年)
    舛方周一郎(東京外国語大学世界言語社会教育センター 講師)
    南 研子(特定非営利活動法人 熱帯森林保護団体 代表)
    会場:東京外国語大学本部管理棟 小会議室2

共催:東京外国語大学海外事情研究所・日本学術振興会科学研究費基盤研究(B)
20H04427「アマゾンの森を脆弱化させたのは誰か-ブラジル環境・開発政策の影響の科学的検証」

https://www.tufs.ac.jp/event/2023/231207_1.html


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