川本ちょっとメモ

★所感は、「手ざわり生活実感的」に目線を低く心がけています。
★自分用メモは、新聞・Webなどのノート書きです。

未熟な政権のゆえにもてあそばれた安保(毎日新聞)

2010-05-31 03:06:44 | Weblog


毎日新聞2010-05-29朝刊記事「安保もてあそんだ罪」から後半部を転載します。

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首相の迷走を許したのは、民主党政権が持つ構造的な欠陥であることも見落としてはならない。

同党は政権奪取のために生活テーマを前面に出し、安保政策は寄り合い所帯の党内事情と、票にならないという選挙戦略上の理由から遠ざけられた。衆院選のマニフェストでも同分野の扱いは軽く、移設問題は触れられなかったことがそれを証明している。

国対委員長による「普天間は直接国民生活に影響しない。雲の上の話だ」との発言(抗議ですぐに撤回)が、同党における普天間問題の軽さを象徴的に表している。そこには政権党でありながら、日々の安定した生活は安全保障によって担保されているという認識のかけらもないのだ。

準備不足で戦略も覚悟もないため、岡田克也外相、北沢俊美防衛相、平野博文官房長官の連携は最後までとれなかった。脱官僚のスローガンのもとに経験豊かなプロの意見は無視された。―略―

―略―

未熟な政権のゆえにもてあそばれた安保。政策の再構築がなければ、たとえ首相が代わっても同じことが繰り返されてしまう。

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普天間回帰は首相のアリバイ作りとしか思えない(毎日新聞)

2010-05-30 10:18:39 | Weblog


毎日新聞2010-05-29朝刊記事「安保もてあそんだ罪」から前半部を転載します。

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鳩山由紀夫首相が責められるのは、「最低でも県外」の公約を実現できなかったことだけではない。

日米関係の深化の試みや東アジア共同体構想の展開、そして拉致問題や北方領土問題……。信頼を失ったリーダーの下では重要案件の進展は望むべくもないという、日本の外交安保政策全体の信頼性を失ったことだ。

首相は普天間飛行場の県外移設を唱えた動機の正しさを強調するが、その不誠実さは命懸けで問題に取り組んだとは到底、思えないところにある。

首相は米国の抵抗にあい昨年中に、いったんは県外移設は無理だと悟った。ところが、社民党の反発などで「県外」の旗を降ろせなくなった。その後は5月末の決着期限をにらんで、「あわよくば」と展望のないグアムや徳之島を候補にあげながら、県内移設への回帰のためのアリバイ作りに腐心した――これが全体の構図としか見えないのだ。

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普天間問題 鳩山首相は間違いなく大罪を犯した(毎日新聞)

2010-05-26 10:35:52 | Weblog


きょう、2010,5.26.付け毎日新聞朝刊記事『記者の目:普天間問題 鳩山首相の責任』を全文そのまま転載します。改行と小見出しに限っては、手を入れています。


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国民の代表を名乗る資格はない
本来その地位の人物に備わるべき威厳と、現実とのアンバランスがこれほど拡大した例があっただろうか。

「最低でも県外」の公約実現に「命懸けで」「職を賭す」はずの鳩山由紀夫首相が、「やっぱり県内」にひょいと乗り移って、「沖縄の理解を得たい」という。

もはや国民の代表を名乗る資格はない。


沖縄で話した「断腸の思い」
首相が米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設先を「名護市辺野古付近」と通告した23日の政府・沖縄会談は、この問題の複雑さと相いれないほどあっけなかった。

仲井真弘多知事に促されてぎこちなく腰を下ろした首相は、用意した文書を淡々と読み始めた。

取ってつけたような「昨今の朝鮮半島情勢」、お決まりの「断腸の思い」。首相の所作から、リーダーならではの深い葛藤(かっとう)や、自らの不手際を恥じる高潔さは伝わってこなかった。

首相にとって沖縄への思いとは、スーツから、かりゆしウエアに着替える程度のことだったのではないか、とすら思った。


普天間返還をまとめた橋本龍太郎元首相
96年2月の日米首脳会談で普天間の返還を初めて提起した橋本龍太郎元首相(06年7月死去)は、クリントン大統領の顔を見るまで言い出す決心がつかなかったという。

晩年にインタビューした時、橋本氏は「ノーと言わせたら、一発で終わる。だから本当に迷いに迷った」と振り返った。

橋本氏の回想には政治指導者が乾坤一擲(けんこんいってき)の勝負に出る時の緊迫感があった。それに比べて、鳩山首相はどうか。


首相はひきょうであるか、無責任であるかのどちらかだ
移設候補に挙がった鹿児島県・徳之島の3町長に滝野欣弥官房副長官が電話を入れたのは4月20日だ。理由を問われた首相は「滝野さんに聞いてください」と人ごとのように語った。

最もデリケートな交渉事を、仮に滝野氏が独断で進めていたなら更迭に値する。しかし、滝野氏がとがめられた形跡はない。

真実は、首相がひきょうであるか、無責任であるかのどちらかだ。

万策尽きて辺野古回帰案が新聞をにぎわし始めると、首相は「あの海を埋め立てるなんてたまったものじゃない」と否定した。

結果はどうか。吹けば飛ぶようなトップの発言を連日聞かされる国民こそたまったものではない。


首相の特異な精神構造――「善意であればよし」とする身勝手な思考
首相はたびたび「そのような思いで」と語る。動機を強調するレトリックだ。私はここに鳩山氏の特異な精神構造が潜んでいるように思う。

善意から出発した取り組みならば、結果を伴わなくとも免責されるという身勝手な思考だ。

失敗しても自らを正当化する。動機が善であるとの過度の思い込みが、一方的に国民の忍耐に甘える姿勢を生み出しているのではないか。


首相は間違いなく大罪を犯した
マックス・ウェーバーの「職業としての政治」には「政治とは、情熱と判断力の二つを駆使しながら、堅い板に力をこめてじわっじわっと穴をくり貫(ぬ)いていく作業である」という有名な一文がある。

首相に欠けているのは判断力だ。ウェーバーは、判断力について「物事と人間に対して距離を置いて見ること」と定義し、距離感を失うことは政治家として「大罪の一つ」と説いている。

首相は間違いなく大罪を犯した。


首相の挑戦を擁護する見方
沖縄の過重な基地負担を思って、首相の挑戦を擁護する見方もあるだろう。しかし、ことは主権国家同士の交渉だ。

約束を積み上げて妥協を引き出すセオリーに反して、過去の政府間合意を平気で白紙に戻すような政権は、外交の世界で相手にされない。


沖縄を傷つけ、沖縄と本土との溝を広げ、国益を損ねた
8カ月間にわたる迷走は、普天間移設にかかわるすべての当事者を傷つけた。沖縄の期待感をあおったつけは、琉球の歴史にまでさかのぼって沖縄と本土との溝を広げた。日米関係の不毛な停滞は、得べかりし国益を損ねた。

今さら辺野古への移設を求めても、鳩山氏が最終責任者でいる限り、政治的には不可能に近い。

そうなれば、06年の日米合意にパッケージで盛り込まれている嘉手納以南の基地返還も遠のき、普天間の危険性は固定化される。


すべては首相の食言に起因する――引責辞任か衆院解散が妥当
首相が全国知事会との会合を27日に設定したのもおかしい。一番先にやるべきなのに、土壇場で負担軽減の協力を求めるセンスが理解できない。

問題はすべて場当たり的な首相の食言に起因する。

民主党は、自民党政権での首相のたらい回しを批判してきたのだから、本来なら衆院を解散し、改めて政権を選択してもらう局面だろう。ただ、もはや首相に解散権を行使する権威はない。

首相に残されている道は、政府案の発表とともに引責辞任することだ。

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普天間――結果的に国外・県外移設は選挙目当ての甘言だった(東京新聞社説5月5日)

2010-05-10 03:13:07 | Weblog


普天間――各紙論調の抜書きです。


首相、県内移設を初めて表明 沖縄知事に「負担願う」(共同通信 2010/05/04 22:14)
 鳩山由紀夫首相は4日、沖縄県を訪れ、米軍普天間飛行場(宜野湾市)移設問題をめぐり仲井真弘多県知事、稲嶺進名護市長らと相次いで会談し、キャンプ・シュワブ沿岸部(名護市辺野古)を埋め立てる現行計画を修正し、辺野古沖への移設案を事実上初めて提示した。


首相沖縄初訪問 今さら『県内移設』とは(東京新聞社説5月5日)
 鳩山由紀夫首相が沖縄県を初めて訪問し、米軍普天間飛行場の県内移設の意向を明言した。公約破りは明白だ。「国外・県外移設」を託した沖縄県民をはじめ国民を裏切るもので到底看過できない。

 結果的に国外・県外移設は選挙目当ての甘言だった。国民を欺いた首相の政治責任は極めて重い。


首相沖縄訪問 遅すぎた方針転換(読売新聞社説5月5日)
 ここに至る政府の迷走ぶりは目を覆うばかりだ。 国外移転を主張する社民党の顔を立ててグアムなどを視察し、貴重な時間を浪費する。過去に否定されたシュワブ陸上部案やホワイトビーチ沖合案が浮上しては消える。杭打ち桟橋方式も、14年前にも検討されたことがある。

 現行計画を否定しているのもおかしい。首相は最近、埋め立てを「自然への冒涜(ぼうとく)」と言い出した。本当にそう考えるなら、最初にそう言うべきだろう。単に自らのメンツを守るため、現行計画の修正を図っているとしか見えない。


首相沖縄訪問―月末までに何ができるか(朝日新聞社説5月5日)
 条件の合いそうな自治体に協力を求めるなど、万策尽きて県内に戻ったというのならまだしも、政権内では早くから、名護市の米軍キャンプ・シュワブ陸上案や、うるま市の勝連半島沖の埋め立て案が検討されていた。5月末の決着期限まで1カ月を切り、ようやく「本音」を表に出した。


首相の沖縄訪問 今さら「県内移設」では(毎日新聞社説5月5日)
 「すべて県外に(移設)というのは現実問題として難しい。沖縄の皆さんにご負担をお願いしなければならない」「沖縄にも、徳之島にも、普天間移設で負担をお願いできないかとおわびしてまわっている」。これが、県外移設を求める沖縄県民への首相の回答だった。昨年の衆院選で「最低でも県外」と主張し、国会などで「県外」を繰り返したのとは大きな違いだ。

 「移設先は辺野古以外に」という昨年12月の首相の言葉もほごになった。

 5月末決着に「職を賭す」と明言した首相の言葉は重い。実現できなければ、首相の政治責任が厳しく問われることは免れない。


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鳩山首相「5月末決着期限に変わりない」(毎日jp 毎日新聞 5月6日20時39分配信)
鳩山由紀夫首相は6日、米軍普天間飛行場移設問題の決着期限を「5月末」とした自身の方針について「変えるつもりはまったくない」と改めて強調した。米国、移設先の地元自治体、連立与党の3者の合意を得る、としていた「決着」の中身についても「変えない」と明言した。官邸で記者団に答えた。


首相、徳之島に普天間で協力要請 3町長は受け入れ拒否(共同通信 2010/05/07 20:06)
 鳩山由紀夫首相は7日午後、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)移設問題をめぐり、鹿児島県・徳之島の地元3町長と官邸で会談し「普天間の機能の一部をお引き受けいただければ、大変ありがたい」と要請した。沖縄の米海兵隊ヘリコプター部隊の移設ではなく訓練の一部移転を念頭に置いた発言とみられる。3町長は拒否し、物別れに終わった。


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首相の言葉―公約でないとは恐れ入る(朝日新聞社説5月7日) 
政治家にとって言葉は命、という。ましてや、一国の最高指導者となればなおさらだ。鳩山由紀夫首相はその重みをわかっていない。首相は昨年の総選挙前、沖縄県の米海兵隊普天間飛行場を「最低でも県外」に移すと訴えた。ところが、県外断念に追い込まれた途端、あれは「党代表としての発言」であって「党の公約」ではないと言い出した。

>いまさら、マニフェストには書いていないからと責任逃れをするような発言には、恐れ入るほかない。

実行力を伴わない言葉の軽さも困りものだが、それが思慮の浅さに起因しているのではないかと疑われる点が、より深刻である。

 首相は県外断念の理由について、海兵隊の「抑止力」維持をあげた。

 首相は総選挙時には、海兵隊が沖縄にいなければならない理由はないと考えていたという。しかし首相就任後、「学べば学ぶにつけ」海兵隊の必要性を理解したと説明した。

 海兵隊の抑止力について、首相なりの認識を得るための勉強に8カ月も要したというのが本当なら衝撃である。移設問題とは、「抑止力」と沖縄の負担軽減という困難な二正面作戦に他ならない。そのことは初歩の初歩のはずではなかったか。


普天間問題 徳之島の拒否は当然だ(東京新聞社説5月8日)
首相は昨年の衆院選で、普天間移設について「県外が望ましい」と明言した。徳之島への一部機能の移設で、「公約」を果たそうと考えたのであろう。

 在日米軍基地の約75%が集中する沖縄県民は、重い基地負担に苦しむ。米軍駐留が日本とアジア・太平洋地域の安全保障に不可欠なら、その基地負担は国民ができる限り等しく負うことが望ましい。

 しかし、徳之島への移設案と打診の仕方は妥当性を欠き、公約を果たしたように見せ掛けるアリバイづくりとの疑いが拭(ぬぐ)えない。


普天間移設 首相は「結果」に責任を持て(読売新聞社説5月8日)
 さらに問題なのは、鳩山首相が最近、首相としての資質を一層疑わせる発言をしていることだ。「最低でも県外移設」との発言は「党の公約でなく、党首としての発言」だった、と弁明する。

 海兵隊について、昨夏には、沖縄に存在しなくてもいいと考えていたが、首相になって「学べば学ぶほど、(沖縄で)パッケージとして抑止力が維持できるという思いに至った」と、安全保障に関する知識・理解不足を認める。

 いずれの発言にも唖然(あぜん)とさせられる。党の公約と党首の発言を区別すること自体がナンセンスで、そんな言い訳が通るなら、だれも党首の発言を信用しなくなる。海兵隊の抑止力についても、首相に就任した後、徐々に重要性を認識しているようでは困る。


普天間問題 透ける「政治主導」の実体(毎日新聞社説5月9日)
 「移設案」を別の言葉にすると鳩山政権の「政治主導」の実体が透けて見える。年金や医療制度の改革も、財源がないまま政治家のにわか勉強では解を得られないだろう。まぶしいマニフェストに比べ、政権の現実は痛ましく不安が募るばかりだ。


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