ご紹介が遅れてごめんなさい。
今回は6作の新刊をご紹介いたします。
『あいしてくれてありがとう』(越水利江子作・よしざわけいこ絵・岩崎書店)
お母さんとおねえちゃんと「ぼく」、3人暮らしの家にときどきやってくるおじいちゃんは、まるでタイフーンのようです。
でもそのタイフーンは多少大人げないところはあるけれど、いつも大きくてあったかくて創造的。
そんなおじいちゃんと、襖を張り替える前に落書きした話や、夜店の話。
うつくしいスイカ燈籠の話など、まぶしい思い出が、うつくしく、そして切なく描かれています。
ある日、おじいちゃんが死んでしまい、そこに残されていたものは・・・。
ここには越水文学の原風景や叙情性、そして幻想性や悲しみが、色濃く、そして豊かに描かれています。
『視えるがうつる!?』(越水利江子他・角川つばさ文庫)
越水利江子・小島水青・宮下恵茉・横山充男、4人の作家たちによる短編連作です。
登場人物が暮らしている「地霊町」というのは、戦国時代に東西の軍がたびたびぶつかり合いを起こし、多くの死者の屍が埋もれている場所です。そこを舞台に描いている短編連作です。
別々の作家が、主人公を変えながらけれど出てくる人や場所は同じというまるでチェーンのように「視える」をキーワードに物語を展開しています。
これは作家同士の話し合いや物語への煮詰め方など、かなり連携プレーのいる仕事です。
たいへんではありますが、とてもおもしろい手法の「怖い話」でした。
『しろうさぎとりんごの木』(石井睦美作・酒井駒子絵・文溪堂)
小さなうさぎは、とても満ち足りた、幸せな日々を過ごしています。
うさぎにとっての冒険は、庭のりんごの木の下までいくこと。
でも小さなうさぎにとっては、それは大冒険です。
りんごの木とりんごの実の違いだって、まだわからないくらいのオチビちゃんですから。
そんなちいさなうさぎの視点に立ちながら、日々の暮らしやりんごの木のことが、とてもセンスのある文体で温かく描かれたステキな絵本です。心があたたかくなります。
人気絵本画家・酒井駒子さんの絵が,この作品をさらに愛おしいものにしてくれています。
『むしむしたんけんたい なきむしの巻』(西沢杏子作・西原みのり絵・大月書店)
虫愛好家でもあり、詩人でもある西沢杏子さんの『むしむしたんけんたい』シリーズの第一巻です。
このなかには
『なきむしコンクール』
『セミのくにの王さま』
『コオロギとほおずき』の3つの短編が納められています。
虫に詳しく、虫たちを愛おしんでいる「おばあちゃん」と孫娘の「まゆ」、そして虫が苦手な「まゆ」のおにいちゃんの「りゅうた」。
3人のさまざまな楽しいお話を読みながら、虫について知ることになる、いわば「一粒で二度おいしい」作りになっている楽しいご本です
『スーパーキッズ(2)さらば自由と放埒の日々』(佐藤まどか作・講談社)
「うつのみやこども賞」を受賞した、話題作『スーパーキッズ』(講談社)のシリーズ第二作です。
舞台は一冊目と同じ、地中海に浮かぶイタリア領の小さな島の全寮制の中学校。12歳から18歳までの一貫校です。
その学校の経営者が突如代わり、教育方針も、がらりと代わります。
一巻では、子どもたちそれぞれの持ち味と個性をのびのびと描いた、いかにもインターナショナルなスケールの大きな物語が展開していました。
ところが今回は、そうした個性も特性もまるで無視した学校側の姿勢に、子どもたちが立ち上がります。
ハラハラドキドキ・・・。まるでスパイ小説を読んでいるような臨場感を楽しみながら、今回もひとりひとりの子どもたちの能力の高さと、それぞれの個性の鮮やかな描出には舌を巻きました。
『虹のティアラ 最後のドレス・チェンジ』(次良丸忍作・琴月綾絵・フォア文庫)
人気シリーズ『虹色ティアラ』の6巻目。完結編です。
完結編らしい、ダイナミックな展開てんこもりの1冊です。
謎を呼んでいた人たちの存在理由も、すべてつまびらかにされます。
「ユッコ」の一家はラビューランドへ家族旅行でやってきます。そこで目にした噴火しそうな火山、伝説のティアラを持ったヤイバア・・・。
はたして「ユッコ」「シルク」「ポリエ」は、マックラーミ団極東支部の悪者やヤイバアとの闘いで、伝説のティアラはどうなっていくでしょう。
ドキドキしながら、ストーリー展開のおもしろさを楽しんでください。
皆さま、この6冊、ぜひお読みになってください。