3.11の大震災とそのあとの避難生活、仮設住宅での暮らし。そして三人の女性が力を合わせ、新天地で自分たちの運命を切り開いていくところで小説は終わる。
読みながらものすごくドキドキし、たまに涙を流した。
ドキドキしたのは怒りから。ここに出てくる男たちはみな、能力がないのに立てられて当然と威張り、内実は女性に依存している甲斐性なし。
東北の男性全員がこんなどうしようもなく救い難い男ばかりとは思わないけど、そして、小説だから誇張はあるけれど、男と女の関係をよく描いていると思った。
避難所ですよね。避難所へ行くようにならないことを祈るばかりだけど、ただでさえ不自由なのに、訳の分からない男に威張られたのではかなわない。
実際の話として、最後まで仕切りの段ボールを使わせない避難所があったそうで、それがこの小説を書く動機になったとか。
この小説にあるように、ここで生活するなら家族も同然、仕切りなんて水臭いということだったんだろうか。
はあ?
元々他人同士がなんで家族の振りしないといけないのよ。言い出す男は全体を把握し、仕切りたい、家父長的体質の男。困りますねぇ。自治組織のはずが、特定の人に権力が集中すると理不尽なこともまかり通る。
何よりも理不尽なのは、非常時に女性が、男性の性的好奇心の対象となってしまうこと。一人で暗い所へ行かない、トイレは二人以上で。などなど。ひそかに言われていたことだけど、実際にもあったのではないかと私は思う。表に出ないだけで。秩序が崩壊した時に、むき出しの暴力、人間の欲望があらわになる…
最後は風通しのいい自由の天地で、働いて人生を切り開いていく三人の女性。明るい気持ちになり、応援したくなった。
この中で、夫を亡くした若い未亡人が舅の戸籍から抜ける話があったけど、戸籍は結婚と同時に別々のはず。住民票を分けて、自分が世帯主になるということかな。そして親子関係の消滅を申請すれば、義父の扶養義務もない。身軽になれるという意味と思った。
この小説の中では、都会では女の人が一人で喫茶店入ったり、映画見たりを東北から出て行った女性が驚く場面がある。女性が仕事していたら、外回りの仕事もあるし、一人でご飯食べるのは当然。と私は思う。何も奇異な光景ではない。
この日本のどこかに、それがまだ不思議と思う感性があるんだろうか。
都会と地方という切り口からも、面白く読める小説でした。津波に流され、九死に一生の場面の描写も秀逸。