今朝は、リモートで、久しぶりに「良子ちゃん主催の、詩の会」です。
詩人であり、画家である良子ちゃんが、テキストを選び、ZOOMで招待してくださいます。
長田弘が多いかな?
でも私も、長田弘、大好き。
今回は、絵が「クリムト」。
「花を持って、会いにゆく」
長田弘の奥さんの瑞枝さんが亡くなる一年前、亡き夫の詩の中から選び、組曲のように作った詩集です。
テーマは、死?
でもとても優雅です。
こんな詩のシャワーを浴びる、冬の午前の時間も贅沢です。
滅多にリアルではお目にかかれない、人たちと、リモートでお会いできるのも、嬉しいです。
おまけ。長田弘の詩から。
「うつくしいものの話をしよう。
いつからだろう。ふと気がつくと、うつくしいということばを
ためらわず口にすることを、誰もしなくなった。
そうしてわたしたちの会話は貧しくなった。
うつくしいものをうつくしいと言おう。
風の匂いはうつくしいと。渓谷の
石を伝わってゆく流れはうつくしいと。
午後の草に落ちている雲の影はうつくしいと。
遠くの低い山並みの静けさはうつくしいと。
きらめく川辺の光りはうつくしいと。
おおきな樹のある街の通りはうつくしいと。
行き交いの、なにげない挨拶はうつくしいと。
花々があって、奥行きのある路地はうつくしいと。
雨の日の、家々の屋根の色はうつくしいと。
太い枝を空いっぱいにひろげる
晩秋の古寺の、大銀杏はうつくしいと。
冬がくるまえの曇り日の、南天の小さな朱い実はうつくしいと。
こむらさきの実の紫はうつくしいと。
過ぎてゆく季節はうつくしいと。
さらりと老いてゆく人の姿はうつくしいと。
一体、ニュースとよばれる日々の破片が、
わたしたちの歴史と言うようなものだろうか。
あざやかな毎日こそ、わたしたちの価値だ。
うつくしいものをうつくしいと言おう。
幼い猫とあそぶ一刻はうつくしいと。
シュロの枝を燃やして、灰にして、撒く。
何ひとつ永遠なんてなく、いつか
すべて塵にかえるのだから、世界はうつくしいと」。
「世界はうつくしいと」長田 弘