若いころに、消防のはしご車は10階までしか届かないと聞いたことがあります。そのときから高層ビルやホテル、マンションがこわくなりました。
でも、仕事の関係先なら高層階にあっても行かざるを得ません。これまでに大都市のホテルに泊まる機会もありましたが、低層階はショッピング・飲食街や宴会・イベントホールで占められています。宿泊は上層階に限られています。
マンションなら賃貸・分譲ともに階数を選ぶことができます。分譲マンションは高層階ほど人気が高いと聞きました。大地震や大火事のときはどうするんだろうと思います。何年か前のニューヨークテロの映像や記録を見れば、建築基準法上の要求を満たしていたところで、命を失ったり、けがをしたりする危険率は、非常に高い。
人間の安全を優先すれば、高層ビルに問題があるのは素人目でわかります。それが法的に容認されているのは、企業論理の要請です。
人が住むには、マンションの構造だって問題ありです。共有スペース、すなわち隣人とのつながりを取るスペースである通路側は壁と鉄扉です。「人とのつながりを断固拒絶!」という意志を表現しています。
「防犯には好都合」というかもしれませんが、高層集合マンションそのものが防犯上は死角の多い建物です。防犯上問題の多い建物そのものが無い方が、防犯上は都合が良いということになります。
都心の地価が下がったという理由で、この数年間はマンション販売が好調だったようです。マンション販売が好調なのは、売り手側にとって利益のあげやすい不動産なので供給戸数が増えたからです。
平成年間で急成長した住宅会社の多くは、ヒューザーのようにマンション販売会社です、それに比して通常の戸建て販売会社は少数派となります。ハウスメーカー本業を除けば、大企業が手がけるのはマンションばかりです。資金効率が良いからです。戸建てにくらべて手間が省けるからです。
1戸2500万円、ワンフロア10戸、10階建てマンションなら全部で100戸で、25億円の売り上げになります。戸建て住宅で土地40坪、延べ床面積30坪、1戸2500万円を100戸売ろうとすれば、数千坪の土地が必要です。この土地を調達し、造成工事を施し、建物・外構等建築工事を施し、販売するには、マンション販売より数多くの手数がかかります。
私には、マンションがばかげて見えます。たとえば横1列に10区画を縦に10段並べた住居棚が、10階建て100戸売りマンションの実像です。例外的に管理組合や自治会がうまく運営されている事例は別として、一般的に10区画10段のねぐらは、隣人関係を希薄にし、個人生活を尊重した(=わがままな生活を保障した)ものになります。
ですから、地価が高くて戸建てに住むのが困難な土地柄でも、3階建て、5階建ての公団式集合住宅がまだしもオープンで良いと思います。テラス方式を参考にすれば、より良いデザインで機能的な低層集合住宅は十分に魅力的なものになるでしょう。
新しく機能的な低層住宅ができれば、地方都市の郊外住宅地域でも価格の安い分譲住宅として人気が出るのではないでしょうか。
とりあえず、高層マンションに住むことは、分譲会社や大家への利益貢献度大なるものがあるに過ぎず、地域社会と断絶してわがまま生活を保障するものとして、社会的にマイナスになると考えています。私は大反対です。