軽減税率8%の対象に、食料品全般に適用されることになった。外食も、かもしれないと言う。今夕、そういうニュース速報が流れました。国民の平凡な人たちが「当たり前だろう」と思うところに落ち着いて、みんながほっと一安心といったところです。
報道によれば、公明党がいつになく強硬姿勢の粘り腰だったようで、安倍官邸がそれに応じたと言います。敗れた財務省・自民党 vs 勝った公明党・安倍官邸、という構図。熱戦が毎日毎日、大きく報道されて、公明党・安倍官邸の人気が上がり、財務省・自民党の人気が下がるのでしょうか。
さて、この熱戦が本気で行われたとしても、安倍政権内のできごとです。公明党は、昔の自民党で言えば、時の総理に注文をつけたり諫言したりする、同じ自民党の派閥領袖の役どころを演じています。
公明党はがんばりを見せましたが、軽減税率を主張し始めたのは「消費税率5%」の時代でした。ですから、食料品の軽減税率は、本来、5%にとどまるべきものでした。
消費税率上げの議論が高まったとき、実施方法は、まず8%に上げて、次に10%に上げるという二段階方式に決まりました。この過程で「軽減税率」問題は完全にスルーされて、公明党も自民党も政府も、そして報道機関までも「知らん顔」。いつのまにか、なんとなく、スタート台は8%になっていました。
そして、日常生活に直結する「消費税上げ」のことを一時棚上げにして、政府は、安全保障法制の実現に全力を注ぎました。安全保障法制では公明党主力も、大筋で安倍政権に同意だったのでしょう。今回の軽減税率ほどの抵抗は見せませんでした。安全保障法制の自公協議では、平和姿勢のアドバルーンはある時期にストンと落下してしまいました。
この経過から見れば、食料品軽減税率に5%維持はもってのほかで、8%上げ時にあらためて協議しましょうという流れであり、憲法違反問題、安全保障法制問題で荒れた世論を今回の軽減税率ショーでなだめるという構図になります。
どれもこれも、登場する役者は、自民党・公明党に安倍官邸です。役者は見なれた政権側のみ。ということは、安倍政権は見せるのがうまい。練達のプロデューサーやディレクターがいるというころでしょうか。政治課題のショーのクライマックスごとに、私たち有権者はいっしょになって踊っていいのでしょうか。
安倍政権のすべての政治の目標は、憲法改正です。自民党の憲法改正案はそら恐ろしいものと言えるでしょう。心ある人にとっては「自民党憲法改正案」
を一読しておくことは必須であります。サッと一読するだけで、おそろしく思うようになるでしょう。
賢い有権者ならば、今夕のニュース速報で伝えられた軽減税率実現については、「一票の釣りエサ」だと思って、食い逃げを考えるでしょう。
来年7月の参院選と、その次に来る衆院選こそ、天王山。憲法問題で、天下分け目の関ヶ原。来たる二つの国政選挙は、自民党憲法草案実現への一里塚になります。
安倍晋三首相の旗印は、「戦後レジームからの脱却」です。これを別のことばで表せば、「リニューアル明治日本」です。昭和の高度成長日本で、自由を謳歌して育つことができた幸せな国会議員たちの中から、驚くほど多数の議員たちが安倍晋三首相と同じ傾向の考えを持ち、与野党を問わず安倍政権と気脈を通じています。
私たちが育った時代の民主主義が、今、脅威にさらされています。私たちが安倍政権の狙い通りに操縦あるいは懐柔されるならば、育ってきた時代より息苦しい時代を私たち自身の手で招くことになるでしょう。