川本ちょっとメモ

★所感は、「手ざわり生活実感的」に目線を低く心がけています。
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消費税増税は正社員から派遣労働者への転換―貧困化を促進する

2010-07-30 12:30:04 | Weblog


7月25日(日)午前9時の「NHK日曜討論」は消費税増税がテーマでした。経済評論家・内橋克人さんが「反対」の立場で出演していました。

テレビに出てくる経済関係の学者・評論家はいつも数字のみを語ります。人間生活の観点から経済を語る人学者・評論家がテレビにでてくる機会が非常に少ない。内橋さんは人間生活の観点から経済を語るので、私の好きな評論家の一人です。彼は忘れたころにヒョコッとテレビに出ています。


内橋さんは消費税増税反対の基本的な視点として、こういう趣旨のことを言っておりました。

――1990年代から2000年代初頭にかけて、国民から企業へ大がかりな所得移転がおこなわれた。その額は280兆円といわれている。金融危機対処の低金利政策のため、家計は大きな損失を受けた。

このブログ記載にあたって、私は280兆円という数字の根拠の裏打ちをしていません。しかし、「日本発の国際金融危機か」といわれた当時のことは鮮明に記憶に残っています。そのころから急に、預金金利がタダ当然に下がりました。テレビでもあたりまえのように、「預金金利を下げて貸出金利との金利差を大きくして銀行を救う」と説明していた時期がありました。


もうひとつ注目すること。内橋さんは「消費税増税は正社員から派遣労働者への転換を促進する」と言っていました。

――正社員の給料は消費税非課税で、消費税の課税支出にならない。派遣労働の受け入れは消費税の課税支出になる。

企業の消費税納税の計算は、売上げ収入に伴う「仮受け消費税」-支払い費用に伴う「仮払い消費税」、です。正社員に人件費を払う場合よりも、派遣労働会社に下請け出しする方が、その分だけ消費税納税額を減らすことができます。

企業規模が大きければ大きいほど、この差額が大きくなります。派遣労働法は、わが国民の貧困化を急速に拡大した元凶でした。


このことについて国税庁の消費税基本通達をクリックしてお読みください。
消費税基本通達1-1-1 個人事業者と給与所得者の区分
消費税質問への回答 「労働者派遣」に係る労働者派遣料
消費税基本通達 5-5-11 労働者派遣に係る派遣料


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輸出有名企業が大もうけできる消費税のからくり

2010-07-10 19:16:20 | Weblog


法人税の数字のからくりだけでなく、消費税にもからくりがありました。

それで思い出しました。たしか、民主党の枝野幹事長が着任の翌日に経団連の会長を訪問したというニュースがありました。経済界との協調より先に、課税の公平化をはかってもらいたいと思います。

日本貿易振興機構(JETRO)のホームページ「輸出における消費税の課税方法」 の項(※リンク切れ)をごらんください。

ここでは、輸出について消費税の課税が免除されていることがわかります。同時に、消費税が還付され得ることが記載されています。

国内取引では、売上げ収入といっしょに受け取った消費税を「仮受消費税」として計上し、当該の製品やサービスの仕入れ支払いといっしょに支払った消費税を「仮払消費税」として計上します。

通常の取引では、売上げ収入の方が仕入れ支払いより多い。ですから、「仮受消費税-仮払消費税」の差額分の消費税を納税します。

しかし輸出取引に限定しますと、輸出の売上げ収入に対しては消費税ゼロです。ですから、消費税納税の算式は「ゼロ-仮払消費税」となります。この結果は「-」になりますから、消費税還付となります。

輸出製品の部品を納入した国内事業者は、「納入額に応じた消費税-部品製造原価に応じた消費税」の差額を納税します。

取引の最終段階としての輸出企業は、仕入れ原価に応じた消費税の全額を国から返してもらうことができます。しかし、この返還してもらう消費税はもともと、納入した事業者が国に払っているものです。おかしな話です。おかしな制度です。

自動車系、電機系ほかの輸出有名企業は消費税でもうけている、ということになります。これをうらめしく思う事業会社が多いことでしょう。


数字と条件を単純化して考えてみます。製品輸出額1億円、その製品原価が半分の0・5億円とします。

輸出額にかかる消費税収入はゼロ。原価にかかる消費税支出は250万円です。0-250万円で、250万円を国庫からいただくことになります。輸出合計100億円なら、2・5億円。輸出合計1000億円なら、25億円。

日本国全体ではどれくらいの消費税損失になっているのでしょうか。



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消費増税とセットになった「法人税引き下げ」公約のごまかし数字

2010-07-09 13:03:33 | Weblog


民主党・自民党はともに消費増税の旗揚げをして、同時に「法人税引き下げ」を7月11日参院選の公約にしています。でも、小企業や零細事業者は事実上、法人税引き下げの恩恵に浴することができません。ということは、大企業のための法人税引き下げ。

加えて、政府や二大政党の「税率が高い」という数字も、本当にそうなのか疑ってみましょう。実態はけっこう「軽い」のです。


以下、毎日新聞 2010年7月3日朝刊記事から事実関係の数字を抜書きしました。 


   ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇


<主要国の1月現在の法人税の実効税率で国際比較>
日本40・69%、米国40・75%、英国28・00%、中国25・00%、韓国24・20%。
    ※実効税率‥‥法人税(国税)、法人事業税(地方税)などの合計


<各種控除適用後の大企業の実際の税率07年3月期>
税理士の菅隆徳氏(第一経理グループ)の調査によれば、
トヨタ30・5%、ホンダ32・1%、三菱商事20・1%、三井物産11・4%

自動車メーカーは試験研究費が控除され、商社では外国税額控除が実際の税率を軽くしていた。実効税率と実際の税負担との間には大きな開きがある。研究開発費の一部を控除する「試験研究費税額控除」や、国境をまたいで活動する企業が他国に支払った税額を控除する「外国税額控除」などの減税制度があるためだ。


<法人税+社会保険料の企業負担率国際比較06年3月期>
自動車業界
フランス41・6%、ドイツ36・9%、日本30・4%、英国20・7%
電機業界
フランス49・2%、ドイツ38・1%、日本33・3%、英国23・4%

企業が法人税と同時に負担する社員の社会保険料を加えると、企業負担の姿はさらに変わる。社会保障の手厚い欧州の一部と比べれば、まだまだ「身軽」という日本企業の財務構造も浮かび上がる。

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菅新政権の、財政再建ではなく財源確保のための大増税への道

2010-07-01 18:28:57 | Weblog


DIAMOND online 2010年6月11日 「岸博幸のクリエィティブ国富論 第92回――菅新政権の第三の道は、財政再建ではなく財源確保のための大増税への道だ」からノートしました。岸博幸氏は慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授です。


<“財政再建のための増税”にだまされるな>

(1) 今の政府にはまだムダが山ほど残っていて、かつ民主党のバラマキ政策が基本的に温存されている。それを放置したままで、財政再建だけを錦の御旗にして、菅総理が消費税増税を訴えている。

(2) 鳩山政権は事業仕分けで行政のムダを削減しようとした。しかし過去2回の成果からも明らかなように、マニフェストで約束した“行政のムダ削減による新規政策の財源捻出”は、初年度から実現できなかった。

(3) 公務員の「退職管理基本方針」が新たに策定された。役所の幹部クラスの年次の人でそれなりの幹部職に就けない人のために、高級専門職ポストを新設するようだ。今の政府は民間企業で言えば破綻状態であるにもかかわらず、仕事がない人にも高い給料を払い続けようとしている。これは、行政のムダを温存する典型例だ。

(4) 民主党がマニフェストに掲げたバラマキ政策は、子ども手当など一部で見直しの方向になっているが、全体としては大きく修正されていない。

(5) 菅総理は財務大臣時代、“来年度予算での国債発行額を今年度と同じ44兆円に抑える”と発言した。44兆円という異常な数字を基礎にすること自体が不当だ。今年度予算は税収が37兆円に対して国債発行が44兆円。収入45%+借金55%という前代未聞の赤字会計だ。小泉時代は国債発行額を30兆円に抑えようとしていた。

(6) 今のままでは、実質的には“財政再建と政府のムダ&バラマキの財源確保のための大増税”となりかねない。目指すべきはそうではなく、“財政再建のための最小限の増税”のはずだ。

(7) 消費税1%あたりの税収は2兆5千億円なので、国債発行44兆円を賄うならば、現行の5%に18%程度は上積みしないといけない。でも、財政再建だけのためだったら、消費税率は例えば10%程度で済むはずだ。政府のムダとバラマキ政策を改善しなければいけない。


<“第三の道”にだまされるな>

(1) 菅総理は、経済政策についての「第三の道」発言をしている。増税をしても、その税収を社会福祉や医療、環境などの雇用創出につながる分野に政府が“賢く支出すれば”経済は活性化する、という。

(2) 政府が賢い支出をしてきたかどうかは、過去の実績からも明らかだ。政府がこれまで賢くない支出をしてきたと認識したからこそ、民主党はマニフェストで行政のムダを大胆に削減すると約束した。そして、過去2回の事業仕分けの成果からも分かるように、そのムダを削減することは並大抵ではできない。

(3) そうした状況にもかかわらず、民主党が政権を持っていれば政府は賢い支出をできるようになるんだと言われても、誰がそれを信用できるだろうか。

(4) そうした“政府による賢い支出”の事例としてスウェーデンなどの北欧諸国が挙げられている。しかしそれを真に受けてはいけない。スウェーデンの人口は925万人、デンマークは550万人。日本でそれに近い数字を探すと、神奈川県が900万人、福岡県が500万人だ。

日本の地方自治体レベルでならば、北欧諸国のように市民が政府をしっかり監視して、政府のムダを排除するとともに賢い支出を行なうことも可能かもしれない。人口1億2千万という日本で、それと同じことを期待できるだろうか。1億2千万の国民生活を支える公務員の数は膨大な数になる。

(5) こう考えると、この“第三の道”の主張は非現実的と言わざるを得ない。菅総理の主張に媚びた発言をする学者いるが、行政現場の経験もない机上の空論をベースに、1億2千万人を道連れにしかねない失敗確実な実験は控えるべきだ。

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