奈良県宇陀郡曽爾村にあり、室生火山帯に属している。青蓮寺川に面した南側に大岩壁を露わにして偉容を誇る。鎧・兜の名称は、形状を武具に見立てたものである。 葛より鎧岳(Oct.1962)
鎧岳(894m)【よろいだけ】隣り合う兜岳より標高は低いが、やや背を傾げて屹立する姿はよく目立ち、兜岳の雌岳に対し雄岳と呼ばれた。『大和名所図会』に「雄嶽。葛(かつら)村にあり。一名鎧嶽という」とある。露出した柱状節理の岩肌を鎧のくさずりに見立てた名称である。岩壁は南に面して三段からなり、この辺りに多い柱状節理の中でも屈指の大岩壁で、特に青蓮寺川沿いの岳見橋から仰ぐと、鎧をまとった偉丈夫を思わせる堂々たる姿である。 逢坂峠(Nov.1996)
西側の兜岳との間が峰坂峠である。この峠を北に越すと布引谷に出合う。谷を左に遡ると落差30mに近い布引滝がある。また右(北東)に下ると、県道81号の通る落合にでる。ここから1㎞弱南にある小太郎岩は、幅約700m、高さ約200mの垂直の岩壁。「小太郎落とし」の伝説が残り、かつては岩登りのゲレンデとしても有名であった。 葛から兜岳(May.1996)
兜 岳(920m)【かぶとだけ】鎧・兜に屏風岩を加えて「曽爾三山」と呼び、1934年、国の天然記念物に指定されている。兜岳、鎧岳とも、急峻な東側に反して西側は比較的緩やかで雑木に覆われている。青蓮寺川沿いには柱状節理の岩が多いが、1000万年前の室生火山の爆発によるマグマの痕跡という。兜岳の西側を、県道784号が走っている。かつての今井林道、更に古くは椿井越えといわれ、曽爾と名張を結ぶ重要な道であった。 目無地蔵(May.1996)
曽爾村横輪から赤目掛線を北へ45分で、目無し地蔵がある。ここが登山口で、右へ露岩混じりの急坂を登る。 兜岳(May.1996)
途中に大岩があり右側の展望が開けるが、頂上は雑木林の中で無展望である。頂上まで目無し地蔵から45分。
兜岳と鎧岳を結ぶ道は、1962年(昭和37)にはヤブ漕ぎとルート探しにかなり苦労して、なんとか尾根通しに歩くことができた。 縦走路より鎧岳(Nov.1996)
96年11月に34年ぶりに登ったときには、稜線にしっかりした踏み跡があった。 目無地蔵(May.2003)
3度目の2003年5月には登山道の随所に立派な道標が設置され、道も広くなって歩きやすくなっていた。