20階の窓辺から

児童文学作家 加藤純子のblog
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『バターサンドの夜』(河合二湖著・講談社刊)

2009年09月22日 | Weblog
 若き書き手の友人、河合二湖さんのデビュー作のご紹介です。
 河合二湖さんは、昨年度の講談社児童文学新人賞をこの作品で受賞し、今回出版となった期待の新人です。
 
 本の帯には、翻訳家の金原瑞人さんが、こう推薦文を載せています。
「この新しさをなんと説明すればいいんだろう!
 『バターサンドの夜』が出たいま、ヤングアダルト小説の世界はもうこのままではいられない。」 

 二湖さんのこの原稿をはじめて読ませていただいたのは、一昨年の春でした。
 一読した瞬間、「これはいける!」と直感しました。
 それから彼女は丸一年の歳月をかけ、作品の完成にむけ、あらゆる努力を積み重ねていきました。
 そんな彼女が、自らの力でずんずん高みにのぼりつめていくのに、時間はかかりませんでした。

 私が「いける!」と直感したのは、彼女が捉える現代を生きる中学生の女の子たちの世界の所在なさと窮屈さ。
 少女たちの関係性の新しさです。
 そしてなにより、文章のレトリックの見事さです。
 彼女は繊細でしなやかで熱く、それでいて冷静な人です。
 その塩梅が作品を絶妙な具合に仕上げています。

 モデル。「ロシア革命」のアニメのコスプレ。クラスメートたちとの関係。家族の関係。
 いまの少女たちを取り巻く状況や思いが風俗を通して、また友人たちとの関係、家族との関係を通して、まぶしく展開されていきます。
 そしてすべての関係性が収束していくとき・・・。
「わざわざ、あんな下流な人たちのところへ行くんだ」
 友人に、その言葉を吐かせた河合二湖の作家的感性の新鮮さ。
 
 とにかく、新人、河合二湖さんがどっぷり「今」と格闘しているデビュー作です。
 どうぞ皆さま、お読みになってください。
コメント (8)
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